No.86455

真・恋姫無双~薫る空~13話(黄巾編)

カヲルソラ13話。
黄巾編最終話です。

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2009-07-26 03:39:51 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:6888   閲覧ユーザー数:5631

 

 

 

 

 

 

―――side薫

 

 

 

 

 

黄巾党が壊滅して、数日。

 

黄巾討伐の報告のため、袁術の下へと向かい、そのままこの南陽にて滞在している。

 

薫も一応孫策付の侍女として城に泊まることを許可されていた。

 

また、侍女での生活へと戻ることになったのだった。

 

華琳からの使者が来るまでの間はこちらの捕虜ということで、それまではこの扱いを変えるつもりはないらしい。

 

しかし、今の薫にそんな事はどうでもよかった。

 

南陽に向かう途中。散々仄めかされていたが、雪蓮からついにはっきりと言われてしまったのだ。

 

『うちで軍師しない?』と。

 

【薫】「はぁ…………。」

 

深いため息のあと、薫はその手に持っている雑巾を絞る。

 

迷いを忘れようとするように、普段よりも強めに。

 

それでも繊維には限界があり、それ以上ひねられないというところであきらめる。

 

【薫】「普通に……暮らしてただけなんだけどな…」

 

今更になって、やはり思い出すのはめんどくさくても日常と呼べた華琳に仕える前の日々。

 

よく授業を抜け出しては、そのときの先生に怒られて、それでも楽しいと呼べた。

 

部屋の壁を拭きながら、見ているのは壁ではなく、過去。

 

前を向いても容赦なく用意された分かれ道を直視できず、目をそらす。

 

どちらを選んだところで、待っているのはあの時見た、殺し合いの世界。

 

もう、民には戻れない。

 

戦のない世界から来たなんて、そんな平和ボケした奴が、なんて一刀のことを笑う事はできない。

 

それは自分も同じだから。

 

男なら徴兵され、戦へ行くのだろうが、女であった自分にそんなものは無い。

 

ずっと続くと思っていた日常。

 

それは、突然の暗転によって終わりを告げた。

 

次に気がつけば、目の前には荒野が広がっていて、一刀と出会った。

 

それからの日々はひどいものだった。

 

楽しいと思えるときもあった。

 

でも………………半強制的に覚えた内政や軍略の知識。それに伴った仕事。自分が考えた策がもたらした人の死。それらは……苦痛でしかなかった。

 

【薫】「なんで、こんな事になったんだろ…………」

 

ここに居るのも、たしかに自分が失敗したから。

 

だけど、考えてしまうのはどうして自分がこんなめに合わないといけないのか。

 

その覚悟もないまま出撃したのかといわれれば否定はできない。だけど、それでも………逃げたい…。

 

このまま、逃げてしまいたい。もう、こんなのは嫌だ。帰りたい。

 

後ろ向きな言葉しかでてこない。

 

気づけば、床が、雑巾からの水以外のもので濡れていた。

 

あきらかに染みになってしまいそうで、あわててしゃがみこみ、拭い取ろうとする。

 

でも、それはなかなかとれず、むしろそのしみがどんどん増えていく。

 

どんなにこすっても消えてくれず、落ちる水滴はその数を増やし続ける。

 

やがて、ふき取る事も出来なくなる。

 

それを自覚したと同時に、体の奥から、感情の波が押し寄せてくる。

 

元を断とうと、目元をこすっても、こすっても、こすっても、止まらない。

 

そして、あふれ続けるそれと共に浮き上がってくるのは、家族の顔と、私塾の人たちの顔と。

 

それが消えて、次に出てきたのは、死んでいく敵、味方、それ以外の人たち。

 

それを思い出したときには、声すら抑えられなかった。

 

それでも、聞こえないように手で顔全体を覆う。

 

 

 

 

 

 

 

 

【薫】「……………なに…してんだろ…」

 

仕事もせず、うつむいてしまっていた自分を蔑む様に呟いた。

 

しばらくして、ようやく落ち着いてきた体を起こし、立ち上がる。

 

そして掃除の続きを済ませ、その部屋を出る。

 

ガチャリと音をたてて、扉を閉める。

 

【雪蓮】「あ、薫じゃない♪」

 

【薫】「あ、雪蓮どしたの?」

 

不意に声をかけられ、そちらを振り向く。

 

【雪蓮】「ううん~、たまたま通り………って、薫!!」

 

【薫】「は、はい!」

 

突然口調を変えて名前を呼んでくる雪蓮にすくみあがってしまう。

 

よく見ると、雪蓮は薫の顔をじーっと眺めていた。

 

【雪蓮】「やっぱり…。ちょっとこっちきなさい」

 

【薫】「へ!?ちょ、ちょっと雪蓮…」

 

以前と同じような状況だが、違うのは雪蓮の口調と、その表情と雰囲気。

 

手を引かれたまましばらく歩き、やがて到着したのは雪蓮の部屋。

 

部屋へと入れられ、薫は直立のまま緊張で硬直してしまう。

 

そうしていると、雪蓮は引き出しから何か粉のような物を取り出し、それを指へとまぶし、こちらへ近づいてきた。

 

目の前まで来ると、今度はその指を薫の顔へと近づける。

 

【薫】「しぇ、雪蓮…?」

 

【雪蓮】「いいからじっとしなさい」

 

強めの言葉でいわれ、薫はそのまま固まってしまう。

 

そして、近づいてくる指は、やがて薫の下瞼へと触れる。

 

右目をひとしきり触ると、今度は左目。

 

【雪蓮】「ふぅ。これでいいわね」

 

【薫】「え………ぁ」

 

雪蓮が触った部分に触れるとわずかにだが肌色の粉が指に付着していた。

 

それだけで、雪蓮が行った意味をようやく理解し、薫は顔を紅くする。

 

 

 

【雪蓮】「どのくらい泣いてたのか知らないけど、ひどい顔だったわよ?…まぁこれで多少はましでしょうけど」

 

【薫】「ぅ………ありがと」

 

【雪蓮】「理由は聞かないけど、ばれたくないならそれなりに気をつけなさい?」

 

【薫】「うん…」

 

【雪蓮】「……ん~、薫。今日はもう部屋へもどっていいわよ?」

 

【薫】「え、でも…………………あ…うん。わかった」

 

【雪蓮】「ん♪素直な子って好きよ」

 

 

どういう事かを理解したときは、ほんとに情けなかった。

 

口調はいつもどおりなのに、表情だけはさっきからずっと真剣だから、そう思わずにはいられなかった。

 

こんな状態で…仕事なんて出来るはずがないと、そういう事なんだろう…。

 

薫はそのまま部屋を出ようと体ごと振り返る。

 

 

【雪蓮】「あ、薫。」

 

そのまま扉に手をかけようというところで雪蓮に呼び止められる。

 

【薫】「なに?」

 

すると、雪蓮はまたこんどは別の引き出しから何かを取り出してきた。

 

【雪蓮】「これあげるから、元気だしなさい!」

 

そう言って、雪蓮はそれをこちらへ放り投げる。

 

受け取り、それをよく見れば。それは雪蓮がつけている髪留めと同じ、花のような形をした装飾具。

 

こんなもので、どうやって元気をだせというんだろう。

 

そう思いながらも、薫は少し、笑っていた。

 

【薫】「ありがとう、雪蓮」

 

満面とはいかないが、それでも素直に笑うように薫は答え、そのまま部屋をでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ちていく意識。

 

部屋に戻った後、何もすることも無く寝台へ入ってみれば、驚くほどたやすく眠りに落ちた。

 

真っ暗な視界は、やがて夢という形で光を差す。

 

そして、目が覚めたのかと錯覚を起こしそうなほど、はっきりとした夢。

 

その中に迷い込む。

 

 

 

 

開けてきた視界が最初に捉えたのは木。

 

一本などではなく、数えるのも億劫になるほどの木々。

 

その次に捉えたのは月、星、夜。

 

それらの景色から、ここが夜の森の中だと推測する。

 

地面と呼べるところに足をつけ、前へと歩く。

 

視界を埋め尽くすほどの木々たちは自分が進むごとによけるように左右へ分かれていく。

 

やがて疲れが見え始めるほど歩いていくと、どこかから、水の音がする。

 

その音を頼りに、さらに前へと進む。

 

もう息切れし始めるほど進み、足を止めてしまったところで、前の木が完全に無くなり、目の前に広がるのは、川。

 

月に照らされた水面は青白い霧を放っていて、どこか幻想的な雰囲気を出している。

 

 

―行くの?―

 

そして、そんな景色の中で聞こえてきた声。

 

―あぁ、どうやら、俺の役目は終わったようだから―

 

何処を見ても、その声の主を見つける事は出来ない。

 

我慢できず、前へと飛び出してみるが、やはりそこには誰もいない。だた目の前には水が流れるだけ。

 

―だめよ。ここにいなさい―

 

それでも響き続ける声。

 

声を聞くたびに、自分の中に焦りが見え始める。

 

―さようなら―

 

違う。聞きたいのはその言葉じゃない。

 

―さようなら…―

 

違う。違うの。見たいのはこんな景色じゃない。

 

―寂しがりやの……女の子―

 

違う。その子は………あんたにいて欲しいだけ…。

 

 

 

―――……………。

 

 

 

 

 

 

【薫】「ん………」

 

目が覚める。

 

いつの間にか眠っていたようだ。

 

窓から外を見れば、空はオレンジ色に染まっていた。

 

どのくらい寝ていたのだろう。まだ意識がぼーっとする。

 

目をこすって、視界だけでもはっきりさせる。

 

そのまま起き上がり、すっかりくしゃくしゃになってしまった侍女服を着替える。

 

そういえば、と今日はもう休みだった事を思い出し、しばらくきていなかった懐かしの自分の服を着ようと引き出しを開ける。

 

【薫】「………なにこれ…」

 

その中にはいっていたそれを見て思わず呆然としてしまった。

 

たしかにこれは薫の服。持ち上げるまでは何の違和感も無かった。

 

しかし、袖を通そうとしたところで服の異変に気がついた。

 

胸元には大きな穴があけられ、下の服もかなり露出度が上がっている。

 

誰がこんなこと……と思ったが、考えられる人物なんて一人しか思い浮かばず、あの明るい笑い声がここまで聞こえてきそうだった。

 

【薫】「やられた…………」

 

髪飾りといい、服といい、そうまで自分色に染めたいのだろうか。

 

しかし、着る服なんてそれしかなく、仕方なく着ることにした。

 

 

 

改造された私服を着用し、部屋の外へ出ると広間のほうが明るいのが見えた。

 

というか、既に周りが暗かった。どうやら服の事で考えている間に日が沈んでしまったようだ。

 

 

とりあえず渡り廊下を抜け、広間へ向かうことにした。

 

スースーする胸元に気をやりながら歩いていき、広間の前までたどりつく。

 

そして両手で扉を開き……

 

 

【薫】「だれかいr…………。」

 

そこに広がった光景に言葉が出なかった。

 

 

【一刀】「よ、よう、久しぶり…薫…」

 

【雪蓮】「あ、一刀待ちなさい!!まだ話おわって……って、あら、薫おきたの?」

 

そこには雪蓮に抱きつかれている一刀がいた。

 

 

【薫】「………とりあえず死のうか♪」

 

【一刀】「はやいよ!いろいろ飛ばしすぎだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【薫】「で、ほんとにアンタが使者なわけ?」

 

【一刀】「そ、そうだっていってんだろ…」

 

【雪蓮】「薫って案外つよいのねぇ~」

 

一刀は腹を押さえながら薫の言葉にこたえる。

 

死ぬのは早いらしかったので、一刀の腹にとりあえずとび膝蹴りから後ろ回し蹴りへのコンビネーションを決めていた薫だった。

 

薫が眠っている間に、一刀はこの地を訪れていた。

 

曹操からの使者という事ではじめこそ警戒していた雪蓮だが、一刀の姿を見たとたんに

 

「いい男じゃない♪」とあっさり真名を与える。

 

一刀もそんな雪蓮にたじろぎながらも、雪蓮のような女性に言い寄られて悪い気などするはずが無く、むしろ大歓迎といった様子で、名を名乗るのだった。

 

そんなふたりにもはやため息しかでない冥琳がなんとか話を始めるも、雪蓮の“おかげ”で話は脱線する一方となり、「こうなったら一刀もほしくなっちゃった~~」と、先ほどの状況なわけだ。

 

【冥琳】「薫も来たことだ。話をすすめてもいいだろうか」

 

【一刀】「あぁ、頼むよ。」

 

後ろのほうで眺めていた冥琳だったが、とりあえず騒ぎが治まったあたりで声をかけてきた。

 

【冥琳】「要求は捕虜の解放という事らしいが、こちらとしても素直に首を縦に振るわけには行かないのだよ。」

 

【一刀】「あぁ、それは分かっている。代わりの要求なら可能な限りのむように曹操から言付かっているからな」

 

【冥琳】「そうか、ならば話ははやいな。」

 

【雪蓮】「一刀、薫くれない?」

 

【一刀】「は?」

 

突然割って入った雪蓮の言葉に一刀はそう答えるしか出来なかった。

 

【一刀】「ちょ、ちょっと待て!それじゃこっちの要求が成り立たないじゃないか!」

 

【雪蓮】「え~~、だって可能な限りって言ったじゃない~」

 

【一刀】「不可能だ!」

 

雪蓮の押しの強さに対抗するように声を大きくするが、押し付けられる胸に今にも陥落しそうになる。

 

【薫】「冥琳、あんたあたしに考えておいてくれって言ったんじゃないの?」

 

一刀の状態を見てかそれ抜きでか、薫はどこか不機嫌になりながら口を挟んだ。

 

【冥琳】「あぁ、言ったな」

 

【薫】「この状況ってどうみてもあたしの意思無視してない?」

 

【雪蓮】「だったら薫はどうしたいのよ?」

 

【薫】「あたしは………。」

 

【冥琳】「時間切れなのだよ、薫。ここで決めなければならないことだ。尊重したくともその本人の意思がわからないのであれば、無視するかしかないだろう?」

 

自分はどうしたいのか………

 

たしかに、まだわからない…。

 

もともと逃げるように眠りについたのだ。意思が固まっていることなどありえない。

 

言い返すことが出来ず、何かに頼るように視線を動かす。

 

そして、捉えたのは、自分を連れ戻しに来たという男。

 

一刀の姿を眺め、改めて考える。

 

もしここに残ればいずれ一刀とも敵になる。

 

………そんな事、考えたくもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――華琳なら……よ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【薫】「―――っ」

 

突然の声と共に、頭に電流が走った様に頭痛が起きる。

 

【雪蓮】「薫?……っ!?」

 

黙ったまましゃべらなくなり、急に苦しそうになる薫に雪蓮が近づく。

 

しかし、薫はそんな雪蓮の手を振り払ってしまう。

 

【薫】「……っはぁ…ご、ごめん。雪蓮」

 

【雪蓮】「……大丈夫なの?」

 

【薫】「うん…」

 

大丈夫じゃない。

 

一瞬でも、たったいま思い出したんだから。

 

さっきまで見ていた夢を。

 

 

姿は見えなかったけど、あれは―…。

 

 

 

【薫】「あたし、戻るよ…」

 

戻らないと、いけない気がした。

 

【雪蓮】「………思い付きじゃないのよね?」

 

よく分からない気分。もやもやしているのに、スッキリしている。

 

別にどっちに仕えたいと思ったわけでもないのに、答えだけが決まっている。

 

計算式をみて、回答方法が分からないのに、答えだけを知っている。そんな気分。

 

【薫】「うん…」

 

だけど、それは絶対の答えのような気がした。

 

一刀をみて、華琳を思い出して。

 

たかが夢で、ここまで自分の気持ちが固まるなんてありえない話。

 

それでも、もどらなきゃ……いけない。

 

【冥琳】「………はぁ…。考えていた策がまるで無駄になってしまったな。」

 

【一刀】「策?」

 

【冥琳】「薫を引き入れ、あわよくばお前も私達の下へ引き入れようというものさ。北郷」

 

【一刀】「はは…。」

 

冥琳の言葉に一刀はただ軽く笑い、受け流す。

 

目が笑っていない冥琳を見るとそれ以外の対応を彼に期待する事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【一刀】「よかったのか?………って俺がこんな事聞くのもおかしいけどさ。」

 

【薫】「ほんとだよ。もっと喜べっ」

 

月夜の下。二人は中庭に出ていた。

 

薫の意思は、「帰る」というものだった。

 

【薫】「あたしには、どっちがいいかなんてわかんないよ」

 

【一刀】「じゃあ、なんで?」

 

曹操と孫策。どちらを選ぶのか。これはそういう話だったはず。

 

意思が決まったにもかかわらず、そんな事をいう薫に一刀は疑問を抱く。

 

【薫】「……………なんでだろ。あのときに、急に華琳の顔が出てきたから…かな」

 

あの時というのはおそらく先ほどのことだろう。

 

一刀を見つめ、何かを思い、答えを出した。

 

【薫】「よく分からないけど、戻りたく、なったんだよ」

 

【一刀】「そっか」

 

薫の言葉に、一刀はそれだけ答えた。そして、さらに言葉をつなげる。

 

【一刀】「なら、よかったんじゃないか?」

 

【薫】「え?」

 

【一刀】「自分で決めたんだろ?」

 

一刀は振り返り、薫のほうへ向いて―

 

【薫】「まぁ、一応…」

 

【一刀】「だったらそれでいいんだよ」

 

薫の側により、目の前の子の頭を撫でるように手をおいた。

 

【薫】「………なにしてんのよ」

 

【一刀】「なんとなく、な。…ていうか、お前ちょっと見ない間にかなり露出上がったな…」

 

【薫】「これは…雪蓮が勝手にしたんだよ…」

 

急に気にしていた服の事に話題を振られ、薫の顔が赤くなる。

 

それを見て撫でる手を下ろし、腰にあてて、一刀は笑った。

 

【一刀】「似合ってるよ、それ。髪のも」

 

【薫】「…………………そう、かな」

 

【一刀】「うん。かわいいと思うよ」

 

そんな言葉に薫はより一層紅くなって。

 

【薫】「……素でそういうこというな。」

 

【一刀】「そうか?本当のことだぞ?」

 

【薫】「…………ぅっさい」

 

すっかり月明かりの下でもはっきり分かるくらい紅潮した顔を俯かせたまま、薫はそっぽを向く。

 

そんな薫の態度に疑問をもつ一刀だが、それをわざわざ言及することも無く。

 

【一刀】「まぁ、薫が帰るって言ってくれてよかったよ」

 

【薫】「……え?」

 

【一刀】「皆まってるしな。お前の事。………それに、俺もうれしいし…薫が戻ってくるなら」

 

今度は一刀も顔を背ける。

 

【薫】「……また蹴飛ばして欲しかったの?」

 

【一刀】「帰るまでは勘弁してくれ」

 

【薫】「答えるのはっや。………まぁ、そうしてあげるよ♪」

 

二人して、顔を紅くしてしまい、目を合わせることも無く、それでも言葉だけは繋ぐ。

 

唯一の救いはここが自分達の街ではないということだろう。

 

こんなところを見られたら、あとでどんな冷やかし&罵倒が襲ってくるか分かったものではない。

 

それから、中庭に置かれていた机へとすわり、お互いがいなかった間の事を話した。

 

黄巾党の党首が実はあのときの子だったこと。

 

捕まった後、侍女にされてしまい、散々こき使われた事。

 

賊を討つために思いついた策。

 

目の当たりにした、王と呼ばれる人物の事。

 

今まで見た事のないほどの大軍。そしてそれを見ても気絶しなくなった事。

 

呉に誘われ、散々揺さぶられ、悩み続けた事。

 

薫を連れ戻すために、華琳が一刀を選んだ事。

 

迷っているときに、一刀を見つめ、華琳を選んだ事。

 

 

 

【薫】「ずいぶんめちゃくちゃな人生だね」

 

【一刀】「お互い様だろ?」

 

【薫】「それもそうだね」

 

 

笑いあい、話し続けるが、そのうちに風が強くなってきたことに気づく。

 

 

【薫】「ぅ……」

 

【一刀】「ん、あぁ。ちょっと待って」

 

そう言って、一刀は制服の上着を脱いで、薫へとかける。

 

 

 

【一刀】「その服じゃさすがに夜はさむいよな」

 

【薫】「ほんとだよ……。あんたは平気なの?」

 

 

 

【一刀】「あぁ。俺ってもともと暑がりなんだよ」

 

【薫】「どっかで聞いたような台詞いっちゃって」

 

 

 

【一刀】「馬鹿。一度言ってみたい台詞第三位だぞ」

 

【薫】「じゃあ、二位と一位は?」

 

 

 

【一刀】「まだ秘密」

 

【薫】「なにそれ」

 

 

 

【一刀】「知りたければ俺ともっと仲良くなってみるのがいいかもな」

 

【薫】「…馬鹿」

 

 

 

【一刀】「ま、そのうち聞かせてあげるよ」

 

【薫】「まぁ、そのうち聞いてやるよ」

 

 

 

【一刀】「あ、お前、そんなこと言うか~」

 

【薫】「ぁははは」

 

 

会話が途切れず、他愛もない話題が続く。

 

あの時見た夢がなんなのか。彼女はまだ知らない。

 

この先、激動の時代が来る事を、彼は知っている。

 

しかし、それはまだ、ほんの少しだが、先の話。

 

今は、戦いと苦難を終えた者達に休息のひと時があってもいいのではないだろうか。

 

 

 

 

【一刀】「しかし、侍女か……みたかったな。帰ったら用意しようか」

 

【薫】「………冗談よね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

 

こんばんは!

調子に乗って一気に書き進めてしまいました。

なので若干走り気味になっていたら申し訳ないですorz

 

ただ、ボク的には十分書きたい事は書けました!

それから、前回のコメで一刀の種馬を期待していた方、申し訳ないですw

 

種馬無双はさすがにこれからのストーリー崩壊させてしまうので、できませんでした><

 

ただその分最後の最後で薫を落としにかかりました。

 

まだデレまでは行ってませんが、少なくとも前の拠点の頃よりは関係がよくなったと思います!

 

そして、薫ですが、ここに来て「覇王の願い」の頃からの設定が少しだけ見えてきました。

 

前回の話を読んでくださった方はご存知かもしれませんがあの時は失敗例。そして近作が成功例という形になります。なのでなんとなくわかるとおもいますが、話が進めば進むほど薫がチートになっていきます。

 

一応、次の洛陽編での補足という形で、これだけ書かせていただきます。

 

 

 

 

さて、一応内容についてはこんなところかな?

 

 

ここからは少しだけこれからの事について。

 

えとまず、タイトルなんですけど、拠点及び次の洛陽編に入ったときは別の何か

 

例:「真・恋姫無双~薫る空~洛陽編1話」

 

みたいな感じしたほうがいいでしょうか?それかもうこのまま14話、15話で続けちゃってもいいのか少し気になりまして。

 

出来ればでいいので意見もらえればと思います。まぁ、元々は作者が自分で考える事なんですがw

 

 

それから拠点なんですが、現在誰を書くかまったくもって決まっていません。

 

まぁ、できたら薫は書きたいなぁ…とか思ったりするわけですけども。

 

でもさすがに全員とかだと貧弱な和兎は即入院から南無ってことになりますので、それは無理だと思うんですが、最低でも3,4人は考えようかと。

 

現在一刀が所属する曹操軍のメンバーが

 

 

1、華琳 2、薫 3、春蘭 4、秋蘭 5、桂花 6、凪 7、真桜 8、沙和 

 

 

9、天和 10、地和 11、人和 12、季衣

 

 

かな?

 

本編で凪、真桜、沙和が少し涙目な役回りだったので書いてあげたい気もしますが…

 

この中のメンバーから書こうと思ってます。単独で書くか、複合で書いてしまうかも決まっていませんが、希望とかあればコメしていただければ参考にさせていただきます。

 

 

さすがにちょっと聞きすぎ?(´・ω・`)

 

べ、別にコメントがほしいからしてるんじゃないんだからねっ!

 

 

 

 

 

………いや、なんかすいません。自分で打って少し引きました。

 

まぁ、こんなものはスルーして(ぁ

 

そんなこんなですが、黄巾編完結ということで、次回からもまたよろしくお願いしますm(__)m

 

 

 

 


 
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