No.895213

珈琲狂想曲-時空を超える者・外伝-

こしろ毬さん

やっとできました、久しぶりの「時空を超える者」外伝。雪ちゃんにコーヒーの淹れ方をレクチャーする佑。

雪ちゃんのコーヒーの味ってどんなんだ…??と色々憶測してみましたが、旧作でも2199でも「吹き出してしまう」という反応なら、もしかして苦いのかな…?と思いまして。
ネットの情報や昔喫茶店でアルバイトをしたことがある母の経験から聞いて、原因はこれかなと私なりに考えて描いてみました。
そうじゃない場合もあるかもですから、あくまで私の想像ということで。

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2017-02-27 18:31:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:993   閲覧ユーザー数:993

ヤマト第一艦橋メンバーが各々に過ごしている時。

「佑介くん、ちょっといい?」

生活班長でレーダー手でもある森雪が、自分の席から立ち上がって手招きする。

「なに? 雪さん」

戦闘班長・古代進や航海長の島大介らと談笑していた土御門佑介は、目を瞬かせながら振り返る。

「時間があるなら、お願いしたいことがあるんだけど…」

少し躊躇気味に言われ、佑介は。

「時間って…。俺、業務らしいことはやってないからいつでも大丈夫だよ」

苦笑を浮かべて答えると。

「そう? じゃ今から食堂に行きましょ」

「食堂?」

雪の言葉に、目をぱちくりさせる。すると、

「あ、じゃ古代さんも行こ?」

「え? 俺も?」

ひょこっと顔を覗き込むように言う佑介に、少し面食らった表情になる。

「だめ?」

首を傾げる仕草が年相応に幼くて。

「いや、だめって訳じゃないが…。今は割と落ち着いてるし」

「じゃあ行こうよ。雪さんもいるし、ねっ」

「お、おい、こらっ佑介!」

半ば引っ張られるように歩き出す進。だがその表情は笑っていて。

雪とともに第一艦橋を出て行った。

 

「…佑介もだいぶ、甘え上手になったなあ」

くすくす笑いながら技師長の真田志郎が言うと、

「なんだかんだ言って、古代さんも嬉しそうでしたしね」

「でも、本当に甘えるとこでは甘えてくれないって言ってたなあ、古代のヤツ」

相原の台詞に、島も苦笑いを浮かべている。

 

進と雪とともに、佑介がヤマト食堂に向かうと。

「平田さん、準備できてます?」

「ええ、いつでも始めて下さい」

雪の問いかけに、生活班・炊事科の平田一はその温和な顔を綻ばせる。隣にはチーフの幕之内勉もいた。

「雪さん、いったい何を…」

頭の中で疑問符が飛び交っている佑介は、思わず声をかけた。

「実はね、佑介くんにコーヒーの淹れ方を教えてもらおうと思って」

肩をすくめて笑う雪だ。

 

「…じゃあ。どんな感じなのか知りたいから、雪さん淹れてみて?」

佑介の台詞に、進や平田たちが「げっ」という顔つきになっているのは気のせいではあるまい。

進がすかさず佑介の許に歩み寄って、

「ゆ、佑介…。それはやめといたほうがいいぞ」

こそっと耳打ちする。

「なんで? 古代さんたちも雪さんのコーヒー飲んでるんでしょ」

不思議そうな表情の佑介。

「そ、それは~…」

どう答えたらいいか、引きつった笑みになってしまう。平田と幕之内も苦笑いだ。

その横で、雪はいつものようにコーヒーを淹れていく。

「…はい佑介くん」

コーヒーを差し出され、佑介はその口につける。

進たちはヒヤヒヤしながら見守っていた。

 

「………」

 

無表情の顔。だがしかし…

 

(…どう淹れたら、こういう味になるんだ…?)

 

佑介がそう思っていることは誰も知らない。

 

「え~っと…。平田さん、新たに用意してくれますか」

変わらず苦笑を浮かべつつ、平田がドリップペーパーなどをセットしなおす。

そこに挽いてあったコーヒー豆を必要量分入れ、軽く振って平らにし、

「雪さん。まずはお湯を注ぐんだけど、初めは蒸らしてるよね?」

佑介が確認するように尋ねれば、返ってきた答えは。

「え、コーヒーも蒸らすの?」

 

……ここに1つ目の原因発見。

 

「お茶と同じだよ。蒸らすことでコーヒーの成分が充分に抽出されるんだから」

苦笑を浮かべながら、ペーパーを濡らさないように真ん中に細くお湯を4回ほど円を描くようにかける。

そうするとコーヒー豆がふんわりとドーム状に膨らむ。そのまま30秒ほど置く。

 

「…もういいかな。コーヒーを抽出する時、雪さんどうしてるの?」

「どうって、真ん中から円を描くようにだんだん外側に注いでるわよ?」

その答えに佑介は笑顔になり。

「正解」

注ぎ方は問題なさそうだなと思っていると。

「…そういえば森班長、沸騰したばかりのお湯を注いでますよね」

平田が思い出したように言う。

 

…ここにも2つ目の原因が。

 

(なるほど…。だからあんなに苦味が強かったんだ)

旨みのある苦さではなく、口に残るような、あの何ともいえない苦さ。

佑介は思わず、脱力気味に乾いた笑みを浮かべてしまう。

雪と反対側の佑介の隣にいる進も、ただ苦笑いをするしかない。

「頑張れ」と言うかのように、ぽんぽんと佑介の頭を軽く叩いて。

「だって、やっぱり熱めの方がいいでしょ?」

ちょっときょとんとした表情で言う雪。

「うん。でも沸騰したお湯はコーヒーのエグ味が出ちゃうんだよ」

コーヒーを抽出しながら、持っているポットをかざして、

「沸騰したお湯を何回かポットに移し替えると、少し冷めてちょうどいい温度になるから」

「どのくらいの温度なんだ?」

「だいたい、85~90℃くらいかな。1回で約5℃くらい下がるから、3回でいいと思う」

感心したように尋ねる進に答える。

「それか、沸騰してから数分くらい置いておくと、やはり85℃くらいになるから。あとは、こうして周りに1センチくらい余白を開けて泡立つようにお湯をかけていくだけ」

「この泡が、コーヒーの雑味などを止めてくれるからね」

平田の言葉に頷く佑介。

そうして、人数分の量のコーヒーが出来上がるかという時。

「ここが肝心だよ。コーヒーは全部落とし切らないこと」

言いながら、コーヒーが滴るドリッパーを素早くどける。

「あらどうして? 私そうしてたわ」

 

…3つ目の原因発覚。

 

「全部落とすつもりでやると、さっき平田さんが言った雑味も一緒に入っちゃうんだ」

出来上がったコーヒーをカップに注いで。

「…ということで、どうぞ」

進たちに渡していく。

 

「…うん、やっぱり美味いな」

一口飲んで進が言う。平田と幕之内も頷き合っている。

「…じゃ、次は雪さんがやってただろう方法でやってみるから」

ちょっと悪戯っぽい笑みの佑介。

話を聞いた限り蒸らしはしてない、お湯は沸騰直後、コーヒーは最後まで落とし切るというのを想定して淹れてみる。豆もさっきと同じもの。

 

「はい古代さん。飲んでみて?」

「え」

佑介にコーヒーを差し出され、妙に引きつった笑みを浮かべてしまう。

恐る恐る、口にする…が。

「………」

だんだんと、苦虫を噛み潰したような顔になる。

「やだ古代くん、そんなに?」

進の手からカップを取り、雪も飲んでみる。

「…こんな味だったのね、私のコーヒー…」

進と同じ表情になってしまう。

平田と幕之内は「ははは…」と乾いた笑みを浮かべるしかない。

 

「じゃ、実演も交えて教えたから。今度は雪さんひとりでやってみてね」

にっこり笑顔の佑介に、

「え? ちょっ、ちょっと待って!」

いささか焦り顔の雪だ。

「お願い。やってみるからもう1回だけサポートしてっ」

手を合わせて懇願するも。

「…そんなんじゃ、古代さんと結婚してもいつまでたっても美味しく淹れられないよ?」

さらりと言われ、顔に朱を走らせる。

「…ゆ~すけ~…」

こちらも僅かに赤らめつつ、じと目になる進だ。

そんなふたりが、年下ながら可愛く見えて。

くすりと思わず笑ってしまった。

「…しかたないなあ~、1回だけだよ」

「ありがとう佑介くんっ! 恩に着るわ」

溜め息混じりで言えば、雪がしっかと佑介の両手を握る。

その日は1日、ヤマト食堂では佑介と雪の声が響いていたそうな…。

 

「平田…。雪のやつ、うまくなると思う?」

「佑介くんがみっちり鍛えてるからなあ…。希望を持つしかないな」

ふたりの様子に、何ともいえない表情の古代くんと平田さん。

 

果たして、雪ちゃんがコーヒーを美味しく淹れられるようになったかどうか…。


 
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