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九番目の熾天使・外伝 ~ポケモン短編~

竜神丸さん

七夜の願い星 その8

2016-08-24 21:10:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:10505   閲覧ユーザー数:1588

「いよぉし、修理完了!!」

 

「ふぅ、ジジイにこんな肉体労働は堪えるわい…」

 

「いや龍だろアンタ何言ってやがんだ」

 

育て屋アカツキ。ポケモンハンターJの一味による襲撃で半壊状態に陥ってしまっていたこの施設も、無事に修理が完了し、半壊前と同じ状態にまで戻っていた。というのも、フィアレスやヴァニシュ逹だけでなく、育て屋として預かっていたポケモン達も施設の修理に協力してくれたおかげなのもある。

 

また、修復に協力したのは育て屋が預かっていたポケモン達だけではなく…

 

「―――全く。修理の為とはいえ、よくもまぁ無理やりここまで引っ張ってくれたものだよ……ねぇシグマ?」

 

「痛ででででででで!? ちょ、先に用件は伝えたんだから良いだろ…ぎゃああああああああああっ!!?」

 

「いやシグマ。用件を言ったとしても、了承を得られなければ意味が無いぞ」

 

「スノーズの奴、シグマに振り回されて苦労しとるようじゃのぉ…」

 

シグマが助っ人として連れて来たメンバー……タカナシ姉妹、ハルト、スノーズ、キーラ、ユリス、フレイアなどのメンバー逹にも、施設の修理を手伝わせたのだ。しかしスノーズの場合はシグマが了承を得る前にここまで無理やり引っ張る形で連れて来たらしく、その所為で今回もスノーズはご立腹な様子でシグマにアイアンクローを炸裂させている訳なのだが。

 

「べ、別に良いじゃねぇかスノーズ!? お前だってポケモンは持ってんだからよぉ!!」

 

「あのねぇシグマ、僕が言ってるのはそういう問題じゃ…」

 

「おーい、スノーズさーん! こっちを手伝ってくれー!」

 

「! おっと、行かなくちゃ」

 

「げふっ!?」

 

シグマに対するアイアンクローの力を強めようとしたその時、育て屋アカツキが所有する牧場の方からハルトの呼ぶ声が聞こえた事で、スノーズはシグマへの制裁を中断してハルト逹の方へと向かう(その際、掴んでいたシグマをその辺にポイッと放り捨ててから)。

 

「な、何で俺ばっかりこんな目に…」

 

「「自業自得だ/じゃ」」

 

なお、シグマに同情する者は誰一人いなかった模様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに牧場の方では…

 

 

 

 

 

 

「あ、おい!? まだ毛繕いの途中だって!?」

 

「もう、駄目だよリーフィア! ハルトさんを困らせちゃ!」

 

「フィアフィア~♪」

 

イーブイの進化系の一種である、草や葉っぱの意匠を持ったポケモン―――リーフィアの毛繕い中だったハルトとルイの二人。しかしこのリーフィアは悪戯好きな性格なのか、毛繕いの途中で抜け出しては二人が鬼ごっこのように追いかけ回し…

 

 

 

 

 

 

「ふふ、可愛らしい奴だな」

 

「ドガァ~ス…♡」

 

臭いガスを発している球状型のポケモン―――ドガースの頭を優しく撫でるキーラ。臭いガスを発していようとも嫌がる事なく接してくれるキーラの優しさに、ドガースも非常にご機嫌だ。

 

 

 

 

 

 

 

「リル~♪」

 

「ヒマッヒマ~♪」

 

「ピチュッピチュ~♪」

 

「グラァ~イ♪」

 

「フィア~♪」

 

「うんうん、全員楽しそうで何より」

 

離れた場所では、水玉模様が特徴の青い兎型ポケモン―――マリルリを筆頭に、向日葵の種を模したポケモン―――ヒマナッツ、黄色い子鼠型ポケモン―――ピチュー、モモンガのような羽根を持った蠍ポケモン―――グライガー、イーブイの進化系の一種であるピンク色のポケモン―――ニンフィアなどが楽しく遊び回っており、その様子をユウナが微笑ましい表情で眺めていた。

 

「何事も無さそうだね」

 

「あ、スノーズさん」

 

そこへスノーズがやって来た。彼がユウナの隣まで歩み寄って来る際、それに気付いたマリルリが嬉しそうな表情でスノーズに走り寄る。

 

「リルリル~♡」

 

「おっと! …はいはい、分かってるよマリルリ。よしよし」

 

「リ~ル~…」

 

急にマリルリに飛びつかれ、スノーズは少し驚きつつもそれを受け止め、マリルリの頭を優しく撫でる。マリルリはスノーズの腕の中で気持ち良さそうにリラックスしており、それを見たユウナもにこやかに笑う。

 

「マリルリったら、やっぱりスノーズさんの事が好きなんですね」

 

「…それはユウナちゃんも同じでしょ? この子は君の事を母親だと思ってるんだから」

 

「で、スノーズさんの事はお父さんと見てますしね。この子がタマゴから産まれてわんわん泣き出して、慌てて泣き止ませようとしてた頃のスノーズさんが本当に懐かしいです」

 

「はいはい、面倒を見るのが下手な僕が悪うございました……全く。これもシグマが『タマゴの世話が面倒だから手伝え』だとか言って、僕にタマゴを押しつけて来なければ…」

 

「そういえばシグマさん、後で支配人さんから凄く怒られてましたっけ……けどそのおかげでマリルリに出会えたんですから、ラッキーだったと思いましょう」

 

「そういう事にしておくよ」

 

「ふふ…♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうしよう、子供の面倒を見てる夫と妻にしか見えない」

 

そんなスノーズとユウナの様子を離れた位置から見ていたフィアレスは、ブラックコーヒーを飲みながらそんな事を思わざるを得なかった……何故ブラックコーヒーを飲んでいるのか、それについては言うまでもあるまい。

 

(何せ、まるで本当の父さんと母さんみたいだねぇ~なんて茶化してみたら…『え、生き物ならそれが当たり前なんじゃないの?』…って返事が返って来るくらいだからねぇ。まさかここまでジョークが通用しない相手がいるとは思わなかった)

 

「ん? どうしたんだ、フィアレス」

 

「うんにゃ、何でもないよキーラさん」

 

「?」

 

「フィアレス、おるか!」

 

「ん、ヴァニシュ?」

 

そんな時、フィアレス逹の下へヴァニシュがやって来た。

 

「どうしたの?」

 

「先程、ペリッパー郵便から手紙が届いての。リーグ協会からじゃ」

 

「リーグ協会? 何かあったの?」

 

「うむ、急いでカズキ殿に連絡せねばならん内容じゃ」

 

「「…?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、そのokaka逹はと言うと…

 

 

 

 

 

 

-ドガァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!-

 

「「「「「!?」」」」」

 

海岸で千年彗星を眺めていた一同は、海岸から少し離れた方角から聞こえて来た爆発音を聞き、一斉に戦闘態勢に入ろうとしていた。

 

「今の音は何だ…!?」

 

「ポケモンハンターか? それとも…」

 

「とにかく行きましょう。美空さんと咲良はここにいて!」

 

美空と咲良、ジラーチを海岸に残し、一同は爆発音が聞こえて来た森の中へと駆け出していく。そして一同が駆けつけた先で待ち構えていたのは、大きな岩の上から見下ろしているゴーグルの男性と、その男性に付き従うように並んでいる二体のポケモン達だった。

 

「目標、確認……邪魔者、排除……」

 

「ラァイ…!!」

 

「タブ、タブネェ…!!」

 

ゴーグルの男性が告げる言葉を合図に、彼に付き従っていた二体のポケモン達が岩から地面に降り立つ。片方は黄色い鬣を持った四足歩行型のポケモン―――ライボルト、もう片方はピンク色のボディを持った可愛らしい容姿のポケモン―――タブンネだが、どちらも一同に対して敵意を剥き出しにしている。

 

「またこのパターンですか。本当にしつこいですね……もっかい潰さなきゃ気が済まねぇようだなゴラァッ!!」

 

「落ち着けシノブ、相手はさっきのと別人だ」

 

「カズキさん、アイツは一体…」

 

「そういやまだ説明してなかったな……恐らくボルカノの手先だ。そしてアイツが従えているのが……レイ、お前なら分かる筈だぜ」

 

「!? まさか…」

 

okakaの言葉に、支配人はもう一度ライボルトとタブンネの方を見据える。支配人の視界に映ったのは……ライボルトとタブンネが全身から放っている、ドス黒い邪悪なオーラだった。

 

「…なるほど、ダークポケモンか」

 

「!? ダークポケモンって確か…」

 

「シャドーという組織によって心を閉ざされ、邪悪な兵器に改造されたポケモンの総称……でしたっけ? 今時いるもんなんですねぇ。既に壊滅した組織の技術を扱う輩が」

 

「そんな酷い組織がいたんですね……ポケモンを操り人形に仕立てるなんて…!!」

 

「まぁ俺の予想が正しければ……この後、支配人が間違いなくブチ切れるような光景が見られるぞ」

 

「? カズキ、それはどういう―――」

 

「メガウェーブ、発動」

 

「「「「「ッ!?」」」」」

 

その時、ゴーグルの男性が動き出した。右腕に装着していたリングを触れた瞬間、リングに付いた紫色の宝玉部分から怪しげな光線が放たれ、それがライボルトとタブンネの頭に当てられる。するとライボルトとタブンネが苦しげな表情を浮かべ、二体の全身が紫色の結界に包まれていき…

 

「―――ラァイッ!!!」

 

「―――タブネェッ!!!」

 

結界が晴れた瞬間、二体はメガシンカした姿を一同に見せつけた。

 

ライボルト―――否、メガライボルトは黄色い鬣が稲妻状に変化し、まるで着ぐるみを纏っているかのような姿に変化している。

 

タブンネ―――否、メガタブンネはピンク色だったボディが白色に変化し、メガシンカ前よりも更に天使のような容姿に変化している。

 

しかし両者共に目が紫色に怪しく光っており、一同を鋭い目付きで睨みつける。そんな光景を見て、既に一度見ているokaka、刃、カガリの三人と、okakaから予め話を聞いていた竜神丸以外は驚愕の表情を浮かべる。

 

「まぁ、やっぱ使って来るよな…!!」

 

「メガシンカ……どうして…!?」

 

「ッ……メガシンカって、ポケモンとの絆が無ければ出来ない筈ですよね!? なのに何故…!!」

 

「やろうと思えば、決して不可能ではありません。とある王国では、それらしき技術が既に広まっているようですからねぇ……まぁ、操られているポケモンがどういう心情かまでは私の知った話じゃありませんが」

 

「なるほど……相当イカレた技術だってのは間違いなさそうだな」

 

「許せないですね…!!」

 

目の前で繰り広げられている光景に、竜神丸以外の面々……特にロキやディアーリーズ、げんぶ辺りはゴーグルの男性に対して怒りを隠さない。

 

しかし…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――本当、いつもいつも俺を怒らせてくれるよなぁ。ダークポケモンを使う連中ってのは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼等以上に怒りを爆発させている男が、その場には一人存在していた。

 

「「…ッ!?」」

 

「ひっ…!?」

 

「に、兄さん…?」

 

鬼のような形相で睨んでいる支配人を見て、ディアーリーズとロキは思わず怯み、カガリやユイですら思わず怯えた表情を見せる。そんな様子を見てもなお、竜神丸だけは特に表情が変わる事なく支配人を見据えていた。

 

(やれやれ、馬鹿正直な人が多い事で…)

 

「…上等じゃねぇか」

 

支配人はゴーグルの男性を睨みつけながら、懐からモンスターボールを取り出し…

 

「…やるぞ、ガルーラァッ!!!」

 

「ガルルルルァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

そしてモンスターボールを高く投げつける。ボールからはカンガルーのようなお腹の袋を持った怪獣らしき姿をしたポケモン―――ガルーラが召喚され、その外見に違わぬ猛々しい咆哮を上げる。それを見たゴーグルの男性は一切怯む様子を見せず、メガライボルトとメガタブンネに命令を下す。

 

「邪魔者、消去…」

 

「ラァイッ!!」

 

「タブネェッ!!」

 

「ッ……全員避けろ!!」

 

メガライボルトとメガタブンネが同時に駆け出し、まずはメガタブンネが黒いエネルギー弾『シャドーボール』を勢い良く放射し、一同は飛んで来た雷撃を回避。その間にメガライボルトが接近し、支配人のガルーラが突撃して来たメガライボルトを真正面から受け止める。

 

「邪魔者、排除…」

 

「「「「「ゴルッゴルッゴルッゴルッ!!」」」」」

 

「!? またゴルバットか…!!」

 

「俺達も戦うぞ……行け、ティオス!!」

 

「ラティアス、君に決めた!!」

 

「やるぞ、ムクホーク!!」

 

「出て来い、カイリキー!!」

 

「ぶっ潰すぞ、ランターン!!」

 

「エーフィ、お願い…!!」

 

「バクーダ…!!」

 

「ギャラドス、実験開始」

 

メガライボルトとメガタブンネだけでなく、大量のゴルバットも一斉に出現した為、支配人以外のメンバー逹も一斉に自分のポケモンを召喚。まずはokakaのラティオスとディアーリーズのラティアスが高く上昇し、二体同時に『りゅうのはどう』を繰り出してゴルバット逹を撃墜し始める。

 

「ムクホーク、『インファイト』!!」

 

「カイリキー、『ばくれつパンチ』!!」

 

「ムックホォー!!」

 

「リッキィィィィィッ!!」

 

トサカを持った椋鳥(ムクドリ)型ポケモン―――ムクホークは『インファイト』を発動し、自身の羽根や後ろ足を使ってゴルバット逹に強烈な打撃を炸裂させる。四本の腕を生やしたマッチョなポケモン―――カイリキーは四本全ての拳にエネルギーを纏わせ、強烈な一撃『ばくれつパンチ』による拳圧を利用してゴルバット逹を一斉に吹き飛ばす。

 

「ランターン、『ほうでん』で撃ち落とせやぁ!!」

 

「ラン、タァァァァァン…♪」

 

「エーフィ、『めざめるパワー』…!!」

 

「フィイィィィィィィィィッ!!」

 

「バクーダ、『ふんか』…!!」

 

「バックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」

 

青いチョウチンアンコウ型のポケモン―――ランターンは近くの川に入った後、水面から飛び出して『ほうでん』を繰り出し、ゴルバット逹に電撃を浴びせる。イーブイの進化系の一種である上品な出で立ちのポケモン―――エーフィは特殊なエネルギー『めざめるパワー』を周囲のゴルバット逹に命中させ、バクーダは背中の火山状のコブから『ふんか』を繰り出し、火山弾でゴルバット逹を撃墜していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラァァァァァイッ!!」

 

「ガルァ…ッ!?」

 

「チィ…!!」

 

一方で、ガルーラはメガライボルトのパワーに押され気味だった。単純なパワーだったらガルーラの方が圧倒的に上なのだが、やはりメガシンカがライボルトに与えるパワーの方が相当なのだろう。支配人が舌打ちする中、ゴーグルの男性は更に命令を下す。

 

「『あまごい』……『かみなり』」

 

「ラァァァァァァァ……ラァァァァァァァァァァイッ!!!」

 

メガライボルトが唸り声を上げると共に、星空が映っていた夜空を真っ黒な雲が覆い始める。そしてポツポツと雨が降り出して一気に雨の勢いが強まっていく中、メガライボルトは全身から『かみなり』を放射する。しかしその雷撃が向かって行ったのはガルーラではなく…

 

「!? ラ、ティィィィ…ラティッ!?」

 

「!? ラティアス!?」

 

光を屈折させる事で姿を消していたラティアスの方だった。姿を消して背後から奇襲をかけようとしていた事が既に気付かれていたようで、ラティアスは思わぬダメージでフラつきながら地面に落ちかける中、更にタブンネの繰り出した『シャドーボール』まで命中してしまう。

 

「排除、消去……『ダークサンダー』」

 

「ラァァァァァァァァァ……ラァイッ!?」

 

「…!?」

 

一方で、メガライボルトが口元にドス黒い雷撃エネルギーを充電し、『ダークサンダー』という怪しげな技を繰り出そうとする……が、そんなメガライボルトをギャラドスの『アクアテール』が薙ぎ払う。

 

「少し押されているようですねぇ、レイさん」

 

「うるせぇ。ガルーラの実力はこんなもんじゃないさ」

 

「あらそう……しかし時間をかけるのもアレなので、さっさと片付けましょうか。奴等と同じ力で」

 

「言われるまでもねぇよ…!!」

 

支配人は虹色の宝玉が埋め込まれたネックレスを、竜神丸は虹色の宝玉が付いたタブレットを取り出し、二人同時に宝玉部分に触れる。すると宝玉部分から虹色の光線が放たれ、それぞれガルーラとギャラドスの全身を包み込み始める。

 

「親子の魔獣よ! 絆を以て我が敵を討て……ガルーラ、メガシンカ!!」

 

「ガルルルルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

「カルルルルアァーッ!」

 

虹色の光から解き放たれ、ガルーラが魔獣の如き咆哮を上げると共に、親ガルーラのお腹の袋に隠れていた小さな子ガルーラが成長した姿で表舞台へと降り立つ。親ガルーラと子ガルーラの親子が絆を以て戦う形態……それこそがガルーラ―――否、メガガルーラの持つ戦闘スタイルだ。

 

「暴れろ、そして怒り狂え。湧き上がる“憤怒”のままに、その全てを無に還せ……ギャラドス、メガシンカ!」

 

「グルガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

虹色の光から解き放たれ、ギャラドスが新たな姿を現した。東洋龍のような姿から一転し、上半身が太くなった事でより魚類に近い体型となり、背中に二枚の大きな背びれを持った形態―――メガギャラドスがメガシンカ前よりも高い咆哮を上げるその凶悪な姿は正に、海より現れし“憤怒の邪龍”と呼べるだろう。

 

「…竜神丸、俺はお前がメガシンカ出来た事に一番驚きだよ」

 

「失敬ですね。自分のポケモンに忠誠を誓わせずして、メガシンカなど到底出来ませんよ……ギャラドス、『たきのぼり』」

 

「まぁ、お前らしいと言うべきかね……ガルーラ、『グロウパンチ』!!」

 

「グルァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「タブネェェェェェェェェェェェッ!?」

 

「ガルルルルォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

「カルアァーッ!」

 

「ラァァァァァァァァイッ!?」

 

メガギャラドスになった事で強化された『たきのぼり』がメガタブンネを吹き飛ばし、メガガルーラの親子は連続で当てる事で攻撃力を増す効果のある『グロウパンチ』をメガライボルトに二連続で炸裂させる。メガタブンネとメガライボルトが吹き飛ばされる中、その周囲でもゴルバット軍団の殲滅が完了しようとしており、カイリキーが最後の一体を『ばくれつパンチ』で撃墜させた。

 

「リッキィ!!」

 

「ゴルバァッ!?」

 

「よし、こっちは殲滅完了だ」

 

「さぁて、覚悟を決めて貰うとしようか…」

 

ゴルバットの殲滅が完了し、残るはメガライボルトとメガタブンネのみ。そう考えたロキやげんぶは拳をパキポキ鳴らし、ゴーグルの男性を追い詰めようとするが…

 

「全員、制止……人質、確保……」

 

「「「「「!?」」」」」

 

「ゴドラァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

「ぅ、ぐ……離、して…ッ…!!」

 

「チルッチルゥゥゥゥゥ…!!」

 

「!? 美空さん、チルタリス!!」

 

別の方角から、鋼鉄の巨体を持った怪獣のようなポケモン―――ボスゴドラがメガシンカした姿―――メガボスゴドラが高く吼えながら姿を現す。その腕の中には美空が捕らえられており、メガボスゴドラの足元にはチルタリスが逃げられないように右足で踏みつけられていた。

 

「な、いつの間に…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは数分前の事…

 

 

 

 

 

「ゴドラァァァァァァァッ!!」

 

「「ッ!?」」

 

トラックの物陰に隠れていた美空と咲良の前に、突然メガボスゴドラが姿を現したのだ。メガボスゴドラは咲良とジラーチを捕らえようと腕を伸ばし…

 

「咲良ちゃ……キャアッ!?」

 

「みーちゃん!!」

 

『ミソラ!』

 

「咲良、ちゃん……ジラーチ…逃げ、て…ッ!!」

 

「チル!! チルチルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

咄嗟に咲良とジラーチを庇った美空が、代わりにメガボスゴドラに捕まってしまった。自身を助けようとして同じように捕まらないよう、美空は咲良とジラーチに逃げるよう促し、チルタリスは美空を助け出そうとメガボスゴドラに向かって『つばめがえし』を繰り出す。しかし鋼タイプのメガボスゴドラには、飛行タイプの技である『つばめがえし』はあまりダメージが通らず…

 

「ゴドッラァ!!」

 

「!? チルウゥッ!?」

 

「ッ……チルタリス!!」

 

メガボスゴドラが右手で繰り出す『メタルクロー』を受け、チルタリスもあえなく撃沈。そのまま美空とチルタリスは人質として、メガボスゴドラに無理やり連行されてしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「総員、ポケモン、戻せ……さもなくば、小娘、命は無い……」

 

「ッ……卑怯な…!!」

 

「ラティィィィィィ…!!」

 

「チッ……戻れ、ガルーラ」

 

「ガルルルルル…!!」

 

(くそ、こうなれば…)

 

(あぁ、コッソリ近付けさせるしかない)

 

美空を人質に取られてしまった以上、素直に従うしかない。ゴーグルの男性やメガボスゴドラ逹を睨みつけているラティアスやメガガルーラ逹をボールに戻し、okaka逹も同じようにポケモンをボールに戻す。その際、okakaやげんぶは密かに違うボールを取り出し、ゴーグルの男性に見えないように別のポケモンを召喚し、そこらの草むらに隠れさせる。

 

「やれやれ。私は別に彼女ごと攻撃しても構わないんですが…「グォンッ」…はいはい、分かりましたよ」

 

本来ならば、美空ごと攻撃するつもり満々だった竜神丸。しかしメガギャラドスが反対するかのような鳴き声で竜神丸に物申した為、彼は仕方なくメガギャラドスをボールに戻す(彼もokakaやげんぶと同じく、別のボールから別のポケモンを密かに召喚している)。

 

「目標、ジラーチ……渡せ」

 

「ッ……ウ、ル…さ……は、ぁが…!?」

 

「待て、やめろ!! 彼女は関係ない!!」

 

ゴーグルの男性はジラーチを渡すように要求し、それと共にメガボスゴドラが両腕の力を強め、美空を絞めつける力も強まっていく。このままでは美空の命が危ない。焦ったディアーリーズが叫ぶが、ゴーグルの男性は聞く耳を持たない。

 

「目標、渡せ…」

 

「聞く耳持たずってか…「ラァイッ!!」…ッ!? うぉわ!!」

 

「危ねっ!?」

 

メガライボルトの繰り出した『ダークサンダー』を地面に当たり、刃やロキの動きが制限されてしまう。メガライボルトの横ではメガタブンネが『フラッシュ』を発動し、ユイやカガリの視界を封じていた。

 

「目標、渡せ……さもなくば、小娘、排除……」

 

「ぁ、ぁ……か…」

 

「チルッチルゥッ!!」

 

(ッ……くそ、何か助け出す手は…!!)

 

メガボスゴドラに絞めつけられ、窒息寸前の美空。チルタリスが悲痛な鳴き声を上げ、ディアーリーズは悔しげに歯軋りする。そんなディアーリーズにメガタブンネが容赦なく『シャドーボール』を放射する。

 

「タブッタブネェ!!」

 

「く…!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アプス、『ハイドロポンプ』!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラァァァァァァァァァァァァァァァァァジッ!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

その時、真横から飛んで来た高圧水流『ハイドロポンプ』が、メガタブンネの『シャドーボール』に命中して掻き消してしまった。突然の事態に一同が驚く中…

 

「シャマシュ、『インファイト』!!」

 

「エルッレェイ!!!」

 

「!? ゴドラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

草木から飛び出して来た朱雀の命令を受け、同じく飛び出したエルレイドがメガボスゴドラに一瞬で接近、すかさず『インファイト』による強烈な打撃を何発も炸裂させる。それによってメガボスゴドラが後ろに倒れ、その際に解放された美空とチルタリスがエルレイドによって無事に保護される。

 

「!! 今だカイン、『リーフブレード』!!」

 

「サンドパン、『スピードスター』だ!!」

 

「ジバコイル、『10まんボルト』」

 

「ジュッカァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

「サンドォッ!!」

 

「ジバババババババ…!!」

 

その状況を好機と見たのか、okaka逹の指示で隠れていたポケモン達が一斉に飛び出す。緑色の爬虫類らしきポケモン―――ジュカインは両腕の葉っぱを鋭利化させて『リーフブレード』を、地面に隠れていた茶色のハリネズミ型ポケモン―――サンドパンは両腕の爪から星型のエネルギー弾『スピードスター』を、上から降下して来たUFOのような形状のポケモン―――ジバコイルは中央の赤い目を光らせて『10まんボルト』を発動する。

 

「人質、確保、失敗…ッ!?」

 

メガボスゴドラに気を取られていたメガライボルトとメガタブンネをジュカインとサンドパンが攻撃し、ゴーグルの男性にはジバコイルが容赦なく『10まんボルト』を命中させる。その結果、男性の装着していたゴーグルが電流でショートを起こし始めた。

 

「グ、ァガ……ジャ、邪魔者、排除、排除、はいじょ、ハイジョ、ハイジョジョジョジョジョジョジョ―――」

 

バチィッという音が大きく鳴った後、ゴーグルの男性は意識を失いその場に倒れ伏す。その間に支配人と竜神丸は再びメガガルーラとメガギャラドスを繰り出す。

 

「ギャラドス、実験再開」

 

「行けガルーラ、『ねこだまし』!!」

 

「ガルァッ!!!」

 

「カルァ!」

 

「「ッ…!?」」

 

メガガルーラの親子が同時に繰り出した『ねこだまし』がパァンと大きく鳴り響き、メガライボルトとメガタブンネは思わず怯んで動きが止まり…

 

「『アクアテール』」

 

「グォォォォォォォォォォンッ!!」

 

「ラァイ!?」

 

「タブネェェェェェッ!?」

 

メガギャラドスの『アクアテール』が、二体を容赦なく尻尾で薙ぎ払う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「美空さん、大丈夫ですか!!」

 

「ゲホ、ゴホ……ウル、さん…ごめん、なさい…迷惑を…」

 

「無事に助けられて何よりです、美空さん。それにチルタリスも」

 

「チルゥ~…」

 

一方、ディアーリーズはエルレイドによって助け出された美空とチルタリスに駆け寄っていた。窒息寸前だった美空は酸素を吸って呼吸を整え、チルタリスは申し訳なさそうにショボンと落ち込んでいる。

 

「朱雀さん、ありがとうございます。美空さんとチルタリスを助けてくれて…」

 

「助けるのは当然ですよ。それにここまで来る途中、咲良さんとジラーチに助けるようにと頼まれましたしね」

 

「みーちゃん、チルちゃん、だいじょーぶ!?」

 

『大丈夫…?』

 

「咲良、ちゃん…」

 

「ゴドラァァァァァァァァァ…!!」

 

「ッ……まだやる気ですか…!!」

 

しかしそんな彼等に対し、メガボスゴドラが口元にエネルギーを集中させ始める。ポケモンの技でもかなり強力な一撃―――『はかいこうせん』を繰り出すつもりだ。

 

「させません……アプス、シャマシュ!!」

 

「ラグゥッ!!」

 

「エルッ!!」

 

「!? ゴド、ラァ…!!」

 

そんなメガボスゴドラを妨害すべく、サンショウウオ型の青いポケモン―――ラグラージとエルレイドがメガボスゴドラの妨害に入る。ラグラージが冷気を纏った光線『れいとうビーム』でメガボスゴドラのボディを凍らせ、エルレイドが頭部に思念を集中させた『しねんのずつき』をメガボスゴドラの顔面に炸裂させ、メガボスゴドラは大きく怯んで後退させられる。そのメガボスゴドラの近くに、メガライボルトとメガタブンネも吹き飛ばされて来た。

 

「さぁて、そろそろシメと行こうか……強奪(スナッチ)!!!」

 

「!? ラァイ―――」

 

「タブンネェ―――」

 

「ッ…ゴドラァァァァァァァァァ…!!」

 

スナッチマシンを装備したokakaがモンスターボールを左手で投げつけ、まずはメガライボルトとメガタブンネの二体がモンスターボールに吸い込まれる。しかしメガボスゴドラはモンスターボールをかわし、負けじと『はかいこうせん』を繰り出そうとするが…

 

「マグカルゴ、『はかいこうせん』!!」

 

「マッグゥ!!」

 

「!? ゴド…ッ!!」

 

マグマの身体と岩の殻を持ったカタツムリ型ポケモン―――マグカルゴの『はかいこうせん』がメガボスゴドラよりも先に繰り出され、『はかいこうせん』がメガボスゴドラに命中する。このマグカルゴはげんぶが繰り出したポケモンのようだ。

 

「大人しくして貰うぜぇ……グラエナ、『あなをほる』!!」

 

「グラァッ!!」

 

「ゴドラァァァァァァァァァ…!?」

 

更に地中に潜って隠れていたグラエナが、ボスゴドラの足元から飛び出してボスゴドラに大ダメージを与える。地面タイプである『あなをほる』が直撃した事で効果抜群の大ダメージとなり、メガボスゴドラは溜まりに溜まったダメージでその場に膝を突く。

 

「いよぉし、もう一丁…強奪(スナッチ)!!」

 

「ゴ、ドラァ―――」

 

もちろん、そのチャンスを逃がすokakaではない。彼はすかさずモンスターボールを投げつけ、メガボスゴドラもライボルトやタブンネと同じようにモンスターボールに吸収され、スナッチが完了されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を離れた崖から見ていたのは、フーディンを連れたゴーグルの女性。

 

「回収、不可。撤退、やむなし…」

 

そして彼女はスナッチされたライボルト逹を回収する事なく、フーディンの『テレポート』でその場から瞬時に姿を消した。用済みと見なしたのか、それとも最初から使い捨てだったのか。その真相はゴーグルの女性のみ知る事である…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(―――今度はすぐに立ち去ったか。まぁダークポケモン逹を回収出来るから問題は無いが…)

 

フーディンによるモンスターボールの回収を警戒していたokakaだったが、今回はすぐに退散した為、杞憂に終わる事になった。そんな彼の下に、破損したゴーグルを指をクルクル回しながら竜神丸がやって来た。

 

「竜神丸、どうだった?」

 

ハズレ(・・・)でしたね。先程の男も、ボルカノによって洗脳されていただけでした。情報はここから抜き出すしかなさそうですよ」

 

「やっぱ駄目か……これより前に回収したゴーグルは、頭領の『みずしゅりけん』でデータが丸々破損しちまったからなぁ。まぁ良い、これでデータをハッキングして情報を確保出来る」

 

「それで、ダークポケモンの方はどうなってるんですか?」

 

「…今は支配人が皆に説明してるよ。ダークポケモンに関しては、直接シャドーを潰した事のある支配人の方が詳しいだろうからな。ちなみにゴルバット逹については俺の方で引き取る事にした。俺の手持ちにもクロバットがいるからな、コイツ等を統率してやれるリーダー格として一番適任だろうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、このまま野生に返しても駄目って事ですか?」

 

「あぁ、そういう事になる。まずはコイツ等の閉ざされた心を開いてやらなくちゃならない」

 

支配人の前にディアーリーズ達が集まり、支配人は全員にダークポケモンについて説明を行っていた。支配人の両手にはボスゴドラ、ライボルト、タブンネの入ったモンスターボールが握られている。

 

「心を開いてやるには、トレーナーが一緒にいてあげる事が一番確実だ。だからこそ、コイツ等には引き取り先が必要な訳なんだが…」

 

「なら、ボスゴドラは俺が引き取ろう。ホウエン地方のポケモンにも興味が湧いてきたところだ」

 

「では、ライボルトは僕が引き取ります。このまま放っておくには可哀想ですから」

 

げんぶがボスゴドラのモンスターボールを、朱雀がライボルトのモンスターボールを手に取り、支配人の手に残ったのはタブンネのモンスターボールのみ。その時、美空がゆっくり手を挙げる。

 

「あ、あの……その子……私、が…引き取って、良い…ですか…?」

 

「美空ちゃん……あぁ、構わないぜ。ただ、三人に言っておく。コイツ等は邪悪な兵器として改造されてしまったポケモンだ。そう簡単には心を開かないだろうし、場合によってはお前達を攻撃する可能性だってある。その辺は覚悟を決めてくれ」

 

「ふ、上等だ」

 

「それくらい承知の上です」

 

「この、子逹も……私と、同じ、だから……助け、ます…絶対……!」

 

「…忠告するまでも無さそうか。もし何か手伝って欲しい事があったら、俺かokakaに言ってくれ。せめて心を開く為の助言くらいはしてやるさ……なぁ、ガルーラ」

 

「ガルッ!」

 

「カル♪」

 

支配人の言葉に、親ガルーラと子ガルーラが元気良く返事を返す。その時、支配人達の所に一体のペリカン型ポケモン―――ペリッパーが黒い鞄を引っさげた状態で飛んで来たのに刃が気付く。

 

「おや、郵便ですか?」

 

「ペリッ!」

 

「はい、どうぞ。お仕事ご苦労様です」

 

ペリッパーから一枚の手紙を受け取った刃は、代金代わりとして取り出したオボンの実をペリッパーの口へと放り込む。ペリッパーはオボンの実を美味しそうに味わいながら飛び去って行き、刃は受け取った手紙の宛先などを確認する。

 

「ん? シノブ、手紙か?」

 

「えぇ。見たところ、カズキさんに対して送られた手紙のようです」

 

「俺にだと? どれどれ…」

 

刃から渡された手紙を開き、内容を読み上げるokaka……そしてその目付きが一瞬で鋭くなる。

 

「…チッ! 面倒な事してくれやがったな…!!」

 

「カズキ、何て書いてあったんだ?」

 

「少し面倒な事になりやがった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺やダイゴ逹で捕まえた密猟団……そのリーダーが脱獄(・・)しやがった!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その手紙がリーグ協会から送られる数時間前…

 

 

 

 

 

 

 

-ジリリリリリリリリリリリリリリリ!!-

 

ポケモン刑務所。様々な犯罪者達が収監されているであるこの刑務所にて、事件は起きていた。

 

「う、ぐぐ…」

 

「な、何て強さ、だ…!」

 

「ワゥ…ッ…!」

 

警報が刑務所全体に鳴り響く中、所内の警備員逹や、番犬である赤い犬型ポケモン―――ガーディ逹が皆、ボロボロにやられた状態であちこちに倒れていた。

 

「ユラァ~…!!」

 

彼等をそんな痛い目に遭わせたポケモンは、宙に浮遊しながら通路を移動していた。ひび割れた石の隙間から紫色の霊魂のような本体が突き出た、108の魂で形成されたと言われるポケモン―――ミカルゲは今、ある犯罪者が収監されている牢屋の目の前まで到着した。

 

「―――へへ、やっとお迎えが来たってか」

 

その牢屋の中で座り込んでいた男は、ミカルゲを見てニヤリと笑みを浮かべる。するとミカルゲは両目を怪しく光らせると共に『サイコキネシス』を発動し、グシャリとひん曲げる形で牢屋の扉を破壊する。そして壊された牢屋から出て来た男の前に、ゴーグルを付けた男性がタブレットを持って現れた。タブレットには、ボルカノの呆れているかのような表情が映し出される。

 

「よぉ旦那。俺をここから出してくれて感謝するぜ」

 

『全く、私の手間をかけさせないで欲しい物ですね。今後はもう少し気を付けて行動して下さいよ?』

 

「あぁ、分かってるさ……俺をここにぶち込みやがった奴等を、この手で今度こそ捻り潰してやるぜ…!!」

 

牢屋から抜け出した男―――元ポケモン密猟団リーダーのディーマはゲハハハハと笑い声を上げる。そのあまりに醜悪な笑い声は、警備員逹が全滅した刑務所全体に大きく響き渡っていくのだった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~オマケ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、そういえばこなたは何処だ?」

 

「「「「「…あ”っ”」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴォ~ス…♪」

 

「ゴォ~スト…♪」

 

「ムゥマ~♪」

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!? 誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」

 

「…アロォ?(ねぇ、良いんすか本当に?)」

 

「…クロバッ(マスターの命令だから仕方あるまい)」

 

ちなみにこなたはと言うと、お仕置きと称してシンオウ地方のホラースポット『森の洋館』まで連行され、ゴーストタイプのポケモン達に取り囲まれて気絶してしまい、赤い鳥型ポケモン―――ファイアローと、紫色のコウモリ型ポケモン―――クロバットによってちゃんと回収されていたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇセバスチャン、あの人達だれ~?』

 

『さ、さぁ……どちら様でございましょうかねぇ…?』

 

そしてその様子を、少女の幽霊と老執事の幽霊が一緒になって見ていたのもここだけの話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『七夜の願い星 その9』に続く…

 


 
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