盗賊団の砦は、山の陰に隠れるようにひっそりと建てられてた
許緒ちゃんと出会った場所からそんなに離れてはなかったけど……こんな分かりにくい所じゃ、よっぽど上手に探さないと見つかんなかったんじゃないかな
「ほへ~……よくもまぁ、じょーずに隠れて建ってるもんねぇ……」
近付きすぎるとすぐに見つかっちゃうから、砦はまだ指先ほどの大きさだけどねん
「っと、それよりも糧食糧食っと」
ちなみに、あたしは今華琳ちゃんのトコを離れてる。何故かって? 糧食の残量と帰りの消費量を計算しないと、桂花ちゃんと一緒にオシオキ受けちゃうんだもんっ
「んー……桂花ちゃんの策でほとんど損害はない筈だから…損害0と考えて、残るのがこのくらいで、あとは損害分がコレに追加…」
と、あたしは地面に枝で数式をどんどん書いていく
「こっちのあまりをこっちに移しても……う~~ん」
「お~~い、ねーちゃーん」
「んに?」
頭から煙が出かけたところで、許緒ちゃんに呼ばれた。何かあったのかな?
「許緒ちゃん? どーしたの?」
「季衣でいいよー。春蘭さまと秋蘭さまも、真名で呼んで良いって言ってくれたし」
「そうなの? じゃあ、あたしも真名預けとくね。萌って言うの」
「うんっ。ヨロシクっ」
「それで、どーしたの?」
「あっ。忘れるところだった、華琳さまが呼んで来いって」
「そっか…討伐始めるんだね……」
いよいよかぁ……できれば、人殺しの光景とかあんまり見たくないんだけどなぁ……
そーいや、作戦はゲームのままなのかな?
「季衣ちゃんは、華琳ちゃんの護衛?」
華琳ちゃんのところに戻る途中で、ちょっと聞いてみた
「うん。たいやく、なんだってさ」
ほみゅ。なら、作戦は囮挟撃のままかな…? って、正面突破でも季衣ちゃんなら護衛に回されるか。まぁ、行けば分かるかな
「そうだよ~。何たって、あたし達の総大将を守る仕事だからね」
「そっか……。たいやく、かぁ……。うぅ、なんか、緊張してきちゃった……」
「そうだねぇ……」
「あれ? 姉ちゃんも緊張してるの?」
「だって、あたし侍女なんだから、ずっとお城にいるものだと思ってたもん。戦場なんて、見るのも初めてよ」
元の世界でもアメリカに守られてる擬似平和な日本じゃ、戦場に行くのなんて、自衛隊とかが補給支援に行くくらいのイメージしかないし、ゲームやドラマ、映画とかと違って生で人が死んでくのは見たこともないし、出来ればそんなのとは無縁な生活を送りたかったけど……こっちに来たらそうも言ってられなさそうだし……
「へ? 姉ちゃんって、武将じゃないの?」
「違う違う^^; ホラ、着てるのだって、侍女服でしょ? …でもまぁ、目標としている侍女に近づくためには、華琳ちゃんを護れるほど強くなりたいんだけどね」
「やっと来たわね」
「かかか、華琳ちゃん!?」
あたしが目標を言ったところで、華琳ちゃんが声をかけてきた。ってか、いつの間にかここまで来たんだ…聞かれてたら恥ずかしいっ><
「……? どうしたの? そんなに慌てて」
「い、いや、何でもありませんですますよ!? ハイッ」
「……まぁいいでしょう。萌、あなたには私の傍にいてもらうわよ」
ほっ、良かった。聞かれて無いみたい
「はいっ! ……って、え? だってあたし侍女だから後方待機じゃ…?」
「次からあなたも行軍に連れて行くといったでしょう? 後方もいつかは戦場になることがあるかもしれないから、今のうちに慣れておきなさい。……それに」
「……? それに?」
そこまで言うと華琳ちゃんは耳元に口を寄せて
「か、華琳ちゃん!?」
「私を護れるほど強くなってくれるんでしょう?」
「っ~~~~~~~~~~~~!?」
き、聞かれてた!?
「フフフ、楽しみにしているわよ」
うわーっ、うわーっ、うわーっ、なんかもう、うわーーーーっ
「総員、準備はいいか!? これより作戦を開始する!」
「向こうに聞こえるように、盛大に銅鑼をならしなさいっ」
こうして、恥ずかしいやらなんやらでいっぱいいっぱいなあたしを置いて、作戦は開始された。
結果から言うと、楽勝だった。
被害と言えるほどの被害も無く、しかし野盗は根絶やしにされた。しかし、被害が無いと言えるのも全体から見るとって意味で、実際には数人は死んだりしてるわけで、それでなくとも周りには野盗の死体があり、死と言うものと余り面識が無かったあたしにとっては十分すぎる衝撃だった。それでもあたしが立っていられるのは別にあたしが強いからとかではなく、単に現実離れしすぎて現実味が沸かないだけで、今も心はどこかふわふわ現実逃避しているよーな気がする。
と、ソコまで考えてなんだか妙な違和感を感じた。なんだろ? ……あの兵士さん…かなぁ? どことはいえないんだけど、何かがおかしい気が……
「……のか。……萌? 萌っ!」
「ふぇ? ……ぁ、華琳ちゃん」
と、そこまで逃避していたところで華琳ちゃんが声をかけてきた
「大丈夫? やはり野盗討伐とはいえ初陣で前線にいるのはきつかったかしら? もう戦闘も終わったから、辛かったら下がっててもいいのよ」
そう、今は戦後処理の最中であり、華琳ちゃんが陣頭指揮を執っている。戦闘に慣れさせると言う意味ではもうあたしが前線にいる意味は無いんだけど……
「うん、ありがとう…でも、大丈夫だよ」
なんとか笑顔で返してみる。うん、あたしは大丈夫。気絶しなかったし、何よりこれを現実として受け止められていない今の状態ではこれから先戦場に連れて行かれても足手まといに……って、ちがうちがうっ>< あたしは戦場に出る気は無いんだってばっ
「そう……。本当に辛くなったら倒れる前に下がりなさい」
最後にそう釘を刺された。……ってことは、あたしそんなに酷いくらい顔色悪いのかな? 気をつけないと季衣ちゃんあたりは心配しそうだなぁ
それからしばらくして、どうやら事後処理も終わるようだ。追撃に出てた春蘭ちゃんと季衣ちゃんも戻ってきて、今は秋蘭ちゃんが迎えに行ってる。華琳ちゃんと桂花ちゃんは隣で兵士さんからの報告を受けている。断片的に聞いてると、どうやら敵首領の死体は見付からなかったみたい。まぁ、コレだけ派手に粉砕したんだし、生きててもしばらくは暴れないんじゃないかなぁ
などと恐怖から思考が一周して逆に普通に戻ったような意外と冷静な頭で考えながらふと周りを見渡すと華琳ちゃんの後ろに兵士さんが近づいていた。んー、華琳ちゃんはまだ桂花ちゃんと話してるし、ちょっと待ってもらおっか
「あの…曹操様に用事なら……」
「チッ、邪魔だっ!」
「ふぇ?」
ザシュッ
っ!? 熱い! 熱い熱い熱い!! 目が熱い? 腕が熱い? どうしてっ!?
「「萌(お姉さま)!?」」
「くそっ、あの前髪がいなくなったから頭を殺る好機だと思ったのに、まさか侍女ごときに邪魔されるとは……」
違う、これは熱いじゃなくて痛い? そう、痛いんだ。血が、流れて…あたし、死んじゃうの? イヤだ。イヤだイヤだイヤだ! まだ死にたくないっ! あたし…まだ…死に…たく……
あとがき
まずお詫びを
3週間くらい待たせてるのに、薄い中身で申し訳ないorz
い、言い訳を聞いてくださいっ
実は前回うpしてすぐにここまでは書いてたんだけど、萌気絶中は萌視点使えないよねぇと思って、頑張って神視点で書こうと思ったんだけど、何故かコレが中々難しくって、納得いくのがかけなくって、結論として「ムリに神視点で書かなくても、この小説の持ち味は萌視点なんだからそれ一本でいっちゃおう!」という半ば投げやり的な(逃げともいうw)終点に落ち着いたので投稿した次第であります。ハイ
とりあえず、最後のページで萌が恐怖を感じてるのが表現できてたらいいなぁとか思いながら、続きを書こうと思います
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3週間も上げてなかったのに中身少ないですorz
言い訳はあとがきで(ぁ