No.89596

恋姫無双 擬人劉璋伝 「災いの芽」

リアルGさん

ここにきて ようやく一刀が出て(?)きました

あんなんじゃ出たとは言わないとか突っ込まれそうですが
ここは一つ心を広くですね……
  (一刀はいいから女を出せ? もっともですなぁ)

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2009-08-13 10:21:01 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:2802   閲覧ユーザー数:2420

流星が地に落ちるのを目撃した劉焉は まず自分を疑った

現状に悲観するあまり 懸想でもしたのか……と

それとも妖にでも魅入られたのか……と

 

 

だが 確認してみると 近習の兵士達も 同様に目撃しているという

なれば いったい何が落ちたのか……

劉焉は50余の兵士達を牽き連れ 現場の確認を行うこととした

 

 

劉焉 「目的地は あの周辺だ お前達も相違ないな?」

 

 

3里ほど先を指差し 共に目撃した近習の兵士に誰何する

青い月明かりに照らされた山野は シンと静まり返り

どこまでも深く引きずりこまれそうな 不可思議な感覚を覚える

 

 

周囲を共に歩く兵士達の足音と 周囲に立ち込める濃密な土草の香りだけが

劉焉の意識を現実に繋ぎ止めた

 

 

劉焉 「この辺に落ちたとするならば 何かが あるはずだ 隊を10に分け 周囲を捜索せい!」

劉焉 「2刻後に銅鑼を鳴らす それまでに戻ってくるのだ! よいな!?」

兵士 「はっ」

劉焉 「なれば行けぃ 捜索開始だ!」

 

 

劉焉の指示に従い 兵士達が周囲に散っていく

青く染められていた森も 

今は 兵士達が掲げる松明の明かりによって 朱く染めあげられていた

 

 

パチパチパチパチ……

今夜はなぜか虫も鳴いていない

松明が爆ぜる小さな音を耳に入れながら 劉焉は先ほどの光について考えざるをえなかった

 

 

あのような光…………陽が中天にあるかのような あんな強い光は…………通常では考えられぬ

城一つに火をつけたところで あのような白き光にはなるまい

そう あれは……まるで日の光を鏡に当てたかのような烈光……星の輝きを集めた所で ああも輝きはすまい

 

 

夜の最中に どうやったら白い光を作れるのか

妖言風説を好まない劉焉の思考は いかに人為的に再現するか……その1点に絞られてきた

時を忘れるほどに 思考の世界に沈み込む劉焉…………されど その解が得られることはなかった

 

 

ジャーン! ジャーン! ジャーン! 2刻を告げる銅鑼が鳴る

おおよその時間を捉えていた兵士達は 間を空けずに集まってきた

劉焉は幾何かの期待をこめて兵士達を見回していたが やがて落胆の表情を見せる

何者も これといって持ち帰らなかったからである

 

 

劉焉 「やはり 妖にでも化かされたか……」

 

 

そう言って帰等命令を出そうと 息を吸い込んだ時だった

 

 

兵士 「あ、あの……劉焉様」

劉焉 「帰と……(はぁぁ)……なんだ?」

兵士 「まだ1部隊 戻ってきていない者達がおりまして……」

劉焉 「指示を聞いていないものでもおったか……?」

劉焉 「監督がなっておらぬぞ!」

 

 

まとめ役の兵士に叱責を飛ばす

口では文句を言いつつも 心の内では その遅れてくる部隊に期待を寄せている自分がいた

 

 

 

 

 

 

まとめ役の兵士に叱責を飛ばす

口では文句を言いつつも 心の内では その遅れてくる部隊に期待を寄せている自分がいた

 

 

まったく ワシはいったい何に期待をしているのか…………我ながら呆れたものよ

 

 

しばらく待つと こちらに向かう数名の足音が聞こえてくる

遠目に見ると 一人の兵士が 誰かを背負っているように見受けらる

 

 

劉焉 「遅いぞ! 何を手間取っておった!」

兵士 「はっ もうしわけございません!」

兵士 「捜索を続けておりましたところ 川原で倒れている者を見つけました」

兵士 「見捨てるのも忍びなく 保護してまいったしだいであります!」

 

 

劉焉は兵士に背負われている男を見て 軽く目を見張った

傍目で見てわかるほどに その男は上等そうな衣服を身に付けている

雑に背負われて 歩いてきたわりに目を冷まさない所を見ると 意識を失っているのか

垣間見える横顔は歳若く 元服を迎えた三男と同じくらいに見えた

 

 

劉焉 「流星の欠片は微塵もなく 若造が一人倒れておっただけ……か」

兵士 「はっ ……しかしながら この者の格好……」

劉焉 「ふん……上等なものを着ているな どこぞ豪族の子弟か」

劉焉 「山奥に閉じこもった田舎者が絹を羽織るとは……生意気なことよ」

 

 

先の豪族達との会談が尾を引いているのか 劉焉が吐き出す言葉には辛辣な棘があった

 

 

兵士 「それなのですが 劉焉様」

劉焉 「なんだ?」

兵士 「この者の服ですが 絹ではないような気がいたします 手応えが強いと申しますか……」

劉焉 「なに?」

 

 

劉焉も歩み寄り若者の服に直に触れてみる そして その感触は今まで味わったことのないものだった

絹というには 生地の編みこみが粗い だが ザラザラするのかと思うとツルツルしている

色合いは純白で

帝に捧げられる最上質の絹のようにツヤツヤと光を照り返し 何よりも厚みがあって丈夫な感じがした

漢の邑の何処にいったとしても お目にかかれない………………劉焉はそう確信した

 

 

劉焉 「普通の服のように見えてしまうが……」

劉焉 「見れば見るほどに この世のものとは思えん」

 

 

服の合わせ目にあるジッパーに指で触れながら 茫然と言葉を漏らす

 

 

劉焉 「いったい 何処の職人が この金細工を作ったのだろうか……」

劉焉 「奇妙な形状をしている……胴体の中央を守る鎖……というわけでもなさそうだな」

 

 

劉焉は この気を失っている不可思議な若者を連れて帰る事に決めた

光和6年(183年)の秋 一刀と劉焉 これがその初顔合わせであった

 

 

 

 

 

 

ところ変わって  益州 巴郡 安漢県

 

 

 

?? 「さぁて そろそろ焦れて 無理難題を突きつけてくる頃であろうな」

 

 

豊満な肉体をたたえた女性が 面白おかしそうに悪態をついた

 

 

?? 「もともと 中央の官吏なんかに 仕切れるわけがないですよ」

?? 「シッポを丸めて さっさと逃げ帰ればいいんです」

?? 「わっはっはっ ……まぁ そう言ってやるな焔耶 あの御仁も宗室の誇りというものがあろうて」

焔耶 「宗室が何だって言うんですか いたところで毛ほどの役にも立たないじゃありませんか!」

 

 

焔耶と呼ばれた少女が怒りをあらわに言葉を発する

皇族の批判は下手をすれば命にかかわる それなのに彼女は轟然と言ってのけた

度胸があるのか 無鉄砲なのか…………少なくともその胸は 豊かな量感を持ちあわせているようだ

 

 

焔耶 「だいたいにして 欲の皮が突っ張った豪族共が中央の権威くらいで動いてくれたら……」

焔耶 「我等だって苦労はしていませんよ!  桔梗様だって そう思っておられるのでしょう!?」

 

 

ふふふw 我が配下ながら気骨の激しいことよ

 

 

桔梗と呼ばれた女性が さも面白そうに焔耶の表情を眺めている

西瓜のように大きく豊かな胸を持つ美女は その背に無骨な鋼鉄の塊を背負っていた

腰に下げた酒徳利は胸に負けないほど大きく 濃厚な酒精の香りを漂わせ

重量があるであろう大徳利を容易に口元まで掲げ上げ こっくりこっくりと音を立てながら喉に流し込んでいく

 

 

桔梗 「んくっ んくっ んくっ んくっ …………ぷはぁーっ!」

桔梗 「ふ~……まぁ ここで吼え続けておった所で 何も変わりはせんだろうよ」

焔耶 「また桔梗様はそんなことを!」

 

 

少女の激情を表すかのように 短く切りそろえた黒髪が 天に向かって逆立っている

手甲を嵌めた腕を大仰に振り回しながら 桔梗の傍へと詰め寄ると

桔梗ほどではないものの 豊かな胸が弾けるように揺れた

 

 

焔耶 「あんなやつ さっさと追い出してしまえばいいんです!」

 

 

その時 彼女たちのいる天幕に 緑色の着物を身に纏った女性が入ってきた

桔梗に負けないほど豊かな胸 それを揺らしながら現れた女性は 背負っていた長弓を傍らに立てかけた

彼女はどこか困ったような それでいて妖艶な そんな笑みを浮かべ 小声で焔耶に注意を促す

 

 

?? 「だめよ? 焔耶ちゃん そんなことを大声で言っちゃ…………声が外まで聞こえていたわよ?」

焔耶 「し、紫苑様!」

桔梗 「おお 紫苑か! 戦場で顔を合わせるのは何時以来であろうな」

紫苑 「クスッ 変わらないわね 桔梗 ……焔耶ちゃんも元気そうでなによりだわ」

 

 

そう言うと紫苑は満開の花のような笑みを浮かべる

同じ女なのに私とはこうも違うのか…………焔耶はその微笑みに憧憬の想いを浮かべた

 

 

なんだ?……焔耶のやつめ 女色の趣味があったとはなぁ 惚けた表情をしおってからにw

 

 

女の盛り…………そう表現していい美女が3人並んで立っている いずれも名の知られた武将ばかりだ

美しくも猛々しい 彼女達の名は……

先にいた二人の内 目上に立っていたのが厳顔 そして魏延文長 後から入って来たのが黄忠漢升

いずれも益州に名を轟かす勇将であり 将兵が高い忠誠を捧げる良将でもあった

 

 

焔耶 「そろそろ 放っていた斥候が戻ってくる頃です」

焔耶 「私は表に」

桔梗 「ああ……頼んだぞ? 焔耶」

 

 

桔梗は鷹揚に頷いて 彼女の背中を見送った

 

 

 

 

 

 

益州は巴郡の邑 安漢

この邑の周囲で民衆の暴動が繰り返し起こっていた

暴動が起こるたびに 軍を派遣し鎮圧し 再び起こっては鎮圧し 暴発するのを防いでいた

群衆よりも多い数の兵で囲んで威圧するやり方では 民衆に憤懣が残る

かと言って なだめすかし懐柔してみても 生活内容が変わらなければ 同じことはまた起こる

 

 

贅沢に溺れ 民衆を省みようとしない豪族達は 民衆を治めることよりも自己の満足を優先させたがる

暴動を治めようにも それを成すために必要な条件がまったく揃っていなかったのである

 

 

民衆に手をかけることを嫌った厳顔達は 群衆が現れる度に東奔西走し

事を治めるようと努力していたが……暴動に参加する民衆の数は日を追うごとに増えていき

ついに 本格的に軍を持ち出す事態にまで発展してしまった

 

 

桔梗 「して……紫苑よ 手勢はどれくらい率いてきた?」

 

 

笑みがたえない美しい面立ちに 一抹の影が落ちた

口元に寄せた右の人差し指を唇におしあてる

力なく八の字にさがった眉が よろしくない知らせであることを雄弁に物語る

 

 

紫苑 「私が治める邑の周りも情勢が不穏になってきてしまって」

紫苑 「1万は守備にまわさざるを得なかったわ 連れてこれたのは歩兵5千と弩兵5千 総勢1万よ」

桔梗 「そうか……ワシのところも似たようなものだ こちらも同様に5千と5千……併せて2万か」

 

 

報告にあった群衆の数は それよりも多い

それほどまでに 民衆は今の生活に不安を抱き 搾取するだけの支配者たちに怒りを覚えているのであろう

 

 

事態は日を追うごとに逼迫したものに変わってきている

桔梗は かろうじて保てていた益州の統治に 大きな亀裂が走ったのを感じた

 

 

桔梗 「いよいよ…………実力を持って押さえに行くことになるやも知れぬな」

桔梗 「いずれも窮状にあえぐ者達ばかり…………刃を向けたくはなかったのだが」

紫苑 「そうね…………もっとわたくし達に力があればよかったのだけれど……」

 

 

二人の顔に強い悲しみの表情が浮かぶ

餓えに餓え 手を上げ助けを求める臣民たちを殺すことになるかもしれない

心中が鉛を飲んだように重く感じられるのだった

 

 

…………民衆達のなんと哀れなることよ……ワシは……民草を討たねばならぬのか……?

 

 

そこへ焔耶が駆け込んできた

 

 

焔耶 「桔梗様! 斥候よりの報告がまいりました!」

桔梗 「来たかぁ! 焔耶ぁ!」

桔梗 「して? 状況はどのようになっておる?」

焔耶 「はっ! それなのですが 群衆の数はおよそ5万! しかも今回はいつもと様子が違うようです!」

桔梗 「様子が違う…だと?」

 

 

そう問うと桔梗はいぶかしげな表情を浮かべる

焔耶の顔には危機感があふれていた

あきらかにただ事ではない…………桔梗と紫苑 その背に冷たい汗が流れた

 

 

 

 

 

 

天和 「るんるるんるる~ん♪」

?? 「お ご機嫌だね 天和ちゃん」

天和 「うん! だって曼成さんのおかげで 旅がとっても楽なんだもん」

 

 

お日様も気持ちい~し 馬車に乗ってとーっても楽ちんだし なにか良い事がありそうだよねぇ

 

 

傍らで横になっている愛する姉妹を横目に 天和は幸せを噛み締めていた

今の心根の軽やかさならば 天高くどこまでも飛んでいけるに違いない

そう確信できるほどに この上なく浮かれていた

 

 

次はどういうとこで公演できるかなぁ?

おねーちゃん 美味しいものが食べられる場所がいいなぁ

 

 

天和が歌う 澄みきって伸びやかな歌声に天和の心が映える 胸いっぱいの幸せが穏やかな風に乗って響き渡った

 

 

 

ここは荊州 襄陽郡

恵まれた天候の中 馬車の荷台の上では 天和が気持ち良さそうに揺られている

 

 

商団と共に益州の漢中郡を抜け 長安に入り そこから洛陽へ

洛陽でしばし過ごした後に 進路を南にとって荊州に入った

 

 

商団に便乗しながら行った公演は 何処に行っても好評で

三姉妹の存在は 庶人を中心に広く伝播し 大陸中に後援者を作りつつあった

 

 

曼成 「天和ちゃんの歌声は 聞いているととても心地よくなるな」

天和 「んふふ~ ありがと~」

曼成 「次は江夏って所に行くんだ 商いが終わったら準備を手伝ってあげますよ」

天和 「えー いいんですかぁ?」

曼成 「俺たちはもう 天和ちゃん達の歌に惚れこんでいますからね 遠慮せずに使ってください」

天和 「わーい 曼成さん大好き~」

曼成 「ぐほっ! そ、そう言っていただけると……うは……うはははははははは!」

団員 「……(アニキ…………独り占めはご法度ですぜ…………)」

 

 

悠久なる大河 海とも見まがう大河川の上で 船に揺られながら曼成は考える

 

 

曼成 「…………はぁ 天和ちゃん 最高すぎる………………」

団員 「……(ダメだこの人 早くなんとかしねぇと……)」

 

 

商団の中から竹簡の帳簿を抱えた男が曼成に近づいてきた

 

 

?? 「……アニキ……アニキ!」

曼成 「ふぉぉっ!? …………なんだ趙弘か 嚇かすな」

趙弘 「なんだじゃないですよ……どうすんですか? これから」

 

 

曼成達の商売は上手く行っていなかった

 

 

益州より南へ下り南中に入り そこに住む諸部族たちと交流して鬱金(ウコン)を買い付ける

それを黄色の粉末状に仕上げて 染料や美容の薬として好事家たちに売りさばく

黄色い色合いは皇族のような身分の高いものにのみ認められた色で

食用に使う以外にも 傷薬や肌のパック剤として富裕層に好まれている

(体毛の伸びを抑え、肌に潤いを与える効果があると考えられていた)

 

 

始めたころは面白いように儲かっていた……だが客層が上流階級であることが災いしてしまった

強欲な支配層の人間が職権を振りかざし 安く買い叩こうとしてくるのだ

 

 

これでは売るに売れない

 

 

大量の在庫を抱えたまま 曼成たち商団の路銀が尽きようとしてる

頭を突き合わせ ない知恵を絞っている曼成たちのところへ 張三姉妹が様子を伺いにやってきた

 

 

天和 「曼成さーん お顔が暗いよ~? 大丈夫~?」

地和 「辛気臭い顔をしてたら 運が逃げていっちゃうわよ」

 

 

曼成 「ああ 心配させちゃって悪いね 天和ちゃん」

人和 「…………お仕事が上手くいっていないんですね?」

曼成 「( はぁ~) ……どこもお偉いさんは金払いが悪くてね」

 

 

曼成は自嘲的な笑みを浮かべた

 

 

曼成 「ま こちらはこちらでなんとかするさ」

曼成 「天和ちゃん達は心配なんかしないで いつもどおり心地よい歌を聞かせておくれよ」

人和 「私たちの手伝いとか……負担になっていませんか?」

曼成 「なに言ってんだよ! こちとら楽しくてやってるんだぜ? 負担なんて感じちゃいないよ」

曼成 「同じ張の名を冠する友達じゃないか 水臭いこと言わないでくれよ」

 

 

江夏で船を下りた曼成達は 知り合いの好事家や邑の名士の所をまわり 商売にいそしんだ

しかし 高価な鬱金に大枚を叩く人間など存在せず 他と同様 権力を傘に安く買い叩こうとする者ばかりだった

そろそろ食い物を手に入れるのも難しくなる 曼成達は言いようのない怒りを覚え始めた

 

 

趙弘 「アニキ……真面目に これからどうするよ?」

曼成 「…………そんなの俺にもわからねぇよ…………」

 

 

曼成は地面に胡坐を書いて周りを見回した

みな悄然とした表情で地べたに座り込んでいる

曼成の後につき各地を旅してまわった舎弟共は どいつもこいつも どうしようもない荒くればかりだった

それがどうだ……みな一様に項垂れ 死んだような眼つきをしている

 

 

このままじゃダメになる…………せめて気持ちだけでも奮い立たせてやらねぇといけねぇな…………

 

 

 

 

 

 

このままじゃダメになる…………せめて気持ちだけでも奮い立たせてやらねぇといけねぇな…………

 

 

まがいなりにも 率いるものとしての自尊心がある

なにか……何かないのか? そう自問する曼成の耳に 遠くから歌が流れてきた

数ヶ月に渡り共に歩み 常に耳にしてきた天使の歌声

 

 

そうだ…………考えてみりゃぁ商売のついでばっかりで まともに聞いたことなかったな…………

俺たちは みんなあの娘たちに惚れこんでいる…………公演を聞けば元気が出てくるかもしれねぇ

 

 

曼成はみなに告げた

 

 

曼成 「決めた……ここでウジウジしてても始まらねぇ……一度まっさらに戻して また初めっからやり直そうぜ」

趙弘 「アニキ……」

曼成 「なんだなんだぁ どいつもこいつもシケた面しやがって……」

曼成 「今の商売は終わり! 最後の大盤振る舞いだ! 有り金はたいて天和ちゃん達の公演を見に行くぞ!!」

 

趙弘 「…………ああ……いいな! アニキ!」

曼成 「おうよ! テメェ等 気合い入れやがれよ!」

団員 「…………こうなったら 心底楽しませてもらいますよ!」

 

 

こうして曼成達は 初めて まともに張三姉妹の公演を味わった

そこで彼等が目にしたものは 熱狂的な聴衆の熱気が渦巻く混沌の坩堝だった……

 

 

舞台の上で三姉妹がみなに呼びかける

 

 

天和 「みんな大好きぃ?」

男達 「天和ちゃーん!!!」

 

地和 「みんなの妹!」

男達 「地和ちゃーん!!!」

 

人和 「とっても可愛い?」

男達 「人和ちゃーん!!!」

 

男達 「ほわっ! ほぉぉぉぉっ ほぁぁぁぁぁぁっ!」

男達 「ほわっ ほうっ ほうわああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

設営の準備をしたことはある 遠めに聞いたこともある

だが 会場で聞く 味わう 体感する興奮は今まで生きていて一度も感じたことのないものだった

 

 

曼成 「これは…………こんなにも……スゲェ……」

趙弘 「アニキ……地和ちゃん達 スゲェ楽しそうだぜ」

団員 「お、俺達も 負けないように声だしましょうよ!」

曼成 「当然だ! 俺達こそが 一番最初の後援者なんだからな!」

曼成 「うおぉぉ…… ほっ! ほうっ ほうああああああああああああああああああ!!!」

団員 「ほわあああああああああああああああ!!!」

 

 

曼成達は魂から声を出し 生まれて初めて感じる興奮の坩堝に身を投じた

なにもかもが堪らなかった! 心地よい歌声に聞きほれた! 聴衆達との一体感は何もかもを忘れさせた!

目から正気の光が途切れかけ……心の中から己という概念が消えかけた まさにその時

曼成達の運命を分かつ出来事が起こった

 

 

男  「おいっ! おいっ! そこのアンタ!」

 

 

その男は曼成に掴みかかり 激しく揺らして己を主張した

 

 

曼成 「うぉっ! なんだ?テメェ! いいところを邪魔するんじゃねぇ!」

男  「邪魔なんざしねぇ! それよりアンタいいもの持ってるじゃないか!」

 

 

耳をもつんざく歓声の中 二人は怒鳴りあいながら会話を続けた

 

 

曼成 「いいものだとぉ!? いったいぜんたいなんのこった!?」

男  「これだよ! これ! コイツを俺に売ってくれ!」

 

 

男が手に掴み 主張したその「いい物」とは

曼成が染料を売りさばくために見本として用意していた黄色い布だった

男は曼成の手から布を奪うように取り上げ こともあろうか己の財布をまるごと曼成に叩きつけた

 

 

男  「人和ちゃんの色だ! コイツが俺がもらうぜ!………………うおおおおおおおお!!」

 

 

男は狂ったように黄色い布を振り回し 己の存在を三姉妹に訴えかける

こいつ……人和ちゃんに惚れこんでいるのか…………男の財布を握り締めたまま 曼成は舞台の上に目を戻した

そこでは張三姉妹がいつもの装いで 所狭しと踊りまわり 歌声を響かせている

彼女達が 髪に手首に胸元に 身につけている黄色いリボン……あれは曼成達が少しでも華やかな彩りになればと

手持ちにあった上等な布地に鬱金の染料を使って 仕上げた物だった

 

 

曼成 「これはいける…………いけるぜ」

 

 

旅する間 心を和ませてくれた天使の歌声の持ち主たちは 商売の上でも 曼成たちを救う天からの使いであったのだ

 

 

地和 「さぁみんな! みんなで天下を取るわよぉ!」

 

 

なにげない みなの発奮を促す呼びかけが 民衆の心に希望という名の炎を灯した

 

 

次の日………………

 

 

曼成 「趙弘! 韓忠! 布地だ! 布地をあるだけ掻き集めて来い!」

曼成 「孫夏! 染料の用意だ! 斑なく染め上げるからな! ぬかるなよ!」

 

 

趙弘 「あ、アニキ…………いきなりどうしたんだ?」

曼成 「新しい商売だ! つべこべ言わずに動きやがれ!」

 

 

みなは何が曼成を駆り立てているのか よくわからなかった

だが 俺たちのアニキが燃えている それは何よりもみなを奮い立たせた

 

 

この後 彼等は手に大量の黄色い布地を抱えて 国中に散っていった

趙弘が益州に 韓忠は涼州に 孫夏は揚州に向かった

張三姉妹と共に冀州方面に向かった曼成は 豫州で波才という男と意気投合し

その人脈を伝って さらに広い範囲で販売を行った

 

 

張三姉妹に惚れこんだ人々は

会員証の代わりともいえる黄巾 張三姉妹色(黄色く)に染め上げた鎧などの嗜好品を買いあさる 

曼成達 商団の仲間が再び合流したとき 彼等はすでに莫大な資金を稼ぎ出した

資金を元に三姉妹を支援し さらに後援者を獲得し さらに販売網を広げる

曼成たちの商売はこれ以上ない流れに乗っているかに思えた

 

 

だが しかし この流れは最悪の形で途切れることになる

 

 

もともと お金を持っていなかった民衆たちである

莫大な資金 それに貢献した会員たちは空になった懐を暖めるために影で略奪を行うようになった

やがて その中に匪賊がまざりはじめ 略奪行為そのものを隠さなくなるようになってくる

 

 

三姉妹を巻き込み 三姉妹の手を離れ 三姉妹を頂点とした衆愚の暴乱が始まった 

 

 

世に言う黄巾の乱の始まりである

 

 

 

 

 

 

うぉぉぉぉ! 投降すること3回目  ようやく一刀が出てきたよ おとっつぁん

 

 

 

                  ………………それは言わない約束でしょ?(ダマレ

 

 

 

 

1本に納める筈が 2本になって……んで 3本目に続く

 

劉焉が益州に~から 一刀と劉焉の会話が云々まで一つに納める予定でいたんじゃが

 

文才がないと こうも上手くゆかないものなのですな~

 

 

他のSSをもっと読み漁って 勉強してきまっす  スタタタタタッ(((((((((((_´Д`) アイーン  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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