No.908124

真・恋姫†無双~黒の御使いと鬼子の少女~ 27

風猫さん

白髪の鬼子と黒の御使いの、守るために戦い抜いたお話

真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。

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2017-05-31 22:40:48 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:1173   閲覧ユーザー数:1107

「~反董卓連合結成の檄文が、各地で割拠する諸侯に飛んだのである』って、経緯まで懇切丁寧に書かれた書簡が届いたんだけどさ」

 

「……ん?」

 

 あ~、ようやく終わったか。長ったるしくて途中から寝てた。

 

 俺は一度思いっきり体を伸ばすと、趙雲から回されてきた手紙を流し読みして、隣の鳳統へ渡した。ちなみに、書きは苦手だが、読みならば問題なくできるぐらいにはなった。まぁ、仕事的にはあまりよろしくはないのだが。

 

 で、その手紙の内容を要約すると“董卓っていう悪い奴をみんなでやっつけよう!”なんだが、まぁ、送ってきたやつがかなりの大物だ。

 

(河北の、袁紹か……)

 

 詳しくは知らないが、かなりの戦力を持つ奴だと聞いてはいたし、趙雲も“戦力だけならば”と太鼓判を押していた。ただ、さらに彼女曰く“頭が駄目だ”とのことだったが。

 

 まぁ、頭がどうであれ、実力者からの呼びかけが掛かった訳だ。となれば、ここで話すべき内容は一つ。

 北郷は皆が手紙を読んだことを確認すると、全員の顔を見ながら話しはじめた。

 

「この袁紹からの呼びかけ、応じるべきか否か、皆の意見を聞きたいんだ」

 

 北郷からの問いかけにいの一番に答えたのは張飛だ。

 

「参戦するに決まっているのだ! そんな悪党はメッタンメッタンにして、表舞台から降りてもらうのだ!」

 

 何気に物騒な物言いだな。なんて思っていると、そこへ姉が続いた。

 

「鈴々の言う通り。ここは我々が力無き民に代わり、正義の鉄槌を下さねば」

 

 その言葉に張飛も何度も頷いた。だが、軍師勢と趙雲はどこか腑に落ちない表情をしていた。

 

「星、朱里、雛里は?」

 

 その様子に気が付いた北郷は、その三人へ問いかける。

 

「うーむ、愛紗や、鈴々が言うことは尤もだ、とは思うのですが……」

「星は反対なのかー?」

「そうは言わん。ただ……」

 

 一度切られた言葉の続きを孔明が繋いだ。

 

「送られてきた手紙の内容、それが気になっているんですね?」

 

 それに趙雲は頷くと、再び口を開いた。

 

「うむ、おそらく雛里も朱里も同じだとは思うが、どうにも一方的すぎる。いくら敵対勢力の話と言えど、ここまでくるとな……」

「……どういうことなのだ?」

 

 ……ありゃ、理解してないって表情だな。そう思った俺は張飛へ話しかけた。

 

「手紙の内容は“董卓は悪い奴だからみんなで倒そう”って事だろ?」

「にゃ、そうなのだ」

「まぁ、ここまで単純な内容だったら誰にでも分かる。だが、本当にそれだけなのか? って三人は疑ってる、そういうことだよな?」

 

 俺はさっき話していた孔明へ視線を向け、続きを促した。彼女はそれに答えるように小さく頷くと、顎に手を当てながら話しはじめた。

 

「これはおそらくですが、諸侯の権力争いかと。抜け駆けをして朝廷を手中へ収めた董卓さんへの諸侯たちの嫉妬がこのような形で現れたと見るべきです」

 

 その言葉に頭を抱えたのは張飛だ。

 

「うー、そんなに複雑に考えなきゃダメなのかー? 董卓にいじめられてる人がいるってだけで十分だと思うのだ」

「そりゃ、その情報が正しければ張飛の言うことは間違いじゃない。正しければ、な」

「嘘かもしれないって事?」

 

 北郷が俺へ視線を向けて問いかけてきたので、俺はそれに頷いてから続きを話しはじめる。

 

「まぁ、俺個人の考えではあるが、こういった場合、全てが真実である可能性は限りなく低い。どっかしらで嘘を混ぜ込んでいるはずだ。そのあたりを見極めねぇと」

「足元を掬われる、ってこと?」

「そういうこった」

 

 と、その時“ゴンッ”と鈍い音が響き渡る。音源を見てみれば、張飛が机に突っ伏していた。どうやら、さっきのは机に頭をぶつけた音らしい。

 

「う~……ややこし過ぎるのだぁ~」

 

 まぁ、アイツには難しいか。

 

「それが政治、ってもんだ」

 

 とはいっても、俺の場合は依頼を受ける時の駆け引きから考えているんだが。実際は政治なんてほとんど分からん。

 

「私たちは、すでに一つの地域を治める候、先々まで見据えなければいけません」

 

 張飛が突っ伏した状態で、孔明が話をし始める。

 

「漢王朝に崩壊の兆しが見えている今、そうして行動しなければ私たちのような弱小勢力は巨大な時代の渦に飲み込まれて消えていくだけです」

 

 孔明の言葉に関羽が少し悔しそうに言葉を溢した。

 

「我々の理想を実現するためにも、その理想を客観的に見ながら、現実的な考えをしろ、そういうことか」

 

 それに返事をしたのは趙雲だ。

 

「そうだ。理想は確かに大切だ。だが、その理想の輝きに目が眩んでいては、いつかは転んでしまう。だからこそ、蒼天に輝く太陽の光を浴び、大地に足を付け、しかと歩く事こそが重要だと私は考えている」

 

 むぅ、と関羽は閉口してしまうが、ちらりと劉備を見やる。そういや、いまだに発言をしてないな。

 

「桃香様は、どうお考えなのですか?」

「ふぇ!?」

 

 突然話を振られて跳ねる劉備。まぁ、寝てたわけではないから、自分の考えに没頭していたのだろう。

 

「え、え~と」

 

 ……寝てたわけじゃないよな? てか、何故にこっちに視線を向ける。

 

「……この申し出を受けるかどうか、だ」

「そ、そうだよね、うん」

 

 一度咳払いをしてから、劉備は自身の考えを話しはじめた。

 

「私は、もうちょっと情報を集めてから動きたいと思うの」

「桃香様?」

「その、本当に董卓さんが悪い人なら、すぐにでも申し出を受けて、董卓さんには退場してもらいたいって思う。でも、そんなに悪い人ならもっと前に噂とかが聞こえてくるんじゃないかな?」

「確かに……」

 

 その言葉に関羽だけでなく、張飛も目を閉じて唸っている。

 

「だから、私は出来るだけ情報を集めてから決めたいなぁ、って思っているんだけど……」

 

 まぁ、そうできたらいいんだがな。

 

「その意見自体は間違っちゃいないが、時間が無さすぎる」

 

 そう、今から洛陽に細作を放ったとして、それが情報を持って帰るころには、おそらく戦が始まっている。

 

「うっ」

 

 まぁ、ここで一歩踏みとどまれるだけでも成長したな、とは思うが。

 

「……まぁ、情報を得るとするならば、同時進行でするしかない、か」

「同時進行? なにを?」

 

 ……こういう所を見ると成長したのかが疑わしくなるんだよな。

 

「たっく、いいか? 要は参加を決めて置いて、洛陽に細作を放っておくんだ。そうすりゃ、上手くいけば戦が始まる前にこの話が真実かどうかが分かるだろ?」

「でも、それじゃあ遅いんじゃ……」

「ああ、確かに遅い。でも、ある程度は動き方を変えることは出来るだろ?」

「……ああ! そっか!」

 

 なんだか、成長したのかしてないのか、いまいち分からん。

 

「と、まぁ、これが俺の意見だ」

「つまり、玄輝は受けるって意見でいいの?」

「ああ」

「私も玄輝さんに賛成!」

 

 こうなると……

 

「受けるが4票、受けないが3票って所か?」

「玄輝殿、何も私達は受けないとは言っていない」

 

 と、そういやそうだった。

 

「すまん、もうちょい考えるべき、ってところか」

「そうですな。さて、主、どうなさいますか? 皆の意見は出揃いましたが」

「う~ん……」

 

 小さく唸りながら、北郷は目を閉じて考えをまとめ始めた。

 

「……………よし」

 

 しばらく流れた沈黙を破り、北郷が口を開いた。

 

「この申し出を、受けよう。情報の真偽がどうであれ、力無い人たちを助けるために集まったんだ。ここで参戦しないわけにはいかないよ」

 

 まぁ、そうなるか。

 

「で、どうする? ただ参加して董卓の首を取るのか?」

「まさか。さっきの玄輝の意見を採用するよ」

「つーことは、細作を放つか」

「ああ。例え理想の光に目が眩んでいても、杖を持って歩けばそうそう転ぶことはないって思うからさ」

 

 なるほどな。こいつらしい。

 

「星たちは、どうかな?」

「主がそう決めたならば、全力を尽くすまでですよ」

「はい♪」

「……がんばりましゅ」

 

 北郷の問いかけに彼女たちは多種多様な笑顔で答える。

 

「よし! そうと決まればさっそく準備をしよう!」

『応っ!』

 

こうして俺たちは、いかにも胡散臭い反董卓連合へと参加を決めたのだった。そこに助けられる命があると信じて。

 

はい、今回より董卓編へ突入いたします。

 

……次の更新は、いつになるかわかりませぬ。

 

ご理解とご容赦を頂ければと思いまする……

 


 
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