虚しくも『限界突破』を会得出来た者はいなかった
だが、それを理由に負ける訳にはいかない
一刀達は勝利を誓い
遂にその時がきた!!!
七節 ~陸を覆う黒龍の軍~
誓いをした翌日の朝
一刀達は気を最大限にまで抑え込み、隠密の如く『龍天城』へ進軍していた
勿論、過去・未来を含め重鎮達のみだ
管理者の力を使えば確かに移動は容易だが、下手なことをすれば感づかれるだけ
その為、自分達の足で行動していたのだ
ハイテクに対抗するのはローテクと誰かが言っていた気がする
全員が慎重に足を進める
一刀(未来)「こっちの方角だ」
未来の一刀が先陣を切る
今現在いるのは『龍天城』を突っ切る陸路を迂回した岩山道
位置的には辺りを見渡せられる場所だ
頂上に近い位置から頭を出したり、隠したりして周りの状況を確認しつつ進んでいる
璃々(未来)「敵陣が何処まで来ているか分かりません
用心して進みましょう」
未来の璃々は後方にいる皆に伝える
一刀「了解」
愛紗「心得た」
一刀や愛紗が筆頭に返事をするが、一部の面々は
春蘭「う、うむ………
どうも、コソコソするのは性に合わんな……」
鈴々「にゃあ……もっと豪快にやりたいのだ……」
猪々子「でもまぁ、しゃーないよなぁ……」
ちょっと息苦しそうだ
渋々、進むこととなる
暫く足を進めると
一刀「…………ん?」
一刀が何かに感づく
一刀だけではない
武将達が感じ取っていた
秋蘭(未来)「この気は…………」
蒲公英「絡繰人間の気………だよね……」
蒲公英が不安げに呟く
翠「あぁ………しかも1体じゃないな」
蓮華「えぇ、大軍ね」
蓮華が目付きを鋭くする
左慈「どうやらお出でなすったようだな………」
左慈は咥えて短くなっていた煙草を近くの岩山に押し付け、火を消す
一刀(未来)「あぁ、更に言えば大軍ってことは本隊……
龍天や『龍天五獄隊』の面々が揃ってる筈だ」
未来の一刀は少し岩山から顔を出し、辺りを見渡す
だが、まだ大軍らしき姿は見られない
于吉「この辺りで待ち伏せにしませんか?」
于吉の案に華琳が頷く
華琳「そうね、下手に動かない方がいいわ
ここで待機しましょう」
全員が頷き、その場で待機することとなった
………………
……………………………
数分後…………
恋「…………気が強くなってきた」
恋がボソリと言う
一刀「………」
一刀がそっと覗くと
一刀「っ!!!来たぞ!!!」
小声で皆に教える
全員が臨戦体勢となり、岩山から状況を確認する
岩山の先で見たものは陸を覆う黒龍の軍であった
愛紗「あれが『血光軍本隊』………!!!」
思春「一筋縄ではいかなさそうだな………」
雪蓮(未来)「『血光軍特殊部隊』は『龍天五獄隊』同様、5種類の部隊で編成されていて、各2万の絡繰人間で構成されているわ」
未来の雪蓮が大まかな説明をする
一刀「ということは10万の絡繰人間の部隊ってことか……」
華琳(未来)「更に言えば、私達を抹殺するためだけの『特殊部隊』に選ばれた戦闘により特化された絡繰人間よ
個々の強さは通常の絡繰人間とは比べ物にならないわ」
未来の華琳は注意を促す
焔耶「つまり、過去で戦った時より厄介ということか………」
冥琳「雑兵と武将の違い程らしいな……
それが10万となると容易いことではない」
春蘭「よし、ならば奴等の出鼻を挫いてやろう!!!」
春蘭が『七星餓狼』を担ぎ上げる
それを慌てて霞と翠が止めにはいる
霞「阿呆か!!!今の話、聞いとったんか!!?
そんだけの強さを備える軍団に突っ込んだら、返り討ちにされるに決まっとるやんか!!!」
翠「あたしらが相手をするのは10万の絡繰人間じゃなく、『龍天五獄隊』と残る2人が控えてるんだぞ?」
秋蘭「2人の言う通りだ、姉者
むやみやたらに戦えば大陸が奪われてしまう
落ち着いてくれ」
春蘭は3人に言われて渋々頷く
一刀(未来)「だが、結局は倒さないとならない
しかし、全員で行くのは得策じゃない」
左慈「かといって俺達の妖術も、迂闊に使えば隙が出来ちまうしな……」
雛里「う~ん………」
雛里が頭を抱えてしまう
卑弥呼「迂闊じゃった、そこまでの事を考えておらんかった」
貂蝉「致命的ミスよねぇ………」
貂蝉が呟いたタイミングで
一刀「となると……………やっぱり『あの手』しかないか………」
一刀が覚悟を決めた表情で言う
蓮華「一刀?何か策があるの?」
蓮華は一刀に聞く
一刀「ある意味、とっておきだけどね………
こればかりはやるしか…」
そこまで言った所で未来の一刀が察する
一刀(未来)「………まさか、過去の俺よ……『アレ』をする気か?」
一刀「そのつもりだ」
未来の一刀は複雑な表情となる
一刀(未来)「本気で言ってるのか?
まだ『龍天五獄隊』すら倒していないのに、いきなり『アレ』をする気か?」
一刀「そうでもしないと、この状況は打破出来ないだろ?」
一刀(未来)「だがなぁ…………」
2人の一刀だけで話が進んでしまったので華琳がここで区切る
華琳「ちょっと、話が分からないわよ
どういう意味よ?」
一刀「…………実は……」
一刀は重々しく口を開く
ゴォォォォッ!!!
岩山から空へ向かって1人が飛び立った
桃香「大丈夫かな…………」
桃香は心配の表情で言う
桃香だけでなく、全員がだ
于吉「北郷さんの言う通り、これが最善の策ですよ」
祭「苦肉の策…じゃがな………」
星「虎穴に入らずんば虎子を得ず……とはよく言ったものですな、主は……」
風「虎穴はおろか、龍の巣窟ですがね~……」
全員が『龍走』をしていった人影を見送る
愛紗「……ご主人様、ご無事でいてください……」
そう、『龍走』をして飛び立ったのは過去の一刀であった
一刀「……案の定、大反対だったな……」
一刀は『龍走』をしつつ、『血光軍』にバレぬよう空高く飛び、鳥に偽装して接近する
その表情は苦笑いだ
一刀「まぁ、でしょうねって感じだけどね…………」
一刀は『血光軍』の上部に移動しつつ、飛行を続ける
一刀「これが『血光軍特殊部隊』か……正に陸を覆う黒龍の軍ってとこか」
10万の軍が綺麗に縦に2万ずつの列を作って行進している
進行方向から向かって見て左から『火炎軍』『雷神軍』『暗黒軍』『風神軍』『水氷軍』となっている
その各軍の先頭には部隊将である炎掌・雷昇・闇霊・風刻・氷柱がいた
そして、その中心にいるのが『闇の副大将』斬魔と『血光軍』の大将・龍天だ
一刀「様子を見る限り、まだバレてないな…………
そりゃあ、気づかないよな………過去から未来へ来るなんて予想できないよな……
だって、俺だって未来から璃々ちゃんが来るなんて予想出来なかったもん」
一刀は龍天の上部を旋空する
一刀「さぁて、腹を決めるか………」
一刀は指の骨をポキポキと鳴らし、頭を左に一回転、右に一回転させて戦闘準備をする
徐に得物である『龍終』を引き抜き、刃を天へ仰ぐ
一刀「………骸漸、力を貸してくれ」
ボソリと呟く一刀
そして、
一刀「………行くぞっ!!!」
ゴォォォォッ!!!
一刀は『龍終』を構え、そのまま急降下を始めた
………………
………………………………
その頃の『血光軍』
炎掌「遂に来たぜ、この時がっ!!!」
炎掌は興奮気味に狂喜を露にする
雷昇「ケケケっ!!!龍天様が大陸を統一される時が来たぜっ!!!」
風刻「うむ、その為には北郷一刀に引導を渡さねばな」
雷昇の言葉に風刻が被せる
氷柱「まっ、直ぐに終わるでしょ♪
何せ、今日の私は化粧のノリが絶好調なんだもの」
氷柱は周囲に浮遊した氷に化粧道具を乗せ、化粧をしていた
氷柱は能力を使っているようだ
闇霊「それについては聞いていないが、絶不調よりマシだな」
闇霊は氷柱の言動について呆れながら仕方なく答える
『龍天五獄隊』はかなりリラックスした状態で進軍していた
斬魔「全員、体調は万全のようですね」
龍天「そうだな」
斬魔と龍天は現状況を見ては微笑む
龍天「だが、斬魔よ
本当に李典は問題ないのか?」
龍天は斬魔に気がかりであった事を聞く
斬魔「えぇ………最早、李典は我々の操り人形に過ぎません
我々が城に戻る頃には全てが丸く治まっていますので、問題ありません」
龍天「そうか、ならば良いのだが………」
龍天は斬魔の返答に安心して進軍を続ける
氷柱「龍天様、力を抜いて下さいな♪
私達が殺りますから、龍天様や斬魔様の出る幕は有りませんよ」
雷昇「ケケケっ!!!氷柱、偶には良いことを言うじゃねぇか!!!」
風刻「氷柱の言う通りです、龍天様
我々が全てを跪かせますので」
雷昇と風刻は龍天の方へ振り向いて不敵な笑みを浮かべる
氷柱「ほら、私達の勝利を願って渡り鳥達も祝福してくれていますよ♪」
氷柱は顔を見上げて言う
『血光軍』の頭上には渡り鳥と思われる鳥が編成を組んで飛行していた
雷昇「この時期に渡り鳥とは珍しいなぁ!!!」
炎掌「あぁ、そうだなアニキっ!!!」
雷昇と炎掌の兄弟は渡り鳥を指さして嗤う
だが、ここで
ある異変が起こる
闇霊「…………ん?」
それは闇霊と風刻が気がついていた
闇霊「………あれは鳥か?」
風刻「ん?……一羽が滑空してくるな……」
群れの中の一羽が急降下してきたのだ
闇霊「何だ?あの一羽は……?」
風刻「んん?」ピピピッ!!!
風刻は『万能眼鏡』で分析する
ゴォォォォッ!!!
それは鳥という生半可な存在ではなかった
風刻「……………っ!!?」ピピピッ!!!
『万能眼鏡』の分析結果に風刻は目を見開く
闇霊「どうした?風刻」
風刻「まさかっ!!?そんな筈はっ!!!」
ゴォォォォッ!!!
一刀「………………………」
その姿は光輝く服を纏う1人の凛々しい男
『天の御遣い』北郷一刀であった
その速度は『龍走』+重力による通常の数倍の速さ
風刻でさえ、捉らえきれない
一刀「『北郷流奥義・桜吹雪』っ!!!」
フォンッ!!!
ザシュッ!!!
ザシュッ!!!
ザシュッ!!!
ザシュッ!!!
ザシュッ!!!
ドォォォォンッ!!!
絡繰人間達「「「ぐあぁぁぁっ!!?」」」
一瞬の五連撃である『桜吹雪』が『血光軍』に命中する
更には気を込めた一撃であった為、それだけで凡そ100体の絡繰人間が只の屑鉄となる
風刻「くっ!!?」
風刻が待避命令を出す前に一気に混乱がその場を支配する
炎掌「何だぁっ!!?」
雷昇「状況を説明しやがれっ!!!」
雷昇と炎掌の檄が飛ぶ
絡繰人間「後方より『未確認敵』が出現っ!!!」
1体の絡繰人間が状況報告をする
風刻「いや、あいつは………!!!」
風刻が苦虫を噛み潰したような表情となる
龍天「なっ!!?」
斬魔「なに?」
砂煙と屑鉄の山から『龍終』を担いで現れた一刀の姿を見て全員が唖然となる
一刀「『天の御遣い』北郷一刀…………」
一刀「見参っ!!!」
……終……
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『限界突破』の鍛練を終えた一刀達であったが、結果誰1人として会得することが出来なかった
だが、一刀達は負ける訳にはいかない……
全ての平和を取り戻すまでは!!!