(前回の末文より)
ミズキ:そちらの状況、よくわかりました。それでは、“こちらが持っている”、情報を開示することにします。覚悟、いいですね?
コクリ
めぐみ側の全員が頷き、そして、驚愕の“事実”が始まったのでした。
<Dear My Friends!第2期 第12話 ヤマト国>
(昼過ぎ インタネ共和国内 城塞都市クリアン 最高裁判所・屋上)
ミズキ:私たちの母国『ヤマト国』は、知っての通り、ここから極東にある大陸の近くにある、小さな島国です。今は『ヤマト国』という国名ですが、昔は『ニホン国』と呼ばれていたそうです
めぐみ、イア:やっぱり! ルカさんやミクさんの世界は、過去の世界だったんだ!
しかし、ミズキ達の顔には、笑顔はなかった。
ゆうま:イアさんやルカ姫さんの話を聞いた上で言うが、話は“そう簡単”ではないんだよ
りおん:あちしたちの国の過去の記録やミゥ様の話と、実際に“同名の現地”に行ったお二人の話では、いくつか食い違っている事があるのだ
めぐみ、イア、ルカ姫:く、食い違い!?
ミズキ:『ヤマト国』と、私たちの過去の記録にある『ニホン国』には、確かに“アキバ”、正式な名称の“秋葉原”もあるし、流行っている食べ物の“ケバブ”も“イアちゃん人形”も、その人形の元になった“アキバ出身のアイドル”である“イア”もいました。ですが、ルカ姫さんの話やイアさんの情報から得た“アキバの状況が平和だった”という事が、大きな食い違いになっているのです
めぐみ、イア、ルカ姫:!?!?
ミズキ、ゆうま、りおん:『ヤマト国』の時も『ニホン国』の時も、私たちの国は、危機にさらされていたのです。『ギア』達とそれを操る『テイマー』達のためにね
ここで初見の言葉が出てきた。
めぐみ:テ・・・・テイマー!?
テル:『ギア』も最近知ったことだが、『テイマー』など、聞いたことがない名前だ。少なくても魔導の世界にはいないな
りおん:魔導の用語ではないんだ
ゆうま:『テイマー』って連中は、魔導関係ではない機械『ギア』を操っている、昔の『ニホン国』から今の『ヤマト国』まで、常に国の中心部分に関わっていた、実質の国の支配者だよ
学歩:拙者も初めて知る名前でござるよ?
ミズキ:学歩さんの地区“サホロ”とか、その下辺りにある『トゥ・ホック』辺りには、テイマー達は“政治的イメージ”を良くするために手を出さなかったのです。別に国を支配するのに、昔のショーグン達のような“全国制覇”等のような旧式の支配方法は必要ないですからね。要するに、国を“実質動かしている”地区と、国を司る政治を掌握してしまえば、もっと効率的に国を支配できますからね
ゆうま:その“実質動かしている地区”ってのが、昔のトウキョウとその近辺、今のオーエド地区であり、司るモノが置いてあるのが、ナガタとかその近辺だったんだ。昔の『ニホン国』にいたテイマー達は、長い時間をかけて、ギアを操って、じわじわと裏側からニホン国を操っていき、国を司る部分を完全掌握した時点で、国名をヤマト国に変え、他の地区の名前を簡略化したんだ
あり得ないような“ヤマト国の真実”だった。
イア:そ・・・・そんな・・・・
ルカ姫:それ・・・もう・・・ニホンじゃないわ・・・
めぐみ:そ・・・・・そんな馬鹿な・・・・
ミズキ:それと私たちの立場だけど、当然、ギアとテイマー達しか存在権利を与えられないような国、認めたくないから、生まれた地区、“アキバ”、を中心にして、ミゥを筆頭にした“レジスタンス”を結成して、内戦という名の“抵抗運動”をしてきたわ。でも、その活動もほとんど効果がないような状況になって…。ミゥは最後の賭けに出たの
テル:イアとあの魔法陣の事を考えると、なんとなく、私にはわかるぞ、その“賭け”
ゆうま:なんだと思いますか?
テル:イアの素材を使って、『過去を変える』、わけだな
それしか考えられなかった。
りおん:ご名答なのだ
ゆうま:イアとか過去に存在した素材を純粋素材に変えて、私たちの時間跳躍ベースマシンに装備し、大きく動くことになる年、『2013年』に時間跳躍して、『根元』になったギアを破壊し、テイマーを説得するんです
ミズキ:説得できなければ…最終手段に出ても良いと思ってます。こんな未来が出来上がる位なら…
めぐみは言葉を選びながら、ちょっと反論した。
めぐみ:あの…ヤマト国の実状は解った上で、お言葉ですが、『こんな未来』って言っているけど、私たちの近辺は、それほど破滅的な未来ではないんだけど…
ミズキ:そうですね。あなた達の過去の“ガイコク”は、テイマーに支配されないために、あっさりと便利な『ギア』を手放し、テイマーとはお金や手放したギアの素材全部のやりとりで引き上げて貰い、バベルの塔のようなビル群を撤去し、ギアではない道具や、過去の遺産“錬金術や魔法”の研究に入り、長い年月をかけて実際に実現させ、今のような魔法が存在する“牧歌的な暮らし”と“中世の世界”に戻したのです
ゆうま:テイマー達にとって、錬金術や魔法や中世のお城のような住居等は、ギアの範疇に入ってなかったので
りおん:アチシ達“アキバ人”達は、ギアを捨てない代わりにテイマーの迫害を浴びてきたんだよ
ミズキ:りおんが“過去の世界”って言葉に暗い反応を示した理由、わかるでしょ?
まさに絶望的な真実だった。過去だと思っていた“めぐみ”、過去の素材だと思っていた“イア”、実際に行ったところが過去だと思っていたルカ姫、この3人のショックは計り知れなかったのだ。
めぐみ:なっ・・・・・・そんな・・・・・・・
イア:そっ・・・・・そんな時代背景・・・・ない・・・ないよ!
ルカ姫:あの・・・・あの世界、平和だったはずなのに…
ゆうま:だから、イアの元の世界は、我々の世界の直接的な過去じゃないんだよ
ミズキ:過去の言葉で言うなら、“パラレルワールド=平行世界の1つ”かな?
リン:平行世界?
りおん:“考えられうる世界の1つ”って事なのだ
ミズキ:世界って、色々な“可能性のある道筋”が平行して進んでいるのよ。アペンドさんが作った『未完成魔法陣』はたまたまその世界に繋がったのだと思うけど、“完成版魔法陣”は、そもそも“ルカさんやミクさんの世界=別のパラレルワールド”にある材料を、“そのまま”の形で錬成素材に使ったはずです。だから、素材が存在した“パラレルワールド”に行くことが出来た。でも、“そのまま”では私たちの世界の過去の素材にはならない
ゆうま:だから僕たちの逆錬成魔法で、素材を純然たる“過去の素材”の意味まで純粋にして、取り付けるんです。おそらくこんなヤマト国だから、そんな素材になりえるモノは残ってないから、ミゥに選ばれた僕たち3人は、サホロまでなんとかくぐり抜けて到着し、船に潜り込んで、“そう言う素材”を探すために、旅をしていたんです。随時ミゥには、このノートPCから報告を送り、そしてようやっと、イアさんにたどり着いたんです
イアはこの言葉を聞いている最中、ずっと目をつぶっていました。この言葉の意味は、直接イアに関わることだったからです。
イア:・・・・・・つまり私は、少なくても“テイマーとギアに支配されたヤマト国を救う、この世界の唯一の救世主”になりえる、そういうわけですね
ミズキ:過去に行って、根元となったギアとテイマーのミッションが成功できれば、その可能性は高いです。ギアとテイマーと私たちの戦いの系譜は単純ではないので、“支配の軽減”程度に収まってしまう可能性は捨てられませんが
テル:・・・だからといって、イアをホイホイ渡すことは、できん!
リン:そうよ! この世界に生み出されて、そんなに日が経っていないのに、はい、素材へ逆戻り、そんなのないわ!
ルカ姫:それと・・・・これは凄くわがままな事かも知れないけど…。あなた達の“平行世界”には、たぶん、“あの”ルカさんやミクさんはいない気がする。過去に行くのなら、“あの”ルカさんやミクさんとの再会、それがこっちとしての絶対条件だわ!
ミズキ達3人は、やはりか、という顔つきをした。これは彼らも覚悟していた。強引に強襲して奪い取る方法も考えた。だが、ヤマト国から抜け出すために武器をほとんど持ってこなかった事から考えて、この人たちから力関係で優位に立って奪い取れないと判断したから、話し合いの選択をした。だが、結果的に反応は同じだった。
ミズキ:・・・・・・・やっぱりダメか・・・・・・・
ゆうま:もうこうなっちゃうと、強奪ってわけにも行かないしな・・・・
りおん:そうだよね、アチシ達の一方的な理由で、人一人を素材にするなんて、出来ないよね・・・・・・
それを聞いていたイアは、ギュッと拳を握りしめて、決意を表明した。
イア:いえ、私、その役、やるわ
イア以外全員:えっ!?
テル:ちょ・・・ちょっと待て、“純素材”になるって事は、死ぬって事だぞ!? 元の素材に戻るだけなら、再び錬成して生み出せるが、純な状態まで戻されたら、もう戻れない!
リン:そんなのだめだよ!
レン:俺は反対だ!
学歩:本当にいいのでござるか!? 意味は違うでござるが、昔の“セップク”、のようなものでござるよ!?
めぐみ:裁判官として言いますが、こんな一方的な要求を呑む必要はありません!
ルカ姫:イア・・・・・・・・
だが、イアはその先を見据えていたのだった。
イア:・・・・私は元々、私たちの過去の世界とは違う平行世界で生まれた“人形”。その人形の元になった“イア”は、その世界のアイドル、みんなの心を掴み、元気にする象徴みたいな存在…。私もそんな“彼女”の意志を継ぎたいの。“違う世界”のニホン国の事になるけど、私、みんなのために、この命、使うわ!
パチン!
それは電光石火のビンタだった。ビンタされたのは、“イア”、ビンタしたのは、なんと“ルカ姫”だった。
ルカ姫:命を粗末にするんじゃないよ! もっと“泥臭く”生きなきゃダメだよ!
イア:ルカ姫・・・・・・
テル:そうだな、これはルカ姫が正しいと思う
リン、レン:同じく
アペンド:私も同意見だ
学歩:同意にござる
めぐみ:そうね、それが正しい判決だと思う
ルカ姫:この3人の素性は、確かに可哀想だと思うよ。道は違っていたけど、ヤマト国ってアナタの祖国の未来が大変な事になっているのもわかるよ。でもね、いくら国1つの“存亡”がかかっているかもしれない事でも、命と国だったら、命を選ばないといけないよ!
ミズキ達3人が、この顛末を全部しっかり聞いていた。そして、ようやくミズキが口を開けた。
ミズキ:・・・・・・すまなかった。我々が一方的すぎたな
ゆうま:すまん、今回の事は忘れてくれ。ただ、ヤマト国はこんな現状だから、渡航はやめた方がいいぞ。ヤマト国とこの世界の事はおおかた伝わったと思う。行く理由はないと思うよ
りおん:ごめんね
3人が席を立ち、扉の方に体を向けたその時! イアが懇願したのだった!
イア:待って! じゃあ、今の時点では純素材になることは決めません! だから、私たちがヤマト国の現状を、この目で確認して、その上で決めるって事にしたいの! でも危険だから、あなた達も同行して!
ミズキ:イア・・・・・・・
イアはテル達の言葉を振り切って、心から懇願したのだった。イアはどうしてもヤマト国を見捨てられなかったのだ。
ミズキ:・・・・・・・めぐみさん、テルさん、アペンドさん、この選択で宜しいのですか? 我々も武器をサホロのギルドで入手して、戦闘態勢であなた達を守ります。そして、アキバのミゥの所までご案内できますが?
めぐみもテルもアペンドも、腕を組んで目を閉じて、熟考したのだった。この選択はこれまでで一番難しかった。イアはヤマト国の惨状を見れば、決めてしまうだろう。そうなれば、間違いなく“一人の命”を受け渡してしまうことになる。だが、行こうと嘆願したのは、イア本人である。
熟考と全員での話し合いは30分にもなった。その間、イアとミズキ達3人は、その様子をじっと見つめていたのだった。
そして、1つの結論に達したのだった。
テル:待たせてすまない。我々で話し合った結論を言う。イアの言うとおりにしよう。我々、イア、君たち3人、全員でヤマト国に侵入する事にする。我々も“冒険”のような装備から“戦闘”の装備に切り替える。それは当然、全員でイアを守るためだ
アペンド:ヤマト国に着いた後はあなた達3人のガイドに従う事にする。宜しく頼む
ルカ姫:でも、イアが純素材になることは、イアの言ったとおり、最後の最後にイア自身が決める事にするから、強引な誘導は絶対しちゃダメ! わかった!?
ミズキ達3人は。深々と頷いた。
もう時間は夕方過ぎになっていた。食事の時間なのだが、あのりおんですら、この重々しい雰囲気に酔ったのか、アピールがなかった。
めぐみ:とにかく、話はまとまったから、明後日に出航を調整して貰っているし、それまでしっかり準備していて欲しいです。武器類は船のクルーの方々に伝えて置きますから大丈夫です。『ギア』のパーツはないけど、護身武器ならあるから、とりあえずそれで間に合わせて下さい
ミズキ:わかりました
めぐみ:あと、ミズキさん達3人も、この最高裁の宿泊施設を使って下さい。一通り揃ってます。『ギア』のあるヤマト国と比べると、不便な事があるかも知れませんが、そこは我慢して下さい
ゆうま:大丈夫です。これでも旅慣れてますから
イア:あ、安全なんだけど、コンビニと自動販売機、ないですよ?
りおん:あー、それは不便なのだ!
ミズキ達3人組とイア:はははははは!
他の人たち:?
ようやっと生まれた“笑顔”だった。この3人といると、イアに笑顔が生まれるから、不思議であった。
(続く)
CAST
イア:IA-ARIA ON THE PLANETES-
ルカ姫:巡音ルカ
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
僧侶リン:鏡音リン
勇者レン:鏡音レン
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI
ヤマト国からの旅人三人組
瑞樹(ミズキ):VY1
勇馬(ゆうま):VY2
兎眠りおん(りおん):兎眠りおん
ミゥ:Mew
その他:エキストラの皆さん
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※今回からの新シリーズは、前作「Dear My Friends! ルカの受難」の続編です。ナンバリング的には2期になります。
現在ピアプロで連載投稿中の最新シリーズとなっております。
☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第16作目の第12話です。
☆今回も1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。現在もピアプロに続きを連載投稿しており、完結しておりません。
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