豪華絢爛きらびやかに佇むひとつの洋館。 ここに和 ・ 洋 ・ 中の文化を問わず、様々な人が集まっている。 そう、今日は “覆面舞踏会” という企画の名の元に集まっていただいたとのことらしい。 ちなみに、私はナビゲート役である。 仮に “覆面A” とでも呼んでいただければけっこうだ。 いささかの文句を垂れたいところだが、時間もないので早速中へとご案内しましょう。
古代の恐竜でも通るんじゃなかろーかというぐらい、無駄に大きな両扉を開くとそこはまさしく別世界。 異常なまでに高い天井、プラス、シャンデリアに、いかにも高そうなご馳走。 そして何より怪し ―― もとい、色とりどりの高価と思われる服に身を包んでいる人たち。 うん、どこをどう見ても危険な香りがする。 もちろん、法に触れることはしていないが。 ……とりあえず、さっさと仕事をして家に帰ろう。 ちなみに、私の仕事は先にも述べたようにナビゲートだ。 それに加え、主役たちのインタビューもある。 簡単に流せばよい、というだけなので引き受けたのだが……。
何だあの人たち。 ひぃふぃみぃ、合わせて6の人。 他の人たちも美形だったり美人だったりするが、あの中央にいる人たちは何かが違う。 まるで普通の鳥の中に孔雀でもいるかのようだ。 ま、まあ、中身はおそらく普通の人。 気を取り直して行ってみよう。
―― こんばんは、皆さん。 今日は企画にご参加くださり、ありがとうございます。
「ん? ―― ああ、どうも」
「こらこら、彼女に当たるんじゃないよ? この子は仕事なのだからね」
と、背はおそらく160ちょっとで黄土色の髪の毛をした女の子。 もうひとりはうっとりとした目元が印象な、長身の女性。 おそらく20前半かと思われる人が答えた。
「しっかしまあ、何してウチがやらなあかんねん」
「それはお ―― じゃない、私だって同じでしょ。 お互いさまよ」
という物言いをする、黄緑色と……。 ヘンな髪の色をしている人。 こちらもウットリ女性に負けない身丈だ。 特に、前者はそれ以上である。
―― 今宵は条件をクリアした、特別な集まりだと聞きましたが、それについてはどう思われますか?
「何とも言いようがないよ。 あまり嬉しくないし……」
「私も同じくそうだ。 というより、最初は侮辱しているのかと思ったが」
―― ぶ、侮辱、ですか?
「ああ。 私は他の方々とはまた違う意味で選ばれたのだ」
という、赤毛を持つ少々近寄り難い雰囲気の女の子。 たぶん、10代半ばかと。 ちなみに、2回目の質問にいち早く答えた子もそれぐらいだろう。 彼女の特徴としては、水色の髪と目だろうか。
「しかしまあ。 よくもこんな不名誉なことに選んでくれたものだ。 おかげさまでいい笑いものだよ?」
「そない言いましても……。 ウチかてそうですわ」
「君たちはまだ若いからいいじゃないか。 『俺』 なんか20超えているのにねぇ? いい歳した大人が何をしているのやら」
「年齢の問題ではありませんよ。 ……まあ、この顔のおかげでこういうことは今に始まったことではありませんがね」
……はい? ず、随分と口が悪いな。 このウットリ女性は……。 しかもヘンな言葉が耳に入った気もする。 きっと、異常な空間が引き起こした幻聴だろう。 とそこに、十二単を着た13 ・ 4の女の子が、これをどうぞ、と言いながら手紙を渡してくれた。 ありがとう、とお礼を言うと、笑顔で一礼をした後一瞬にして姿を消してしまう。 あ、あれだ。 いわゆる瞬間移動ってヤツ ―― いやいや、そんなことはもう放っておこう。 何が起きても不思議じゃないこの舞踏会だ。 小さいことは気にしない気にしない…………。
いや、前言撤回する。 やはり気にしなくてはいけないようだった。 目の前にいる美麗なる人々は、何と1人を除き “と ・ の ・ が ・ た” 、とのことだっ!!
―― ○#※÷?*%+×!?
「? どうかされたか」
「あ、もしかしてバレた!?」
「!? ちょっと待ってよ、彼女に知らせてなかったのっ!?」
「こんなことだろうと思ったけれどね。 ほら、周りも疑いの眼差しで見ているだろう?」
「だろうって……。 余計恥ずかしいじゃないかっ!!」
「まーっ。 場を盛り上げるんは、それが1番いいわな」
「よかないだろっ!!」
と、色々なことを口にする。 ちなみに、順番を言うと赤毛の女の子、水色の子、黄土色の女の子、ウットリ女性、戻って黄土色の女の子。 そして、長身で黄緑色の子、ヘンな髪の色の子である。
―― すみません、軽くお触りしてもよろしいでしょうか。 確かめたいのですが。
「では、反応が1番楽しいと思われる彼に」
「何でオレなのっ!? いやだいやだっ」
「まあまあ、落ち着いて! ねっ?」
と、私が本気と冗談の半分半分な発言に、ウットリじょ……ではなく、男性が黄土色の男の子を生贄へと差し出したところ、水色の男の子が落ち着かせる。
いや~、誰がここまで綺麗に仕上げたんだろう。 とても男には見えないよ。
「ところで、だ。 初対面の方に不仕付けな物言いをするが……。 あなたは喧嘩が強そうにお見受けする」
―― 私ですか? ええ、まあ。
「ではどうだろう。 この会が終わったら、是非私と手合わせ願いたいのだが」
―― い、いや~。 手合わせするほどでもないと思いますが。
「そうか? 私にはそうは見えんがな」
―― まあ、2 ・ 30人に囲まれよーがのめしていますけど。
「十分ではないか。 何か術とかをお使いになるだろうか」
―― いえ、普通の人間なんで。
「ふむ。 こちらではそういうのが存在しないのかも知れないな。 実は他の方々にもお願いしたのだが……」
「女のコに、そない乱暴はできんわ」
「暴力ではなく、ただの喧嘩だ。 私は強い者と手を合わすのが好きなだけでな」
「いや、女の子相手にそれはちょっと……」
「偏見か? 武人として強くあろうとするのは、当たり前のことだろう」
「そりゃ何となーくわかるんやけど」
「あ、あの人と気が合いそうだよ……」
―― あの人? どちら様でしょう?
「あ。 姉代わりみたいな人なんだけどね。 すっごい気が強くて」
「どの方だ? その女性も強いのか?」
と、目を輝かせながら言う赤毛の女の子。 どうやら、何かが違えど、この人が正真正銘の “くのいち” の文字をなぞるらしい……。
「まったく。 ここまで来てそれはないと思うけどね。 どうせなら他のことで楽しまれたらどうだい?」
「あっ、あなたに言われたくはないっ!!」
「ちょっと。 君だって人のこと言えないじゃん」
「ん? そんなことないさ。 俺はあちら側にいる、食事を頬張ってる小娘をどのようにして遊ぼうか考えているんだよ」
「なっ、何考えてんだよっ!!」
「別に? 腹いせまがいにいじるだけだが」
さりげなく恐ろしいこと言ってるし、このウットリ男。 赤毛の女の子はこの人のことが少々苦手らしく、黄土色の男の子はからかいがいがあるみたいで、彼はよくちょっかいを出している。 ……性格悪すぎである。
「ウチ ―― あ゛ー、メンドいわ。 俺らもそろそろ復讐考えるか?」
「それいいね。 どうする? 手始めに俺のファイヤー ・ ボールで焼き上げよっか?」
「あーそれよりなぁ……。ほれ、あんさんがまずウォーター ・ ボールで水浸しにしたって、それからお前がサンダー ・ ボールで! ってのはどうや」
「それでいこう! んじゃ、今回は敵味方無しだから、協力してね♪」
「ええっ!? み、身の保障は……?」
「そないん 『逃げるが勝ち』 やんか」
「そんなの 『逃げるが勝ち』 だよ」
と、ふたりがかりで、しかも同時に言い切った黄緑色の男の子とヘンな髪の色をした男の子。 水色の髪の子は、顔を真っ青にして固まってしまっている。 おそらく、よほどしっぺ返しが怖いのだろう。
………………。
つーか待て。 これはもう舞踏会どころじゃないよね。 インタビューしながら他の人たちも見てたけど、目の前のご馳走や談義、もしくは芸に夢中になって誰も踊ってないし。 しかも何なの? 目がおかしくなければ雪ダルマまでいるんですけど……?
後はさっきの手紙を渡してくれた女の子と同じ顔が2人にじぃさん、それとはまた違った顔で同じ顔が4つ。 これはまあ、俗に言う普通の4つ子なんだと思うけど。
それに、まだいる。 ファンタジックな格好の子供たちに、カップルがひと組み。 後者は別に何てこともない組み合わせなんだけどね。 たぶん。 ……だいぶ怪しいけど。
うん、やっぱしやってられないわ。 高日給だったからどうも怪しいなぁ、とは思ったけれどね。 もう終わったことにしてとっとと帰りましょう、そうしましょう。
―― こうして私は、精神的なダメージに似合った報酬をもらい、爆発音やら悲鳴やらなんやらが聞こえてくる洋館を後にした。
っくしょーが! もう絶っ対あのバカからの頼みは引き受けねぇぞ。 何でこんな命の危険までさらしてまでやらなくちゃなんねーんだか。 アホらしいったらないぜ。
―― まぁ、皆さんはああいうモノには裏がある、とお思いになられたほうがいいかしら。 私個人的に、舞踏会は慣れているんだけど、あれは違うから。 その辺は勘違いしないでね。
あっ、もうそろそろ日にちが変わる時間ね。 それじゃあ、私はこれで。 ばいばーいっ♪
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短編第6弾になります^^ テーマは覆面で、誰が書いたか当てるというものでした。
内容は、とあるレポーターが豪華絢爛 (ごうかけんらん) の洋館で開かれた舞踏会を取材する、というものです。
オリジナル小説の長編キャラが入っていますので、何かとごちゃごちゃしていますが、おそらく単品でも大丈夫かと思います;
今回も、楽しんでいただければ幸いです^^