No.88721

無限銀河魔天王 第4話「死ぬ場所を求めるもの」

スーサンさん

第四話です。
いろいろと、グダグダですが、頑張って書いていきます。

2009-08-08 07:48:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:508   閲覧ユーザー数:484

 第4章「死ぬ場所を求めるもの」

 

 

 雷鳴の轟く深い暗闇の中、剣聖のマルスは片眉をひそめ、遊聖のレミーを睨みつけていた。

「いったい、何のようだ……この私を呼びつけるとは?」

 不機嫌な声を出すマルスにレミーはクスッと笑みを漏らした。

「わかってるんじゃないの?」

「……」

 腰の刀に手をかけ、マルスはレミーにいつでも斬りかかれる体勢をとった。

 この女は油断がならない。

 いつ自分達を裏切るかわからない妖しい雰囲気を持っているからだ。

 それがマルスに異様な警戒心を生み出すのであった。

 そんなマルスの表情を見てレミーは目元に影を作り邪悪に微笑んだ。

「躍起になってるようね?」

「それがどうした? 用件だけを言え!」

「地球の軌道上を漂っている、謎の衛星をあなたはどうみてる?」

「……」

「やっぱり、あなたも不信感を拭えないようね? でも、あの老いぼれに逆らえないから、あえて無視している……そんな所かしら?」

 両手を大袈裟に広げ、レミーは静かに……

 そして響くようにささやいた。

「どうかしら、あの老いぼれを脱却させる気はない?」

「なに!?」

 チャキンッと腰の刀を抜き去り、レミーのノド元に刀身を突き立てた。

「貴様、ヴァク様を裏切る気か!?」

「人聞きが悪い……」

 レミーは呆れたように首を振り、ヤレヤレとため息を吐いた。

「初めから、私はあんな戦士の誇りのない奴を仲間だとは思ってないわよ……」

「……」

「あなただって、わかってるはずよ……あの老いぼれの頭にあるのは、自己の名声欲だけ! あんな奴についても、何一ついい事はない……無念の最期を遂げたシードを役立たず扱いしたのが何よりの証拠よ」

 マルスはしばらく考えるように黙りだす。

 数秒の沈黙の後、レミーのノドに突き立てた刀を鞘に戻し、マルスは吐き捨てるように言った。

「少し時間がほしい……」

「出来れば、早くしてほしいわね……魔天王がここに攻めてくる前に」

「わかってる……」

 そういい、マルスは闇の中へと消えていった。

 自分以外なくなった世界の中でレミーは寂しげにため息を吐いた。

「私も、長く生きすぎたかしら……」

 

 

「それは本当か、巫女!?」

「うん……」

 光の叫び声に、ノートパソコンを弄っていた巫女は楽しそうに頷いた。

 おもむろに巫女は光の胸ポケットから一枚のフロッピーディスクを取り出した。

 それをノートパソコンのフロッピーディスクの差込口に差すとカチャカチャとキーボードを弄り始めた。

「敵の本拠地がわかったよ……見つからないわけだ! だって、敵は地球にはいないんだから……」

「う、宇宙にいるのか?」

「うぅん……」

 首を横に振り、巫女は自嘲気味に笑った。

「灯台下暗し……敵の本拠地は、今まで私達が戦ってた異空間の中にあったんだよ!」

「それって……敵さんは、わざわざ自分達の基地がある場所で戦ってたってことか?」

「一概には近い場所とは、言えないね? 異空間は限りなく無に近いから、例え、近くで戦っても、気付かない事だって多い……」

「……?」

 言ってる言葉がピンッとこないのか、光は怪訝そうに顔をしかめた。

 もっとも、光の理解など、巫女にとってどうでも良いらしく、嬉しそうに叫んだ。

「よしっ……これでいいぞ!」

 タイピングを終えると、巫女はニッコリ微笑んだ。

「座標軸のチェックは完了したよ♪ 後は、スカイバイクでここに行くだけだね?」

「よしっ! 早速行くか!」

 拳を握り締める光に巫女は眠そうに目をこすった。

「その前に……ちょっと寝かせて……」

「お、おい……」

 ドサッと倒れこむ巫女の身体を支え、光は呆れたように頬を掻いた。

「最後まで、これかよ……」

 

 

 同じ頃、光たちの住む小さな町の映画館の前で烈は楽しそうに笑っていた。

「はっはっは♪ 関西の田舎娘よ、あれが映画館だ! よく目に焼き付けておけ!」

「いちいち、突っかかるな! 映画館くらい、あたしだって見たことあるわい!」

「はっはっは……そうそう照れるな! 関西の田舎娘は、すぐにムキになる♪」

「誰が、ムキにさせとる!」

「まぁ、いいから行くぞ!」

「キャッ……こら!」

 いきなり肩を抱かれ、牡丹は顔を真っ赤に烈を睨みつけた。

 しかし、烈の無邪気な笑顔に牡丹はいつの間にか視線を合わせ辛くなり、俯いてしまった。

「うぅ……」

 まるで恋人のようなこの状況に牡丹は恥ずかしくって死んでしまいそうであった。

 

 

 映画館に入ると、早速映画は始まった。

 烈がチョイスした映画はB級映画の格闘王道ロマンス物であった。

 古流武術の達人が悪の格闘集団と戦うというカンフー映画で、内容もハリウッドには到底及ばない出来であった。

 しかし、抜群のカメラワークとスタント無しの純粋な格闘勝負は見るものに興奮を与えた。

 物語の序盤で主人公が謎の女の子を助けるため、悪の格闘かと戦うシーンに今は入っていた。

 主人公の格好良さにドキドキしているのか牡丹は高揚した顔で、身体を震わせていた。

 そんな彼女の表情を確認し、烈はしてやったりと拳を握り締めた。

(何となく、好きそうだから選んでみたが、本当に好きだったとはな!)

 スッとイスにもたれ掛かると……

 烈の顔が一変した。

「牡丹……少し、トイレに行ってくる」

「うん……」

 映画に集中してるせいか、烈の顔も見ようとせず、牡丹は反射的に頷いてしまった。

 イスから立ち上がり、他の客の迷惑にならないようにそっと上映室から出ていくと烈は静かに振り返った。

「貴様は何者だ?」

 烈が後ろを振り向くと、後ろにいた長身の少女はニヤリと頬を吊り上げた。

「初めまして、私の名前は遊聖のレミー……破滅の四天王の一人」

「破滅の四天王……あのリューとかう卑怯者の仲間か?」

「あれは、戦士として失格だけど……仲間でないと言えば、嘘になるわね?」

「じゃあ、俺を殺しにきたのか?」

「その逆よ……決闘を申し込みに来たのよ!」

「決闘……?」

「そう……今日の昼零時に空間転移の術を使いなさい……後は私が勝手に決闘場に案内するわ」

「……罠じゃないだろうな?」

「ご自由に想像しなさい」

「クッ……」

 烈は歯を食い縛り、静かに頷いた。

「受けてやるさ……覚悟しな!」

「お互いにね?」

 烈の答えを聞くとレミーの身体が陽炎のようにゆらめき、景色に溶け込むように消えていった。

「何を考えてるんだ?」

 

 

 深い……

 本当に深い暗闇の中……

 巫女は不思議な温かい力に吸い込まれるように宙に浮いていた。

「ここは……」

 そこは見覚えがあった。

 いつも、自分に敵のことを教えてくれる、不思議な世界……

 暗闇だが、恐怖はない。

 まるで、母親のお腹の中にいるような安らぎすら感じる。

 巫女はそっと目を開け、目の前の光の球体を見つめた。

「君は……いったい?」

 光の球体は伸縮を繰り返し、巫女に何かを訴えるかのような動きを見せた。

「……」

 不思議と巫女はその光の球体の言いたいことがわかった。

「最終決戦が近づいているんだね?」

 光の球体はその光をさらに強くし頷いた。

「私たちとあいつら……どちらかが生き残ることで、世界の命運は決まる……」

 光の球体は最後に今までで一番強い光を発し、巫女を包み込んだ。

 巫女はその光をジッと見つめ、おもむろに頷いた。

「助言をしてくれるのは、これっきりなんだね?」

 巫女はさらに力強く頷いた。

「大丈夫! 私には光くんがついてるから、怖くないよ!」

 巫女の言葉に光の球体は安心したかのか、巫女の身体を光から開放していった。

 

 

 烈の時計の針が零時を指そうとした頃、牡丹の様子に異変が起こった。

 目が虚ろになり、身体が変にふらふらさせ、今にも倒れそうであった。

 その様子を眺め、烈はそっと牡丹の目に手をかけ優しく下ろした。

 それを合図に牡丹は崩れるように烈の身体のほうへと倒れいていった。

「今は眠っていろ……」

 牡丹の胸ポケットの中から一枚のパスポートを取り出した。

「粉砕突進……超特急ライナーゼオン!」

 その瞬間、烈と牡丹の間に眩い光が溢れ出し、二人を包み込んでいった。

 

 

 深い暗闇の中で遊聖のレミーは自分の専用機・大天帝に乗り込み腕組んでいた。

「もぅそろそろ来る頃ね?」

 レミーの言葉に反応するように、暗闇の中から列車の汽笛が鳴り響いた。

 大天帝の前に二本の列車のレールが敷かれ、その上を駆け抜ける黒いSLの胴体を持つロボットが現れた。

 レールの上から飛び降りるとロボットはビッと拳を突き立て、叫んだ。

「超特急ライナーゼオン……参上!」

「来たようね……?」

 大天帝は両手の手の平から光のエネルギーをため、一本の大剣を作り出した。

「帝天剣!」

 帝天剣を振り回し、大天帝の中にいたレミーは嬉しそうに微笑んだ。

「感謝するわよ、ライナーゼオン!

 長きに渡り、生き続けた私にとって、何よりの願いは強者と戦って死ぬことだった。

 そして、今、その願いは叶えられる!」

「御託は並べなくっていい! 死ぬか生きるか……それは戦いの最後に決まる!」

 ライナーゼオンの右拳が光り輝き、両足に取り付けられた車輪が高速回転した。

「超高速奥義……特急波・爆壊炎!」

「帝天剣奥義! 流爆破!」

 ライナーゼオンの拳と大天帝の剣がぶつかり合い、大爆発を起こした。

「クッ……」

 両足の車輪を逆回転させ、ライナーゼオンは大天帝から離れようとした。

「逃がすか!」

「誰が逃げる!」

 ライナーゼオンは両足の車輪はお互いに逆方向に回転させ、身体をコマのように回した。

「昇機拳!」

 身体全体をスクリューのように回転させた拳が大天帝のアゴを直撃し、大天帝の身体が大地に叩きつけられた。

「グッ……」

 バッと立ち上がり、大天帝は嬉しそうに笑った。

「やるじゃない! さすがは、私の好敵手……有終の美を飾るにふさわしい戦いよ!」

「勝手に終わらせてんじゃねーよ!」

 ぶんっとライナーゼオンの車輪のついたカカトが大天帝の脳天を叩きつけた。

「グッ……」

 凄まじい衝撃に膝をつく大天帝にライナーゼオンはさらに距離を置き駆け出した。

「オラッ!」

「っ!?」

 ライナーゼオンの拳が大天帝の顔面に飛び、大天帝の身体が後方へと吹き飛ばされた。

「ふふっ♪」

「何が可笑しい!?」

 ライナーゼオンはいきなり笑い出す大天帝に不気味な恐怖を覚えた。

「これが死力を尽くして、負ける爽快感かと思うと嬉しくってね……」

 グッと、立ち上がると大天帝は降伏するように両手を広げた。

「負けた……私の負けよ! 止めを刺しなさい……戦士のとして、美しい最後を私に頂戴」

 レミーの言葉にライナーゼオンは呆れたように首を横に振った。

「その必要はない……」

「なに?」

「はなっから勝つ気のないお前が、俺に勝てるわけがない……死に場所を探す前に、美しく生きる場所を探したほうがいい……」

 最後に付け足すように、ライナーゼオンは大天帝から背を向けた。

「お前は……殺すには惜しい」

「ライナー……ゼオン……?」

 恥ずかしさを拭うようにライナーゼオンは暗闇の中を駆け抜けていった。

 大天帝の中にいたレミーは自嘲気味に笑った。

「私とした事が、死ぬことを意識しすぎて、礼を欠いていたなんて……笑い種ね?」

《ついでに、必要のない命に終止符を打つがよい!》

「っ!?」

 その瞬間、大天帝の周りに凄まじい爆風が巻き起こった。

 

 

 時を同じくして、剣聖のマルスは地球の軌道上を彷徨っている謎の衛星の近くにいた。

(こいつ……鼓動していている!?)

 まるで、心臓のように伸縮を繰り返す衛星にマルスは腰に下げた刀を抜き去り叫んだ。

「大天王召喚!」

 一閃の雷鳴が轟き、マルスの身体を包むように巨大な白き巨神が現れた。

「これが、何なのかはわからないが、ほっとくわけにもいくまい!」

 大天王は腰の刀を抜き去り、大きく振りかぶった。

「大天奥義!」

 大天王の刀の剣が淡い光を溢れ出した。

「切滅剣!」

 大天王の刀が衛星を切り裂こうとした瞬間、凄まじい光があふれ出した。

「これは……?」

 光に弾き返された刀を見て、マルスは目を見開いた。

《よく来たな……破滅の四天王の一人、剣聖のマルスよ!》

「なっ……星が喋った!?」

《我は人類を守護せし、大いなる巨神の父である》

「巨神……魔天王やライナーゼオンのことか?」

《そうだ……》

 謎の衛星の言葉に大天王は信じきれず、首を横に振った。

 謎の衛星も最初から理解を得る気はないのか、単刀直入に用件を述べた。

《言っておく、ヴァクに付くのはやめておけ! 奴についても、破滅するのみだ……》

「なにっ!?」

 刀をまた構える大天王に謎の衛星は静かに答えた。

《今、奴は確実に力をつけ始めいている。自分にとって、邪魔になる存在を着々と消し始めている?》

「邪魔になる……レミーか!?」

《そうだ……今、レミーはヴァクの裏切りにより、死んだ》

「バカなことを! なぜ、ヴァク様が!?」

《そういう男だ……自分の名声欲のためなら、平気で部下を捨て駒にする……だから、私は奴を追放した。人を守りし者から》

「お前はヴァク様と関係あるのか?」

《深い関係がな……今、最終決戦が始まろうとする!

 魔天王が勝つか……それともヴァクが勝つか?

 それは私のもわからないが、一つ言えることは、ヴァクについて得るものは何一つないということだけだ》

「……貴様も、レミーと同じことを?」

《何か、ヴァクに恩義がありそうだな? だが、それすらもヴァクは計算で動いてる。

 後ろを振り返り、もう一度考え直すんだな?》

「っ!?」

 その瞬間、大天王の周りに凄まじい光が溢れ出し、大天王の姿を消し去った。

《魔天王……そして、ライナーゼオン……地球を頼んだぞ?》

 

 

 元の世界に戻った烈は寝入っている牡丹を抱え、そっと茜色の空を見上げた。

「感じるな? 最終決戦が近いことを……」

 牡丹を優しく抱きかかえ、烈は自分の家へと歩き出した。

 


 
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