お化けが電気を付けたり消したりするので、そのたびにびっくりしてつけ直したり消し直したりするのだけれども、一向に改まらないので、私はいい加減嫌気が差している。お化けを懲らしめるための一計を案じ、お化け退治用のグッズを買ってくることにする。グッズはどこにでも売っているようなものがよいだろう。それで近所のホームセンターへ行き、お化け用のグッズはありませんかと聞くと、最近はお化けの被害に悩まされる方が多く、そんなグッズもたくさん売っていますよという。一体どんな種類の人間がお化けの被害に悩まされると言うのだろう。私はとりあえず手頃な価格のお化け用グッズを二三個買うことにした。これでお化けの被害がなくなるのなら安いものである。
早速使ってみるとしよう。お化けめ、調子に乗っていられるのも今のうちである。
初めにごきぶりホイホイみたいな形のちょっとした箱のようなお化け捕獲グッズである。これは中にお化けの好む臭いを出す芳香剤を設置しておいて、お化けが中に入ると中に書いてあるお経に捕まってしまって出られなくなって、衰弱して死んでしまうと言うシロモノだ。
設置して三日。何事も起こらない。お化けがやってきて、興味深そうにごきぶりホイホイ型捕獲器を見つめてはいるのだけれども、その中に入ろうともしない。やくたたずではないか。ちくしょうめ。私は二つ目のお化け捕獲グッズを試すことにする。
二つ目は良い形のお化け捕獲グッズで、箱罠のようななりである。中にお化けが入ってきていたずらしたくなるような電気のスイッチオンオフのダミーがおいてある。これで電気をつけたり消したりいたずらできるぞと思いこんだお化けが中に入ってきてスイッチに触れると、箱罠の入り口が閉まってしまってお化けは外へ出られなくなる。例によって壁にお経が書いてあるから、お経の効果でもってお化けは外に出られないのだ。箱罠はそのまま燃えないゴミの日にゴミとしてだせばよろしいのだ。
設置して三日目。お化けは箱の周りを興味深そうに見るけれども、やっぱり中に入ろうともしない。うろうろしてばっかり。ちょっと大きめの箱だったので少し値が張ったのにこのていたらく。ちくしょうめ。後で消費者センターに苦情を言ってやらにゃならん。
最後の一つ。これはもうばっちり効きそうなやつでその名もお化けモスキート音。お化けの嫌いな波長の音波を長し続けることでお化けが居づらくなるというものである。
早速音を発するとお化けが出て来て、「この間から何かやっているけれども、ネズミでも出たのかい」と聞いてくる。バカめお前が追い出されるのだ、と思っていると、お化けは椅子に座って、私のシケモクのタバコに爪楊枝を刺して、勝手に火をつけて吸い始める。いただくよ、とかなんとか、我が家に出てくるようになった最初の頃は言っていたのだけれども、最近では何にも言わないで吸ってしまうので傍若無人もいいところ。
ああ一向に効かないお化け対策グッズ! 誰がこんなものを考え出したのだろう。詐欺もいいところではあるまいか。
私は消費者センターに電話をかけるべく電話番号をスマホで検索していると、お化けがぽつりと「そんなに私は迷惑かい」と言ってきて、悲しそうに消えてしまった。
ざまあみろ! 私はお化けがいなくなったお祝いに「銀のさら」に頼んだ寿司を食べていると、夕方頃、お化けが帰ってきて、寿司を一つくれないかという。私は白い目でお化けを見たけれども、お化けは平気な顔をしており、私はガリを二切れ三切れ、お化けの方に投げつけてやると、ガリはお化けに食べられたのか、空中でスッと消えて、お化けは「いくらがよかったなあ」と言ってしょんぼりする。
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オリジナル小説です