No.90066

懐かしさと想いと

ぴかさん

過去作、失われゆく世界で現代に来てしまった、張遼こと霞の話です。

現代が舞台となっているため、過去作に合わせ原作と違って真名で呼び合っていますし、口調も異なるかもしれません。

誤字脱字報告、感想、叱咤激励お待ちしております。

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2009-08-16 21:54:28 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:10261   閲覧ユーザー数:8212

まだまだ暑さの残る残暑厳しいある日のこと。

学園近くのある道を、目立つ格好の1人の女性が歩いていた。

胸元にはさらしのみ、それ以外は袴という異質を放つその姿は、肌の露出が多い割にはいやらしさを感じさせず、それどころかその彼女の格好よさを際立たせていた。

 

彼女の名前は張遼こと霞。

董卓に仕えその後曹操に仕えた、神速の張遼と呼ばれたあの世界の武将の1人である。

彼女もまた、例の鏡の力でこの世界へと来ていた。

 

来てすぐの頃は戸惑う事もあったが、元来の馴染み易さと楽観論のおかげで現状を悪くは考えていないようだった。

 

とはいえ、一刀や華琳はおろか、一緒に来たはずの他の面々とも出会えておらずさすがの霞も不安になってくる。

そんな不安感を払拭させるがごとく、先ほどからこの近辺を歩き回っているのだが、事態を好転させる様な事はなかった。

 

霞「あかんなぁ。」

 

その日何度目か分からない弱音のような言葉を吐き、霞は近くにあったベンチに腰をかける。

なぜか持っていた瓢箪に入ったお酒を口に含み飲み干す。

熱い感触が喉から胃へと流し込まれた。

お酒の力で一瞬気が紛れるのだが、すぐに如何ともしがたい状況に戻される。

先ほどからこれを繰り返していた。

 

霞は空を見上げた。

そこには、あの世界と同じ青い空そして白い雲があった。

 

それを見ていると、気持ちが感傷に浸ってくる。

この世界に来ない方が良かったのではないか。

そんな事まで考えてしまうのだった。

 

そんな霞に黒い影が重なった。

と、同時に影の正体から声が投げかけられる。

 

??「・・・・・・霞。」

 

霞は声のした方向を向いた。

そこには、よく見知った顔があった。

 

霞「恋?」

 

腕に溢れるばかりの桃を抱え込んだ、呂布こと恋の姿がそこにあった。

 

 

霞「恋!!恋やないか!!」

 

霞は、ベンチから立ち上がり恋の腕を握る。

恋は、桃を食べつつ無言でうなずいた。

 

霞は懐かしさから、思わず涙を流し始める。

恋は、そんな霞の様子を見て聞いてきた。

 

恋「・・・霞、悲しいことでもあった?」

 

恋にそう言われ、涙を拭きながら反論する。

 

霞「ちゃうわ!!恋に会えて嬉しいだけや!!」

 

霞の言葉を理解し、手に持つ桃を霞に差し出した。

 

恋「・・・霞も食べる。」

霞「おっ、ありがとう!!」

 

霞は恋から桃を受け取り2人でベンチに腰掛け桃を食べ出した。

何口か口にしたところで霞が聞いた。

 

霞「恋、他のみんなはどないしてるんや?」

恋「・・・月も詠もねねも一緒・・・。」

霞「さよか~。」

 

みんな一緒にいると言うことを聞いて、霞は安心した。

恋にみんなのところに案内してもらおうと思ったが、恋では難しいかもと考えた時、救いの声とも言うべき声が聞こえてきた。

 

??「恋殿~!!どこにいるのですか~?」

 

遠くから見慣れた子が、声を上げながら近づいてくる。

霞は手を振りながら呼んだ。

 

霞「ねね、こっちや!!」

音々音「霞殿!?」

 

陳宮こと音々音は、恋と霞が一緒にいる事に驚き走ってきた。

 

音々音「霞殿!!」

霞「ねね!!相変わらずちっこいけど、元気そうやなぁ。」

音々音「ちっこいは余計なのです!!」

 

笑顔で再会を喜ぶ2人。

恋はその横で黙々と桃を食べていたが、その1つを音々音に渡し、食べるように促す。

 

音々音「恋殿がねねに!!感激ですぞ~!!」

 

そう言って音々音は、恋の横に座り桃にかじりついた。

桃を食べながら、色々な話に花の咲く3人(恋は相づちを打つだけ)であったが、しばらくして霞が音々音に聞いた。

 

霞「恋から聞いたんやけど、月や詠も一緒なんやて?」

音々音「そうですぞ。」

霞「他には誰がおるんや?」

音々音「桃香殿や愛紗殿達蜀の面々、あと華琳殿達、魏の面々。蓮華殿にその娘さん。それから・・・ち●こ人間もいやがるです。」

霞「そのち●こ人間っちゅーのは、なんや?」

恋「・・・一刀。」

霞「一刀の事かいな。・・・って一刀もおるんか!?」

 

一刀という名前に驚き、音々音の体を掴む霞。

音々音は突然の事に、食べていた桃を思わず落としてしまった。

 

音々音「恋殿からもらった桃を・・・。」

霞「そんなの後回しや!!ねね、そこにウチを案内せー!!」

 

いつになく真剣な表情で頼み込む霞。

音々音は、桃の事を気にしつつも霞の要求を受け入れる事にした。

 

音々音「分かったのです。ねね達の住む場所に案内するですぞ。」

霞「おーきに!!助かるわ!!」

音々音「恋殿も戻りましょう。」

恋「・・・うん。」

 

音々音の言葉にうなずく恋。

そして、持っていた桃を音々音に渡した。

 

恋「さっき落としたからもう一個。」

 

桃を渡されて感動する音々音。

 

音々音「恋殿~。そこまで恋殿はねねの事・・・。」

 

そんな感動も霞が遮った。

 

霞「ねね、はようしてや!!」

音々音「そんなに急かさなくても、女子寮は逃げないですぞ。」

 

そんな事を言いながら、3人は女子寮へと向かった。

 

 

女子寮では、一刀を中心に、桃香、愛紗、華琳、秋蘭、蓮華、白蓮、凪、斗詩が宿題をしていた。

その横では、朱里、雛里、月、詠、桂花、稟、風と言った成績優秀組が勉強できない組の面倒を見ていた。

一刀達の方は、割と進んでいたようだが、朱里達が見ている方は、なかなかはかどっていない様子であった。

 

そんな中に、本来朱里達に教わらないとまずい恋と、教える側の音々音が霞を連れて現れた。

 

霞はそんな一団の中に一刀の姿を見つけると、我先にと駆け出し後ろから抱き付いた。

 

一刀を始め、霞の突然の行動にみんなが驚き筆の動きが止まった。

 

霞「一刀・・・、久しぶりやなぁ。」

 

目に涙を浮かべ再会を喜ぶ霞。

一刀は、それが張遼だと言う事に気付きはしたが、そこまで親しかったわけではないので、どう反応していいか戸惑ってしまった。

そんな一刀の様子に霞は気付き、体を離した。

 

霞「一刀、ウチの事忘れたんか?2人で一緒に羅馬に行く言うたやんか!!」

 

ピクッ。

霞の一緒に羅馬に行くという言葉に反応する他の面々。

 

桃香「一刀さん、いつの間にそんな約束したんですか?」

愛紗「そうです!!」

蓮華「羅馬か・・・。新婚旅行というのも悪くないかも・・・。」

白蓮「北郷と2人で羅馬に・・・。」

斗詩「いいなぁ、私も行きたいかも。」

 

華琳をはじめ魏の面々は、この一刀が自分達のところに居た一刀ではないと知っているため、桃香達ほどの反応は示さなかったが、霞とそんな約束をしていたんだとビックリはしていた。

 

一刀「ちょ・・・ちょっと待ってくれ!!俺は何の事だか・・・。」

霞「言ったやんか!!ウチと戦が終わったら羅馬まで行こうって!!」

 

一刀の戸惑いに容赦なく攻撃を仕掛ける霞。

このまま見物しているのも面白いが、いつまで経っても話が進まないだろうと思い、華琳が助け船を出した。

 

華琳「霞・・・。この一刀は、わたし達の知っている一刀とは別人よ。」

霞「なんやて!?どういうこっちゃ。」

風「つまりですね・・・。」

 

華琳に代わり風が霞に事情を説明する。

霞は、その話を聞き納得した。

 

霞「とにかく、今目の前におる一刀は、うちらが知っている一刀ではないと。でも、一刀に違いはないんやろ?」

風「まあ、そうですね。」

霞「なら、この一刀に羅馬に連れてってもらえばええやん。」

一刀「えっ!?」

 

ローマに行く事は決定事項なのか・・・。

一刀は、魏にいた自分を恨みながら、この想いは無下に出来ないと腹をくくった。

 

一刀「分かったよ。今は無理だけどいつか連れて行くよ!!」

霞「ほんまか!?一刀、お前はええ男や!!」

 

そう言って、一刀に抱き付きキスを交わした。

一刀は驚いたが、なされるがままになっていた。

と、ここで黙っている華琳達ではない。

とんでもない事を言い出した。

 

華琳「あら、一刀。霞だけを連れて行くわけではないわよね?」

一刀「へっ?」

桃香「私も羅馬に行きたい!!」

 

桃香を始め、その場にいるみんながローマに行きたいと叫び始めた。

 

一刀「おい、ローマに行くのにどれだけお金かかると思ってるんだ!!」

華琳「それをどうにかするのが、男の甲斐性でなくて?」

 

笑顔だが、明らかに怒りのこもった表情で言う華琳。

収拾の付かなくなったその状況で、事態を収めるにはこれしかないと一刀は思った。

 

一刀「わかったよ!!みんなでローマに行こう!!」

 

一刀の宣言に喜び出すみんな。

そんなみんなの笑顔に癒されつつもとんでも無い事になったとうなだれる一刀であった・・・。

 

 

あとがき

 

まずはごめんなさい。

また作品のアップがだいぶ遅れてしまいました。

どうにもモチベーションが上がらず、結局こんなに時間がかかってしまいました。

 

というわけで、魏の姉さんこと霞の話でしたが、どうでしょうか?

霞は、魏のメンバーの中で風、真桜に続き好きなキャラだったので、もっと早く書くべきだったのかもしれませんが、どうにも話が思い浮かばずこんな遅くなってしまいました。

 

魏ルート最後のローマへの旅の話はどうしても入れたかったので無理矢理組み込んでみました。

あの人数全員をローマに連れて行くとなると一体いくら必要なんでしょうね?

一刀君には頑張ってもらいたいものです(笑

意外と修学旅行がローマだったりして。

それも面白いかもしれません。

 

登場人物が多すぎるので、みんなを参加させるというのは基本的に無理です。

いても空気状態になっちゃうのも仕方ないのかな。

そんな状況でもどうにかするのが、作者の腕の見せ所なんでしょうけどね。

 

次は、残ってしまっている呉のメンバーの話か、別の方の話か未定です。

楽しみにしていた某袁術ルートの方が休止されてしまったので、袁術も書いてみたい気もしています。

と言うのは、全くのこじつけですね(笑

 

次も数週間くらい間が空いてしまうかもしれませんが、見ていただけると幸いです。

今回もご覧いただきありがとうございました。


 
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