No.862715

英雄伝説~菫の軌跡~

soranoさん

第116話

2016-08-10 01:01:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:950   閲覧ユーザー数:904

 

その後帝都を回りながら依頼を片付けていたリィン達はB班のメンバーと出会い、出会った時間がたまたまお昼時だった為、B班のメンバーと昼食を共にしてレストラン前で別れた後、残りの依頼を片付ける為に依頼人であるホテルの支配人がいるホテルに向かい、受付を訪ね、依頼内容を聞いた後これからの行動の為にホテルのロビーの一角で話し合っていた。

 

~帝都ヘイムダル・”デア=ヒンメル”~

 

「それじゃあ、準備ができたら地下道へ向かおうか。」

「ラジャ。」

「しっかり準備を整えておかないとね。」

「あら……?」

リィン達が話し合っていると聞きなれない女性の声が聞こえ、声を聞いたリィン達が振り向くとドレスを身に纏った女性が階段から降りてきた。

「クロチルダ様。そろそろお時間ですか?」

女性に気付いた受付にいる支配人は尋ね

「ええ、行ってくるわ。それよりそっちの子たちは……?」

女性は頷いた後リィン達を見回した。

 

「……………あっ………………あああああああああっ!?」

「……ヴィ…………ヴィ……ヴィータ・クロチルダ……!?」

(うふふ、まさかこんな所で会うなんてね。ちょうどいい機会だし、今後の為に”読み取らせてもらう”わよ、”蒼の深淵”さん♪)

一方女性の顔を見たエリオットとマキアスは声を上げて驚き、レンは意味ありげな笑みを浮かべてその身に秘められているグノーシスの力で女性の記憶を読み取った。

「す、すごい…………本物だ……!!」

「ま、まさか……会える日が来るとは……!」

(えっと、この人は……?)

興奮しているエリオット達の様子にリィンは戸惑い

「ええい、君達!何をぼーっとしている!あの有名なオペラ歌手、”蒼の歌姫(ディーバ)”クロチルダが目の前にいるんだぞ!?」

戸惑っているリィン達の様子に気付いたマキアスは慌てた様子で指摘した。

 

「”蒼の歌姫(ディーバ)”……ふむ、聞いたことがあるような。」

「し、知らないのっ!?」

首を傾げている様子のラウラを見たエリオットは信じられない表情をし

「あははっ……有名だなんて言ってもオペラの世界でだけだもの。知らなくったって無理ないわよね。知名度で言ったらそちらの”天使”ちゃんの方がどっちかっていうと大衆の人達に知られていると思うわよ?」

その様子を見た女性はおかしそうに笑った後レンに視線を向け

「うふふ、”やっぱり”レンの事を知っていたのね。まあ、レンもお姉さんの事はレンの可愛くて大切な妹に聞く前から知っているけどね、蒼の深え―――じゃなくて”蒼の歌姫”のお姉さん♪」

「あら……フフ、よく考えてみたら貴女の”知り合い”には貴女の妹を含めて私を知っている人が3人もいるのだからその人達から私の事を聞いていてもおかしくはないわね。」

笑顔を浮かべてわざと言い直したレンの話から何かに気づいた女性は目を丸くした後レンに微笑んだ後リィン達を見回して自己紹介をして微笑んだ。

 

「―――ヴィータ・クロチルダ。オペラ歌手をやっているわ。よかったらご贔屓にね。」

「ど、どうも……よろしくお願いします。」

(よく見ると相当綺麗な人かも……)

女性――――ヴィータ・クロチルダに微笑まれたリィンは戸惑い、フィーはクロチルダの整った容姿を見つめ

(うふふ、あんな綺麗でスタイル抜群なレディにレーヴェが目を付けられて誘惑され続けた事をカリンお姉さんに後で教えてあげようっと♪)

クロチルダの記憶を読み取ったレンは小悪魔な笑みを浮かべていた。

「ところで、あなたたちの制服……どこかの学校の生徒さんね?もしかして、私のサイン目当てでわざわざ来てくれたのかしら?」

「は、はい、それはもうっ!!」

「それ以外に用事などあり得るわけがありません!」

クロチルダに尋ねられたエリオットは嬉しそうな表情で、マキアスは真剣な表情で断言し

「いやいや、違うだろ!?コホン、え、えっと……俺達はトリスタにあるトールズ士官学院の者です。今日はその、実習でこちらに来ていまして。」

二人の断言を呆れた様子で否定したリィンは気を取り直して説明した。

 

「ふふっ、それは残念。あ、でも士官学院っていうことは、もしかして……例の地下道の魔獣の件を手伝ってくれるのかしら?」

「そだね。ま、仕事はこれからだけど。」

「ぼ、僕達に任せてください!」

「きっとやり遂げてみせますから!」

クロチルダの疑問に冷静な様子で答えたフィーとは逆にマキアスとエリオットは興奮した様子で答えた。

「うん、助かるわ。私も話を聞いて不安だったから。それにしても、実習か……今時の学校では面白いことをやっているみたいね。」

「はは………さすがにウチくらいだと思いますが。」

「いけない、次のリハーサルが押しているんだったわ。悪いけれどこれで失礼するわね。」

「いや、こちらこそ呼び止めてしまいました。」

「ふふ、いい息抜きになったわ。大変だと思うけど……実習、頑張ってね。―――ああ、そうだ”天使”ちゃん。」

「あら、何かしら?」

クロチルダに名指しされたレンは不思議そうな表情でクロチルダを見つめ

「―――そろそろ”新しい生活”にも慣れて来た頃だろうから時間ができたら是非会いに来て欲しいって、”レオン”に伝えておいてくれないかしら?」

「”レオン”………うふふ、お姉さんはレーヴェの事をそう呼んでいるんだ。ま、伝えておくだけなら別にいいわよ。」

「ふふっ、よろしくね。」

レンの答えを聞いて微笑んだクロチルダはその場から去って行った。

 

「はああああ~……っ。雑誌で見るより何倍も綺麗だったねえ……!」

「うむ……さすがに本物は違うな……!」

クロチルダが去った後溜息を吐いたエリオットの言葉に頷いたマキアスだったが

「―――ってああ!?結局サインをもらい損ねた!?」

ある事に気付いて心底後悔した様子で声を上げた。

「……残念だったね、それは。」

「……しかし、大した女性だな。単に容姿が美しいだけではなく、相当な器の広さを感じた。」

マキアスの反応にフィーが呆れている中、ラウラは感心した様子でクロチルダが去った方向を見つめた。

 

「ああ、そんな感じだったな。”蒼の歌姫(ディーバ)”ヴィータ・クロチルダか……はは、俺も何だかファンになっちゃいそうだ。」

ラウラの意見に頷いたリィンはクロチルダが去った方向を見つめながら呟いたが

「うふふ、”蒼の歌姫”のファンになるかもしれないというさっきのリィンお兄さんの言葉をエリゼお姉さんに伝えたらエリゼお姉さんはどんな反応をするのか今から楽しみね♪」

「ちょっ!?頼むからそれだけはやめてくれ………!」

からかいの表情で呟いたレンの推測を聞くと一瞬でエリゼの反応を推測して冷や汗をかいて表情を引き攣らせた後慌てた様子でレンを見つめて嘆願した。

「あれ?そういえばさっき、クロチルダさん、去り際にレンに伝言して行ったけど……」

「確か”レオン”という人物に向けて時間ができたら是非会いに来て欲しいみたいな事を言っていたよな……?」

その時ある事が気になったエリオットの疑問を聞いて考え込んだマキアスはレンに視線を向け

「うふふ、”レーヴェ”って言うレンの知り合いがいるのだけど……その人はとてもカッコイイお兄さんで剣の腕も凄い人で、レンが認めているレンよりも実力が上の人達の中の一人よ♪」

「なっ!?”小剣聖”のレンよりも実力が上なのか……!?」

「ほう……しかも剣士とは。一体どのような人物なのか、私も気になってきたな。」

レンの答えを聞いたリィンは驚き、ラウラは興味ありげな表情をしたが

「……………ふぅん。レーヴェの知り合いって事は、まさかとは思うけどヨシュアやユウナの”知り合い”?」

「うふふ、その通りよ♪」

「………なるほどね。ま、わたし達に関わらないんだったら別にいいけど。」

「フィーは先程レンの話にあった”レーヴェ”という人物について知っているのか?」

「ん。でもその人の剣は”正道”のラウラの剣とは対極の剣―――”邪道”の剣の上剣を振るっている理由もラウラと真反対の理由だから、会わない方がいいと思うよ。」

「………………」

レンとフィーの意味ありげな会話を聞いて気になった自分の質問に答えたフィーの答えを聞くと真剣な表情でフィーとレンを見つめ、その様子を見ていたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「え、えっと……そのレーヴェさんという人は本当にあのクロチルダさんと知り合いなの?」

その時空気を変えるためにエリオットがレンに質問し

「ええ。ちなみにレーヴェから聞いた話によるとさっきのお姉さんはレーヴェに惚れて色々な誘惑をされたそうだけど、レーヴェはさっきのお姉さんを振ったそうよ♪」

「ええっ!?」

「な、なななななななっ!?と言う事はそのレーヴェという人物は”蒼の歌姫”の心を射止めたのか!?しかも振ったって………罰当たり過ぎるだろう!?」

からかいの表情で答えたレンの話を聞くと驚き、マキアスは混乱した様子で声を上げた後信じられない表情をした。

「クスクス、レーヴェ自身にとってはさっきのお姉さんよりも魅力的なレディがいてその人と付き合っているのだから、さっきのお姉さんが振られたのも仕方がない事よ。」

「あ、あの”蒼の歌姫”より魅力的な女性って一体どんな女性なんだ………?」

「そんな人とまで知り合いだなんて、レンって本当に謎が多すぎだよね……」

レンの説明を聞いたマキアスは考え込み、エリオットは冷や汗をかいてレンを見つめた。

「ハハ………クロチルダさんも期待している事だし、そろそろ手配魔獣を退治しに行かないとな。準備を整えて右側の扉に行こう。」

その様子を苦笑しながら見守っていたリィンはクラスメイト達を見回して声をかけ、その後準備を整えたリィン達は依頼内容である特定の魔獣の退治の為にホテルの地下道の探索を開始し、地下道の探索をしていたリィン達は退治を依頼された魔獣を見つけた。

 

~帝都・東地下水道~

 

「あ、あれが……」

「どうやらホテルから手配された魔獣らしいな……」

手配魔獣を見つけたエリオットは不安そうな表情をし、マキアスは表情を引き締めた。

「フィー、ラウラ、行けるか?」

「……当然。」

「悪いが、私とフィーで仕掛けさせてもらいたい。」

リィンに視線を向けられたフィーとラウラはそれぞれ頷いた。

「”戦術リンク”だね?」

「二人とも頑張ってね♪」

「いや、当事者の一人の君も他人事じゃないだろ……」

「わかった。ラウラとフィーを中心に目標に仕掛けるぞ……!」

そしてリィン達は手配魔獣との戦闘を開始した。ラウラとフィーは最初は戦術リンクも結べて順調にダメージを与えていたが、戦闘の途中で戦術リンクが途切れてしまい、その影響でラウラとフィーは苦戦し始め、リィン達は二人のフォローに回りながら手配魔獣を撃破した。

 

「「……………………」」

戦闘が終了し、戦闘の疲労によって地面に膝をついているラウラとフィーは何も言わず黙り込み

「そ、その……なんだ。もう無理に”戦術リンク”に拘らなくてもいいんじゃないか?」

その様子を見たマキアスは慰めの言葉をかけたが

「うふふ、ユーシスお兄さんとの”戦術リンク”が中々できなかったマキアスお兄さんが言うと説得力があるわね♪」

「フィー同様ラウラとの”戦術リンク”が結んだら失敗する可能性が非常に高い君も他人事じゃないだろうが!?……というか、前々から疑問に思っていたけど何で6月に編入した君がそれ以前の出来事を知っているんだ!?」

からかいの表情で呟いたレンの指摘を聞くと疲れた表情でレンを見つめて反論した。

「アハハ……まあ、”戦術リンク”に拘りたいという気持ちはちょっとわかるんだけど。」

そして苦笑していたエリオットが考え込んだその時

「―――いや。これ以上、そなたたちの足を引っ張るのは本意ではない。今回の実習中、私は後方支援に徹するとしよう。」

ラウラが予想外の申し出をした。

 

「っ…………!」

「ちょ、いきなり何を……!?」

「ラウラが前で戦わないってそんなのおかしくない……!?」

「そうよねぇ……確かラウラお姉さんってアーツはあんまり得意じゃないでしょう?」

ラウラの申し出を聞いたフィーは唇を噛みしめ、マキアスとエリオットは驚き、レンは疲れた表情でラウラに指摘し

「…………………」

リィンは真剣な表情で黙ってラウラを見つめた。

「……ふざけないで。外れるとしたらわたしの方が外れるべき。戦力的にもその方が合理的。」

するとその時座り込んでいたフィーが立ち上がってラウラを睨んで反論した。

 

「いや、今回に限っては私の未熟の結果によるものだ。そなたやレンを心のどこかで受け容れられぬ事も含めてな。」

「…………ぁ……………………」

「フゥ…………」

しかしラウラの答えを聞いたフィーは呆けた後辛そうな表情でラウラから視線を外し、レンは疲れた表情で溜息を吐いた。

「すまない……自分がこんなに心が狭いとは思わなかった。そのせいで、そなた達にも苦しい思いをさせたと思う。部活でも気付かされたが……やはり私は未熟なままのようだ。」

「ラウラ…………」

「………………」

ラウラの話を聞いたエリオット達は心配そうな表情でラウラを見つめた。

「リィン、そういう事ゆえ、以後の戦いでは私を―――」

そしてラウラはリィンを見つめて申し出たが

「―――いや。サポートの方は俺が回らせてもらおう。」

「!?」

リィンの突然の提案に目を見開いた。

 

「え。」

「ちょ、ちょっとリィン!?」

「ま、また君は……唐突に何を言い出すんだ?」

「しばらく戦ってみて一つ気付いた事がある。ラウラ、それにフィーとレン。君達の戦闘スタイルが本来、最高の組み合わせだってことを。」

「あ……」

「……それは…………」

「ふぅん?」

自分の突然の提案にクラスメイト達が戸惑っている中に指摘したリィンの話を聞いたラウラとフィーは呆け、レンは試すような視線でリィンを見つめていた。

「そ、そうなの?」

「ぼ、僕にはちょっとわからない話だが……」

一方リィンの指摘の意味がわからないエリオットとマキアスは戸惑っていた。

 

「ラウラは理想的な重剣士……圧倒的な剣技を揺るぎなく振るう、まさに”主戦力”だろう。一方フィーは理想的な前衛……圧倒的な機動力と速度で敵を崩し、主力の突入を助けるアタッカーだ。実技テストも、二人に組まれたら本来勝ち目があるはずがないんだ。」

「「…………………」」

「なるほど……確かに言われてみれば。」

「”戦術リンク”が使えれば鬼に金棒って感じだよね。」

リィンの説明を聞いたラウラとフィーは黙り込み、マキアスとエリオットはそれぞれ納得した様子で頷き

「そしてレンは理想的な万能戦士と軍師………剣、銃、体術、魔導杖、アーツと距離を選ばず状況に応じた戦い方で”主戦力”にもなれるし、主力の突入を助けるアタッカーや味方を援護する後衛にもなれる事に加えて瞬時に状況を冷静に判断して状況に応じた戦術を練って、その状況によってベストな判断で仲間達に指示をして戦う司令官だ。ラウラとフィーに限らず、俺達の誰と組んでも実技テストでは決して誰も勝ち目はないと思うんだ。」

「それは………」

「確かにレンと”戦術リンク”を結んでいる時はレンが”戦術リンク”を結んだ相手である僕達は他の人達の時よりも戦いやすいよね……」

「うふふ……中々目の付け所がいいわね。」

リィンの更なる説明を聞いたマキアスとエリオットが納得している中レンは感心した様子でリィンを見つめていた。

 

「ああ、そしてその事は三人とも気付いているんだろう?だからこそ何とかしたいのに”何か”が上手くかみ合わない……そんなもどかしさをずっと感じて来たんじゃないのか?」

「………………」

「……ああ、そなたの言う通りだ。」

「ん~……レンはラウラお姉さんと上手くかみ合おうと頑張っているのだけどねぇ……」

リィンの指摘にラウラとフィーが頷いている中、レンは疲れた表情で呟いた。

「なら、ここで誰かが引っ込むなんて馬鹿げている。戦力的なバランスを考えたらむしろ俺が援護に回るべきだ。その方が、お互いの問題に気付きやすくなるんじゃないか?」

「「「………………」」」

リィンに問いかけられた三人はそれぞれ黙り込んでそれぞれの顔を見て頷いてリィンを見つめた。

「……そなたに感謝を。」

「仕方ないわねぇ。」

「しばらく申し出に甘えさせてもらう。」

「ああ、喜んで。」

「ふう……やれやれ。僕の時もそうだったが……君、大胆不敵すぎやしないか?」

「えっ……そうか?」

三人を諭す自分の様子を見守っていたマキアスの指摘にリィンは首を傾げた。

 

「あはは、自覚がないのもリィンらしいっていうか。でも、何だかちょっと光明が見えてきたみたいだね?」

「ああ……何とか掴んでみせよう。」

「とりあえずホテルに戻らなくちゃ、だね。」

「そうね。」

その後ホテルに戻ろうとしたリィン達だったが、帰り道で聞こえて来た音楽が気になり、音楽が聞こえて来た方向を調べると隠し扉があり、仕掛けを解いて隠し扉の先にある階段で地上へと出て音楽が聞こえて来た方向に近づくとそこには学生達が楽器で曲を演奏していた。

 

~マーテル公園~

 

学生達が演奏を終えるとエリオットが拍手をした。

「あっ……」

「……エ、エリオット君!?」

「わ~、帰ってきてたんだ~!」

拍手に気付いた学生たちはエリオットに気づくとそれぞれ驚いたり嬉しそうな表情をしてエリオットに近づいた。

「久しぶり、モーリス。ロン、それにカリンカも。」

エリオットは懐かしそうな表情で学生たちを見回した。

「はは、そっちも……本当に久しぶりだなあ!」

「ふふ、元気そうでなによりだわ。えっと、後ろの人たちは……?」

エリオットを懐かしそうな表情で話しかけていた女学生はリィン達に気付いて尋ねた。

 

「俺達はトールズ士官学院のエリオットのクラスメイトだ。」

「同年代のようだしお見知り置き願おう。」

「君達もエリオットの友人みたいだな。その制服、どこの学校なんだ?」

学生達の見慣れない制服が気になったマキアスは学生達に尋ねた。

「うん、僕達は音楽院に通ってるんだよ~。」

「音楽院……」

「なるほどね。道理で演奏の練習をしていた訳ね。」

学生の答えを聞いたフィーは呆け、レンは納得した様子で学生たちを見つめた。

 

「この街区の外れにあって、音楽を専門に教えているんだ。有名な演奏家なんかも何人も輩出しているんだよ。」

「なるほど、演奏があんなに上手だったのも頷けるな。」

「はは、ありがとう。」

「うちの学校では毎年、夏至祭で開かれるコンサートに出演することになっていてね。放課後に仕上げを行っていたところだったの。」

「なるほど……ここなら確かにうってつけだろうな。」

「うんうん……みんなすっごく良かったよ!前よりも格段に上達してる。……いっぱい練習したんだね。」

学生達の演奏を思い出したエリオットは嬉しそうな表情をした後、羨ましそうな様子で学生達を見回した。

「そ、そうかな~?」

「まあ、毎日練習漬けだしなぁ。」

「ふふ、ちょっとは上手くなってないとバチが当たるわよ。……でも、エリオット君にも音楽院に来て欲しかったな。」

「それって……」

女学生が呟いた言葉を聞いたリィンは目を丸くして学生達を見回した。

 

「ああ、もちろん君達のことを悪く言っているわけじゃないさ。その、士官学院でもバイオリンは弾いているのかい?」

「うん、部活でね。一応吹奏楽部に入ったから。」

「そっか……よかった。」

「エリオットは本当に上手だったもんね~。いつか機会があったらまたセッションしたいな~。」

「あはは、そうだね。」

学生の一人が呟いた言葉を聞いたエリオットはその光景を思い浮かべて笑顔になった。

「っと、つい話し込んじゃったな。そろそろ音楽院に戻って練習の続きをしないと。」

「ふむ、さすがに熱心だな。」

「ふふ、よかったら夏至祭はみんなで聞きに来てね。士官学院のみなさんも、お待ちしているから。」

「ああ、楽しみにしておくよ。」

「それじゃあエリオット、また会おうな~。」

「うん、それじゃあまた。」

そして学生達はその場から去って行った。

 

「エリオット……」

「その……ひょっとして。」

去って行く学生達の様子を見つめて何かを察したリィンとマキアスは尋ねかけたが

「あはは……違うってば。ホテルに報告に行ったら、今日はそろそろ帰ろっか?姉さんが夕食の準備をしてくれてるはずだしね。」

エリオットは首を横に振って否定した。

「……そだね。」

「それでは、行くとするか。」

「うふふ、フィオナお姉さんはどんなディナーを用意してくれたのか今から楽しみね♪」

その後公園を出てホテルに向かい、依頼人に手配魔獣の撃破を報告したリィン達はフィオナが用意してくれている夕食を御馳走になるためにエリオットの実家に向かった―――――

 

 

 

 


 
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