No.894851

英雄伝説~灰の軌跡~

soranoさん

第11話

2017-02-25 01:20:33 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1891   閲覧ユーザー数:1614

同日――――8:50

 

エレボニア帝国クロイツェン州―――”翡翠の公都”バリアハート市

 

~アルバレア公爵城館~

 

「公爵閣下!ユーシス様!大変です!」

朝食を終えたユーシスが父親であるアルバレア公爵と共に公爵家の仕事の一種である書類整理を始めようとしたその時、クロイツェン州の領邦軍の兵士が血相を変えて部屋に入って来た。

「朝から騒々しいぞ!しかも入室の許可も聞かずに入室するとは不敬であるぞ!」

「閣下達に対する不敬、誠に申し訳ございません!ですが緊急事態の為、ご容赦下さい!」

「緊急事態だと……?一体何があった。」

アルバレア公に怒鳴られた後謝罪して答えた兵士の話が気になったユーシスは兵士に問いかけた。

「ハッ!北クロイツェン街道を哨戒している部隊より緊急の報告がありました!ケルディック方面よりメンフィル帝国軍がこのバリアハートに向かって進軍中との事です!」

「何だとっ!?」

「!!…………やはり恐れていた事態が起こってしまったか………」

兵士の口から出た驚愕の報告を聞いたアルバレア公爵は血相を変え、目を見開いたユーシスは辛そうな表情で肩を落とした。

 

「おのれ……!何故メンフィル帝国が突然このバリアハートに―――いや、宣戦布告もせずにエレボニア帝国を攻めて来たのだ……!?」

「本気でおわかりにならないのですか、父上!?メンフィル帝国がこのバリアハートに―――いえ、エレボニア帝国に侵攻してきた理由はユミルの件しか考えられません!」

メンフィル帝国が攻めてきた理由が理解できていない様子のアルバレア公爵を見たユーシスは真剣な表情でアルバレア公爵を見つめて指摘し

「ふざけたな事を言うなっ!?たかが辺境を襲撃されただけで戦争を仕掛ける等普通に考えてありえん!」

ユーシスの指摘に対してアルバレア公爵はユーシスを睨んでユーシスの推測が間違っている事を指摘した。

「現に今こうして、メンフィル帝国がこのバリアハートを攻めてきているではありませんか!何度もメンフィル帝国に謝罪や賠償をすべきと助言させて頂いたのに、何故父上は聞く耳を持ってくれなかったのですか!?」

「貴様……!」

ユーシスの正論に反論できないアルバレア公爵はユーシスを睨んだが

「公爵閣下……口論中にさしでがましいですが、今はこのバリアハートに進軍してきているメンフィル帝国軍の対処かと思われます。」

「ええい、そのくらいの事は私もわかっている!すぐにオーロックス砦に援軍の要請をしろ!それと北クロイツェン街道にバリアハートの防衛部隊を展開しろ!」

「ハッ!」

執事からの指摘を受けるとユーシスとの口論を中断して兵士に指示をした。

 

~北クロイツェン街道~

 

「き、来た……!」

「あ、あれがメンフィル帝国軍……!」

「な、何て数だ……」

「俺達だけで防げるのか……!?」

「そ、それよりも連中がケルディック方面から進軍してきたって事はケルディックにいる防衛部隊の仲間達は………」

領邦軍が防衛陣を築いて迎撃態勢を取っているとメンフィル帝国軍が現れ、メンフィル軍の登場に領邦軍は恐怖を感じたが

「狼狽えるな!我等には”機甲兵”がある!それにオーロックス砦からの援軍も加われば、例えメンフィル軍と言えど敵ではない!返り討ちにしてやるがいい!」

「イエス・コマンダー!」

司令官の激励に気を取り直して戦闘態勢に入った。

 

「総員、戦闘開始!メンフィルの怒りと力、愚かな貴族連合軍共に死をもって思い知らせてやれっ!」

「このバリアハートを貴族連合軍の兵士達の血で真っ赤に染めてあげなさい!」

「オォォォオオォォォォォォオオオォォッッッ!!!!」

一方メンフィル軍はサフィナとレンの号令によって士気を高めて領邦軍へと突撃し

「くふっ♪それじゃあエヴリーヌ達も始めようっか♪」

「ふふっ、今度の戦の将の首は私がもらうわよ!」

メンフィル軍に続くようにエヴリーヌとセオビットもそれぞれ領邦軍目がけて飛行して戦闘を開始した!

 

「―――お、応答せよ、応答せよ!こちらバリアハート東口方面部隊!」

メンフィル軍と領邦軍がぶつかり合ったその時司令官の通信機に通信が入った。

「む……!?なんだ、こんな時に!!」

「オーロックス峡谷方面の哨戒部隊より緊急報告――――オーロックス峡谷よりメンフィル帝国軍がバリアハートに向かって進軍中!オーロックス砦は既にメンフィル帝国軍によって占領された模様!」

「な、何だとぉっ!?」

突如来た通信の内容を聞き血相を変えて声を上げた。するとその時戦場の上空をカレイジャスが飛び去ってバリアハートへと向かって行き

「あら?確かあの飛行船は………―――なるほどね。うふふ、まさかこのタイミングで姿を現すとはね。果たしてシグルーンお姉さん達の目をかいくぐって大切なクラスメイトをバリアハートから連れ出す事ができるかしらねぇ?」

カレイジャスに気づいたレンは目を丸くしたがすぐにカレイジャスがバリアハートに向かった理由を察すると意味ありげな笑みを浮かべた。

 

~オーロックス峡谷~

 

「総員、戦闘開始!メンフィルの同胞達に手を出した愚かなアルバレア公に従う愚か者達を根絶やしにしてやれっ!」

「メンフィルの兵(つわもの)共よ!次代のメンフィルの皇帝たるリフィア皇女殿下に絶対的な勝利を捧げよっ!」

「オォォォオオォォォォォォオオオォォッッッ!!!!」

「ハハハハハハッ!絶対的な強者たる”魔神”の力、死を持って思い知るがいいっ!」

一方その頃オーロックス砦から進軍してきたメンフィル軍もリフィアとゼルギウスの号令によって士気を高めて領邦軍へと突撃し、ディアーネは凶悪な笑みを浮かべて声を上げて笑った後領邦軍へと突撃した。

「な、なななな、何でオーロックス砦からメンフィル軍が来るんだ……!?」

「ま、まさか……オーロックス砦がメンフィル軍に占領されてしまったのか!?」

「狼狽えるな!我等には”機甲兵”がある!宣戦布告もせずに仕掛けて来た卑劣な簒奪者共に誇り高きクロイツェン領邦軍の力を思い知らせてやれっ!」

「イ、イエス・コマンダー!」

オーロックス方面からメンフィル軍が進軍してきた事に混乱していた領邦軍だったが司令官の号令によってすぐに気を取り直してメンフィル軍との戦闘を開始した!

 

~バリアハート市内~

 

それぞれの戦場で戦闘が始まっているその頃バリアハート市内の上空に到着したカレイジャスの艦内にいたアリサ達はエマの転移魔法によって地下水道へ続く出入り口付近に現れ、アリサ達が艦内から消えるとカレイジャスはバリアハートから離脱した。

「な、なんですの……!?」

「まさか……近くで戦闘が始まったのか!?」

「こ、公爵閣下は一体何をしているんだ!?」

「そ、それよりも戦闘に巻き込まれる前に早く建物の中へと逃げろ……!」

アリサ達がバリアハート市内に現れると街道から聞こえてくる戦闘の音や兵士達の悲鳴を聞いた貴族や平民達は混乱した様子で戦闘に巻き込まれない為に建物の中へと入って行った。

 

「……どうやら市街戦はまだ始まっていないようですね。」

「ま、ケルディックの件を考えるといつ別働隊がバリアハートに突入してきてもおかしくないけどね。」

市内の様子を見たクレア大尉は静かな表情で呟き、フィーは警戒の表情で仲間達に指摘した。

「ハアッ!」

一方サラは武器を振るって地下水道へと続く鍵がかかった扉をふっ飛ばし

「おい、サラ!何で扉を壊すんだよ!?地下水道には魔獣も徘徊しているのにもし、地下水道の魔獣達が市内に出たらどうするんだ!?」

サラの行動を見たトヴァルは表情を引き攣らせた後サラに指摘した。

「今はピッキングをしている暇はないし、どうせバリアハートを占領したメンフィル軍がすぐに対策するでしょうから気にする必要はないわ。」

「戦争状態に陥った相手の国の軍に魔獣対策を任せるなんて無茶苦茶過ぎますよ……」

「うふふ、ですがサラ様の仰る通りメンフィル帝国は民には優しいと評判ですから、サラ様の仰っている事もあながち間違っていないかと。」

「……というかシャロン。”怪盗B”と同じ”執行者”の貴女ならピッキングくらいできると思うのだけど?」

サラの答えを聞いたマキアスは疲れた表情で溜息を吐き、微笑んでいるシャロンにアリサはジト目で見つめて指摘した。

「おしゃべりはそこまでにしておきなさい。―――作戦通り地下水道を一気に駆け抜けて、領邦軍の詰所を出てからそのまま公爵家の城館に突入して、城館のどこかにいるユーシスを連れ出すわよ!」

「道中を阻む魔獣や領邦軍の兵士達は私達が即座に排除する。」

「皆さんは私達の後を遅れずについて来てください!」

「はいっ!」

そしてサラとアルゼイド子爵、クレア大尉の言葉にアリサ達は力強く頷いた後サラ、トヴァル、クレア大尉、シャロン、そしてアルゼイド子爵が先頭に地下水道へと突入し、アリサ達はサラ達の後に地下水道に突入した!

 

~同時刻・南クロイツェン街道~

 

一方その頃北クロイツェン街道とオーロックス峡谷での戦闘の援軍に向かった影響で見張りの兵士しかいない南口の街道の物陰には、シグルーン率いるメンフィル軍の騎馬隊がそれぞれいつでも騎乗できるように馬の近くで隊列を組んで待機していた。

「念の為にもう一度だけ作戦内容を確認しておく。」

「はい。まずはシグルーン様の号令によって私達は南口からバリアハートに突入、バリアハートに突入した後はそのままアルバレア公爵家の城館に向かって駆け抜け、城館に突入でしたね。」

「城館に突入後城少人数の部隊に別れて城館の守りの兵士達を殲滅しながらアルバレア公爵を探し、討ち取る事ですね。」

「そして今ベルフェゴール様がアルバレア公の居場所を探っていて、私達が城館に突入した際にベルフェゴール様がアルバレア公の居場所へと先導してもらえるという事ですわね。」

メンフィル兵達がそれぞれ数人に別れて突入前の確認を行っている中、リィンの言葉に頷いたエリゼは作戦内容を口にし、背中に届く程の黒髪をなびかせ、貴族の令嬢のような雰囲気を纏った女性騎士とセレーネがエリゼに続くように作戦内容を口にした。

「ああ。今回の作戦……四大名門の当主であるアルバレア公の首を取る事ができれば今回の作戦の中で一番の手柄になる。必ず俺達の手でアルバレア公を討ち取るぞ。」

「「はい!」」

「微力ではありますが私も協力させて頂きます。今回の作戦の同じ小部隊の者として…………共に学び、互いに高め合った同期として……そしてかつての訓練兵時代に組んでいた貴方の”パートナー”として。」

リィンの号令にエリゼとセレーネは力強く頷き、女性騎士はリィンに微笑んだ。

 

「ありがとう、ステラ。それにしてもまさか訓練兵を卒業してからステラとまた組む事になるなんてな……」

「フフ、私も最初今回の作戦で私と組む方達の中にリィンさんがいた事に正直驚きました。しかも”元エレボニア貴族”同士で”元祖国”であるエレボニア相手に共に戦う事になるとは、凄い偶然ですね。」

苦笑しているリィンに視線を向けられた女性騎士――――ステラ・ディアメルは微笑みながら答えた。

「えっと、お兄様。ステラさんが”元エレボニア貴族同士”と仰いましたけど……」

「―――ステラさんは私達と同じ元エレボニア貴族―――それも私達の実家の”シュバルツァー男爵家”と違って、エレボニアどころか他国にも有名な名門貴族――――”ディアメル伯爵家”の令嬢だった方なのよ。」

ステラの話の中にあったある言葉が気になったセレーネの疑問にエリゼが静かな表情で答えた.

 

「ええっ!?ど、どうしてそのような高貴な方が他国の軍に……」

「―――自分の生きる道を選ぶために実家を出奔したのです。私の実家は兄達は軍人や政治家として輝かしい日々を送っていますが、姉達は親の意向で顔も知らない相手の下へ無理矢理嫁がされたのです。」

エリゼの説明に驚いているセレーネにステラは自身の事情を説明した。

 

「政略結婚ですか………」

「はい。そして私が14歳の時に結婚が決まりました。――――相手はよりにもよって貴族連合軍の”主宰”であるカイエン公爵の長男―――つまり、カイエン公のご子息だったのです。」

「ええっ!?カ、カイエン公の……!?」

「それは初耳だな……」

ステラの説明を聞いたセレーネは驚き、セレーネ同様驚いていたリィンは目を丸くした。

「フフ、リィンさんや他の同期の方達には私の事情を説明しましたが相手が誰かは教えていませんでしたから。」

「……もしかしてステラさんがメンフィル軍に入隊したのは……」

「ええ、姉達のように好きでもない相手に嫁ぐ事もそうですが、姉達のように両親―――いえ、”ディアメル伯爵家の道具”として生きる事は絶対に嫌だったからです。」

セレーネに見つめられたステラは頷いて実家を出た理由を説明した。

 

「その……ステラさんはお辛くないのですか?エレボニアと戦争をするという事は下手をすれば実家に剣を向けるどころか、ステラさんのご両親やお兄様達と殺し合う事になりますが……」

「実家を出た際に両親や”ディアメル伯爵家”に対する絶縁状を自室に置いていきましたし、祖国にも未練はありません。今の私はリフィア皇女殿下親衛隊所属のメンフィル帝国の騎士であり、メンフィル帝国人です。既にメンフィル帝国よりエレボニア帝国からメンフィル帝国への亡命の承諾も貰っています。」

「―――総員、騎乗せよ!これよりバリアハート突入を行う!」

セレーネの疑問にステラが決意の表情で答えたその時シグルーンがリィン達を含めたメンフィル兵達に指示をした。

「イエス・マム!」

「―――時間ですね。」

「ああ。」

シグルーンの号令に答えた後それぞれが馬に騎乗している中静かな表情で呟いたエリゼの言葉に頷いたリィンは馬に騎乗し、エリゼ達も続くように馬に騎乗した。

「―――後方からの援護は任せた、ステラ。」

「ええ、任されました。」

リィンの言葉にステラは微笑み

(ちょっと妬けちゃいますね……)

(フフ、セレーネは兄様の”パートナードラゴン”なのだから兄様の昔の”パートナー”であるステラさんに妬くのも無理ないわ。私だって当時は嫉妬していたもの。しかも兄様は当然の如く気づいていないでしょうけど、ステラさんも兄様の事を……)

二人の様子を見守っていたセレーネに小声で囁かれたエリゼは苦笑しながら答えた後疲れた表情で溜息を吐いた。

(ふふふ、どうやら”また一人”増えそうですね。)

(ア、アハハ……最終的に何人になるのでしょうね……)

(今この場にベルフェゴールがいたら”色々”画策するかもしれないわね……)

同じようにリィンの身体の中や神剣から様子を見守っていたリザイラは静かな笑みを浮かべ、メサイアとアイドスは苦笑していた。

 

「これより作戦を開始する!今こそ同胞を傷つけた愚か者達に我等メンフィルの怒りを思い知らせてやりなさい!そして偉大なる皇帝陛下や皇女殿下達に必ずやアルバレア公の首を捧げますわよ!」

「オォォォォォオオオオォォォォ――――――ッ!!」

シグルーンの号令に応えたリィン達やメンフィル兵達はそれぞれの武器を空へと掲げて辺りを轟かせる勇ましい雄たけびを上げた!

「―――総員、突撃開始ッ!!我らを阻む者達は全て蹴散らせっ!!」

「オォォォオオォォォォォォオオオォォッッッ!!!!」

そしてシグルーンの号令によって天馬(ペガサス)を駆って飛行するシグルーン率いるメンフィル軍の突入隊は南口に突撃した!

 

「な、なななななななななっ!?」

「レグラム方面からもメンフィル軍だとっ!?クソッ!お、応答せ―――――」

怒涛の勢いで突撃して来るメンフィル軍に見張りの兵士達は混乱し

「―――そこですっ!」

「「え――――」」

ステラは馬を走らせながら自身の得物であるライフルで一瞬の早業で狙撃し、ステラの狙撃によって頭を撃ち抜かれた兵士達は声を上げる事もなく絶命して地面に倒れ、絶命した兵士達の死体は騎馬隊によって弾き飛ばされて堀に落ち、シグルーン達はバリアハート市内に突入した――――!

 

 

 

と言う訳でついにお待ちかね(?)のメンフィル陣営によるバリアハート襲撃が始まりました!ゲームで言うとリィン達のパーティー構成はリィン、エリゼ、セレーネ、ステラという見事にエウシュリー特有……というか18禁のロープレの特徴である主人公以外は全員女性パーティーという構成です。(オイッ!)今回初登場した新オリジナルキャラであるステラは今後も出番が頻繁にある予定となっており、更にⅦ組のある人物との意外な縁もありますwwその人物が誰で、どんな縁なのかは今後の話で判明しますのでその時までお待ちください。ステラの容姿等は『ファイアーエムブレム暁の女神』の同じ名前の人物だと思ってください。なお、今回のイベントBGMは閃Ⅱの”交戦”、閃Ⅰの”Atrocious Raid”、東亰ザナドゥの”Bravely Storm”、碧の”To be continued!”のどれかだと思ってください♪


 
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