理事長たちが出て行ってからも、いきなりの新しい顧問という存在に戸惑いを見せるμ'sのメンバーたち。
だけど、基本的には用務員としての仕事が主らしい。時々見学に来るかもしれないが、どうやら積極的にどうこうしようという感じにも見えなかった。
自分たちに対しても、何かあったらいつでも呼んでほしいという程度で、おおよそは自分たちに任せてくれるという、ほぼ以前の顧問の時と変わりないような在り方。
とりあえず、それなら大丈夫かと一安心。
気を取り直して、今日も今日とてラブライブに向けて練習をする流れになった。
「……あ、忘れてたけど、今日は屋上使えないのよ」
と、絵里が思い出したように言い出す。
「え、なんで?」
「なんでも、ちょうど点検する日だったらしくて、朝に理事長に言われていたのよ」
すっかり忘れていたと、申し訳なさそうにしている。
「そんなぁ!」
「じゃぁ、練習はどこですればいいにゃ!!!」
「……どこか、他の場所でするか。もしくは開いている部屋で、歌の練習だけするしかないわね」
「えぇ!? やだやだ! 穂乃果、体動かしたいよぉ!」
「凛も凛も!!!」
「……仕方ないわね。じゃぁ、どこか使えそうな場所探しましょうか」
絵里が仕方なさそうにそういうと、皆で学校内を探索することになった。
しかし、一通り学校の内外を回ってみたが、今日に限っては講堂が何やら学外の団体に使用されていたり、中庭も他の部活が使っていたりと運がない。
「やっぱり、今日は歌の練習だけにするしかないんじゃないですか?」
もうそこそこ時間も過ぎてしまったことだし、今日は歌の練習だけに留めておこうかと海未が提案する。
だが、体を動かしたくて仕方ないと不満気に言う穂乃果と凛。
他の皆も考えは同じではあるが、この二人は特に体を動かしたくて仕方ないという、μ’sの中でも行動派な面子なのだ。
彼女たちの様子にため息を漏らす絵里。仕方なくもう少しだけ探すことになった。
もう少しだけ探して、それでも見つからなかったら諦めるようにたしなめる。
流石にそうまですれば彼女たちも諦めてくれるだろう。
そうして再び練習場所を探しまわっていると、校舎裏に立ち入り禁止の看板が立っている林道を見つけた。
「あれ、なんだろこれ?」
「あぁ、この先は昔使っていた旧校舎があるのよ」
「え、旧校舎なんてあるの!?」
「まぁ、何十年も前のかなり古い建物だけど」
「大きな地震があって、脆くなってしまったそうです。それで新しく、この音ノ木坂を建てたとか」
絵里の説明に付け足しで補足する海未。
この学院については廃校を救うために少し調べてはいたけど、そのことについては知らなかったという穂乃果。
どこか感心したように話を聞いている。
「……あ、そうだ!」
と、そこで穂乃果が何か思いついたようだ。
その思い付きに何人かは見当がついた様子で、海未などは少し頭を抱えていたりする。
「だったら、その旧校舎で練習しようよ!」
「……言うとは思っていたけどね。あのね、話を聞いてなかったの? あそこは古くて危ないから使えなくなってるのよ?」
「それに、中止にはなっているそうですが、最近取り壊しの工事が行われる予定だったそうです。そのために器具もあって危ないのではないですか?」
「別に校舎に入って練習しようなんて言ってるわけじゃないよ!
外に工事用の器具があっても、私たちが練習できるくらいの広さはあると思うの。たぶん誰もいないだろうし、思いっきり練習できるんじゃないかな?」
そこならば誰の迷惑にもならずに練習ができる。そのことに目を輝かせた凛は穂乃果の意見を後押しするようにそこで練習しようと言い始める。
「……いや、あのね? 一応立ち入り禁止になってるわけだし」
「お願い絵里ちゃん! いつも使いたいなんて言わないから! 今日だけ、今日一回だけだから!」
「屋上だって明日には使えるようになってるにゃ! だから、今日一回だけ!」
確かに旧校舎の前はそこそこ広さがある。そこには工事のため重機が入っているとはいえ、どういうわけか今は工事が中断しているらしいので、現状誰もおらず広くて迷惑の掛からない絶好の場所と言えなくもない。
それでも、立ち入り禁止という場所に入ることに躊躇する真面目な面々。
しかし、すでに練習ができる気分でいる穂乃果に凛は、絵里たちが考えている隙に「旧校舎まで競争!」と林道を入っていってしまう。
「ちょっと!? 穂乃果! 凛!」
「ふ、二人ともやっぱり足早いなぁ。もうあんなところに行っちゃった」
「まったく、今日一日くらいなんだっていうのよ、辛抱の足らない子達!」
「まったく、あの子達は!」
「どうするん、エリチ?」
「……どうするもこうするも、まずはあの子達に追いつくのが先決よ」
重く溜息を洩らす絵里。
「仕方ない、今回だけ」としぶしぶ納得し合い、彼女たちの後を追う。
林道を抜けると、木造で今の音ノ木坂と比べるべくもなく、小さく古い校舎が目に入ってきた。
そして旧校舎前の開けた場所では、穂乃果と凛が元気に走り回っていた。
確かに今まで練習として使っていた屋上よりも広く、9人で練習するには十分な場所だった。
「あ、皆やっときた!」
「遅いにゃ! 凛たちもうアップは済ませたにゃ!」
「……まったく、あの子達は」
「穂乃果、凛。本当に今日だけだからね? 学院に知られたらたくさん怒られちゃうんだから」
「わかってるよぉ」
「凛もできれば、いつもの屋上で練習したいにゃ!」
「……まぁ、来ちゃったからには仕方ないわ。流石にいつもの時間まで練習すれば怪しまれかねないし、簡単に動きの確認をする程度にするわよ?」
「えー! それじゃあ、いっぱい体動かせn「い い わ ね?」」
「「……はい」」
見惚れるようないい笑顔を浮かべている絵里だったが、その目は笑っておらず少し怖かった。
その様子に流石の二人も、これ以上の駄々をこねずに肯定の意を示す。
とにかく、時間もないことだしさっそく練習を始めようという穂乃果。
それに同意すると、各々が軽く柔軟を始める。
「……ん? なぁ、エリチ。あの子、どこの子かな?」
「え?」
「ほら、あの子」
絵里がCDプレーヤーの準備をしていると、希が何かを見つけたらしい。
彼女が指さす方を見ると、誰か旧校舎の前に立っているのを見つけた。
少し離れているからわかり難いが、どうやら中学生くらいの女の子に見える。
何処からか迷い込んできたのかもしれない。
校舎の中に入ろうとしてるのか、ドアに手をかけている。
「ちょっと、待ちなさい! そこは危ないから入っちゃだめよ!」
「……聞こえとらんのかな?」
女の子はこちらの呼び声に反応を見せず、スッとドアを開けてその中へ入ってしまった。
「……ねぇ、絵里ちゃん。流石にまずいよね?」
「もちろんよ。どこの誰かはわからないけど、流石にあんな危ないところに入ったのを見過ごすことはできないわ」
「で、でも、脆くなってて危ないって……」
「いや、少し歩くくらいで床が抜けるほど脆くはないでしょ? ……ない、わよね?」
いくら脆いとは言っても、ちゃんと設計されて作られた建物だ。
長い間使われていなくても流石にそれくらいで壊れはしない、と信じたいところだ。
「まぁ、どのみち見過ごすことなんてできないんだし、とっとと探しちゃいましょ?」
「そうですね」
「あーあ、これじゃ今日の練習は無しかにゃ」
「仕方ないよ、凛ちゃん」
予想以上に場所探しに時間をかけすぎてしまっていたようで、もうそろそろ5時になりそうな時間だ。周りもうっすらと薄暗くなってきている。
古い学校というだけで少し怖くなってしまうというのに、さらに薄暗さまでそろってしまえばもう肝試しの会場としてそのまま使えそうなシチュエーションだ。
できるだけ早急にあの女の子を探してしまおうと旧校舎に近づいていく。
一番前を歩いていた穂乃果が、このシチュエーションに少しビクビクしながらもドアに手をかけて、そして開ける。
……その瞬間。
「きゃっ!」
急に突風が巻き起こった。
皆がとっさに顔を抑えて目をつむる中、突然のことで足をもつらせてしまった希が尻餅をついてしまう。
「い、いたた。なんなん、もぅ!」
突風が起こっていたのはほんの少しの間だった。
風がやんだのを感じて目を開いてみると、いつも持ち歩いているタロットカードが地面にばらまかれていた。
尻餅をついた拍子に零れ落ちてしまったようだ。
「ちょっと、大丈夫?」
「あはは、大丈夫よ真姫ちゃん。でも、ちょっとカードが落ちてもうたから、拾ってからいくね?」
「手伝う?」
「大丈夫大丈夫! ばらばらになってもうたけど、風で飛ばされたもんもないようやし」
そう言い、散らばってしまったカードをまとめていく。
「……ん?」
すると、裏のまま散らばっていたカードの中で、3枚だけ表になっているカードがあった。
“運命の輪”“死神”“悪魔”
丁度占いの“スリーオラクル”という形式のように並んでいた。
運命の輪の向きは逆位置。いわゆる運が悪い状態のことを指す。置かれている場所は左側で、これは過去の出来事を表している。
つまり、今日学校中を探しまわっても運悪くそれぞれの部活が場所を使用していて、アイドル研究部が練習することができなかったことを表しているように思える。
(やっぱり、うちの占いはよう当たるなぁ)
自慢ではないが、希の占いは当たると評判である。
今までも何度か占いを頼まれたことがあり、その的中率はかなり高い。
……以前とある理由で真姫を占った際には、裏で手をまわして場を整えていたこともあるが、基本的にそんなことをするのは稀である。
そして真ん中の死神の向きは正位置。これは終焉や死の予兆。死に関するものだけではないが、基本的には不吉の象徴として表現されることが多く……。
(……え?)
その時、背筋が急にゾクッと凍るような冷たい悪寒に苛まれた。
何かよくわからないがこのままではいけないと、そういう予感めいたものを希は感じていた。
「み、みんな! 中に入るのはちょっと待って……ッ!?」
希の出した大声に、皆はいったいどうしたのかと立ち止まって振り返った。
……しかし、希はその時見てしまった。
穂乃果が開けたドアの隙間から先ほどの女の子と思われる人物が、顔を覗かせ不気味に笑っているところを。
「穂乃果ちゃん! 逃げて!」
「え?」
咄嗟の叫び。
いきなり何を言っているのかと呆気にとられていたが、穂乃果の足がいきなり強い力により引っ張られた。
「え!? き、きゃぁぁあぁあぁぁぁ!!!?!?」
「「「「「「「「穂乃果(ちゃん)!?」」」」」」」」
ものすごい力で足を引っ張られたことで倒れてしまい、そのまま地面を引きずられるようにして校舎内に引きずり込まれてしまう。
いきなりのことで混乱していた穂乃果ではあるが、咄嗟に何かつかもうと手を伸ばす。
そこで偶然にもつかむことができたものは、開かれたドアの端の所だった。そのおかげで一気に引きずり込まれずにすんだ。
しかし、それもいつまでももつものではない。
今もなお穂乃果の足をつかむ手の力は強く、少しでも力を抜いてしまったらそのまま引きずり込まれてしまいかねない。
しかも開かれていたドアが、ゆっくりと閉じだしていくのがわかった。
「穂乃果ちゃん!」
穂乃果の危機を一早く気付くことができた希は駆け寄り、穂乃果の腕を引っ張る。
いきなりのことで呆然としていた皆も我に返り、穂乃果を助けるために引っ張ったり、ドアが閉じるのを防ごうとした。
「ちょっと! なんなのよこれ!?」
「わかりません! でも、早く穂乃果を助けないと!」
「うにゃぁぁあぁ!!! なんなのこのドア!? すっごく重いよ!?」
訳がわからない。女の子一人の力だというのにこちらが数人で穂乃果を引っ張ってもビクともせず、不自然にもひとりでに閉まろうとするドアは木製のはずなのに鉄で出来ているかのように重い。
「ちょっと、あなた!? 悪ふざけにしてもやりすぎ……ヒッ!?」
女の子に悪戯はやめるように叱る絵里。だが、絵里が目を移したそこにいたのは目が充血したように赤くなっており、口の端が大きく裂けてギラギラと尖った牙を見せながら不気味な笑みを浮かべている化物だった。
「な、なんなのよこれは!?」
一瞬上げた悲鳴に皆が絵里の視線を追う。そして同じものを見た時、彼女たちの表情が一気に青ざめた。
しかし、不気味なことはそれにとどまらなかった。
校舎の奥の方から人間の影のようなものが一つ、また一つと集まってきた。
「……ゆ、幽霊!?」
海未が頭に思い浮かんだ言葉をふと声に出した。幽霊など非科学的なものいるはずがない。
そう頭では思っているのだが、この状況でそれ以外に言葉が浮かんでこなかった。
いるはずのない幽霊という存在。その言葉を聞いた皆の心には一様に恐怖心が芽生えた
……そんな皆に反応したのか今まで以上に引く力が強まり、ドアの閉まる力も強くなった。
「くっ! こ、これ以上は!」
「こ、このドアぜんぜん開かないよぉ!!!」
このメンバーの中でも力のある方である凛や海未に加えて、花陽やにこが歯を食いしばりながらドアを開けようとするのだが、一向に開く気配がない。
むしろ少しずつ、ドアは確実に閉まっていっている。
「ど、どうすればいいのよ!」
「穂乃果ちゃん! 何とか振りほどけないん!?」
「ご、ごめん! 何とかしようとしてるんだけど、ぜんぜん放してくれないの!」
穂乃果を連れ出すこともできない、ドアを開けることもできない。さらにこちらの焦りに不気味な表情で嗤う女の子に、ゆっくりと近寄ってくる幽霊のような影。
恐怖心も相まって気弱な花陽だけでなく、いつも勝気な真姫なども涙を浮かべてしまう。
「……」
(……しょうがない、よね。このままじゃ、皆も巻き込んじゃうもん)
皆が必死になっている中、穂乃果はさっきまで何とか振りほどこうとしていた抵抗をやめた。
この先の自分を待ち受ける恐怖を想像して震え、目じりに涙を浮かべながら。
「……手、放して」
皆に手を放すように言った。
「な、にを、言ってるんですか!?」
「穂乃果ちゃん、諦めないで!」
「でも、このままじゃ、皆も巻き込んじゃうよ。今ならまだドアも開いてるし、せめて皆だけでも」
「くっ! そんなことできるわけ!」
「ごめんね、皆。私の我儘でこんなことになって」
穂乃果は涙を浮かべた顔をみんなに向けて、ぎこちなくもできるだけの笑顔を見せる。
「……さよなら」
そういうと、穂乃果は自分をつかんでいる希達の手を……。
「ふざ、けんじゃ……ないわよ!!!!!」
振りほどこうとした瞬間、にこが咄嗟に穂乃果の腕をつかんだ。
それと同時にドアの間に体を潜り込ませて、閉じないように背中と足で踏ん張る。
「くっ! あ、あんたねぇ! 何、勝手に諦めてくれてんのよ!」
「に、にこちゃん?」
「あんたを犠牲にして助かっても、ちっとも嬉しくなんてないのよ!
あんただって、こんなところで諦めていいの!?
まだやりたいことだって、たくさんあるでしょ!? ラブライブにだって出たいでしょ!?」
「……うちらは9人そろってμ’sやもんね」
「誰か一人欠けても、代わりに誰かが入ったとしても、それはもうμ'sじゃないのよ!」
「穂乃果ちゃんがいないμ'sなんて、ことりは嫌だよ!!!」
「あなたがいなくなってしまったら、皆が悲しみます!」
「笑顔なんて出せなくなっちゃうにゃ!」
「というか、あんたが私のことスクールアイドルに誘ったんじゃない! それなのに、勝手に自分だけいなくなるなんて、そんなの許せるわけないでしょ!?」
「これからも、皆で一緒にスクールアイドルを続けていきたいです!」
「……だから」
「「「「「「「「諦めないで、穂乃果(ちゃん)!!!」」」」」」」」
「……みんなぁ」
涙がにじんでくる。先ほどまでの恐怖もあるが、それ以上に皆が自分のことをこんなにも想ってくれていることがうれしかった。
下手したら皆まとめて引きずり込まれるかもしれないというのに。
それでも、身を呈して自分を助けようとしてくれることがうれしかった。
……それでも。
「う、うあぁぁああああ!!!!!」
「う、うにゃ!?」
「ど、ドアが!?」
それでも、どんなに強く想っていても現状が変わるわけではない。
穂乃果を連れ込む力は相変わらず強いままだし、ドアもどんどん閉まっていく。
その隙間もにこが足と背中で閉まらないようになんとか押さえてはいるが、それでも徐々に閉まっていき、今度はにこが圧されていく。
「に、にこちゃん! お願い、もう放して!」
「う、うる、さい!」
痛くないわけがない。それでも、にこはその痛みに耐えながら穂乃果を引っ張り出そうとあがいていた。
「ま、まってなさいよ。すぐに、助けて、あげるんだから!」
「にこ、ちゃん……」
「ッ! 本当に、どうしたら!?」
このままでは穂乃果より先に、にこがドアに挟まれて死んでしまう。
それでも、にこは穂乃果をつかむ手を放すつもりも、ドアを押さえるのを止めるつもりもない。そして皆も、穂乃果やにこを助けるのを諦めようとはしなかった。
(だけど、どっちにしろこのままじゃ!)
好転しない状況に、希の脳裏には最悪の事態を予想させてしまう。
それは先ほどのタロットカード、“死神”の死の予見を見てしまったことも大きい。
“スリーオラクル”の形式で並べられたタロットカード。
左側は過去の出来事、真中は現在の出来事、そして最後の右側は未来の出来事が表される。
希が死神の次に見たカード、最後の右側にあったのは“悪魔”のカードの逆位置。
意味としては、縁が断ち切られる、別れ、終わる付き合い、といった“死神”同様に不吉な意味の多いカードだ。
一応、問題に対する突破口が見つかるという意味も含まれてはいるが、大よそは取捨選択されたことによって生まれる突破口。
現状を顧みるとその取捨選択により切り捨てられるものは、恐らく穂乃果のこと。
今、穂乃果と自分たちの命が天秤にかけられているのだ。
(……たのむわ、うちの占い。今回だけ、今回だけは外れて!)
捨てられるものならば、とっくに捨てている。
それができないから、皆は今必死に穂乃果を助けようとしているのだ。
だからこそ願う。今までは的中率が高く自慢の自分の占いに、初めて外れてほしいと。
“グイッ”
(え?)
そんな必死に願い、何とかしようとしている中、誰かに肩を強く引かれるのを感じた。
“バンッ!”
……そのすぐ後、皆が必死に抑えていたドアは大きな音を立てて、あまりにもあっさりと開かれた。
「……って、キャッ!?」
何者かに強く引かれたことに加え、全力でドアが閉まらないように踏ん張っていた皆はその勢いのまま後ろに素っ飛び、地面を転がる。
「……い、痛ったぁ。いったい何が?」
「うわぁん! 膝すりむいちゃったよぉ!」
「……あれ、穂乃果ちゃん?」
訳もわからず転がってしまった体を起こすと、隣でさっきまで必死に助けようとしていた穂乃果の声が聞こえた。
「……何、じゃないよ」
「……え?」
前から聞こえてきた聞き覚えのある声に顔を向ける。
そこにいたのは一人の男性。
校舎の中のちょうど穂乃果がいた位置に立っているのは、見覚えのある人だった。
「まったく、ここは立ち入り禁止になっていたはずなんだがなぁ。お前たち、あとで理事長にいっぱい叱ってもらうから、覚悟しとけよ?」
どこか呆れたような表情を浮かべてこちらを見ているのは、今日付けで音ノ木坂学院の用務員になり、そして同時に自分たちアイドル研究部の顧問になった人、オルトだった。
個人的にホラーは苦手な、ビビり君です。
特に、物によっては主人公に救いがなく、鬱な展開のまま幕を閉じる系統の話はなお苦手です。
なので、基本的に私が今後もホラー系を書くとしても、(私にとって)鬱になるような話は書かない予定です。
……救いがあるホラー、それってもうホラーじゃないのかなぁ?
補足
1)占いに関して
私ことネメシス、ぶっちゃけますと占いとかに詳しくなんてありません!
タロットカードも「何かの作品で誰かが使ってたなぁ」程度の印象しかありません!
今回の占いについてはネットで探して、自分なりに解釈して組み込んでいます。
「その解釈違くね?」「どっちかというとこっちのカードの方が~」と思われる方もいるかもしれませんが、なにとぞご容赦いただければ幸いです。
2)講堂の使用
講堂を外部の団体が使用していた件に関してですが、アニメで見た限り結構広く立派な講堂だと思えました。
場所によってはですが、学校のプールや体育館を一般開放しているところもあるそうですし、音ノ木坂においても同じように講堂を外部団体に貸し出すこともあるという設定にしました。
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2話目です。
今回は少しホラーチック?