風のリシアを探すため、三女神とトールは町の人から情報を聞き出しました。
「逃げられたのかい、そりゃあ残念だねえ」
「そうなんですよ。できれば先回りしたいのですが、どうすればいいのか……」
「先回り、ねえ。よく注意深く観察するといいよ、相手が相手だからね」
「ありがとうございます」
町の人から情報を聞いた三女神は、注意しながら風のリシアを探しました。
(怪しい行動をしているのは……)
(よく確認しなければな)
三女神とトールは、町の人達の様子を注意深く見ていました。
風のリシアは、町の人に変装しているかもしれないからです。
三女神とトールが、町の奥へ進んでいた時、彼女達はあるものを目撃しました。
フードを被った女性が、男性にナイフを突きつけていたのです。
「よくも、情報を知ったようね……」
「ち、違う! ただ、噂を聞いただけなんだ!」
「問答無用……消えてもらう!」
そう言い、フードを被った女性が男性にナイフを突き刺そうとした瞬間。
「待ちなさい! 風のリシア!」
女性の目の前に、三女神とトールが現れました。
「ちっ! 三女神か!」
その声で女性が風のリシアだと判明したため、三女神はすぐに戦闘態勢を取りました。
「今度こそ、あなたを……いえ、お前を倒します!」
「やれるものならば、やってみな!」
風のリシアは邪魔者を消し去るために、剣を抜きました。
「ってわけだ。お前は安全な場所にでも逃げてろ!」
「わ、分かった! ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
男性はトールに言われ、大急ぎで安全な場所に逃げ出しました。
「リシアよ、この雷神トールがお相手しよう! 恐れぬならば、かかってこい!!」
トールはミョルニルを掲げ、自らの名を高々と宣言しました。
これは、彼が覚悟を決める時に行う行動です。
それほどまでに、トールは風のリシアを倒したがっているのでしょう。
「トールさん……」
「分かりました、必ず彼女を倒しましょう」
「あたし達は絶対に、負けないからね!」
彼の覚悟を見た三女神も、全員戦闘態勢を取りました。
「そんなにアタシを本気にさせたいのか? なら、本気を出してやるよ!」
風のリシアが力を溜めると、彼女の周りに風が吹き荒れました。
「うっ!」
思わずジャンヌ以外は手をかざして防御しました。
「お姉様、大丈夫ですか?」
「わたくしは風を司る女神。これくらいの風など平気です」
「そうですか、なら大丈……!?」
激しい風が治まると、風のリシアは柄が緑の剣を持ち、緑の鎧を纏っていました。
「この剣と鎧は風でできているからな、物理攻撃も物理防御も通用しないよ! さあ、来るなら来い!」
「望むところです!!」
ジャンヌ、ゲール、バイオレット、トール、風のリシアの戦いが始まりました。
「エアリアルブラスト!」
ジャンヌは風のリシアに向かって風の衝撃波を飛ばしました。
しかし、風の衝撃波は明後日の方向に飛んで行ってしまい、風のリシアには当たりませんでした。
「ドレインライフ!」
リシアもドレインライフを風のリシアに放ちましたが、風の鎧の前に阻まれてしまいます。
「く……凄い強風……攻撃が届きません……!」
「お姉ちゃん、あたしに任せて! シャドウエッジ!」
「くっ!」
バイオレットが闇の刃を放ち、何とか風のリシアに僅かながらダメージを与えました。
「物理攻撃が通用しないと言っても、属性攻撃なら通用するだろ? ここはオレが行くぜ!」
「ぎゃぁぁぁぁ!」
トールはミョルニルに雷を纏わせ、風のリシアに振り下ろしました。
普通に振り下ろすだけでは通用しないと判断したトールは、
雷の力によってダメージを通す事を狙いました。
結果はその狙い通り、風のリシアにそこそこのダメージを与えました。
「今度はこちらから行かせてもらうよ! ストームソード!」
「真剣白刃取り!」
風のリシアが飛び上がり、風の剣をジャンヌに振り下ろしましたが、
彼女が真剣白刃取りで受け止めた事でダメージは免れました。
「定位置に戻らなければ……」
ジャンヌは後衛に戻り、敵の攻撃を受けないようにしました。
トールは打たれ弱い三女神を守るように動きました。
「安心しろ、アンタらはオレが守ってやる。だから安心して、あいつと戦いな」
「はい!」
「エアリアルブラスト!」
「ライフドレイン!」
「シャドウエッジ!」
「うあぁぁぁぁぁ!」
トールに守られながら、ジャンヌ、ゲール、バイオレットが遠距離から風のリシアを攻撃しました。
彼女達の猛攻により風のリシアの体力は大きく減りました。
「悪いけど、アタシが近接攻撃しかできないと思ったら、大間違いだよ!」
すると、風のリシアは後ろに下がり、風の剣に力を溜め、それを開放してトールに飛ばしました。
「ぐあぁぁぁぁぁぁ!」
トールは風の刃で切り刻まれ、大きなダメージを受けました。
「そのまま消えればいいものを……」
「誰が消えるものか!」
「帰るため、あなたを倒します! テンペスト!」
「ぐうぅぅぅっ!」
ジャンヌは嵐を起こして風のリシアの急所を狙いました。
嵐は弾丸となって風のリシアの急所めがけて飛び、命中して彼女に重傷を負わせました。
ですが、この時ジャンヌは気が付いていませんでした。
風のリシアが持つ風の剣が、嵐を纏っていた事を……。
「いくよ、ストームソード!」
「きゃあああああああああ!」
嵐を纏った刃がジャンヌを貫き、彼女は大きなダメージを受けてしまいました。
「お姉様!」
ゲールはジャンヌに近づき、彼女が攻撃を受けないように別の場所に下がらせました。
「ゲール……」
「お姉様は私が守ります。ライフドレイン!」
「あたしも援護するよ、シャドウエッジ!」
ゲールとバイオレットは能力で風のリシアを攻撃しようとしましたが、
風の鎧に弾き返されてしまいます。
「効かない!?」
「だったらこれでどうだっ!」
トールが雷を纏ったミョルニルを風のリシアに叩きつけました。
しかしこれも、風の鎧が防ぎました。
「何っ!?」
「アンタ達の攻撃はそんなものかい? アタシの攻撃を与えてやるよ!」
「きゃっ!」
風のリシアは風の剣でバイオレットを斬りつけました。
バイオレットはよろめきましたが、すぐに体勢を整えました。
「ああ、どうしても攻撃が届かない! どうすればいいの!?」
「諦めるな! 諦めずに攻撃すれば、いつかは倒れる!」
「そうですねっ、行きましょう!」
戦闘態勢を取り直した三女神は、自らの能力を全力で放ち、風のリシアに攻撃しました。
「テンペスト!」
「ライフドレイン!」
「ダークネスアロー!」
ジャンヌの風の能力、ゲールの生命の能力、バイオレットの影の能力が、
風のリシアが纏う風の鎧を剥がしていきました。
「ぐぅ……このアタシが、ここまで追い詰められるなんて……!」
「悪にはそれなりの報いが与えられるってのが常識なんだよ!」
そう言い、トールは強力な雷を纏ったミョルニルを構えました。
「や、やめ……!」
「とどめだ! 雷撃衝!!」
「ぎゃあああああああああああああああああ!!」
そして、ミョルニルが風のリシアの頭部めがけて振り下ろされ、同時に天から雷が落ちました。
その威力は、風のリシアを倒すのに十分なものでした。
「……ぐふっ!」
風の剣が消えると同時に、風のリシアは息絶えました。
「まったく、結構手間取ったぜ」
「でも、これで四使徒は残り一人になったんですよね」
「そうなるな」
「さて、誰が一体待ち受けているのでしょうか……」
「まずは、宿屋に泊まって休みましょう」
こうして、四使徒は一人を残すのみとなりました。
果たして、一体誰が三女神とトールの相手になるのでしょうか……。
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物語も終盤に入ってきました。