絶妙に正しい姿勢で帽子を目深にかぶり、長いまつ毛の眼をぱちくりさせながらアルファベット帳を見ている。
「大文字・・・?小文字・・・?記号・・・・・・あーあ、面倒臭い。」
金・・・赤・・・そして多くは黒髪の歩行者が横行する、その背景にあたる薄暗い街角で少年が立ち止まっていた。これが私アズールだ。
その少年、いや実はその・・・女なのだが、その漆黒の長い髪は帽子・探偵のような帽子に収納し、ダークブルーの服に包んでいた。
私の細い手に持っているこれ、この”手帳”はABCのアルファベットを記し、ルールブックいわゆる英語の教科書をに照らし合わせていくシステムなのだが、英語音痴の私にはよく分からない。
ここ新日本國では、アルファベット表記が主流なのだが、国立の将学校に2年間通って無理だと判断した。
向って左側の向こう側の路地を曲がって来た青年と目が合う。
「こんにちは~~青少将だよ~~~!」
それで、自己主張しながらこちらに突撃してくる青年は青という名前だ。自称軍人・・・それも少将らしいが、少なくとも私は知らない。
道幅の広さを利用して横に避ける。
「いや~素早い身のこなしだ。見せてもらったお礼に、この青が英語の教育をしてあげよう。」
この出し抜けにボディタッチを狙ってくる青は顔のみを私に向け、そうまくしたてる。
私、アズールはチラッと視線を青に投げかけるが、うつぶせガードレールに身を任せているのを確認してからもう一人の青年に振り向く。
「将学校は楽しいかい?」
「カム・ゴー長官、なんでしょうか。」
「いや用事は無いけどね。・・・ちょっと気になったから。」
将学校のオーナーをしているカム長官だ。国の偉い人らしい。
まさか・・・将学校の職員の菓子を盗んだ事がばれたのだろうか?
「カム長官。私のアズール・・・いや、一般生徒に何か用かな???」
(カム長官に勝てる訳がないだろ。権威を知らない阿呆だ。)
内心、私は青を笑う。
自慢じゃないが、私はカム長官に弁論で打ち負かされた事が有る。
「青少将!!すみません。失礼します。」
そそのくさとカム長官が退席する、この蒼空教室を。・・・もちろん担任教師は青少将だ。
「朝か。」
早朝、私アズールは朝早く目覚める。
ガー!、ガー!とカラスが気味の悪い声を上げる。
昨日、”青少将”とやらに絡まれて青空教室(とおせんぼ)を開かれたばかりにアルファベットを教えてもらった為立ちっぱなしで足ががくがくだ。が、まあいいだろ。
将学校にはちょっとばかり遅れたが、職員のため息一つで済んだ様で、何よりだった。
「一人か。」
親のいない住居は快適ではあるが世話をしてくれる人間がいないので、そろそろ立ち退こうかと思っている。
「かね・・・金か・・・・。金が無い!!」
がらんとした部屋にはもはや金目の物さえ残っていなかった。
「ならば、こうしよう。」
ともう一人の私が提案する。”空き巣だ、強盗だ”と。
その様子をひそやかに、じっと見つめる者の姿があった。その名は青照。すなわち青少将だ。
とある郊外のアパートでの出来事だ。
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19XX年、イギリスを始め大量の外国人が日本に移入する。
2000年、架空地方・墨坂県の話。