とある場所…
いや、とある『空間』に、男と女が二人ずつ集っていた。
「くそっ!一体どうなってるんだ!?」
ダンッ!と一人の男が拳を何も無い場所、そこにまるで壁が在るかのように、叩きつける。
「左慈、少しは落ち着いてはどうです?」
中空に椅子があるように座っている男、于吉に左慈と呼ばれた男は窘められる。
「これが落ち着いていられるか!どこもかしこも失敗続きではないか!」
「それは、そうですが…」
彼らは北郷一刀、新田剣丞、この二人を中心とした外史の消失を狙っている。
しかしそのために立てた、各地で各個撃破するはずの作戦が、悉く失敗していた。
「これはこれで面白いじゃないですか~。今を楽しみましょうよ~」
「なんだと貴様っ!」
椅子の背もたれ?にだらしなく凭れ掛かる少女・喜浦に左慈が詰め寄る。
「およしなさい左慈。貴女も、もう少し協力的だと助かるのですけれど」
于吉も物腰は柔らかいものの、少々頭にはきているようだ。
「ん~。ボク、割と面白ければ何でも良いって感じなんでー。この前の松平の処分は割と良い出来で――」
「ふざけるなっ!貴様の失敗のせいで、どれだけの負担が…」
「そこの傀儡一人とボクしか使ってませんけどね」
「そういう問題ではっ!」
冗談の通じない左慈と冗談半分の喜浦。
この二人は、とことん反りが合わないようだ。
「とにかく、話を戻しましょう。敵の動きを見て疑問なのが、三国と戦国の連中が合力しているように感じた点です」
「そういえばそうだな。おい、貴様の世では旗は字ではなく紋様だと言っていたな」
「そーですねー」
「洛陽に奇妙な旗が四つほど上がっていた。もしかしたら奴らの仲間かも知れん。もし心当たりがあったら答えろ」
「いーですよー」
何とも気の無い返事だが、それにいちいち突っかかるのも疲れたのか、左慈は奥歯で苦虫をすり潰しながら口を開いた。
「櫛のような形、植物があしらわれた紋、大きな黒丸を小さな黒丸を八つ囲んだ形、そして黒地に白丸その中に黒い横棒。
洛陽に掲げられた旗はこれで全てだ」
「それは、確かに奇妙ですね…」
旗といえば姓というのが常識の時代だけあり、于吉も眉を顰める。
「櫛~?…あぁ~恐らく赤鳥ですね。ということは今川義元公がいらっしゃるんですね。それと植物…だとちょっと分かりかねますね~。
藤だとしても藤原氏なんて腐るほどいますし、桔梗紋は…まぁ無いでしょうけど?」
喜浦は一瞬視線をやるが、再び考え込むように目線を上げる。
「黒丸が九つは九曜紋だから伊達、もないから細川…藤孝さんかなぁ?あとは、黒地に白丸さらに黒一文字……足利紋じゃないし、たぶん新田氏ですね」
「新田というと…」
「恐らくウチの外史の始点、新田剣丞じゃないですかね?」
「かね?ではない!何故そ奴が洛陽に入り、共に戦っているのだ!?」
「知りませんよー。そもそも、新田氏に討伐隊を送り込んだのはそちらじゃなかったですか?」
「…ちっ」
痛いところを突かれたので舌打ちをしながら目を逸らす左慈。
傀儡を大量に放ったものの、討ち取ったという報告は受けていない。
「済んだことはさておくとして、私の呉と越後に仕掛けた計略も見破られ、あろうことか連携をして襲い掛かってきました」
「二虎競食の計だったか?孫策の性格なら問答無用で攻め入りそうなものだが…」
「えぇ。それは長尾景虎の性格も踏まえて、かつ共に泣き所を抱えた両国ゆえ、あの策を採ったのですが…」
自信があった策なのか、于吉の落胆の色は深い。
「それで、我らが『盟主さま』は動かれないんですかね?」
「あ奴はダメだ。かき回すだけかき回して、後は任せるの一点だ」
左慈の不満は深いものらしい。
「過ぎたことや、儘ならぬことに囚われても仕方がありません。喜浦さん、あなたのお仲間は上手く事を運んでいるのでしょうか?」
「……お仲間って言って欲しくはないんですけどねー。ボク、アイツのこと嫌いですし~」
それまで終始緩かった喜浦の顔に、初めて渋みが見えた。
「クソ真面目で石頭で面白味の欠片もない奴ですけど…まぁ~仕事は出来ますからね。しくじらないんじゃないですか?」
「……今は、それを信じるよりありませんか」
「それで?そいつは今どこで何をしているんだ?」
「彼女は…
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どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、82本目です。
イベントやら私事やらで間が空いてしまい申し訳ありませんm(_ _)m
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