「俺」と『彼女』のスレ違いです。
駒王学園-校門前-
一誠side
「あの、私……『天野夕麻』って言います。 “コレ”私の携帯番号とメールアドレスです」
そう言って、彼女……天野夕麻ちゃんは俺に自分の携帯の番号とメールアドレスが書かれた紙を差し出してきた。
「えっ! ああ、どうも……ご丁寧に。 俺の名前は知っているだろうけど、兵藤一誠って言います」
俺はお辞儀をしながら受け取り、お礼の言葉と自分の名前を言った。
「じゃあ、一誠君って呼んで良いかな?」
「もちろん! じゃあ、俺も夕麻ちゃんって呼んで良いかな?」
「うん。 いいよ」
うおーーーーーー!!!!!
やったぜーーーーーーー!!!!!!
今日は、何と素晴らしい日なんだ!
まさか、この俺にこんな可愛い美少女からの告白を受けるだなんて!
しかも、めっちゃ俺好みの女の子だぜ!
おまけに携帯電話番号とメールアドレスもゲット出来たぜ!
我が人生で最高に良い日だぜーーーーー!!!!!
俺が有頂天で歓喜していると・・・・・・
――――ザワザワ、ザワザワ。
ん? なんだ? ヤケに周りがうるさいな。
人が折角、人生初の春の到来を喜んでるって時に!
そう思いながら、自分の世界から戻って俺が周りを見てみると・・・・・
俺と夕麻ちゃんとの遣り取りを見ていた他の下校途中の生徒達が騒いでいた。
――――<おいおい、今の聞いたか?>
――――<ああ、聞いた聞いた。>
――――<まさか、あの変態三人組の一人である『兵藤』に告白をする女の子が居たとはな。>
――――<ホント、ホント。>
――――<ねえ、あの子が着ているのって隣町にある学校の制服じゃない?>
――――<ああ、確かにそうだ。>
――――<ねえねえ、あの子に今すぐ兵藤に告白した事を無かった事にさせた方が良くない?>
――――<そうだよ、そうだよ。 このままじゃ『人生を棒に振っちゃうよ』って、あの子に教えてあげなくちゃ!>
って、おい! お前ら!
いくら俺がこんなに可愛い美少女に告白されたからってそんな言い方はねえだろ!
こちとら、人生初の春の到来なんだぞ!
浮かれて何が悪いってんだ!
――――フワ~。.:♦♥♦:.。。.:♦♥♦:.。
「(……ん? アレ? この匂いって・・・・・!)」
その時、吹いてきた風に乗って夕麻ちゃんから“ある匂い”がしていることに俺は気が付いた。
――――もしかして、夕麻ちゃんって・・・・。
――――俺は、目を見開いて驚きながら彼女を見ていた。
「それじゃあ、また後で連絡するね。 一誠君♥」
――――けど、そんな俺に夕麻ちゃんは気が付かないまま『後で連絡をするね』っと告げた。
「……ああ、それじゃあまた後で・・・・・」
――――手を振りながら去って行く夕麻ちゃんを見ながら、多少ぎこちないながらも俺も彼女に向かって手を振り返した。
――――そんな彼女の後ろ姿が見えなくなった所で、俺はこう呟いた。
「正直、夕麻ちゃんの告白は嬉しかったけど……既に中年の『旦那さん』が居るんじゃ意味ねえよな~。ε=(・д・`*)ハァ…」
――――頭をガシガシと掻きながら俺は溜息を吐いた。
――――さっき吹いた風で、夕麻ちゃんからウチの父さんが使っている男性用のローションの匂いがしてた。
――――それも、中年男性御用達の男臭対策用のヤツだ。
それが、意味するのは一つだけだ・・・・。
「一緒に住んでいるって事だよな。 その『旦那さん』と」
――――つまり、夕麻ちゃんは女子高生で若妻で人妻。
――――そして、俺は……その浮気相手って事か。
――――松田や元浜が聞いたら、さぞ羨ましがるだろうな。
――――美少女で、若妻で人妻な女の子に告られたと・・・・・。
――――でも、今はそれよりも・・・・・俺にはやる事がある。
「……グッバイ。 俺の初恋」
夕麻ちゃんから貰った携帯の電話番号とメールアドレスが書かれた紙をクシャクシャになるくらいに握り締めながら俺は夕暮れの空に向かって人生初の『初恋』に別れの言葉を告げて……人生初の『失恋』を味わった。
「ああ~、勝手に舞い上がっちゃってさ~。 俺ってホント馬鹿だわ」
よくよく考えれば、おかしい事に今になって気が付く自分自身に俺は呆れてしまった。
「……帰るか」
先程迄とは違い、重い足取りで俺は夕麻ちゃんから来る連絡をどうするべきかを考えながら家に向かって帰るのだった。
????side
「それじゃあ、また後で連絡するね。 一誠君♥」
「……ああ、それじゃあまた後で・・・・・」
私は、手を振りながら一誠君に後で連絡をすると伝えて……その場を後にした。
というか、周りにいた同じ学園の生徒達から散々な言われようだったわね。
正直、彼の『個人情報』を事前に知っていなければ同情していたわ。
「ふう~」
取り敢えず、今回の任務での最優先重要事項である『兵藤一誠』への接触は成功したわ。
同時に今回の任務で、一番厄介な相手達との接触も何とか避けられたしね。
予め、この駒王町を管理している上級悪魔で魔王サーゼクス・ルシファーの妹であるリアス・グレモリーと同じく上級悪魔で魔王セラフォール・レヴィアタンの妹であるソーナ・シトリー達、全員こちらが用意した偽情報によって出払っている。
勿論、彼女達の使い魔の対策も万全だ。
彼女達に一切情報が行かないように徹底している。
そのお陰で、私は『兵藤一誠』に携帯電話の番号とメールアドレスを書いた紙を無事に渡せたのだから。
これで、第一段階は完了ね。
――――でも、気を抜いては駄目よ。『“レイナーレ”』
任務は、まだまだこれから何だから。
そして、『彼』にも気がつかれてはいけない。
もし、今回の計画が『彼』にバレでもしたら……この町が何も無い荒れ地になってしまうのだから。
その光景を想像しただけで私の体が震え始めていた。
両腕で体を抱きしめて、私は震えを抑え込む。
「絶対に『ソレ』だけは、阻止しなければ!」
そう口に出すことで自分を勇気づける。
震えが治まった所で、私は携帯を取り出して“あの方”に連絡をした。
「・・・・・もしもし、アザゼル様ですか?」
そう・・・・・
私の『愛する夫』であるアザゼル様へのね♪
――――後に、彼の口から私が『旦那』持ちである事が解っていたと言われて驚いたのは……また別の話だ。
ハイスクールD×D IF
次回に続く。
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どうも、おはこんばんにちは。
劉邦柾棟です。
長い間、止まってたこの作品を更新致します。 m(_ _)m
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