鉄と鉄、武器と武器の鍔迫り合いによって発生する鈍い金属音
死からの恐怖を抑えるため、自らを鼓舞するように、両軍の兵士から聞こえる怒号
劣勢を覆そうと死闘を繰り広げる将兵、指揮を各地に飛ばしながら、自ら前線に立ち奮闘する孫伯符
「なぜだ…なぜこの奇襲が読まれたのだ」
盟友、孫策の頭脳として、大陸に名を馳せている周公瑾は、目の前に映る光景を信じられずに呟く・・・
曹操軍が虎牢関で苦戦との報を受け、密かに軍備を整えていた孫策軍が、曹操軍の背後を突くべく進軍を開始。
完全にこの進軍は敵の虚を突いた。洛陽の公孫瓚軍や、救援にやってくるであろう涼州軍と挟撃し、曹操を捕らえる絶好の機会のはずだった…
「冥琳、すぐに軍を引かせなさい。これ以上被害を出す訳には行かないわ。殿は私が勤める」
「雪蓮…すまない、此度の敗戦は私の責任だ。曹操軍を警戒しているつもりで、甘く見ていたようだ」
「反省は後よ、それに…甘く見ていたのは私も同じ。でもね、冥琳。いま貴女がやるべき事は反省する事じゃない、これ以上被害を出さずに、味方の撤退を成功させる事よ」
「……あぁ、すまない。弱気になっていたよ。私達の背中は任せるぞ、伯符」
「えぇ…任せてちょうだい、公瑾」
「全軍に撤退の準備だ!采配は私が執る!そして、お前たちの背後は孫伯符が守ってくれている!何も恐れる事はない!」
先ほどとは変わり、親友に励まされた周瑜は勇ましい姿で指揮を執る。古来より、一番被害が出るのは撤退戦。敵の追撃を振り払い、味方の撤退を完了させられるかは率いる将の力量次第・・・
そして、そんな友軍を逃がす為に、追撃を始めようとする曹操軍に孫策率いる近衛兵が突っ込む
「ほらほらほら!!そんなんじゃ、私を倒して追撃しようなんて夢のまた夢よ!」
手柄を求め、敵の総大将の首を獲ろうと一般兵が殺到するも、孫策の振るう愛刀「南海覇王」で笑いながら次々と屍の山を築いていく。そんな大将に仕える近衛兵も、後れをとるな!と言わんばかりに縦横無尽に暴れまわり、曹操軍の兵達を次々と血に染めていく。あまりの獰猛さに恐れを感じた曹操軍の兵士達を蹴散らしていくと、孫策の目に曹・劉の旗が目に留まった
「丁度いいわ、今回のお礼言いに行かないと…あなた達、露払い頼むわね」
孫策の号令の下、近衛兵が孫策が進む道を確保すべく、前に立ちはだかる兵士達に斬りかかる。
「曹操ーーーー!劉備ーーーーー!」
近衛兵がこじ開けた道を進み、孫策は単騎で吶喊する、目標はもちろん・・・曹操と劉備だ
”戦闘狂”そんな言葉通りの形相で斬りかかる孫策を前に、曹操と劉備は笑みを絶やさない
ガキーーン
甲高い音が周囲に鳴り響く
「あら…割って入るなんて、随分無粋な真似してくれるじゃない」
「主君を護るのが臣下の務め、曹操様、劉備様には指一本触れさせん!」
曹操が自身の右腕として、絶大な信頼を置く豪傑、夏候惇が斬りかかろうした孫策の重く、鋭い一撃を七星餓狼で受け止める。孫策はそのまま押し切ってやろうと考えるが、何かを察ししてその場から離れる
「ふむ、今のを避けるか。虎の異名は伊達じゃないようだな。…大丈夫か、姉者」
大陸屈指の弓の達人であり、夏候惇の妹、夏候妙才が弓をつがえて孫策の方向に標準を定めている
「あぁ、あれぐらないなんてことはない。どうする孫策!私と秋蘭の二人を同時に相手するつもりなら相手になるぞ!」
夏候惇、夏侯淵姉妹はいつでも動けるように臨戦態勢を維持するが、当の孫策にはその気が無くなっている
「…辞めておくわ、いまあなた達と戦っても利益がないからね。素直に引かせてもらうわ」
「そうそう、私と戦って・・・って!来ないのか!?」
「貴方、どれだけ戦いたいのよ…」
夏候惇の言動に力が抜けた孫策だが、視線を曹操・劉備に戻す
「今回は私の負けよ、でもね…次に戦う時は………………殺すわ」
孫策は近衛兵を連れて自身の領地へと向かう。孫策と近衛兵の強さを散々見せつけられた曹操軍は道を塞ぐ事なかった
「……行ったかな」
「えぇ…もう良さそうね」
「こ・・・」
「こ・・・」
「怖かったーーーーー!」
「怖かったのじゃああ!」
「孫策とかいう者はなんなのじゃ!殺されるかと思ったのじゃあああ!」
「美羽ちゃんはまだいいじゃん!私なんて、舌戦までやったんだよ?!しかも、すっごい睨まれてたし!どどどど、どうしよ!本当に次会ったら殺されちゃうよ?!」
「はぁ……桃香、それと美羽も落ち着け。私達がお前たちを危険に晒す訳がないだろう。さっきまでの姿はどこに行ったんだ?」
「そんなこといったって~~~本当に怖かったんだもん!大丈夫だよね?大丈夫だよね?秋蘭ちゃん!」
「ガクガクブルブルガクガクブルル」
孫策と舌戦をした時の動じない強さ、孫策を警戒させた威圧感を出していた劉備。曹操の”影武者”として指揮を執っていた袁術はどこへやら・・・完全に猛獣に怯える小動物のようになってしまっている
「まったく、桃香も美羽もだらしないぞ!私なんか、孫策と戦いたくてうずうずしてたんだぞ!」
「脳筋の春蘭ちゃんと、普通の女の子の私を一緒にしないで!」
「そうじゃ、そうじゃ!妾と脳筋の春蘭と一緒にするでない!」
「なんだとぅ?!」
売り言葉に買い言葉…普通の女の子、脳筋じゃない、ちょっと突っ走したくなるだけだ!と・・・先ほどまで戦場だった場所で言い争う内容ではないのだが・・・当の本人達は真剣に議論を重ねている。普段は止めに入る常識人、夏侯淵はというと・・・
「あぁ…バカな内容で言い争う姉者と美羽は可愛いなぁ」
愛する姉、愛する主君によく似た袁術、この二人が子供の喧嘩のようにお互いじゃれ合ってる光景を見て、恍惚感に浸っている。もう一人参加していた劉備はいつの間にか言い争いから離脱し、夏侯淵の隣で同じようにこの光景を見守っていた
「秋蘭ちゃんもぶれないね、前みたいに鼻血出さないように気を付けてね」
「あぁ、あの時は迷惑をかけた。姉者、美羽に加え華琳様もその場に居てな・・・堪える事が出来なかったよ。桃香はよく堪えられたな」
「ん~私も実は危なかったんだよね。君主としての立場関係無く、春蘭ちゃん、美羽ちゃんと言い争いしてる姿は微笑ましかったもん………早く華琳ちゃんが安らかに過ごせるようにしないとね」
「そうだな…さて、そろそろ華琳様の下へ向かおう。兵士達に指示を」
「あ、兵士さんはもう行かせてあるよ!後は、私達が合流すればいいだけだよ♪」
劉備は夏候惇、袁術としていた言い争いを切り上げ、夏侯淵が恍惚感に浸っている僅かな時間で軍を纏め上げ、各隊に虎牢関へと先に引き上げるように指示を飛ばしていた。
これほど鮮やかな手腕を持つ少女のどこが普通なのか…この”自称”普通を名乗る少女の力を推し量る事は夏侯淵には出来ない。唯一解る事は…間違いなく英雄と呼べる器だと言う事のみ
「華琳様が居て、桃香も居る。この二人の英雄に、かの者達がどう対抗するのか……私も楽しみになってきたよ」
黄巾党討伐で出会い、華琳様が認めた強敵…かの者達との戦いに心を躍らせる夏侯淵はまだ言い争いをしている夏候惇、袁術をなだめさせて、先行させた軍と合流する為に足を進める。
「秋蘭ちゃんもやる気だね、私も楽しみに…あれ、私も華琳ちゃんに毒されてきちゃったかな?」
かの者達は必ず虎牢関に現れる
その者達との戦いが待ち遠しい・・・そんな事が脳裏に浮かんだ
「まぁいっか!私達は負けないよ♪」
モチベが上がらずに2か月ぶりになってしまいました・・・久々に書いたので、キャラ忘れてないから凄く心配に…
それと、自分でやっておいてなんですが・・・
曹操陣営やばくね?
これ他の陣営勝てるの?
って言いたくなりますよね~
カッコイイ?桃香をやりたかったから見逃してください・・・w
さてさて、次回から虎牢関攻防に戻るのと、一刀達も参戦する所までは進めたいと思います。
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