<第22話末文より抜粋>
こうして、長い裁判は終わりを告げ、係官が慌ただしく関係者を連れていったのでした。
そして、次には、最後のイベント、『ミクとルカの帰還』が控えていたのでした。
<Dear My Friends! ルカの受難 第23話 ディア・マイ・フレンズ(前編)>
(某日 インタネ共和国 第1法廷前控え室)
閉廷後、ミクとルカ、そして、クリプトン王国の法廷参加者の面々が全員、控え室に集まってこれからの事を話し合っていたのだった。カイト王とメイコ王妃は、少し涙ぐんでいるルカ姫を慰めており、メイドのネル、ハク、テトは、法廷の売店で簡単なお菓子を買ってきて、ルカ姫に差し出したのだった。ルカ姫がお菓子を少し食べて落ち着いている間に、カイト王とメイコ王妃は、ミクとルカの側に来て、軽く頭を下げたのだった。
カイト王「ミクさんにルカひ・・・ルカさん、今回の件、本当に申し訳なかった。王自ら頭を下げさせて貰うよ」
メイコ王妃「私も謝りますわ。そもそも私の娘のおてんばが原因でこんな事になってしまって…」
ミクとルカは、“そんなそんな”な恐縮した手振りをした。
ミク「いやいや、そんなそんな。一国の王様にそんな頭を下げさせるなんて」
カイト王「いや、しかし、こんな大事になってしまって、なんとお詫びをしたらいいか…」
メイコ王妃「落ち着いたら娘からも、重々、謝らせますから、今は私たちからお詫び申し上げますわ」
ルカ「いえいえ、とにかく一件落着した事ですから、お言葉だけ頂いておきます」
カイト王「ルカさんにミクさん、本当に良くできたお方だ。こちらに来たのがあなた方だったのが、不幸中の幸いだったのかも知れない」
メイコ王妃「そうですわね」
そんな感じで話は進んだが、ミクとルカは、“肝心のこと”、をちゃんと訊かないと行けなかったので、話の方向を変えたのだった。
ミク「あの、ところで、私たちの帰還の事なんですが…」
予想通りだったのか、ここでアペンドが話に加わったのだった。
アペンド「それなんだが、魔導研究室の元の所への設置や、あなた達の帰還を確認した後の“抹消”、その他の後始末の準備で、申し訳ないけど、3日、時間を頂きたいのですが、ミクさん、ルカさん、カイト王、宜しいですか?」
ミク「あ、別に、私たちは急いでないので、3日くらいなら…」
ルカ「そうですね。戦闘試合とか法廷とか、これまで色々バタバタしていたので、3日位はこちらにお世話になりましょうか」
カイト王「おお! 3日、こちらにいて下さるか! それなら、出来る限りのおもてなしと歓迎をさせて頂く。それに、積もる話もあるだろう。ゆっくりして行って下さい」
ルカ「そうさせて頂きます。それに、“皆さん”に、お手紙も書きたいと思っていますので」
メイコ王妃「お手紙ですか? それなら晩餐会とかの場で直接お話をされれば良いではないですか?」
もっともな話である。少なくてもクリプトン王国の面々となら、直接お話しすれば、それで済むことである。
ルカ「いえ、今回の事件にも関係する事なので、“お手紙”でしか伝えられないこともあるのです」
メイコ王妃「そうですか、わかりました。あなた方の世界の素材で作った“紙”だと色々問題がまた出てくると思うので、私たちの書斎をお貸しいたします。こちらの世界の紙とペンを使って、お書き下さい」
ルカ「有り難うございます」
その時、お菓子を食べ終わったルカ姫は、ため息混じりに、ネル達に愚痴をこぼしたのでした。
ルカ姫「はぁ~、これから自由に冒険出来なくなっちゃったなぁ。アキバのケバブ・・・・食べたかったなぁ」
ネル「ケ・・・・『ケバブ』? それはなんですか?」
ルカ姫「向こうの世界の“アキバ”って所で売っていた焼き肉みたいな食べ物で、私、向こうのお金を持ってなかったから、食べられなかったんです。一度、食べてみたかったんだけどなぁ~、はぁ」
その光景をミクはしっかり見ていたのだった。
ミク(はぁ~、それであの時…。それなら…)
ミクはその中でルカ姫の話を真剣に聞いていた、メイドの“ネル”の側まで来て、ちょっと席を外して欲しいと頼み、ネルとミクは一緒に部屋の隅まで来たのだった。
ネル「あの、ミクさん、なんでしょうか?」
ミク「ネルさん、あなた、メイドですよね? って事は、王国のご飯とか作っているんでしょ?」
ネル「はい、私が指示出しとか色々しますが…」
ミク「ルカ姫、ケバブ食べたいって言ってましたよね?」
ネル「はい、でも、私たち、『ケバブ』とか全然わからないので、なんか残念がっておりました」
ミク「私、その材料と作り方を知っているんです。こっちの世界で代替の材料を集めると、もしかしたら3日位かかるかも知れないから、貴方に教えておきます。今、メモもあるから、これにレシピを書きながら、教えますから、材料集まったらルカ姫に食べさせて上げて下さい」
ネル「! それは助かります! 教えて下さい! 材料はすぐに手配します!」
ミク「じゃあ、まずは…」
こうして、3つ位の塊になって、それぞれ話をしている中で、ミクはネルにケバブの作り方をメモしながら教えていたのだった。
ネル「ふんふん、なるほど、これは美味しそうですね…」
そうしてミクの説明も終わり、ネルは何度も頷いて確認したのだった
ネル「ふんふん…、この代替材料は、ここ、インタネ共和国と我が国の物でなんとかなりそうですね。せっかくですから、今から発注しておきます」
ミク「それとルカ姫をビックリさせたいから、これはネルさん達、メイドさんの間だけの秘密にしておいてね」
ネル「はい、そうします。ふふふ」
そんな時、ルカは近くにいた法廷の係官の所に行き、相談話を持ちかけたのだった。
ルカ「あの、あなた、ここの係官ですか?」
係官「はい、法廷係官の“リュウト”です。なにか?」
ルカ「あの、私とミクで、今回、法廷で裁かれた方々にお手紙を書こうと思うんですが、書き終わるのが、これから移動するクリプトン王国なんです。この国とアフス帝国へ、お手紙を渡すにはどうしたらいいですか?」
リュウト「えっと、それぞれの国にいる牢獄に入っていない人へは、クリプトン王国からなら、えっと、メイドのハクさんに頼んで下さい。彼女が郵便物担当です。牢獄にいる人へのお手紙は、メイドのテトさんにお願いします。物いりの郵便物は彼女が担当です」
ルカ「有り難うございます!」
リュウト「いえいえ、それより法廷、お疲れさまでした。元の世界にご帰還されるまで、ゆっくりして行って下さいね♪」
ルカ「お気遣い有り難うございます♪」
こうしてそれぞれの話が終わった後、30分程してから、クリプトン王国、アフス帝国、フォーリナー軍政国家の面々は、自国に帰っていき、インタネ共和国の学歩も、めぐみの所に寄ってから、自宅に帰ったのでした。
(次の日の夕方 クリプトン王国)
面々が帰国するのにそれなりの時間がかかったため、この日の夕方が、アペンドが申し出た“準備”の日の1日目となった。メイド達も厨房にすぐに戻り、晩餐会の準備に取りかかったのだった。とはいえ前もって連絡していたので、おおかたの準備は整っており、それほど時間もかからずに、晩餐会を始めることが出来た。クリプトン王国の王宮関係者に限ってしまったが、今回の事件に関わった面々は全員参加し、かなり豪華な食事が振る舞われるようだった。その晩餐会の前、ミクとルカは、法廷前までは本人確認をしやすいように、下着以外は元の服を着ていました。シャワーを浴びた後、汚れていた服は下着から全部洗濯に出し、今回が全部、王宮の姫の服を借りて、綺麗に着飾ったのでした。ルカはさすがルカ姫の分身、ピッタリだったが、ミクは残念ながら“バスト”周りがスカスカになってしまったので、詰め物を詰めてごまかしたのだった。
ミク「たはは、やっぱ、ルカの分身の服、お胸がありますなぁ~。詰め物、結構入れたよ」
ルカ「ご、ごめんね。それにしても本当に私の分身なんだね。何から何まで全部同じだったわ…」
二人の着替えを手伝っていたメイドのテトは、二人の髪を綺麗に結い、最後に二人に王宮風の紅をさして(口紅を塗って)、王宮のヒールを履かせて、簡単な装飾品を付けてあげて、二人を晩餐会会場まで連れていったのだった。
(夜 クリプトン王国 晩餐会会場)
会場では、クリプトン王国の関係者が既に集まっており、カイト王の挨拶が終わり、そして、ちょうどミクとルカを紹介する所まで来ていた。
カイト王「それではこれから、今回の大変な事件を解決した、異世界・・・・えーーーー」
ルカ姫「アキバよ! お父様!」
カイト王「ア、アキバという所からやってきた英雄、ミクさんとルカさんを紹介しよう! 盛大なる拍手を!」
パーーーパラパラパーーーーー!!!
王宮楽団の演奏がかかる中、ミクとルカはテトに連れられて、晩餐会会場に入場していったのだった。
ミク「さ、さすが…」
ルカ「さすが王宮、伊達じゃなかったわ…」
ルカ姫「キャーーーー! ミクさんにルカさん! きれーーーーーーい!」
カイト王「これこれ・・・・・って、ほんとに綺麗だ・・・・・惚れてまうやろ・・・・・」
ギュ!
メイコ王妃がカイト王のお尻をおもいっきりつねったのだった。
メイコ王妃「あ・な・た・・・・・」
カイト王「いや、ちゃうちゃう! 本当に綺麗だから、つい」
メイコ王妃「ま、まぁそうね。やっぱりベースが違うのかしら…それとも若さ・・・・・・・若さ故の過ち・・・・・」
カイト王「というか、娘よ、おまえとルカさんは同じだろうが・・・・・・」
ルカ姫「だって、ほんとに綺麗なんだもーん♪」
そんなこんなの晩餐会は優雅に催され、ミクとルカは、今回クリプトン王国の本国にいただけの要人とも、いかにも王宮な感じの挨拶をぎこちなくだがやっていった。そんな中、二人にも一応自由な食事の時間を設けてくれたので、早速、会場のバルコニーでいい感じになっている、アペンドとテルの近くまでやってきたのだった。
(バルコニー)
着飾った二人はワイングラスを片手に持って、だまって外を眺めていた。
アペンド「・・・・・・」
テル「・・・・・・」
そんな二人の様子をミクとルカは、片手にジュースのコップ、片手にローストチキンを掴んで、影で見ていたのだった。
ルカ「・・・やっぱり、今回、一番複雑だったのは、あの二人なのかな? ミクもそうおm」
ミク「もう、じれったい! せっかく二人だけになったんだから! テルもクールだけじゃなくて、こう言うときはグィっと行かないと、もう!」
ルカ「ミク・・・・・・」
しかしテルも私的な相談事があったのだろうか、ようやく口火を切った。
テル「・・・・ア、アペンド、いいか?」
アペンド「えっ!? あ、ああ、いいよ」
テル「私は、立場上、出来るだけ目立たないようにするため、バルコニーにいるモブみたいにしているのだが、別に私に気を使わなくても良いんだぞ? 確かに私は君の助手的扱いでこの国にお世話になるのだが、君はあくまでこの国の公認魔導師、せっかくなんだから、晩餐会を楽しんできたらどうだ?」
アペンド「い、いや、私はこういうのは苦手で…。落ち着いたこういう所が好きなんだ」
テル「そ、そうか」
影で見ているミクは、ローストチキンをガッツリ食べながら、やきもきしていた。
ミク「“そうか”じゃないでしょ! せっかく二人っきりになれたんだから、もっとこう・・・」
テル「アペンド、私は当分はこんな感じで、目立たない生活を余儀なくされる。ソニカという助手はついたが、当分、君のご厄介になるのは避けられない…」
アペンド「それは大丈夫だ。出来る限りのサポートはするつもりd」
グッ!
なんとテルはアペンドを抱き寄せて、軽く口づけをした
アペンド「!?」
テル「・・・・正直、こんな寂しいと思ったことはない。君たちと共に闘うと決めたときから、そして、あの裁判の判決の時から、ココロが揺れ動いている・・・・。こんな私でも人間だということか。私の生活面でも、君の支えが欲しい…」
アペンド「テル・・・・・」
テル「一緒に・・・・・いてくれる・・・・かい?」
アペンド「は・・・・・はい・・・・・・」
影で見ていたミクもルカも、目玉をまん丸にして、真っ赤になっていた。
ミク「え・・・・・偉いぞ・・・テル・・・・見直した・・・・・グッ!」
ルカ「うっわ・・・・やっぱり・・・・大人な二人だったんだね・・・・・グッ!」
そんなこんなで、3日はすぐに経ってしまいました。その間、テルとアペンドは未完成版魔法陣のデータの抹消等に追われながらも、ミクとルカの帰還についての打ち合わせはちゃんとしていたのでした。
(最終話に続く)
CAST
ルカ姫、巡音ルカ(ルカ):巡音ルカ
初音ミク(ミク):初音ミク
<クリプトン(Cripton)王国サイド>
カイト王:KAITO
メイコ王妃:MEIKO
メイド・ネル(ネル):亞北ネル
メイド・ハク(ハク):弱音ハク
メイド・テト(テト):重音テト
魔導師アペンド:初音ミクAppend
魔導師テル:氷山キヨテル
変身兵士 ソニカ:SONiKA
僧侶リン(リン):鏡音リン
勇者レン(レン):鏡音レン
家庭教師ピコ(ピコ):歌手音ピコ
<インタネ(Interne)共和国サイド>
異国の剣士 神威学歩:神威がくぽ
裁判官 勇気めぐみ:GUMI
法廷関係者 カル:CUL
法廷関係者 リリィ:Lily
法廷係官 リュウト:リュウト
<アフス(A-Hu-Su)帝国サイド>
イロハ:猫村いろは
ユキ:歌愛ユキ
クグツロボット(コードネーム)“ミキ”の外観:miki
(ミキの中身=ミリアム:Miliam)
ルカコピー:巡音ルカ
法務官ゆかり:結月ゆかり
<フォーリナー(Foriner)軍政国家サイド>
アル:Big-AL
重機動兵器アン:Sweet Ann
剣士レオン:Leon
圧殺兵士ローラ:Lola
導士オリバー:Oliver
拳闘士シユ:SeeU
その他:エキストラの皆さん
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☆当方のピアプロユーザーネーム“enarin”名義で書いていました、ボーカロイド小説シリーズです。第15作目の第23話です。
☆今回は1話分を短めにした、ファンタジーRPG風味の長編です。
☆当時は2期を意識してなかったのですが、本作は最新シリーズ“Dear My Friends!第2期”の第1期という作品になり、第2期のシナリオやカラクリに、第1期となる“本作”の話も出てきますので、長い長いお話ですが、長編“Dear My Friends!”として、お楽しみくださいませ。
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