「銃口を私に向けるなって!」
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マイ「艦これ」「みほ2ん」
:第3話<珍道中の始まり>(改2)
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今日の美保は良い天気だ。
日向の運転する軍用車は埋立地から幹線道路に入った。その交差点では右に曲がる。大山の反対側にある高尾山(島根半島)へ向かって北上する。
島根半島の緑と晴れた青空が見事な対比を見せる。
「もう夏だな……軍用車で走るには良い季節だ」
ところが車内では突然、夕立が自分のホルスターから拳銃を取り出した。彼女はニコニコして言う。
「ねぇ司令って、これの撃ち方、知ってるっぽい? 私こういうの初めてっぽい」
私はギョッとした。
「おいバカ危ないって! 車内で無闇に拳銃を取り出すなっ!」
「ぽい?」
首を傾げる夕立。
「だから、さり気なく銃口を私に向けるなよっ、止めろっ!」
金髪の夕立が蒼い瞳の笑顔で銃を持って……お前は暗殺者か? 思わず鳥肌が立った。
すると前で運転している日向がバックミラー越しに落ち着いた口調で諭(さと)す。
「夕立さん、今はしまって下さい。危ないですから」
「ぽい」
夕立は軽く舌を出しながら拳銃を自分のホルスターに戻した。
「やれやれ肝が冷えたよ……ったく」
ホッとした私は彼女に言った。
「ここは海の上じゃないんだぞ」
「海の上ならイイっぽい?」
……呆れた。
「相手を選べ。私を狙うな」
すると運転席から日向が答える。
「夕立さん? 実際には、それを使うことは無いですよ。敵が来たら銃なんて使っている場合じゃありませんから」
私は彼女に言った。
「日向は意外と冷静だな」
同じ艦娘でもこんなに違うものか。彼女は微笑んだ。
「ご安心下さい司令……いざとなったら私たちが司令の盾になります」
落ち着き払って平然と言う。さすがにギョッとした。
「おいおい、怖いこと言わないでくれよ。お前の、その姿勢は見上げたものだが」
「そうだね。日向は、いつも腰に刀、持ってるっぽいしぃ」
大きな瞳をクリクリさせて夕立が返した。
「そうか、日向はいつも腰刀差しているな」
そう言いながら私は彼女の腰刀が改めて気になった。
「それって、やっぱり、いざとなったら本気で抜くのか?」
ところが私の問いには答えず日向は言った。
「この車には今、軽機関銃も積んでいます。もし敵が来ても相手が重戦車で来ない限りは大丈夫でしょう」
「え?」
思わず後ろの荷台を振り返った。
「ぽい?」
夕立も振り返る。金髪が風に流れる。
「ぶへっ」
コイツの髪の毛が口に入った。私は手のひらで風になびく金髪を払いながら荷台を覗く。確かにシートに包まれた無骨な物体があった。
髪の毛を逆立てながら夕立が喜々として言う。
「相変わらずスゴイっぽい! 夕張が作ったんでしょ? これ」
だが私は気になった。
「いや、これって確か試作品だろ? ……実際に敵に撃ったことあるのか?」
「……」
誰も反応がない。
「何だ、やっぱり撃ってないな」
まぁ形だけでも準備万端整ってはいる。そりゃ機銃があれば心強いが、一番良いのはそれを使わないことだ。
取り敢えず、この珍道中の間は平穏無事に済んでくれることを祈るばかりだ。
やがて軍用車は幹線道路から少し小さい県道に入った。公園の脇を走りながら私は日向の言葉を思い出した。
(重戦車でも……って?)
まさか、その機関銃を街中でぶっ放すんじゃないだろうな? 曲がりなりにも私の地元だ。それだけは避けたい。
艦娘って日向みたいな落ち着いた娘でも、どこかしら「戦闘バカ」みたいな雰囲気がある。敵が本当に来たらマジでぶっ放しそうだ。ちょっと恐い。
しかし今日は索敵に強い寛代もいるし。仮に敵が空から襲ってきても今度は直ぐに分かるだろう。
そこまで考えた私は傍と気づいた。
「待てよ」
「ぽい?」
夕立が、のん気に反応する。
「敵って、まさかホントに戦車、持ってないよな?」
私の言葉に日向が応える。
「……それは分かりません」
「でもぉ」
あっけらかんとした夕立。
「あっても、おかしくないよね」
そりゃ怖いって。
この狭い境港で地上戦? ……想像したくないぞ。
「ねぇねぇ、敵の地上部隊ってホントにあるのかな?」
「さぁ……噂では、あるようですが」
夕立の言葉に応える日向。
艦娘たちが会話をしている間に軍用車は、どんどん市街に入る。
ふと日向が聞いてくる。
「ところで司令の、お墓はどちらですか?」
私は傍と考え込んだ。
「ええっと、境港の役場の傍って言う記憶しかないんだ」
実はここ十数年、参ってない。そもそも境港にあるのは母方のお墓。なおさら記憶がボヤける。
「……そうですか」
淡々と答える日向。
すると急に夕立がカットインしてくる。
「ねぇねぇ、司令の実家に先に行って聞いちゃったほうが早くないっぽい?」
なるほど確かに。
「それは良いな、夕立」
妙案だな。思わず褒めてしまった。
「えへへ」
頭に手をやりながら意外にも照れ隠しをしている彼女。
それを受けて日向も聞いてきた。
「では、これから司令のご実家へ向かいましょうか?」
「うむ、そうだな」
そう応えた私だったが何年も戻っていない実家へ、いきなり行くのは抵抗がある。
もちろん私が海軍にいることは親も知っている。しかし息子は良いとしても、いきなりセーラー服を着た女の子(軍服に見えぬ)を3人もゾロゾロ連れて戻ったら母親もビックリだろうな。
「本当に宜しいですか?」
念を押すように聞いて来る日向。
「ああ、ここまで話が進んだら腹をくくるしかない」
私は帽子を被り直した。
改めて日向が尋ねる。
「ご実家は、どちらでしょうか?」
「えっと境港の駅に近い郵便局の通りだ。場所は……説明し難いな」
すると彼女は助手席を見た。
「寛代さん、分かりますか」
「……」
彼女は黙って頷いた。なるほど索敵に強いこの艦娘は地図で私の実家の情報まで持っているようだ。やはり重宝する。連れて来て正解だったな。
「まさか祥高さんは、ココまで見越していたのかな?」
それが本当なら彼女は軍師だ。
夕立が言う。
「いきなり実家へ行って、留守っぽくないっぽい?」
変な日本語だな。私は応える。
「ここは田舎だからアポ無しで突然訪問しても誰かは居るだろう」
「そうなの?」
そうか、夕立は人間の文化は知らないよな。
「ああ、そういうものだ」
軍用車は高尾山を間近に見ながら、どんどん旧市街へ入って行った。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ2ん」とは
「美保鎮守府:第二部」の略称です。
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艦娘と司令の珍道中が始まる。ところが司令は、実家のお墓の場所を忘れていた。そこで夕立の提案で急きょ実家を訪問することに……。