No.874909

【サイバ】クッキー【交流】

いたずらにはいたずらで。
ちょっとばかしえげつなすぎたか…(苦笑)

お借りしました。
盟子さんhttp://www.tinami.com/view/779418

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2016-10-18 21:25:21 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:772   閲覧ユーザー数:756

ノパルスの部屋----

 

ノパルスは悩んでいた。

 

数日後に迫った学校での家庭科でのクッキー作りの調理実習のことでだった。それぞれ思い思いの材料を持ち寄って、自分達のクッキーを作るのである。

クッキー作り自体は悩むような問題ではない。クラスはみんな楽しみにしているのだ。ノパルスも特に楽しみにしている一人だ。何を作るかはもう決めており、材料の段取りも立てている。ちなみにノパルスの班はトレイルミックス(こっそりクルミ多め)を入れるつもりだ。

問題は、せっかく作ったクッキーを無慈悲に奪うであろうクラスメイトの存在だった。

 

その名は出門盟子。

 

いつも給食で唐揚げ泥棒をやる彼女のことだ。おそらくあの実習でも同じようにクッキー泥棒するに違いない。何か対策を考えないと…。

 

 

 

そんな事を考えながらネットサーフィンしていると、あるページに目が止まった。

たまたま見かけた‟それ“をしばらく見つめ、詳しく調べるとノパルスは閃いた。

「…これだ」

そうつぶやくと、彼は‟それ“のレシピを印刷し母親とのもとへ急いだ。

「ねえ、母さん」

そういうと印刷したレシピを見せ、その材料を貸してくれるよう母親に頼んだ。

「…別にいいけど、これを君が作るの?何をする気?」

レシピを見て怪訝な顔をしながら母トゥーナは尋ねる。

 

「…イタズラ対策、かな…」

 

 

 

 

そして家庭科の調理実習当日----

 

「へっへーん♪いっただきー♪」

「あーっ!?まただーー!!」

「こらーーっ!!」

 

ノパルスの予想通り、盟子がみんなの作ったクッキーを奪い、家庭科室は大混乱。

みんなが追いかけるが、とても素早く飛び回り追いつけない。

やがて、最後にノパルスの班のクッキーにロックオン。 慌てて載せた皿を隠そうとするが…

「遅いっ!!」

「あっ…」

抵抗むなしく半分ほど盗られてしまった…。 そして…。

「やーい♪くやしかったら。ここまでおいで♪」

窓からクラスメイトに舌を出しながらそうおどけると、そのまま飛び去ってしまった…。

 

「あーん!!またやられた!!」

「くっそー盟子め!!あとで覚えて…ってあれ?」

くやしがっている唯と雪歩は目を見開いた。今しがたクッキーを盗まれたはずの、ノパルスの班の皿にはクッキーが全部揃っていたのだ。

 

「ねえ、なんでみんな揃ってるの!?今盟子ちゃんに…!?」

訳が分からず唯が尋ねる。

「え…えと…その…」

同じ班のステラが、答えに迷っている。

「…んー、出門さんが持ってったのは…」

 

 

 

 

 

学校の屋上----

手に入れた戦利品を、盟子は鼻歌を歌いながら物色していた。

「へへへ…大漁大漁♪」

その中で、四角い地味なクッキーを手にする。最後にノパルスの班から取り上げたものだ。

「あれ?あいつら何にも入れなかったのか?…まあいいや」

そう言いながらそれを口に放り込んで、咀嚼した。

 

 

ガキィィィン

 

「!!??」

硬い。

とにかく硬い。

思いっきり噛んだので、歯こそ欠けなかったが…ちょっと顎が痛い。

涙目で思わず口をおさえる盟子。

(なんだこりゃ!?)

 

「…それ、牛乳とかでふやかしたほうがいいんだって」

不意に男の子の声が。声の方を向くと、いつの間にかノパルスが立っていた。

「ノパルス!?なんだよこれ!?何入れたんだよ!?」

「クッキーじゃないよ。堅パンっていうんだって。

こんなこともあろうかと用意してたんだ」

 

堅パン、ハードタックとも呼ばれている。小麦粉と塩と水だけで作られた、保存を主眼に置いた食べ物である。焼いて暫くすると、場合によっては歯も欠けるほど劇的に堅くなるため、アイアンプレートなどとも言われている。

シンプルな材料のためその気なら手作りも可能。ノパルスは偶然これのレシピを発見し、対盟子用にあらかじめ作り、持ち込んでいたのだ。そしてクッキーが奪われる直前 、すり替えていたのだった。

 

「おま…なんつーもんを!!いたずらの名手であるこの盟子様にいたずらで返すとは…!!」

「あ…後ろ…」

「へ…?」

ノパルスに指され後ろを向くと…。

「げぇっ!?」

いつの間にか唯、和美、雪歩の三人がすぐそばに迫っていた。 ノパルスに気をとられているスキに近づいたのだ?みんな笑顔だが、目が笑っていない。

慌てて飛び逃げようとするが、上空にはカナエルが!!逃げられない!!

 

「ま…待て!!話せば分かる!!おいノパルス!!なんとか…って、もういねえし!!」

慌ててノパルスに助けを求めるもの、またいつの間にかどこかに消えていた。

 

「さあて、盟子ちゃん…」

「ゆっくりお話ししましょ…」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

 

盟子の悲鳴が天井にこだました…。

 

 

 

 

再び家庭科室----

 

 

「…う〜、やっぱり硬い…」

「…ねえ、あんまり無理しない方が…」

余分に持って来た手作り堅パンを食べて始末しようとするノパルスを心配したステラが声をかける。

「でも、もったいないし…」

かじりながら答える。

 

「すぐダメになるわけじゃないから大丈夫よ」

横で様子をみていた家庭科担当の戸隠真弥がそう答えた。

「それにそれ、古い本に‟この食べ物は歯医者に幸福をもたらすが、あなたの腹を満たす事はない“って書いてあるから無理はダメよ」

「…よく知ってるね先生…」

 

結局、持ち帰ってゆっくり食べていったそうな----。

 

 

 

 


 
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