No.870268

虫の音

第38回 #かげぬい版深夜の真剣創作60分一本勝負
お題:「虫の音」
に則って作成。

2016-09-20 23:04:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1148   閲覧ユーザー数:1140

 大規模作戦も無事終了したわけだし、どこか気が抜けてるってのはあるかもしれない。

 でもまぁ、こうしてのんびり散歩してるのもいいものかも。

 のんびり歩いていると、日に日に秋の気配が強くなってきたことがよくわかる。あれだけ強かった日差しが和らいでいくと、いよいよ夏も去にけり、って感じかしらね。この、多少手入れの行き届いてない、草むらの虫達もにわかに活気づいてくるってものよね

 夏は夏でいいけど、秋は秋でいいのよね~。

 

 名月に虫の声。うん。

 

 まぁ、まだ昼だけど……。

 

 は? 虫なら夏だってずっと鳴いてるじゃないって?

 いや、まぁ、そうなんだけどね。

 確かに夏のほうが虫は多いけどさ! セミだって虫なんだけどさ!

 でもそれとこれとは違うでしょうが!!!

 セミとスズムシなんて、例えば貨物船と客船くらい用途が違うでしょうが!!!

 セミは夏を感じて、いやいやそんな顔しないでってば! はぁ? ハルゼミ? もう! エゾハルゼミは置いといてってば! 大体このあたりにいないでしょうが!!

 まったくもう……。

 あんたってば、話の腰を折ることに関しては本っ当に天才的よね!

 いや、揚げ足取りかしらね? まぁいいわ。いいから、とにかく最後まで聞きなさいって。

 いい? コホンとわざとらしく咳払い。

 

 秋の夜長の朧月。ススキを渡る風に乗る虫々の声。ね。想像してご覧なさいって。いいでしょいいでしょ。お団子に栗に柿、梨に林檎に、もちろんご飯だってお芋だって美味しいし、何より秋刀魚よね、秋刀魚。ああ浜風、磯風抑えといてね。で、やっぱり炭火よね。備長炭の強火でパリッパリに皮を焼いて、とろける脂で舌鼓。脂は炭に滴って得も言われぬいい香り。そこにスダチかカボスかを、ジャっとかけてジュッという心地よい音ともに芳しい香りが立ち上り、お口には品の良い酸味に触発されて、ああ、考えただけでもうよだれが。ああ、そうそう大根も忘れちゃいけないわよね。大根。私はやっぱり鬼おろしでザッザカザッザカおろしてやって、醤油をほんのり、さっきのカボスかスダチをサッと振ってやるのが最高だと思うわ。いや、試してみなさいって。絶対美味しいから! 美味しくてほっぺた落ちるから。落ちたほっぺたがどうなるかは知らないけど、まぁ、その時に考えればいいでしょ。ああ、不知火のほっぺた落ちるんだったら、私が引き取ってあげるから心配いらないわよ。は? どうするつもりかって? まぁ、ツンツンつっついたり、頬ずりしたりするんじゃないの? え? 発想がキモいって? いいのよ。そんなこと実際に起こるはずもないんだし。

 ああ、でももう私の胃袋は完全に秋刀魚モードになっちゃったわ。夕飯、秋刀魚じゃなかったらどうしてくれんのよ?

 え、結局虫の音がどうしたかって? そりゃあ、美味しいものにまさるものがこの世の中にあるとは思わないわよいたいたいたい! やめてってほっぺたつねらないでって!

 もう、私のほっぺたは落っことしたりしないわよ!!


 
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