「なに誤解してんのよ、バカぁ!」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第参部)
EX回:第4話 <お祭り広場>
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ブルネイ泊地の港湾部を順調に進む内火艇。気温は高いし日差しも強いが、やはり湿気は少ないから過ごし易そうだなと私は思った。
「司令」
いきなり隣に技術参謀が座ってきた。まずい、小言でも言われるのか? ……と思わず緊張した。
だが彼女は意外にも、さらに身を寄せて来たので驚いた。
「まさか、発情期の何とか……ですか?」
あ、しまった失言……と思ったときには遅かった。
「なに誤解してんの、バカ!」
やや抑え気味ながら私の脇腹を小突く彼女。そう、相手は軍令部の参謀なのだ。とても冗談の通用する相手ではない。
「痛ッ……失礼しました!」
思わず私も声を潜めた。やっぱり怖い。
言うまでも無く彼女は艦娘だ。一瞬、私は呼吸が止まるかと思うほど痛かった。それでも多少は手加減してくれたようだったが……。
技術参謀は船内に居るブルネイの五月雨を警戒しながら話を続ける。
「良い? あの寛代に偵察させるのは無理。それに、ここの様子は普通じゃない。ここは私が代わりに病人の振りをするから偵察は任せなさい」
仕切ってきた。立場上、技術屋の血が騒いでるんじゃないか? とも思ったが。
まあ彼女は上官だ。抵抗しても無駄だから、お願いするか。
「では、お願いします」
「フッ、任せな」
やや得意そうな笑みを浮かべた参謀だった。艦娘とはいえ、男勝りだな。
ふと向こうを見ると船の舳先(へさき)から海面を覗き込んでいた金剛が恨めしそうに振り返った。唇をかんでいるが何で、お前がそんな顔しているんだ? 別にイチャついているわけじゃないからな。だいたい、お前は色恋関連の感度が高過ぎだよ。
そんな金剛の背中を比叡がさすっている。ああ、美しい姉妹愛ではないか! ……ということで私は寛代に命令変更を伝えに行く。彼女は相変わらず無言だが、私の顔を見て頷いた。多分、分かっているよな?
「あーあ。こんなリゾートみたいなところで演習するよりゴロゴロしたいわあぁ」
龍田さんは船べりから青い海面を片手で撫でている。時おり雫を垂らした手を上げて、きらきらと光る雫を見つめている。マイペースだな。
赤城さんは、まだ煎餅みたいなのボリボリ真顔で食べている。そのギャップが何とも言えない。それは美保から持ってきたのか?
私が物欲しそうに見えたのだろう。彼女は急に私の方へ袋を突き出して言った。
「ひれい(司令)も食べまふ?」
「いや、良い」
最近、彼女も性格が変わったのだろうか。それとも今まで猫かぶってたのか? でも、ざっくばらんな赤城さんの方が良いけどね。
ふと後ろのほうを見ると、静かな艦娘がいる。そういえば夕張さんも居たんだ。ずっと静かに本を読んでいるから全然、分からなかった。よく見るとあれ? メガネかけているのか? 私に気付いた彼女は顔を上げた。
「最近、視力が落ちましたよ」
そりゃ、ご愁傷様。
「開発も、ほどほどにね」
「ハァイ」
……軽いな。まぁ良いか。
船べりでは金剛だけでなく夕立も完全にダウンしている。せっかくの金髪が……オイオイ、青い海面に流しそうめんみたいに流れているぞ! もっとも、そのコントラストは綺麗だけど。
「ぼいぽい……」
私は彼女に近づいて声をかけた。
「まるで南国の貞子だな」
「貞子って誰? 彼女?」
顔面を海に伏せたまま応える彼女。
「いや……」
説明し難いな。
相変わらずタフなのは日向と祥高さんらしい。機内でも、ずっと起きていただけでなく物静かだった。それはそれで凄いよな。あとは性懲りもなく隠しカメラで港湾部を撮り続けている青葉さんか。五月雨に注意されても諦めない根性はさすがだ。
「ブイ!」
振り返りながらブイサインを作る青葉。おいおい、そんな格好をしたら五月雨にバレるって! 案の定、運転台の五月雨は少し不思議そうな顔をしてチラチラこちらを見ている。焦るなあ。
やがて内火艇はブルネイ泊地の桟橋に到着した。そこから少し離れた場所……岸壁から見える小高い丘のような場所には屋台や櫓(やぐら)が立ち並んでいる。既に、お祭りも始まっているようだ。艦娘だけでなく現地の人もかなり出歩いている。今日は、お祭りで基地の大部分を外部の一般の人たちにも開放しているようだ。
「お祭りか」
私は呟いた。
「そのようですね」
祥高さんも応える。
美保のように埋立地でセコセコやるのとは違う。この敷地の広さとカラッとした気候。良いなあ、ここでは何でも出来そうだ。
内火艇はエンジン出力を落としながら接岸する。岸からは他の艦娘たちがロープを取り、船体を引き寄せながらテキパキと固定作業を進める。ブルネイはスタッフの艦娘も、たくさん居るようだな。
運転台から、しばらくどこかと交信していた五月雨。彼女は船体のエンジンを止めると桟橋の艦娘に近寄って何か伝達していた。
やがて彼女は私たちに向き直ると案内をする。
「皆さん、ようこそブルネイへ! 足元に気をつけて、どうぞ……」
それを受けて美保のメンバーたちも上陸を始める。
改めて埠頭や広場の様子を見る。屋台に人ごみ……チラホラと艦娘の姿も見える。そして現地ブルネイの憲兵さん……ブルネイ軍ではなく帝国陸軍の連中の姿も確認した。私服でも、ちゃんと分かるぞ。
お祭りだからと青葉は本来のカメラを取り出してあちこち連写している。
しきりに何度か無線で通信をしていた五月雨が言った。
「私たちの提督が皆様と直ぐに、お会いするそうです。数分で参りますので申し訳ありません。この場所で、しばらくお待ちください。病気の方は私が衛生隊までご案内致しますので、こちらへどうぞ」
私は汗を拭いながら応えた。
「手間をかけるな、助かるよ」
「は……はい」
五月雨は、慌てたように敬礼をした。
「じゃ……こちらに、お願いします」
「は……い」
わざとらしく病人の振りをする技術参謀。意味ありげにウインクをすると彼女は五月雨の後を軽やかに付いて行った。おいおい参謀様、それじゃヤバイって……もっと病人らしく歩いて下さいよ。
それを見ていた夕張も腰に手を当てて呆れたように言った。
「あれで病人? 笑っちゃうわね」
「本当ねぇ」
龍田さんも同意する。
あの人も、とっつき易いのか難しいのか未だによく分からない。参謀なんてどうせ奇人変人が多いから別に良いけど。頼むから、この敷地内のどこかで突然行方不明にならないでくれよ。
日向が近寄ってきて言う。
「司令、私たちは本当に遭難者と思われているか?」
「多分……」
私は軽く腕を組んで応える。
祥高さんも不安そうにこちらを満ちているので私は言った。
「あの五月雨も何度も司令部と交信していたようだから、もし疑われていたら直ぐに憲兵が動くだろう。だが監視も付けずに、この場で我々に『待て』ということは、今のところ問題ないのだろう」
日向も頷く。
「そう……だな」
「でも、ちょっとは遭難者っぽくしたほうが良いでしょうかね?」
カメラ片手に青葉がニタニタして言う。
私は応える。
「そこがまだ分からない。違和感は残るとしても最初の予定通り『模擬演習』という羽目になるかも知れないしな」
「ええ?」
声を立てたのは比叡。
「あの嵐で大変だった上に、直ぐに演習なんていう無謀です!」
彼女は、まだ体調の悪そうな金剛を庇っている。
そういえば金剛と比叡、それに夕立は近くの簡易テーブルのイスに腰かけていた。
その隣の赤城さんも頷く。
「確かに。出来れば、少し休みたいですね」
赤城さんは、きっと食べ疲れもあるのだろう。
「やれやれ……」
私は半ば呆れながら金剛姉妹と夕立が座っている丸テーブルの隣のテーブルに腰をかけた。
比叡は、相変わらず金剛の背中を擦っている。
「お姉様、しっかり」
「who next over ……」
金剛がテーブルに突っ伏したまま呟く。
「ポッ……」
これは夕立だ。金髪が爆発して鬼婆のようになっている。
直ぐ側のテーブルでダウンしている金剛と夕立は、このまま様子を見るしかない。私は他の艦娘たちに、通信可能な範囲での一時解散を命じた。直ぐに、それぞれが適当なグループになって祭りの喧騒の中へ散っていった。
周りには屋台が一杯だ。よく見ると明らかに、そこに立って店子をしているのは艦娘たちだ。艦娘の量産化がブルネイで実用化されたと聞いてはいたが、ここにいる艦娘の、ほとんどが量産型なのか? それにしては皆、手つきが良い。そういう芸当って後付けで覚えるのだろうか? 私はつい、一昨昨日(さきおととい)の境港での、お盆祭りを思い出す。
「お腹が空きましたね」
何処にも行かなかった赤城さんがボソッと呟く。うん、確かに良い匂いだな。時計を見ると確かに、お腹が空く時間になってきた。
何気なくポケットをまさぐって……しまった! 私としたことが、お小遣い持ってきてないじゃないか?
そういえば会計も兼任している祥高さんは寛代と行ってしまったし。ここにはダウンした艦娘二人と比叡に赤城さんだけ。
やれやれ、ちょっと意気消沈した私は、ぼんやりと景色を眺める。
連日鎮守府に詰めてると金銭感覚が麻痺するのだな。思わず脱力。
しかし暑い。季節は常夏だろうか? そもそも、ここの通貨って何だろうか? 円(yen)なのか? あれこれ、取り留めのないことを考える。龍田さんじゃないが、こういう陽気だと、ただゴロゴロして居たくなるよな。私は帽子を脱いで蒼い空を見上げた。
やはり美保湾とは空の青さが違う。雲は湿気をたくさん含んでいそうだ。ああいうのが降り出すと大変だろうな……。
少し風が出てきた。椰子の木がサワサワと音を立てていた。
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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サイトも遅々と整備中~(^_^;)
http://www13.plala.or.jp/shosen/
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第参部」の略称です。
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美保の司令たちは違和感を覚えつつも現地に「上陸」した。そこでは盛大な、お祭りが開催されていた。