(当たり前だ。私はつくづくバカみたいだな)
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
第39話 <天国か地獄>(改2)
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旧市街を抜けた軍用車は東の日本海へ向けて狭い路地をひた走った。
私の記憶が正しければ、この先のお台場公園を抜けると幹線道路(431号線)に出るはずだ。
「敵機、警戒!」
日向が凛々しく叫ぶ。
機銃を構える君は実に頼もしい。だがさっきから、お前のスカートが風でヒラヒラとまくれてパン○が見えまくっている。
見てはいけないと思うのだがバックミラーで後方確認するたびに嫌でも視界に入る。そのたびに何度も私は思わず固まりかけて慌てる。鼻血が出そうだが、それを精神力で耐える。
(これは天国か地獄か?)
日向には何とかして欲しいのだが、どうも女子(艦娘)にはハッキリと言い難い。自発的にスカートがめくれないように何とかして欲しいよな。
(艦娘とはいえ、お前だって一応、女子なんだろ? 無頓着すぎるぞ!)
その日向の制服は忍者装束だ。私はてっきり行動しやすいズボンタイプなのかと思っていたが意外や意外。青天の霹靂、まさかの艦娘仕様だ。
(どうして艦娘ってのは、こうなるのか?)
私も運転している手前、ミラーで後方確認をしないわけにも行かず……男子としては嬉しい反面、司令官としては苦しいばかりだ。
(ああ天国と地獄)
一方、私の隣ではサンドイッチを抱えたまま滂沱(ぼうだ)の涙を流している妙な奴が座っている。一応敵なのだが水木しげるの妖怪そのものだ。まさに魑魅魍魎(ちみもうりょう)。
翻(ひるがえ)って空からは果たしていつ敵機が襲ってくるのか? 油断出来ない状況が続く。
日向のパン○ラと妙な敵と空からの敵機の脅威……ここは天国と地獄が入り乱れている。
生死苦悦、混沌カオス、もう私の脳内もムチャクチャである……と、ココまで妄想していたら状況が動いた。
「あ!」
私は思わず叫んだ。
目の前の斜め上空に敵機が出現したのだ! 日向は迷わず正面に向かって機銃を発射する。私は軍用車の速度を保ちながらハンドルを保持した。
タンタンという感じの発射音。そして車体が受ける機銃の反動と同時に腹にズンズンと来る振動。そして辺りにバラ撒かれるカートリッジ。それらが内外に跳ね回ってキンキンという金属音が入り乱れる。
気のせいか夕立が撃ったときとは受ける感触が違った。より激しく、かつシャープな印象だ。恐らく最初のものとは機銃に装てんされているタマの種類が違うのだろうが恐らく新しく入れたものは強化されている。
正面に現れた黒い敵機に、ほぼ一直線に銃弾の光点が次々と刺さっていく。なるほど夕立もソコソコ上手いが日向はもっと上手だ。
走行中の軍用車からの射撃は難しい。それを振動や風圧にも関わらず真っ直ぐ撃つ技術は、さすがだ。
やがて正面の敵機は日向の放った機関銃の餌食となる。
「やった!」
日向が叫ぶと同時に黒い機体は火花を散らして派手に爆発し空中分解した。百発百中とは、まさに、このことだ。
海上では魚雷も打ち抜くという日向の正確な射撃能力は海軍でもピカイチだ。敵もそんな彼女の標的にされたのが運の尽きだな。
「よし!」
ガッツポーズは出なかったが日向は会心の笑みを浮かべている。実は私も彼女の勝どきの声を聞くのは初めてだ。
それでも夕立とは違って過度に感情的にならないのは冷静な彼女らしい。
しかし日向が任務に忠実なのは有り難いが私には目の保養か毒なのか?そのスカートのピラピラは何とかならないものか?
いや、鼻の下を伸ばしている場合ではない。私が車を停めようと思った次の瞬間、撃墜された敵機の直ぐ後ろから別の機体が現れた。
「編隊か!」
まぁ当然だろう。
「……」
落ち着いた日向は冷静に標的を捉え容赦なく攻撃を再開する。
やはり、さっき夕立が射撃した時よりも日向の発射音は小さくて低い。タマの種類が違うこともあるが、それ以上の何かがある。
銃器ってのは意外とデリケートだ。ちょっとした扱いやメンテの差で作動全般に差が出る。
ましてや日向の機銃操作は完璧だ。当然そこから紡ぎだされる動作音にも、違いが出るのだ。
彼女が教官になったら、きっと優秀な生徒がたくさん生まれるだろう。そう思いつつ上空の敵機を見る。機銃を浴びた機体は、まだ堕ちずにそのまま私たちの頭上を通り抜けて後ろへと過ぎ去った。
「ハル!」
振り返りつつ日向が叫ぶと妖精が応える。
「ラジャー!」
待ち構えていた上空の瑞雲2機が、日向の撃ち洩らした敵機に次々と襲い掛かる。結果は明白だ。直ぐに後方からはズゴンという低い音と共に派手な火柱が上がった。
重低音が響きミラーには黒煙が立ち上っているのが確認できた。
「あ……」
落ちたのは、お台場公園かなあ? そういえば市街戦で敵機の落下場所の心配を忘れてた。
しかし艦娘たちは、いざ戦闘になると有無を言わせない迫力がある。日向のパン○ラも凄いが、それを怪しからん物と感じさせない勢いだ。
そういえば私は艦娘艦隊の提督でありながら彼女たちの実戦の場……つまり闘っている姿を現場(肉眼)でほとんど見たことがない。
そもそも現代の海軍において艦娘たちがリアルに戦う姿は他所でも、ほとんど知られていない。昨日の神戸が言っていた「戦う姿を初めて見る」というのは大げさでなく全ての提督や参謀にいえることだ。
変な話、私のような人間よりも隣に居る深海棲艦たちの方が艦娘の「真の姿」を知っているかも知れない。まして今日の夕立や日向は艦娘の地上戦だ。かなり貴重(レア)な光景だろう。
だが私は考える。そんな昨今の人間と艦娘の関係……彼女たちが前線へ行き人が後方に居るという構図は果たして好ましいのだろうか?
ふっと後ろで警戒を続ける日向とミラー越しに目が合った。彼女は少し微笑んだ。そしてミラー越しにチラチラと私を見てくれる。
そう、私のように出来の悪い指揮官であっても全幅の信頼を寄せてくれるのが艦娘だ。今見る日向の純粋な眼は、それを象徴している。
「そうか、そうだよな」
ハンドルを握りながら私は呟いた。
「?」
日向は周りを警戒しながらも私の言葉に少し首を傾げた。
私は思う。人間……特に海軍の軍人(指揮官)は彼女たちを裏切ってはいけない。どこまでも運命共同体であり一蓮托生なのだ。
そう思えば普段、なかなか共に戦うことのできない彼女たちと、こうやって地元、境港で共に走り抜ける経験。
今日という日は私にとっても海軍に於いても記憶すべき歴史的な一日だ。大げさだが心からそう思うのだった。
そんな私の隣には海軍(人類)の敵も居るんだが……まだ泣いているのか? こいつ。
そして日向は相変わらず派手にピラピラと腰周りをはためかせている。
「うーむ」
それは彼女に言うべきか否か? そのうちに海岸線が近づく。
(もう時間がない!)
私は突然決意した。
「そうだ艦娘たちには隠し事をしないようにしよう!」
「……」
訝(いぶか)しがる日向をよそに私はアクセルを緩めると幹線道路に出る交差点の手前で軍用車を停車させた。
すぐに周りを警戒。今のところ大丈夫だ。後ろの日向は……おお! 停車すれば、お前のスカートは、ちゃんと重力に従ってくれるんだな。
(当たり前だ。私はつくづくバカみたいだな)
「司令?」
彼女は後ろの銃座で不思議そうな顔をしている。
「日向……その何だ」
私は振り返りつつも彼女の顔を見て、ただ苦笑するばかりだ。
「実に言い難いのだが、お前には隠さないことにする」
「はい?」
相変わらず不思議そうな表情の日向だった。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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司令が運転し日向が銃座についた軍用車は見事な連係プレーで次々と敵機を撃墜。その凛々しい日向の姿に司令は冷や汗と苦笑をするのだった。