No.859899 真・恋姫†無双 異伝「絡繰外史の騒動記」第七話2016-07-22 22:22:30 投稿 / 全11ページ 総閲覧数:4978 閲覧ユーザー数:3529 |
「うわーっ…洛陽なの~!凄く人も店も一杯なの~!!」
「沙和、あまり騒ぐな。今回はあくまでも華琳様が無事に目標に接触して陳留に戻るまでの
護衛任務だってお前も分かっているだろう!?」
「でもでも~、これだけ人で賑わってたら少し位大丈夫だと思うの~!」
「しかし、ホンマに賑わっとるなぁ…ちょっと前に来た商人の話じゃ洛陽はすっかり寂れて
るって事やったのに」
「それだけ董相国の政が優れてるって事ね。それを知る事が出来ただけでも潜入した価値は
あるわ…ですから、もう帰りましょう、華琳様」
「何言ってるのよ桂花、此処からが本番だって分かってるでしょう?」
「しかし何故それに私まで同行しなければならないんですか?」
「仕方ないでしょう、荀攸の顔を知っているのはあなただけなんだから…さあ、つべこべ言
ってないで行くわよ」
言わずとも分かる事とは思うが、冒頭の会話の主は洛陽に潜入した曹操一行である。
ちなみに荀彧は荀攸の顔を知っている者が他にいないので、曹操が半ば無理やりに連れて
来たので、洛陽に到着してからも彼女は不満たらたらですぐに帰ろうとばかり言っていた
のであった。
「しかし、華琳様…これだけ広い洛陽で一体どうやって探すのです?まさか端から端まで虱
潰しに探すとかじゃ…」
「幾ら何でもそんな非効率的な事はしないわよ、凪。一応、お祖父様やお父様が働いていた
頃の伝手で、ある程度の事までは探りを入れてあるから大丈夫よ」
「ある程度ってどないな位にですか?」
「どうやら定期的に件の絡繰興行が開かれている場所があるみたいだから、そこに行ってみ
ようと思ってるわ」
それから四半刻後。
「凄い人だかりなの~」
「どうやらあの建物で間違いはないようですね…『絡繰興行』と幟に書いてありますし」
「すると、此処におるんは皆、その興行を見る為にいう事なんか…それ位凄いもん見れるい
う事やな!?ああ、ウチもうずうずしてきたわぁ~」
曹操達がその場所に着いてみると、既にそこには百人以上の人間が今か今かと興行が始ま
るのを待っている状態であった。
「何だ、姉ちゃん達も絡繰興行を見に来たのか?」
「ええ、最近噂になっているみたいだし」
「華琳様になれn…『桂花様、此処で騒いだらわざわざ身分を隠して潜入した意味が無くな
ります。そうなったら華琳様の身が危険に』…うぐぐ、分かったわよ。ああ、イライラし
てきた…こうなったのも全部公達のせいよ!見てなさい…絶対にとんでもない眼に合わせ
てやるんだから!」
楽進に抑えられた荀彧が何やら黒いオーラを撒き散らそうとしているのを曹操に話しかけ
た男が半ばひきつった顔で見ていた。
「大丈夫か、あんたの連れ?」
「ええ、気にしなくて良いわ…ところで、この興行って何時始まるの?」
「もうすぐさ、あの建物の上にある文字が書いてある円盤みたいながあって、そこに針が二
本回ってるだろう?あの針が二本とも『十二』と書かれた所に重なった時が始まりさ。そ
うしたらあの上にある窓から鳥が出て来て、鳥の鳴き声みたいな音を上げるのが合図だよ」
男が指差した方を見ると円盤の二本の針はもうすぐ『十二』の所に重なろうとしている所
であった。そして…。
『ポッポッ~!ポッポ~~~ッ!!』
針が重なった瞬間、上の窓が開いて鳥の模型が飛び出して音を鳴らす。
それと同時に床から舞台がせり上がってくる。そこには弓を持った人形とその横に立つ一
人の男がいた。
「本日も我が絡繰興行にお越し下さり、まことにありがとうございます!本日最初の出し物
は『弓曳童子』でございます。ここにありますこの人形、その手に持つ矢がそこに見えま
したる的に見事命中いたしましたらご喝采~!!」
そして男が人形のある一点を押すと、人形が動き出して傍らに立てられた矢をその手に持
ち弓につがえる。その動作を見ただけで観衆は驚きの声をあげる。
「さあさあ、此処からが本番!見事に矢が的を捉えるかご注目です!!」
そして固唾を飲んで見守る観衆を余所に人形は弓に矢をつがえて放つ。しかし、その矢は
ほとんど飛ばずに力無く地面に落ち、観衆からは落胆のため息が洩れる。
「おおっと、どうやら余りにもの注目度合に童子が緊張してしまったか!?しかし、まだ矢
は残ってます!さあ、次こそ当ててみせてくれ、童子!!」
しかし、男はまるで予定通りだったかのように次を進める。
そして人形は再び矢をつがえて放つと、今度は的に当たる。
『おおおおおーーーっ!?凄ぇ、今度は当たった!!』
それを見た観衆からは一斉に歓声と拍手が巻き起こる。それは人形が続けて矢を当てる度
に起こっていた。
「おおおおお…凄い、凄いで!!何で人形があないな動きとかすんねん!?あああ…どない
な構造になっとるんか今すぐ解体してみたいわぁ!!」
そしてそれを見ていた李典の興奮が天井知らずに上がっていくのもまた必然であった。
「真桜ちゃん、凄く興奮してるのぉ~」
「真桜、あまり興奮し過ぎるな。我々は任務で来ている事を忘れるな、目立つような行動は
慎め」
「それは分かっとるけど…でも、でも、あないなもん見せられてジッとなんかしてたらどな
いかなってしまいそうや!!」
そう言っている李典の顔は段々と興奮でおかしな感じになっていたが…。
「真桜、今はまだ慎みなさい」
「…へ~い」
さすがに曹操にそう言われると逸る心を抑える。しかし…。
「さあ、続いての出し物ですが…これは観客のどなたかにお手伝いしていただきたいと思っ
ておりますので、我こそはと思う方は是非とも挙手w『はいはいは~~~い!ウチ、ウチ
がやる!!』…では、そちらのお嬢様にお手伝い願いましょう」
男が観客に手伝いを願おうとすると同時に即座に手を挙げて猛アピールする始末で、壇上
の男も少々引き気味になる程であった。
・・・・・・・
「で、ウチは何すればええの?な、な、早よ教えてんか!?」
観客の人にも参加してもらう形の方が興行が盛り上がるので今日もそれをやってみたのだ
が…今日の人は壇上に上がるなりとてつもなく食い気味に迫ってきていた。この謎のハイ
テンションぶりは何なのだろうか?それとも張遼さんと同じでこっちの世界の関西弁の人
は皆こんな感じなのだろうか?
「なあ~、早く、早く!」
「は…はい、何をするという程のものでもありませんが、とりあえずそこに座っていてくだ
さい」
俺の言葉に少々拍子抜けしたような顔をしながらも関西弁の女の子は俺が指定した場所に
座る。
「それでは、わざわざ壇上に来ていただいたこの御方への労いとしては粗茶過ぎではござい
ますが、まずは一杯」
俺はそう言うと傍らに置いてあったお茶汲み人形の手に茶碗を載せる。すると…。
『おおお~っ!人形が茶を運んでるぞ!』
観客からは一斉に驚きの声があがり、
「おおおおお…凄い、凄いで!」
関西弁の女の子のテンションはさらに上がっていく。そして人形は女の子の前で止まる。
「さあ、粗茶ではございますが、どうぞお飲み下さい。飲み終わったら茶碗は人形の手に戻
してくださいね」
女の子は俺の言う通りに茶碗を取って茶を飲んで茶碗を人形の手の上に戻す。すると、人
形は再び動き出して俺の所へ戻って来る。
『おおおおおおお~~~~~っ!!』
それを見た観客からはさらに大きな歓声が上がる。
「な、何やこれ…人形が元の所に戻って行くなんて…ホンマにどないなってんねん、これ…
凄い、凄いで…もう辛抱たまらん!!」
そして何やらおかしなテンションになった女の子はいきなり人形に飛びかかってくる。
「ちょっ、何をするんです!?」
俺は間一髪で人形を女の子の手の届かない所に回避させる。
「なあ、ちょっとで、ちょっとでええから…それ一回分解させて!!」
…何言ってるんだ、この子は!?
「そんなのダメに決まってるでしょうが!!」
「そないに冷たい事言わんと…な、一回で良いから、後生やから!!このまま生殺しなんて
ウチ耐えられへん、おかしなってまう!!」
いや、もう十分おかしいし!!
俺は人形を持って奥へ逃げようとするが、それより早く女の子の手が伸びてくる…しかし。
「あ、あ、兄貴のさ、さ、作品に、き、き、気安く、さ、さ、触るんじゃないんだな!!」
胡車児が割って入って来て女の子の手を掴む。
「ウチはこの兄さんと話ししてるんや!部外者は引っ込んでんか!!」
「ぶ、ぶ、部外者じゃないんだな!!お、お、俺は、ほ、ほ、北郷の兄貴を、ま、ま、守る
為に、こ、こ、此処にいるんだな!!」
そのまま二人は睨み合いとなる。しかし参ったな、このままじゃ興行がおじゃんに…とか
思って観客の方を見ると、
「どっちが勝つと思う?」
「そりゃ大男の方に決まってるだろう」
「いや、あの姉ちゃんも結構鍛えてる感じだぜ」
「じゃ、賭けるか?」
「いいねぇ、俺は姉ちゃんの方に五十だ」
「なら俺は大男の方に七十!」
観客の一部がそうやり始めたのを皮切りにどちらが勝つか勝手に賭けをし始める…ってい
うか、違う意味で興行がおかしな事になりそうな気がするのは気のせいだろうか?何とか
止めたい所ではあるが、公達は朝から何処かへ出かけていていないし、人和は家で留守番
してるし…俺が何とかしなきゃならないか。
そう思っていたその時。
「真桜、そこまでにしなさい!!」
女の子の横からまた別の女の子の声が聞こえてくる。それと同時に真桜と呼ばれた女の子
は我に返ったような表情になる。
「えっ…ええっと、ウチ…」
「そちらの方、私の部下が失礼をしたわね。彼女の事は私が責任をもって言い聞かせるから、
とりあえずその手を離してもらっても良いかしら?」
「…胡車児、手を離してやれ」
声をかけてきた女の子にそう言われ、眼を白黒させていた胡車児に俺が改めてそう声をか
けるとようやく手を離す。
しかし、後から声をかけてきた女の子…おそらく関西弁の女の子の上司か主人といった所
なのだろうけど、見た目こそ華奢な女の子にしか見えないが、その身に纏うオーラは半端
無いものがある。これは結構大物の登場っぽい感じがする。実際、彼女が現れたと同時に
場の喧騒も嘘のように静かになっていたりする。しかし、あまりにも静かになり過ぎてし
まい、ここからどう収拾すれば良いかも分からなくなってしまう。そこに…。
「ああ、申し訳ないが今日の所はこれでお開きって事で勘弁願いたい。後日改めて興行を開
くので、続きはその時に」
何時の間にか現れた公達のその言葉が場に響き渡ると、観客は潮が退くようにいなくなる。
「…ありがとう、助かったよ、公達」
「気にするな、どうやらこちらの方はお前と俺に用があるみたいだし…なあ、文若」
公達がそう言いながら苦い顔で指差したその先にいたのは、これまた嫌そうな顔をした荀
彧さんがいた…という事はもしかして?
「そう、あなたが荀攸ね?なら、丁度良かったわ。私は曹孟徳、兗州の州牧を務める者よ」
…マジか。此処でいきなり曹操のご登場とは…。
それから半刻後、後片付けを終えた俺達は曹操さん達を連れて家に戻っていた。
「それでは改めまして、おr…私は北郷と申します。孟徳様におかれましては私共に一体何
の用件で…自分で言うのも何ですが、わざわざ来ていただく程のものでは無いのではない
かと思うのですが?」
「あら、それは謙遜ってものよ。私はあなたが造った無尽灯をこの眼で見ているし、各村々
に広まっている踏車があなたが造った物だという事も知っている。そして、それは大いに
役立つ物を造れる技術があなたにはあるという事を示しているわ。それに注目しない者な
んてただのぼんくら以外の何者でもないわ」
マジか…俺的にはひっそりと生きてきたつもりだったんだが。
「北郷に注目しているのは分かった、だが俺に注目しているってのはどういう事だ?文若か
ら聞いたってならそれは嘘だと思うがな…間違いなく悪口以外無いだろうし」
「そうね、確かに彼女はあなたの事を『荀氏一族の面汚し』って言っていたわ」
「そうだろ、そうだろ。まあ、実際面汚しってのは間違っちゃいねぇがな。文若みたいに人
によって態度を変えるみたいな事しないで長老とかに喧嘩ばかり吹っかけていたからな」
公達のその言葉を聞いていた荀彧さんの額に青筋が走ったように見えたのは気のせいでは
あるまい…とりあえず曹操さんの前だから自重はしているようだが。
「でも、前にいた村の人達からは信頼されていたようね。村長が『先代の村長が死んだ後は
絶対荀攸さんが村長になってくれるとばかり思っていたのに』ってぼやいていたそうよ」
「ほぅ、それはまた有難い事で」
「でも、私はそれとは別にあなたの弁舌と知能に注目しているわ。あなたの事は色々と調べ
させてもらったしね」
「ふ~ん、そう言って俺の事を買ってくれるのは嬉しい話だが…悪いが俺は宮仕えなんぞす
るつもりは無い。ましてや文若と一緒なんてまっぴら御免『黙っていたらさっきから言い
たい放題…私だってあんたとなんか頼まれたって嫌よ!!』…そうだろうな、だからこの
話は終わりだ。こんなんでも、あんたにとっては大事な軍師なんだろう?俺なんかと引き
換えには出来はしねぇんだろうしな」
公達のその言葉にさすがの曹操さんも言葉を返す事も出来ない。確か曹操は荀彧を『我が
子房』って呼んだ程大事な存在だったはず…如何に公達が有能だからといって彼女を捨て
るなどという選択肢が存在するはずも無い。そして二人のやり取りを見れば荀彧さんがい
る状態で公達を召し抱えるなど無理だという事も分かるというもの…如何に曹操とはいえ
この状況を打開出来る術などあるはずも無い…公達の言う通り、話はこれで終わりかな?
俺がそう考えていたその時、曹操さんはおもむろに俺に話しかけてくる。
「それじゃ北郷、あなただけでも私の所に来ない?董相国の下で仕事をしているって聞いて
るけど…私の所に来れば、倍は出すわよ」
…おおっ、そう来たか。董卓さんの倍か…なかなか魅力的なお言葉だな。しかも、この先
の動乱が俺の知ってる通りに進むのであれば、曹操の下にいるのが一番無難な人生を歩め
るのかもしれないのかもしれない。しかし…。
「折角のお誘いではございますが、お断りさせていただきます」
「倍では不満?」
「いえいえ、額の問題ではありません。むしろそれだけをいうのであれば今すぐにでも飛び
つきたい位に魅力的なお誘いですし」
「それじゃ何がダメだというのかしら?」
「私は公達がいなければおそらくとうの昔に行き倒れていた身でして…そしてその恩はまだ
返したとは言い難い状態です。それを放って一人あなたの下に行くなど人として道に反す
るというもの…もし、それが終わって尚且つまだ孟徳様が私の事をと言うのであればその
時はという事で今日の所はお帰り願うというわけにはまいりませんでしょうか?」
「残念だけど、そんなに悠長に待っている時間は無いの」
「…と、申しますと?」
「もうすぐ此処は戦場になるって事よ」
戦場?…まさかもうあの流れになるっていうのか?でも、あの董卓さんは俺の知っている
董卓とは違う、というか真逆と言って良い程の人だ。そもそもあれは董卓が暴君だからこ
そ起きたんじゃないのか?如何に董卓さんが良い人だからといっても此処でも歴史の流れ
は同じになるっていうのか?
俺は頭の中でずっとそればかりを反芻していた。しかしその時…。
「へぇ~っ、此処が戦場になるんか~。その話はウチも興味あるわぁ」
「ああ、そうだな。それは董卓様の御身にも危機が迫るという事だろうからな」
そこに現れたのは張遼さんと華雄さんだった…えっ?何で張遼さんと華雄さんが家の中に
いるんだ?誰か呼んだのか?
続く。
あとがき的なもの
mokiti1976-2010です。
毎度毎度遅くなりまして申し訳ございません。
此処までの話を捻りだすのに一ヶ月以上…我ながら
文才の無さに頭を抱える日々です。
今回登場した絡繰は『弓曳童子』と『お茶汲み人形』でした。
実際の弓曳童子も作中と同じに必ず一回は矢がうまく飛ばな
いようになっているそうです。
とりあえず次回はこの続きから…霞達の登場でどうなってい
くのか?連合が起きるのか、このまま華琳達が囚われたりし
てしまうのか?
それでは次回、第八話にてお会いいたしましょう。
追伸 何故霞達が現れたのかも次回お送りいたしますので。
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お待たせしました!
今回は、一刀達が洛陽にいる事を知った
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