いつもどおり政務をこなす華琳のもとに、兵士がやってきた。
「曹操様。北郷様がお帰りになりました」
「やっと帰ってきたのね。すぐに重臣たちを謁見の間へ集めなさい」
「はい。それと・・・・・・その・・・・・・」
「何?」
「いえ、北郷様が旅芸人と称する三人の女達と、踊り子と称する三つ編みの巨大な筋肉ダルマを連れてきたので・・・・・・」
「・・・・・・」
「どういたしましょう?」
「とりあえず会ってみましょう。一刀と一緒に謁見の間で・・・・・・」
・・・・・・
謁見の間
玉座には華琳。
参列する重臣達。
そして中央には一刀、貂蝉、張三姉妹の姿があった。
ちなみに貂蝉の姿が視認された瞬間、謁見の間は一時パニックになった。
華琳はめまいを起こし、桂花は失神。春蘭などはいきなり貂蝉に襲い掛かってきたりした。
華琳が何とか持ち直して静まるよう命じ、一応場は収まったのだ。
「既に話は聞いているわ。大役ご苦労様」
気をとりなおして華琳は一刀へ言葉をかけた。
「俺は医者としての仕事をしただけだ。それに、俺一人でやったわけじゃあない」
「華陀という医者と二人で治療したと聞いてるけど」
「正しくは四人だ。貂蝉と卑弥呼という漢女の力も借りた。ここにいるのがその貂蝉だ」
「よろしくねん♪」
ウインクする貂蝉に対し、華琳は顔を引き攣らせた。
「そう・・・・・・貂蝉と言ったわね。貴方がここまで来た目的は何?」
「アタシはご主人様の助手希望なの♡」
「ご主人様?」
「俺のことらしい」
「・・・・・・何があったの?」
「知らん。会った時からそう呼ばれてるんだ」
「・・・・・・」
「まあ、俺としても貂蝉がいてくれれば助かるんだ。何とか頼めないか?」
「冗談じゃないわ!こんな変態を置いておけるものですか!」
堰を切ったように叫んでいるのは当然桂花である。
ただ、並んでいる他の重臣達の中にも無言で頷いている者がいたのだが。
「・・・・・・一刀が頼むなら仕方が無いわね」
「華琳様!?」
「それに、帝の治療の功労者を無下に扱うわけにはいかないわ。ここで働く事を許可しましょう」
「ありがと♪」
「・・・・・・さて」
華琳は早々に貂蝉から視線を外し、張三姉妹に目をやった。
三姉妹は緊張した面持ちで直立している。
「そこの三人は旅芸人と聞いたけれど、どうしてそんな人間を連れてきたのかしら?」
「率直に言おう。この三人は黄巾党の元首領、張角、張宝、張梁だ」
一刀の発言に謁見の間は騒然とした。
「本当なの?」
「こんな嘘をついて何になる?」
「・・・・・・どういうことか話してもらえるかしら?」
「そういうことだ。誰か経緯を説明してくれるか?」
「・・・・・・私が」
一歩前に出たのは末っ子人和。
ぽつりぽつりと黄巾党の事を語りだす。
・・・・・・
「つまり、黄巾党の大半は貴女たち三人の追っかけの集まりだったと言うの?」
「ええ」
謁見の間はざわめいていた。
重臣達も信じられないと口々に言っている。
「俺は贖罪をさせるため、この三人の声を奪おうかと思った。だが華琳に裁きを委ねたらどうかと貂蝉が止めてな。それで連れてきた」
「そういうことだったの・・・・・・」
華琳は顎に手を当て、考えを巡らせているようだった。
「いいわ。私に任せなさい」
「どうするんだ?」
「まあ見てなさい・・・・・・張三姉妹だったわね」
「「「!!」」」
「そう怯えなくても処刑したりはしないわ」
「そ、そうなんですか?」
胸を撫で下ろす天和。
「ええ。そのかわり、私の所で働いてもらうわ」
「どういうこと?」
地和の疑問に華琳はすぐさま答える。
「あなたたちの人を集める力を使わせてもらいたいのよ。兵を集める時とかにね。頼む事の無い時は私の領内でなら自由に動いても構わない。どう?」
「分かりました」
即答したのは人和だった。
「ちょっと人和!」
「声を失うよりはマシ。そうは思わない?地和姉さん」
「う・・・・・・」
「思う思う!」
天和も必死で賛成意見を出している。
「・・・・・・そうね。背に腹は変えられないわね」
地和も腹をくくったようだった。
「三人とも条件を飲むということでいいのね?」
「「「はい」」」
「一刀。不満は無い?」
「・・・・・・いや。世の中のためになるのならそれもありだろう」
「そう。ではこれからの事は後々相談しましょうか」
「ちょっと待った。ここに来る前に元黄巾の賊崩れが三人の正体をばらすと脅した事があった。他にもそういう人間が残っているかもしれないが、それに関してはどうする?」
「そうなの?捕まえた黄巾の捕虜たちは誰も口を割らなかったのだけど・・・・・・まあ、そういうことなら手を打っておきましょう」
「どうするんだ?」
「簡単よ。この三人よりそれらしい張角、張宝、張梁の人間像を触れ回って、それを定着させてしまえばいいのよ。おそらくそんな脅しなんてやるのはごく少数。それなら情報操作でどうとでもなるわ」
「ふむ、なるほど」
「これで問題は無いわね。では、この辺でおひらきにしましょうか」
謁見は終了し、皆ぞろぞろと退出していく。
「一刀」
そんな中、華琳は一刀を呼び止めた。
「ん?」
「話があるわ。後で私の部屋に来なさい」
「・・・・・・分かった」
どうも、アキナスです。
貂蝉と三姉妹の処遇に関しては一段落といったところ。
そして次回、一刀君の過去が明かされます。
一刀君の語る衝撃の過去とは!?
・・・・・・次回に続きます
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どうやら帰りついたようです