No.89314

恋姫無双 袁術ルート 第二十二話 雪蓮と曹操 

こんばんわ、ファンネルです。

まず、ごめんなさいと言わせてください。

過去に例のないほどの駄作です。

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2009-08-11 20:50:09 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:23319   閲覧ユーザー数:17817

第二十二話  雪蓮と曹操

 

 

雪蓮たちからの一方的な同盟破棄。当然、一刀たちはショックを受けた。

 

「………雪蓮。」

 

だが、予想していた事だ。彼女の立場を考えれば参加せざるを得ない。悲しんでいる時間は無い。早く、長安に遷る準備をしなくてはならないのだから。

 

「霞、華雄。あんたたちは汜水関を!恋は虎牢関を守ってちょうだい!」

 

詠は皆に戦術、戦略を簡潔に言った。彼女の策により、霞と華雄には汜水関、恋には虎牢関を担当させたのだ。

 

「詠殿!ねねも恋殿について行きますぞ!」

 

自分の名前が言われなかった事に対して、ねねは詠に自分の意思表明をしたのだ。

 

「駄目よ。ねねには僕たちの手伝いをしてもらわなくちゃいけないんだから。」

 

詠はきっぱりと言う。ねねも状況が状況だけに歯ぎしりをしながらその場は我慢したのだ。

 

詠たちの仕事。それは長安に遷る際の書簡や外交。他にも長安にいる有力者たちの説得等々。それが、ねねや詠たち文官の戦いなのだ。今は優秀な軍師が一人でも多く必要なのだ。

 

「あれ?……どうして、軍師のねねを戦場に連れて行かないんだ?」

 

一刀が疑問に思う事は当然だろう。ねねは軍師としてはかなり優秀だろう。それは皆が認めている事だ。ねねを戦場に連れてきたいわけではないが、優秀な軍師がいれば、戦況を有利にする事だって出来るのではないか?

 

「今回は籠城戦が主ですからね~。おそらく、乱戦になると思います。乱戦で状況を一変させる策なんてありませんから。」

 

一刀の問いに風が答えてくれた。

 

一刀は理解した。今回は籠城戦なんだ。籠城戦に策なんてない。ただただ、敵の侵攻を食い止める。ただ、それだけだ。そこに必要なのは策などではなく、単純な兵力だろう。嫌な言い方をすれば、籠城戦において軍師たちは全く役に立たないのだ。

 

「………ねね……一緒が良い。」

 

そこに恋が現れた。恋はねねと一緒が良いと言いだす。当然、ねねは歓喜し、詠は怒りだす。

 

「れ、恋殿~♡」

「恋、ねねには大切な仕事があるんだから、あんたと一緒にさせられないの!」

 

それでもねねと一緒が良いと恋は引かない。

 

「良いのではないですか?」

 

そこに稟がねねに助け船を出したのだ。」

 

「稟、あんたなんて事を言うの!?」

「すでに大体の事は終わっています。後は我々だけでもどうにかなりましょう。このように虎牢関を守る者がねねを必要としているのですから、我々はそれに答えるしかないでしょう?」

「それは、そうだけどさ……」

 

詠は悩み始めた。確かにねねの助けは必要だが、後の事は自分たちだけでも期限内に終わらせる事が出来るのだ。それに恋一人だけを虎牢関に送る事になんだか不安を覚える。

 

「……………ジー。」

 

恋は懇願する様な目で詠を見つめる。恋のこの目に勝てるようなやつはそうはいないだろう、案の定、詠も折れた。

 

「わ、分かったわよ!分かったから、そんな目で僕を見ないでよ!」

「……………良かった。」

「れ、恋殿~♡」

「……………ねね、一緒。」

「はいです!ねねはあなたに尽くしますぞ~!」

 

もうすぐ戦が始まる。一刀たちの方も準備が進んできた。この戦、絶対に負けるわけにはいかない。必ず、一ヶ月は持たせなくてはならない。そういう思いを持ちながら、皆は自分の仕事をこなしていったのだ。

 

 

霞と華雄の軍の編成が終わった。

 

「ほんじゃあ、行ってくるで。」

「ああ………気を付けてな。」

 

一刀は霞と華雄の見送りをしていた。わずかな兵で、何十万もの兵たちを相手に籠城する。それがどんなに危険で怖い事なのか、理解できない一刀ではない。

 

「そんな辛気臭い顔をすな。別に死にに行くわけではあらへん。」

 

霞は一刀の心を読み取ったかのように、一刀を励ます。励まされるのは自分だというのに、霞は一刀の心配をしていた。

 

「………でも……」

「心配する必要なんかあらへんで!危なくなったら、虎牢関まで退くさかい。だから、そんな顔をせいへんでな。こっちまで、辛気臭くなってしまう。」

「ご、ごめん。」

「分かればいいんや。」

 

励ますどころか、自分が励まされてしまった。二人はなぜか可笑しくなって笑ってしまった。

 

「オッホン!……良い雰囲気の所、申し訳ないがそろそろ出発するぞ、張遼。」

 

そこに華雄が現れた。華雄はほんのりと顔を赤めている。おそらく、一刀と霞のやり取りは第三者から見ても恥ずかしいものだったのだろう。

 

「分かっとるわ!………ええとこやったのに……」

 

最後の方、何かボソッと言ったような感じがしたが、一刀には聞こえなかった。

 

「華雄………不満だろうけど、今回は俺たちに従ってくれてありがとな。」

「………はい。」

 

数日前、

 

詠が、籠城する際の作戦を彼女たちに話していた時、華雄は必死になって反対したのだ。自分たちは何も悪くないのだから、籠城する必要なんかない。堂々と戦い、自分たちの強さを相手に見せつけるのだ、と。意気揚々に発言したのだ。

 

だが、今の状況でそんな事をするのは愚の骨頂だ。当然のように詠たち軍師と喧嘩になった。それを一刀がその場を何とか収めたのだ。

 

「………華雄。」

 

彼女も一介の将。決して馬鹿ではない。ただ、悔しいのだ。徒党を組んで、自分たちを悪者扱いにしている者たちの鼻っ顔を殴ってやりたい。そんな衝動に駆られていたのだ。

 

 

現在

 

「もう大丈夫です。あの時は、見苦しいところを見せてしまい申し訳ありませんでした。」

「うんうん。華雄の気持ちも分かるからさ………。」

 

一刀の説得によって、何とか分かってくれた。今の華雄ならどんな挑発を受けても何の心配もないだろう。

 

「それじゃ………頑張ってな。霞、華雄。」

「ああ、もちろんや!」

「しっかりと守らせていただきます!」

 

そう言って、彼女たちは軍を引き連れて汜水関へと向かったのだ。一刀もまた、詠たちの手伝いをするために城へと戻った。

 

 

汜水関から数十里ほど離れた所

 

ここは、反北郷連合の本拠地。名のある諸侯たちが一堂に集結している。そこに、雪蓮たち、孫呉の屈強な兵が到着した。

 

それを迎えるように一人の女性が雪蓮たちの前にやってきた。

 

「こんにちは。え~と………」

「私は河南の孫策よ。あなたは?」

「あっ!申し訳ありません。私は袁紹様の配下で顔良と言います。お待ちしていました、孫策様。」

「そう……で、私たちはどこに陣を張れば良いのかしら?」

「それは私が指示させていただきます。袁紹様が至急会議を開きたいと仰っておられるので、代表の方は其方の方に出向いて頂けませんか?」

 

顔良、自らそう名乗り、黄金の甲冑を身にまとった少女は、雪蓮を前にしても動じてはいない。とても堂々としている。

 

「そう………なら、冥琳と祭は私に付いてきて。他の者は、この顔良の指示に従って、陣の形成を行いなさい。」

 

そう言って、雪蓮が馬から降りると、蓮華が姉の元へと駆け寄ってきた。

 

「お姉さま!私も行きます!」

 

すごい形相であった。普段からの蓮華からは想像の出来ない憤怒に満ちた顔だった。

 

「駄目よ、蓮華。あなたは残りなさい。」

「お姉さま!」

「あなたが来たら軍議所じゃなくなるでしょ。………あなた。袁紹を切りつけるつもりでしょ?」

「くっ………と、当然です!こんな大義のない戦いを始めた者など、切られて当然というものです!」

「はぁ……あなたね~。それじゃ、何のためにこの連合に参加したのか分からないじゃない。」

 

雪蓮はため息をつきながら呆れた物言いで言う。だが、まだ蓮華は納得のいかない顔だ。

 

「…………私はまだ、この連合への参加に納得した訳ではありません!」

「別に納得する必要はないわ。………私自身、納得していないのだから。」

 

雪蓮の顔はどことなく怒りが見える。彼女自身も納得していないのだ。この連合への参加に。だが、連合に参加せねば自分たちは逆賊にされてしまう。

 

建業の民たちを戦に巻き込んでしまう恐れもある。それだけはどうしても避けなければならない。

 

「蓮華様、その辺りでお止め下さい。我らとてあなたと同じ思いです。」

「………冥琳。」

「我々とて、北郷の事を諦めたわけではありません。ですから、今は雪蓮の事を信じてください。」

「……分かったわ。」

 

蓮華は歯ぎしりしながらその場を退いた。蓮華も分かっているのだ。一刀たちの味方のなってもそれは焼け石に水。これほど大きな規模になってしまった連合に太刀打ちできるはずがない。

 

ならば、連合の中から北郷を助ける方が何倍も成功率が高い。だけど、それでも一刀たちと戦う事には変わりない。それに一刀たちはこちらの真意を知らない。向こうから見れば我々は裏切り者だ。

 

「………一刀……」

 

一刀を思うと心が痛くなる。それは自分だけではないだろう。思春も小蓮も明命も皆同じ思いのはずだ。

 

蓮華は、軍議に向かう姉の姿を見るしか出来なかった。

 

 

雪蓮たちはお互いに言葉を交わす事なく、歩み続け軍議のために設けられた場所に向かった。途中、その場所から馬鹿げた高笑いが響いてくる。

 

「何かしら?この高笑い。」

「……あまり、考えたくないものだな。」

 

雪蓮たちが設けられた会議場所に着いた。ざっと見渡すだけでも高貴な匂いを振りまく面々。その後ろに立つ配下の濃厚な威圧感。そこは戦人で形成された異質な空気を纏っていた。

 

「あ~ら、随分と遅れていらしたものね。他の人たちはすでに到着されていますわよ。」

「ごめんなさいね。こっちもいろいろあってね。」

 

雪蓮は自分の宛がわれた席と思われる即席の腰かけに腰をかけ、その頂点に座る女性に面倒臭さそうな声で返事を返した。

 

手を口に当てながら高笑いを続けていた女性は雪蓮を見るなり、再度一度だけ大きく嘲笑うかのように高笑いを上げた。

 

「それでは全員そろったようですので軍議を始めたいと思いますわ。初めに皆さん初対面でしょうから、ご挨拶から始めるのがよろしいですわね。」

 

デラックスな縦巻きカールの髪をした女性は、縦巻きカールを揺らしなが耳が痛くなる高笑いを上げる。周りを見ても他の者も同じような反応をしていることから、良い気分はしていないだろう。

 

「ご存知とは思いますけ・れ・ど・一応挨拶をしておきますわ。この私が袁紹本初、本人ですわ!」

 

とても誇らしく名乗る袁紹。だけど、そんな彼女はひとまず置くかのように自己紹介は続いた。

 

「幽州を治めている公孫賛だ。」

 

どいつもこいつも一筋縄では行かないような、名のある諸侯たちだ。

 

「平原郡から来ました、劉備です。 此方は我が軍の軍師、諸葛亮です」

「あら、そう。遠い所をわざわざ御苦労な事ですわね。」

 

袁紹の言葉はねぎらうような優しさではなく、名もない人物を見下げるような言葉だった。だが、そんな袁紹の皮肉なんか彼女たちには全く通じていなかった。

 

「はい。洛陽の人たちを苦しめているなんて許せませんから!」

「良く言いましたわ!褒めてあげますわよ、劉備さん。」

「えへへ。」

 

彼女はこの場に似合わないような軽い空気を纏っていた。

 

「涼州を治めている馬騰の名代として来た、馬超だ。」

 

ポニーテールの女の子は馬超と名乗った。その容姿に似合わず、凄まじい闘気を感じる。

 

「あら、馬騰さんは今日は来ていないんですの?」

「ああ、最近は体の方が良くなくてね。袁紹殿にはくれぐれもよろしくと言い遣っている。」

「まぁ。大変ですわね。馬騰さんの言葉、きちんと受けたまりましたわ。」

 

心にもない事を言うが、きちんと礼だけは弁えている。これも袁家の血のなせる技なのだろうか?

 

「典軍校尉の曹操よ。こちらは我が軍の夏候淵と夏候惇よ。」

 

その身から出る覇気のような威圧感を隠し切れていない。もっともその辺りが覇王にふさわしいと言えるのだが。

この場の緊張感とも言える空気はほとんど彼女によるものだろう。雪蓮や冥琳、祭もまたそれを感じ取っている。

 

 

「私は河南の孫策。こっちはうちの軍師の周喩と宿将の黄蓋。」

 

雪蓮が自己紹介をすますと、その場の全員が雪蓮の方を見る。

 

「あ~ら、あなたが孫策さんでしたのね。うちの美羽ちゃまが随分とお世話になったとか?」

 

舐め回すかのような挑発に最初に激昂したのは祭だった。だが、寸での所で冥琳に止められた。雪蓮は何にも動じずに冷静だ。

 

「ええ。美羽たちとは同盟関係にあったものだから。」

「そうでしたの。それでいて連合に参加するなんて。美羽ちゃまのお仲間にしては馬鹿では無いようですわね。おーほっほっほっほっほ!!」

 

袁紹の言葉一つ一つに腹が立つ。だが、この場は諸侯たちの目もある。雪蓮は冷静であった。

 

「袁紹。あなたに聞きたい事があるわ。」

「はい、なんですの?」

「どうして、あなたはこの連合をつくったの?」

「これは、異なことを言いますわね。簡単な事です。逆臣、北郷は偽の天子を擁し、自らの欲望のままに政治を行った。そんな御人、天は元より、この袁紹、黙って見過ごすわけにはいきませんわ!」

 

何人かの諸侯の代表は袁紹のこの言葉に対し、頷いたり拍手を送ったりした。おそらく、袁紹派の者たちだろう。当然、袁紹は調子に乗った。

 

「随分とやっきになって劉協様を『偽帝』と呼んでいるけど、劉協様のどこが『偽帝』なのかしら?彼女はれっきとして前帝のご息女よ。」

「何も知らないんですのね。良いですわよ、教えて差し上げます。漢王朝400年の歴史の中に女帝が君臨した事は無いんですの。」

 

袁紹は自分が博識であろう風にふるまう。

 

「そもそもが、皇帝の位は前帝が崩御して以来、誰にも継承されていませんわ。今の天子は北郷一刀と言う男が勝手に擁した皇帝。そんな天子を認めるわけにはいかないんですの。」

 

自信満々に答える袁紹に雪蓮は言葉を返す。

 

「へえ、じゃあこの戦いが終わった後、誰が皇帝になるの?知っていると思うけど、ほとんどの皇子は何太后に毒殺されているのよ。誰か皇帝にふさわしい皇族がいるの?」

 

雪蓮の言葉に袁紹は言葉を詰まらせている。

 

「そ、それは………」

「まさかとは思うけど、劉虞とは言わないわよね。あれこそ愚か者の身本とも言える人物よ。」

「キー!!無礼はおろか皇族まで批判するなんて!首を跳ねますわよ!」

 

袁紹は雪蓮の問いに答えられなくなりとうとう脅しにまで手を付けた。その場の空気が緊張する。だが、雪蓮だけはそれを鼻で笑っている。

 

「私の話が済んだらいかようにも。」

 

その場に似着かない笑顔で言った。

 

「この場にいる全員に問うわ!」

 

雪蓮はその場にいる全員に言う。

 

「今の漢王朝に見合う天子が劉協様以外にいると思う?もし、私たちが天子に見合う人間を見つけなければ漢王朝を潰そうとする逆賊になってしまうのよ。」

 

雪蓮の問いに誰もが答えられない。もともとは天下への邪心を露わにしている者たちがほとんどだ。大義なんてほとんど考えていない。ただ、利のみを求めている連中なのだ。

 

だから、雪蓮の言葉に誰も反論できない。このまま、この連合は空中分解する様な雰囲気であった。

 

それこそが、雪蓮たちが描いた策だった。天子がいなければ漢王朝の存続は無い。漢王朝を潰そうとするのは逆賊と呼ばれるのふさわしい行為だ。雪蓮たちは劉協の正当性を問う事でこの連合を内側から潰そうとしていた。

 

誰もが、雪蓮の問いに答える事が出来なかった。雪蓮たちの作戦は九分九厘成功していた。

 

だが、思わぬ事態が起きた。誰かが、口を開いたのだ。

 

「蒼天既に死す。」

 

曹操だった。

 

 

その場の全員が曹操の方を見る。曹操はその視線を気にすることなく言葉を続ける。

 

「漢王朝400年、帝室乱れ、国は病む。」

 

曹操は静かに語った。

 

「皇族に覇気なく、外戚・宦官の害甚だしく、天下には怨念不満に満つ。」

 

曹操は流れる歌のような口調で今の世のあり方を言う。

 

「民草貧しく、悪官汚吏は利をむさぼる。」

「………曹操……何が言いたいの?」

 

雪蓮は嫌な予感しかしなかった。曹操はそんな雪蓮の心情を見抜いているのかどうかは分からないが、静かに笑っている。

 

「孫策、あなたが言うように今の天子には十分な正当性があるわ。現皇帝『献帝』劉協は聡明でいて誠実。まさに皇帝にふさわしい人物と言えるわ。」

 

当然、その場はどよめきだした。なんせ、皇帝の正当性を否定したからこそこの連合があるのだから。だから、この曹操の言葉は連合のあり方自体を否定するような言葉だった。

 

「だったら……!」

「だからこそ、許されないのよ。」

「!!」

 

曹操の言葉は静かだった。静かなくせにそこには凄まじい覇気が込められていた。その場にいる人間たちは皆曹操の言葉に耳を傾けている。

 

「黄巾党を思い出して見なさい。あの歴史に残るような農民たちの蜂起を。朝廷は討伐するどころか彼らの増加を防ぐ事も出来なかった。それ自体、漢王朝が縮小してしまった証拠に他ならない。」

 

曹操は続ける。雪蓮は何も言えなかった。

 

「今の『献帝』は漢王朝をある程度立ち直すことが出来るでしょうね。昔のように権威溢れる朝廷が出来るわ。」

 

曹操は劉協の事を過大評価しているようだ。だが、それでも雪蓮の言葉を否定し続ける。

 

「だけど、所詮は一時しのぎ。『献帝』の時代が去った後は、また偽政者たちの権力争いで国は廃る。必ずね。」

「つまり………北郷一刀たちが行っている事は今の大陸にとってよろしくない……そう言いたいの?」

「そうよ。北郷一刀は黄巾党を平定し、それを軍にとりいれ大陸随一の勢力にのし上がった。ここまでは見事。」

 

曹操はここで言葉を一時止め、先を続ける。

 

「しかし、もはや何の権威も持たない朝廷を立て直そうとし、また黄巾前の劣悪な朝廷に戻そうとしている。そのこと自体、大陸を脅かす悪鬼に近い所業ともいえるわ。」

「………………」

 

曹操の言う事はすべて理解できる。おそらく一刀たちは昔の権威溢れる朝廷に戻す事が出来るだろう。しかし、それが大陸にとって良い事なのかは分からない。

 

権力とは諸刃の剣だ。人を生かしもするし殺しもする巨大で怪しい力。一刀なら操る事が出来よう。だが、大陸の全員が一刀のような人間ではない。権力を悪用する人間だって大勢いる。

 

そんな人間たちが権力という名の剣を振り回したらどうなるか?答えは簡単である。第二、第三の黄巾党の乱の勃発だ。

 

つまり、曹操は今の朝廷を立ち直らせる事の出来る優秀さが、返って大陸を混沌へと帰す可能性を持つと言っているのだ。

 

 

「漢王朝を潰す気なの?」

 

雪蓮は曹操に問う。ここではいと言えば逆賊扱いで首を跳ねる事が出来るだろう。だが、曹操はそれほど甘くは無かった。

 

「別に漢王朝自体を潰そうと言う訳ではないわ。だけど『今』の漢王朝は完全に潰さなくてはならない。」

 

曹操は『今』と言う言葉を強調した。袁紹は理解できなかったようだが、諸侯たちはこの曹操の言葉の真意に気がついた。

 

「ちょっと、斗詩さん。華琳さんは一体何を言っているんですの?」

「分からないんですか、麗羽様。」

「そ、そん事はありませんわ。」

「はぁ……つまり、曹操さんは今まで悪い事をしていた朝廷は完全に潰さないといけないと言っているんです。そして、悪い事をしていた朝廷を立て直そうとしている北郷さんは天下を乱す悪い人と言っているんですよ。分かりましたか?」

「も、もちろん知っていましたわよ!ちょっと斗詩さんが本当に分かっているのか聞いてみただけですわ!」

「………はぁ。」

 

曹操と雪蓮の睨みあいはしばらく続いた。二人の覇気は常人のそれを大きく上回る。当然、誰も緊張のあまり口を開く事が出来なかったのだが、袁紹だけは別だったようだ。

 

「ちょっと、この私を差し置いて二人で熱論しないで下さる?」

「………チッ、余計なのがまた!」

「はぁ、何、麗羽。今良いとこなのだけど?」

 

まさにKYとも言える袁紹に雪蓮は舌打ちをし、曹操はため息をついた。

 

「孫策さんのお話は分かりましたわ。『献帝』の正当性は認めますわ。」

 

曹操と雪蓮の舌戦に聞き飽きたのか分からないが、その場を纏めようとする袁紹。

 

「しかし、天下を惑わす北郷一刀とその手下の董卓と美羽ちゃまだけは許す事は出来ませんわ。つまりこれは、漢王朝に対する忠義のための戦いですの!」

 

何人かの諸侯たちは疑問に思っただろう。だが、大半の諸侯たちは袁紹のこの纏めに拍手喝采を送った。

 

その場の流れに逆らう事が出来ず、曹操もため息をつきながらその場は静かにした。雪蓮もまた大人しく席に座ったのだ。

 

「孫策さん、あなたの漢王朝に対する忠誠心だけは褒めて差し上げますわ。ですけど、わたくしたちの結束を乱そうというのでしたら、この場から退席して頂きますわよ。」

「……分かったわ。」

 

それは一つの脅しだった。もちろん、今の状況で逆らうほど雪蓮の頭は熱くはなっていなかった。

 

 

会議はとてもつまらなく終わった。盟主は誰にするかという事とか、諸侯たちの軍の強さとかを言い合っていた。

 

つまりは、腹の探り合いだ。みんな、大きな戦績は出したい。でも被害は最小限にしたいし責任も負いたくない。そう言う考えが見え見えであった。

 

会議の結果、盟主は袁紹。そして、一番槍は劉備軍に決定したのだ。雪蓮たちは先ほどの発言が疎まれたのか分からないが、ずっと後方の方に配置された。

 

そして雪蓮たちは、自分たちの陣に戻る途中であった。その途中、曹操が雪蓮の前にやってきた。

 

「……何の用?」

「随分といきなりね。……まあ、良いわ。」

 

曹操は実に堂々としている。そして体からは覇気のようなものが流れ出ている。だが、それは雪蓮も同じだ。二人はほんの少しの間見つめあっていた。そして、最初に曹操が口を開いた。

 

「あなたも気付いているのね、この連合の実態に。」

「ええ。この連合は天下への邪心を露わにする薄汚い奴らの集まり。一刀たちは亭の良い生贄にされただけ。」

「そう………そこまで分かっているの。」

「曹操、私もあなたに聞きたい事があるわ。」

「何かしら?」

「あなたは本気で漢王朝を潰す気なの?」

 

雪蓮は改めて曹操に問いた。ここは誰もいない。自分たちだけだ。つまり腹の底を見せろと雪蓮は言っているのだ。曹操もまたこの問いに正直に答えた。

 

「ええ、もちろんよ。」

「………そう。」

 

あまりにも普通だった。お互いとんでもない事を言っているのにも関わらず、まるで挨拶を交わすかのように軽かった。

 

「あまり驚かないのね。」

「十分に驚いたわよ………それで?」

「それで?」

「曹操は漢王朝を潰して何をするの?」

「………覇道を歩むわ。」

「……覇道?」

「ええ。私には目的があるの。そのためには天子はともかく、今の腐りきった王朝は邪魔にしかならない。」

 

曹操はため息をついた後、改めて雪蓮に言った。

 

「もう、この流れはだれにも止められないわ。孫策、私からは一つだけよ。」

「………へぇ、何が言いたいのかしら?」

「私の邪魔をするな。ただ、それだけよ。」

 

凄まじい殺気を放った後、曹操は雪蓮に背を向け行ってしまった。だが、雪蓮たちはまるで気にも留めていないようだった。

 

「雪蓮、気付いているな?」

「ええ、この連合もそうだけどあの袁紹一人に考えられるわけがないわ。おそらく、裏でこの連合を操っている者がいる。」

「………曹操か……」

「おそらく間違いないでしょうね。それにしても驚いたわ。まさか私たちの策をあんなやり方で返してくるなんて!」

「天子の正当性を認めつつ、洛陽に攻め入る口実を作り出す。見事としか言うようがないな。」

 

雪蓮たちの策はこの連合の空中分解にあった。だが、分解するどころか返って大義を強くしてしまい連合の結束力になってしまった。

 

「こうなったら、もう袁紹に一刀たちの命を懇願するしかないわね。」

「お、おい!本気なのか、雪蓮!」

 

討伐の対象の命を懇願する。それがどんなに愚かな事か分からない雪連ではない。だが、雪蓮は笑いながら冥琳に返した。

 

「大丈夫よ。」

「何が大丈夫なんだ?またいつもの勘か?」

「今度は違うわよ。きちんと勝算だってあるんだから。」

「勝算…だと?」

「うん。ちょっとおだてて、調子に乗らせて約束させるわ。」

「上手く行くのか?」

「たぶん、かなり上手く行くと思うわよ。だって……」

「……だって?」

「袁紹も『袁』家なんだから。」

「………納得だ。ふふふ。」

「うふふふ♪」

 

雪蓮たちは美羽を思い出していた。それがとてもおかしくて噴き出してしまったのだ。美羽の事を思い出して心が穏やかになるのは一刀だけではなかった。ここにももう一人いたのだ。雪蓮と言う女性が。

 

 

続く……のか?

 

 

こんばんわ、ファンネルです。

 

この前、とある人からショトメを頂きました。

 

連合の大義が納得いかないという話で、どのように納得いかないかというのを教えていただきました。

 

その際、その部分を徹底的に追求した結果、すさまじい支離滅裂な駄作になってしまい、プロットも道を外してしまいました。

 

自分の力無さを身にしみてしまい、プロットも変わってしまった今、自分にもうこの作品を続けることができなくなりました。

 

本当にすみませんが、袁術ルートはこれで一時、打ち切りとさせていただきます。

 

今まで、応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。気分が乗ったらまた筆を執りますのでその時は応援してくださいね。

 

 


 
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