【 不知火の覚悟 の件 】
〖 司隷 洛陽付近 洛水 にて 〗
16inch三連装砲が煙を噴き上げ、巨躯を沈める。
その間、不知火と対峙していた戦艦棲姫は、その有り様を見届けていながら一切躊躇などせず、不知火を睨みつける。
不知火もまた、艤装を両手に着用する白手袋の袖口部分、そこを引っ張り直して感触を確かめる。 手を広げては握りと繰り返し違和感の有無を確認。
確認し終わると、眼光を炯々(けいけい)として戦艦棲姫を眺め、不知火は臨戦態勢を取った。 何時でも目の前に居る敵艦を屠る(ほふる)為に。
ーー
戦艦棲姫「………貴様ァ……本当ニ……駆逐艦……カ? ソノ眼光……堂々タル態度……私ト同ジ……戦艦……」
不知火「………不知火は正真正銘の駆逐艦。 この艤装を見れば判る事ですが? ただ、そうですね……言わせて貰えば……」
ーー
戦艦棲姫は、不知火の眼光に薄気味悪い物を感じていた。
艤装、胸部装甲の薄さからして駆逐艦と見当を付けていたのだが、それに似合わぬ迫力に……些か背筋に冷たい物が落ちる。
『戦艦の如く』──艦これでは、お馴染みである不知火の態度。 だが、今回は少し違う。 そのまま下より見上げるように三白眼で答える。
ーー
不知火「不知火と『今の貴女』、そう軽々しく比べるなど迷惑千万!」
戦艦棲姫「………何ィ……?」
不知火「駆逐艦にさえ劣る雑魚が、戦艦など軽々しく名乗るなど。 雑魚は雑魚らしく、黙ってその場で震えているがいいっ!」
戦艦棲姫「………貴様ァァァ………」
不知火「雑魚が粋がるようですが、頼りの艤装は完全に破壊され機能停止! 残ったのは、ふふ……艤装無き雑魚! 正に恐るるに足らず!」
戦艦棲姫「イ、言ワセテ……オケバァッ!!! 重巡棲姫、手ヲ出スナァ!」
重巡棲姫「……………………」
ーー
不知火の言葉に激昂する戦艦棲姫。 攻撃する艤装は失えど、その近接攻撃は未だに健在し、怒れる猛牛の如し勢いで不知火に迫る!
心配する他の艦娘達も援護しよう接近するのだが、当の不知火が片手を広げ『拒否』の動作を示す。 責任感ゆえか、自分自身の矜恃ゆえか、仲間の手助けを頑なに拒否。
誰一隻足りとも近寄らせなかった。
ーー
戦艦棲姫「コノ……サウスダコタ……ヲォ………舐メルナァァァッ!」
不知火「今の貴女なら──この不知火だけで充分っ! 砲撃、てえーっ!!」
戦艦棲姫「グゥ………グウゥッ!! コ、コンナモノォォォッ!!」
不知火「───うぐっ! 」
ーー
しかし───戦艦棲姫の攻撃は、不知火の予想以上に凄まじかった。
不知火が砲撃を放ち相手を狙うが、戦艦棲姫は悉(ことごと)く攻撃を避けるか、両腕で交差して遮る。 かの艤装と切り離しても本体の装甲は厚く、駆逐艦の艤装では致命傷を与えるのは難しい。
と言って、このままにしておけば……不知火が駆逐艦だけに駆逐されるのは目に見えている。 いや、笑いを求めるのでなく、実際ヤバイのだ。
だが、不知火の顔が艦娘達に向いた時、口が開き声無き言葉を紡ぐ。
ーー
不知火『……、………、………!』
ーー
愛宕「『カ……ナラズ……カツ!』……って。 天津風ちゃん………不知火ちゃん、大丈夫かしらぁ? 無理せずに私達にも頼って貰いたいたいのに~」
天津風「知らないわよ。 だけど……あの不知火が、嘘なんて言うわけないじゃない。 だったら、仲間である私達が信じて、神風を吹かせるのを待ってなきゃいけないでしょう!」
ーー
龍驤「………………………頼むでぇ……イク……」
貂蝉「龍驤……ちゃん……だったわねぇん。 ちょっと、お話してもいいかしらぁん?」
龍驤「へぇ……? オッサ………じゃなかった! き、霧島さんが……うちに何か用でもあんの……?」
貂蝉「物凄ぉく~大事な事なのぉ。 だから、オ・ネ・ガ・イ・!」
龍驤「……………あかん。 悪い予感しか……しやぁせんわ………」
ーー
不知火が伝える───『必ず勝つ』と言う言葉。
愛宕達艦隊の艦娘は、心配しながらも……不知火の勝利を信じて、少しも動かず様子を伺っていた。
★☆★
さて、ここで慧眼の提督諸兄が疑問に思われる事を、説明せねばなるまい。
あの『戦艦棲姫』が……どうして駆逐艦に轟沈間近にされたのか?
理由は大まかに纏めて………三つほどある。
ーーー
①『攻撃の要である16inch三連装砲は、長距離使用。 接近戦には用はなさなかった。 つまり、懐に入られると自由が制限されて、攻撃が困難』
②『霧島達とのボコり合いの恐怖が、未だに身体が覚えている。 幾ら急激に強くなっても心の傷は簡単には消えない』
③『戦艦棲姫の身体を奪い取ったサウスダコタだが、完全に機能を使いきれなかった 新品の電化製品を購入し、自分の望んだ操作が出来ない……もどかしさ。 これと同じような物である』
ーーー
①は、夕立、不知火が突撃した時に考えていた作戦。 これは、二隻の作戦勝ちである。
②、③は、当然……艦娘側は知らない。 勿論、深海棲艦側でさえ知る者は、殆ど居ないだろう。 これは『今だけ』の弱点。 身体が馴れれば問題は無くなる。 多分、いや──元の戦艦棲姫よりも強くなるだろう。
だが、今の状態では──それは許されない。 既に戦いは始まっているのだから。 今は、己の力を全力で用(もち)いるしかないのだ。
理由はどうであれ、それに気付かず慢心していた者と、ただ貪欲に勝利を求めた者達。 その違いが明確に現れた戦いだった。
◆◇◆
【 極秘命令 の件 】
〖 洛陽付近 洛水 にて 〗
夕立達と一緒に洛水へ着水した吹雪だったが、途中で二隻と別れ──貂蝉の傍へと向かう。 貂蝉は、吹雪が此方に訪れたのを見て、少しだけ驚いた顔をするが、吹雪の一言により満面の笑みとなる。
ーー
吹雪「あ、貴女が貂蝉さん………ですか?」
貂蝉「あらぁん、よく一目で私だと判ったわねぇ? こんな完璧に決まった擬装なのにぃ~」
吹雪「…………か、加賀さんが………集まった者の中で……そ、その……一番……目立つ方に声を掛ければ、九分九厘間違いないからって………」
貂蝉「まあっ! もぅやだぁ~! 私の美しさが控目にしていても滲み出てくるのを知っていたねぇ? いやぁ~ん、いやぁあ~ん! ぐぅふふふふっ!」
吹雪「(…………加賀さんに言われた通り、一番『違和感が』目立つ人に声を掛けたら………うわぁ~、本当に変な人! で、でも、この人が……あの一航戦の加賀さんからも一目置かれてるんだ! が、頑張れ、吹雪!!)」
ーー
大喜びで身体をクネクネと動かす貂蝉。 その様子を少し引きながら見ていた吹雪は、思わず後退る。 相手は吹雪より身体が大きい貂蝉だ。 こんな動きを目の前でされれば、誰だって距離を離すだろう。
だが……一旦は退いたもの、この作戦を命じた者の顔を思い浮かべ、拳を握て立ち止まる。 まだ着任して日が浅い自分を信じ、大役を任せてくれた『加賀』に応えんと、自分を叱責して行動する事も忘れてはいなかったのだ。
★☆★
《 吹雪 回想 》
〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗
加賀『…………貴女は?』
吹雪『は、はいっ! 連合艦隊を率いて来た旗艦『吹雪』です! あ、あの提督より………赤城さんと加賀さんを………と、止めぇ……じゃなくて! え、ぇえとぉ…………』
加賀『そう………提督が言っていた子。 ならば、耳を貸して………』
吹雪『ひゃ、ひゃいっ!』
加賀『一刀提督からの指令を伝えます。 《于吉、青葉達が都城内へ蔓延る(はびこる)白波賊の監視を排除させる為、その後に他の艦娘達と一緒に支援艦隊を結成、影からの支援を求める!》 以上!』
吹雪『─────!?』
加賀『動揺しては駄目。 まだ、少なからず……敵からの監視の目があるかも知れない。 回りくどい方法だけど……この伝言形式で提督からの《真の命令》を伝えさせて貰ったわ。 ───必ず、果たしなさい!』
吹雪『……………』コクコクッ!
加賀『…………不躾に命じて申し訳ないとは思うわ。 だけど、この都城内には未だに敵の目が光っていると、提督から指示を受けていたの。 裏から動ける艦隊を編成するためには、虚実混交の情報を示さなければならなかった……』
吹雪『…………い、いえ! その気持ちだけで──』
加賀『本当であれば、私や赤城さんが動いた方が良いのだけど……私達が動けば必ず目立つ。 誇りある一航戦は、良くも悪くも華がある艦だから……』
吹雪『…………それは、私達が単純に地味だと………?』
加賀『ふっ、戦場での華は何かと苦労するのよ? 華は勝敗に関係なく期待を一身に受けて咲き誇る。 勝てば……勝利の象徴、負ければ……反抗の要。 安らぐ時など…………無い!』
吹雪『………………!』
加賀『どんなに大変な事があろうとも、どんなに哀しい事があろうとも、期待を裏切る訳にはいかない。 この身を曝け出さなくてはいけない。 それが、一航戦として……戦場の華を任された誇りある役目……』
吹雪『………す、すいません!! そんなつもりで──』
加賀『私達一航戦、いえ……赤城さんは──既に動いたわ。 提督の為に……涙を呑んで汚れ仕事を行い無事に配置に着いた。 私も吹雪に伝えたので、残りの任務を実行をするわ。 此処に居る部外者の耳目を集める為に……!』
吹雪『…………加賀さん………』
加賀『大丈夫、私の仕事は……この表情の出ない顔を買われた任務。 赤城さんのような体力的苦痛は……多分無い筈よ。 ただ、罵詈雑言を言われるかも……知れないけど。 ふふ………私のような艦娘に……丁度いいわ……』
吹雪『加賀さん!』
加賀『──こちらの事は心配は無用。 扉を出て少し歩けば……分かるわ。 本来なら復唱して、命令を確認するところだけど……吹雪なら大丈夫でしょう。 その生真面目さなら……安心できるわ』
吹雪『…………わ、わた、私なんか……そんな大役………』
加賀『無理だと思えば……仲間を頼りなさい。 悩む時は、貴女だけの思考に囚われず仲間に意見を問いなさい。 答えは……すぐ側で見付かる。 私達に無い……仲間の輪を大切にする貴女なら………』
吹雪『……………』
加賀『それに、もし会えれば……貂蝉という怪人物が居るから………』
吹雪『怪……人物……?』
加賀『判らなければ……艦隊で一番違和感が目立つ艦娘へ声を掛けなさい。 間違いなく……その艦娘が擬態した貂蝉。 あらゆる事に対応できる力を持ちながら……容姿と精神が……救いがたいほど残念なのだけど……心強い味方よ』
吹雪『……………りょ、了解です……』
加賀『…………吹雪、貴女と仲間達の武運長久を祈るわ。 この世界に──暁の水平線は未だに見えずとも、私達の勝利を捧げる人物は、ただ一人! その事を胸に懐き、必ず……任務を成功させなさい!!』
吹雪『はいっ! 加賀さんも……どうか御無事に───』
★☆★
あの騒動が起こる前、吹雪は一刀の命令で加賀の側に居た。 だが、そんな吹雪に気付いた加賀は、密かに一刀からという別の指示を受けて行動を開始。
その途中で夕立達に出会い説明していたところ、洛陽都城外で巨大な水柱、凄まじい轟音を耳にして駆けつけようとしたのだ。
ところが、洛陽に訪れて短期間の艦娘達に、迷宮のような都城内が分かる筈もなく、迷子になり途方に暮れる。 しかも、都城内に侵入していた白波賊の手の者は、吹雪達の行動を阻害する為に動き出し、別の場所を案内される始末。
この後、于吉達の活躍で女官は取り抑えられ、吹雪達を洛水に送り出すが、到着する予定時刻を大幅過ぎてしまう結果になった。 しかし……結局は『伏兵』から『奇襲』に変わっただけで済んだのは、不幸中の幸いだったのだが。
ーー
吹雪「───ご、ご挨拶が遅れ申し訳ありません! 『吹雪型 1番艦 駆逐艦 吹雪』です! 『正規空母 加賀』から命じられ──司令官の策の実行、並びに報告に参りました!!」
貂蝉「まあっ! 吹雪ちゃん……っていうのぉ? 可愛いらしい娘ねぇ! どうも、ありがとぉ! 助かったわぁ、貂蝉~大・感・激なんだからぁ! 嘘じゃないわよぉ? 本当に本当なんだからぁん~っ!?」
吹雪「い、いえ……! 都城内に潜む白波賊の妨害や私の不徳で、思いの外に援軍に時間が掛かり出遅れてしまい──!!」
貂蝉「もう~! 吹雪ちゃんの活躍でぇ私達は助かっているの! それに……貴女は『間に合った』のよぉん! 『間に合わなかった』とは大きな隔たりがあるわぁ。 自信を持たないと──駄目よぉ?」
吹雪「…………はっ、はいっ!!」
ーー
貂蝉は、報告と同時に謝罪する吹雪へ優しく声を掛けて感謝する。 頬を朱に染めてクネクネと動く筋肉の塊。 霧島の服装の下で、所狭しと躍動する筋肉の動きを唖然としながら見守る吹雪。
彼女の頭に過るのは───かの一航戦が語る漢女に対する辛辣な意見。
『怪人物』
『あらゆる事に対応できる力を持ちながら……容姿と精神が……救いがたいほど残念なのだけど……心強い味方よ』
ーー
吹雪「………あ、あははは。 ほ、本当に………怪人物なんですね………」
貂蝉「まあっ! この触れれば折れそうな腰、儚い手弱女(たおやめ)のような容貌を持つ私が、筋肉ムキムキの荒くれた益荒男(ますらお)と同じように思っているの!? もう、本当に失礼だわぁぁぁ!!」
吹雪「ち、違うんです! か、かい……快人物、快人物って言ったんですっ! こ、こんなぁ……魅力的で儚げなで明朗快活な人って見たことないなと……思っていたら、快人物って呟いちゃって…………」
貂蝉「あらぁん……ごめんなさいねぇ。 また、この美貌を貶されたと思って、つい柄にもなくムキになってしまったわぁん。 吹雪ちゃんみたいなイイ子に、私とした事が些か自意識過剰だったわねぇん?」
吹雪「い、いえいえいえっ! どうぞ、心配しないで下さい! 全く、全然、これっっっぽちも気にしていませんからぁ!!」
ーー
貂蝉の謝罪の言葉に対して、吹雪はギクシャクした返事を貂蝉に答える。
そんな吹雪に顔を緩める貂蝉。 自分の謝罪を吹雪が受け入れてくれたと、安堵したのだろう。 ニッコリと笑い、視点を別の場所へと移す。
ーー
貂蝉「せっかく……気合い入れて助太刀しに来たのにぃ残念ねぇ。 でもぉ……私が表に出て目立ち過ぎても困るから、ちょうど良かったわぁん!」
吹雪「で、では……その格好──貂蝉さんと判らないように変装を!?」
貂蝉「それもあるんだけどぉ? たまのイメチェンも素敵じゃなぁい? 私ってぇ眼鏡を掛ける事なんかないから、憧れだったのぉ! だ・か・ら……霧島ちゃんの服装で……ねぇ。 眼鏡の麗人なんてぇ……如何にも知的じゃない?」
吹雪「(……き、霧島さんが……見たら………)」
ーー
因みに貂蝉の服装は、何故か未だ霧島のままである。 本人が気に入っているのか、脱ぐの恥ずかしいのかは不明だが………まあ、脱いだで脱いだで何か凄い……ことが起きそうだが。
だが、そんな出来事を軽く流しても問題ない事象が、その少し先で繰り広げられている。
────不知火と戦艦棲姫の戦い。
その戦いの行方に、皆の視線が集まっていたからである。
ーー
貂蝉「一刀ちゃんたら………こんな時に大博奕を打つんだもの、私も心配したわぁ~ん。 でも、吹雪ちゃん達の様子なら……大丈夫のようねぇん!!」
吹雪「は、はいっ! さ、作戦は、司令官の目論み通り行きました。 通達を受けた于吉さん達が、都城内に潜む者達を全員捕縛! 私達の行動を知られる事も、これで無くなると思います!」
貂蝉「うふふふ……良かったわぁ。 この戦いが済めばぁ、やっと一息つけるけどぉ。 『〇〇〇』の記憶が蘇るだけねぇ……思い出したら思い出したで、結構戸惑うかもしれないけどぉ? どぅふふふふふっ!」
吹雪「………………?」
ーー
一刀の目論みが順調に進んでいると答える吹雪に対して、貂蝉は笑顔で頷く。
そして、貂蝉の言葉に軽く首を傾げた吹雪は、その言葉の意味を吟味する事なく、二隻の戦いを見守るのであった。
◆◇◆
【 別視点 の件 】
〖 洛陽付近 洛水 にて 〗
戦艦棲姫は、目の前に居る駆逐艦を………目を細めて眺める。
普段なれば艤装を展開して、駆逐艦など鎧袖一触で轟沈できるのだが、その艤装も敵の駆逐艦に破壊された。 それだけでも屈辱的なのに、戦艦棲姫である自分に勝てるなどと豪語した敵艦。
実際に、何回も攻撃しては反撃、何度も回避しては攻撃と繰り返し……未だに自分へ戦艦並みの冷徹な視線を浴びせる『不知火』なる駆逐艦が居る。
初めは………怒りだった。
しかし、対峙して互いに武器を交える度に、戦艦棲姫の心の中でざわめく感情…………苛立ち、渇望、悪意、妬み、驚き!
そして、今──心を占める感情は『楽しい』に変わる。
ーー
戦艦棲姫「タカガァ! タカガァァ………駆逐艦如キガァァァァ!! 私ヲ霧島ト戦ワセロォォォ! 霧島以外ノ艦ナドォォォ───」
不知火「………話になりません! 駆逐艦とは──全ての敵艦を『駆逐』する艦を示す事! 即ち、貴女のような雑魚も駆逐するのが不知火達の役目! 霧島?さんの手を煩わせるまでも──!!」
(本来の意味は《水雷艇破壊艦(Torpedo Boat Destroyer)》と言い《水雷艇を駆逐する艦》の意味合いだったのだが、後に略されて《駆逐艦(Destroyer)》となったそうである)
ーー
戦艦棲姫が苛立った『振り』をして、この敵艦『不知火』へと近付くと……戦艦棲姫との距離を必ず取ろうとする。 まるで、仲間を戦いに巻き込ませたくないと言わんばかりに。
確かに……敵艦『不知火』には『12.7cm連装砲』と言う艤装があり、今の戦艦棲姫よりも離れた場所から攻撃可能だ。 その為に距離を開けたと思えば、理解はできるが………納得が到底できない。
何故ならば、12.7cm連装砲では戦艦棲姫に効果が薄い事を体験しているのだ。 それなのに、その艤装を何度も使用して攻撃したかと思えば、仲間からの手助けをも断った。 理解が出来ないと考えても仕方が無いだろう。
だが、その反面───戦艦棲姫は興味を持った。
駆逐艦の身、貧弱な艤装、断った仲間の援助。 これらの状況で、いったいどうやって……この戦艦棲姫を轟沈させるのか……知りたくなったのだ。
ーー
戦艦棲姫『(私ヲ……ドウ轟沈サセル気ダ……駆逐艦ヨ。 オ前ハ……面白イ)』
戦艦棲姫『(一隻ダケデ……私ヲ狙ウ……ソノ覚悟。 アノ大戦デ……世界ニ君臨シタ頃ノ……《サムライ》共ヲ……思イ出ス。 ククククッ……霧島モ惜シイガ……コノ駆逐艦ヲ……先ニ轟沈シタ方ガ……都合ガイイノダァ………)』
戦艦棲姫『(霧島………貴様モ……憤怒ノ焔ヲ味ワエ! アノ駆逐艦ガ……轟沈スル様ヲ見テ……私ニ向カッテ来イ。 ソウスレバ……本気ノ霧島ト……戦エル)』
戦艦棲姫『(駆逐艦……貴様ハ……興味深イ。 ダガ……私ガ勝テバ……ソレデ終ワリ。 ソノ後ハ……霧島ト闘ウ為ノ………贄ト……ナルガイイ……!!)』
ーー
戦艦棲姫は、敵艦『不知火』を──もう一度、見つめた。
あれから、何度も何度も交戦を行い、不知火に数多くの手傷を負わした。 戦艦棲姫も攻撃を散々受けてしまったが、不知火より怪我は少ない。
体力も戦艦棲姫の方が余裕がある状態だった。
ーー
不知火「ハァ、ハァ、ハァ…………」
戦艦棲姫「…………………………」
ーー
不知火は肩で呼吸しつつ、洛水の水面で片膝を突いている。 だが、その眼光は相も変わらず……戦艦棲姫を睨み付けたまま。
戦艦棲姫は、対峙している不知火に気付かれないよう……顔を怒りの形相で向ける。 しかし、心の中で………不知火が、どのような行動を起こすのか……期待していた。 海のサムライ『不知火』──その実力を楽しむ為に!
◆◇◆
【 結果 の件 】
〖 洛陽付近 洛水 にて 〗
両目の光を更に強く輝かせた戦艦棲姫は、邪魔をする不知火への怒りを原動力に変え、轟沈させんと更に手数を増やして攻撃を続けた!
勿論、艤装は夕立に撃破され……残されたのは艤装を外した戦艦棲姫自身。
一見すれば、黒髪を靡かせた華奢な美女。 どこかの漢女とは全く違う……深窓の令嬢のような雰囲気を持つ者。 ただ、胸元の突起、頭上の角などを除けばだが……異論を挟む者は居ないだろう。
そんな美女が、風を巻き起こす剛拳を突き入れ、空気を切り裂く手刀を放つ! まともに喰らえば、駆逐艦である不知火としても……たった数発で轟沈されそうな威力を内奥しているとは、誰が信じようか?
ーー
戦艦棲姫「ダ、誰ガァ! 誰ガ諦メルモノカァッ! 私ハ……奴ヲ破壊スルゥ! 必ズ、必ズダァ! 我ガ遺恨……我ガ宿願………我ガ望ミィ! 邪魔スル……ガラクタドモ………ナド………沈メ……沈ンデシマエェェェッ!!」
不知火「─────くぅぅっ!!」
ーー
だが、不知火は駆逐艦の得意とする機動力を持って、悉く攻撃を回避。 距離を取りながら、自分の艤装を展開して砲撃を仕掛ける。
狙える箇所は、胸や腹など標的が大きくて動かし難い場所。 顔を狙う者も居るが、首を動かすだけで致命傷が外れる。 手足では、致命傷など無理である。 殺れる時に殺れ、それが戦場の戦い方だった。
ーー
不知火「貴様こそ、沈めっ!!」
戦艦棲姫「フン! 大口ヲ叩イタ割リニハァ……ソノ程度カァァァッ!?」
不知火「なんて……硬い装甲! 艤装を撃破しても……この有り様……」
ーー
艤装を持たぬ身体ゆえ……火力こそ無いに等しいが、耐久、装甲は駆逐艦の不知火より──まだ上回る。 しかも……相手は、先の大戦で敵味方に災いを与えたという『サウスダコタ』だ。
疲労困憊な不知火は、思わず片膝をついて……荒く息を吐く。 何度も重ねた互いの手の内。 されど、戦艦棲姫の強さは不知火を軽く上回り、幾度も不知火を窮地に追込み、その度に跳ね返して来た。
そんな不知火と言えど、体力は無尽蔵では無い。 片膝を突きながら、呼吸が荒くなる。 身体が重く動かすのが酷く怠い。 このままでは殺られる、無理をしてでも何かをやらなければと考え、皆が怯える目付で睨みつけてやった。
その時、不知火は少し疑問を感じた。
戦艦棲姫が、一瞬だけ『何か期待しているような表情』を浮かべたのだ。 慌てて見直せば、怒りの表情を浮かべたまま。
それに気が付けば……仲間の艦隊からも距離が上手く取れている事も把握できた。 戦艦棲姫の距離は対峙して凡そ十㍍、艦隊達も不知火から数十㍍離れた周囲で見守ってくれている。
ならば、今こそ切り札を使用する場面だと考え、実行に移す。
不知火は、軽蔑の表情を浮かべ………更に戦艦棲姫を煽る言葉を吐いた。
ーー
不知火「ま、まさか………此処まで強いとは。 《艤装のヒモ》の割りには……やりますね。 いえ………《艤装のおまけ》と言っても過言では……無いですね………」
戦艦棲姫「……………ナンダト?」
不知火「お……おや? 不知火が……間違った事を言いましたか……ハァ、ハァ………《艤装のヒモ》さん?」
戦艦棲姫「───ナァ、何ィイイイッッ!?!?」
不知火「あの……艤装を側に置き、貴女が指示するだけで……『戦艦棲姫』として恐れられる。 だけど、その艤装を破壊された今………附属品の貴女は何です? ただの……深海棲艦ではないのでは? だから《ヒモ》と──」
戦艦棲姫「私ヲ………私ヲォ! 有ロウ事カ……《ヒモ》……呼バワリスル気………カッ!?」
ーー
不知火から挑発の言葉を吐き出される度に、戦艦棲姫の端正な顔が醜く歪む。 拳が固く握らブルブルと震え、身体が強張る様子が見て取れた。
不知火は、大きく息を吸い込みと立ち上がり、戦艦棲姫へ直視する。
ーー
不知火「ただの《ヒモ》呼ばわりされて……怒りますか? 怒るのですね? それなら、裏を返せば………真実だったと言うことで……!」
戦艦棲姫「ヱヰβゐΣШёеы─────ッッ!」
不知火「…………………」
ーー
青白い顔に赤みが差し怒髪天を衝き、戦艦棲姫は言葉として意味にならない怒声を上げる!
それを黙って、眺めるだけの不知火。
怒りで目を吊り上げた戦艦棲姫は急速に接近する。 『駆逐艦如きに艤装など不要!』と言わんばかりに、水面上を滑るように近付く!
ーー
戦艦棲姫「………口ノ減ラヌ……駆逐艦メェ! 海ノ藻屑トシテ………再度………消エ───!?」
不知火「…………掛かったようですね?」
戦艦棲姫「────キ、貴様ァ!!」
ーー
不知火との距離を戦艦棲姫が一気に縮ませた時、不知火が小さく笑みを浮かべて、背中の艤装より魚雷を放つ!
一つ、二つ、三つと──驚愕の表情をした戦艦棲姫へ吸い込まれるように、魚雷が狙いたがわず向かって行く!
───不知火が戦艦棲姫を挑発した目的。
それは、不知火だけで戦艦棲姫を確実に轟沈させる──巧妙な罠。
挑発で相手を怒らせ、自ら此方に突っ込ませるよう誘導。 その挑発に乗り近付いた時を見定めて魚雷を発射。 魚雷の着弾速度が著しく速まると共に攻撃力の上乗せができる結果となる。
更に言えば、怒りで視野狭窄に陥った戦艦棲姫の回避を──難しくさせた。
戦艦棲姫は目を見開いて慌てるが、避けるにしても自分で速度を出しすぎて回頭動作が間に合わない! それに、戦艦棲姫も接近していたので、魚雷との間合いはあっという間に無くなる!
如何に戦艦棲姫でも……これでは無事には済まない!
ーー
不知火「──潔く、洛水の水底へ……沈めっ!!」
戦艦棲姫「──────!?」
──────カァッ!
ーー
こうして───戦艦棲姫は不知火の罠に嵌まり、魚雷の触発! 轟音と共に複数の水柱が──不知火の前で立ち上がった!!
不知火の少し手前で水柱が上がり、水飛沫が掛かるのを片手で遮りながら様子を探る。 水煙が辺りを漂い視界を遮断するので、状況が判りにくい。
だが、あれだけの魚雷を撃ち込んだ、間違いなく轟沈できた。 不知火は、そう判断して、構えを解いた。
ーー
不知火「…………やっと……轟沈しましたか………」
貂蝉「────まだよぉ! まだ、気を抜いたら駄目ぇぇぇん!!」
不知火「…………えっ? きゃぁああああっ!!」
ーー
格上の相手に緊張を強いられ続けた不知火が、僅かに気を抜いた瞬間、腹に響く低音のオネエ言葉が危機を伝えた!
不知火の無事を見てホッとしていた面々に、緊張と臨戦態勢が取られ、不知火の前面に向けて砲塔を向ける!
されど、その言葉を不知火が覚る前に──水煙から細い両腕が現れて不知火の首を掴み、そのまま空中へと持ち上げる! その腕の主は………轟沈した筈の戦艦棲姫。 身体から体液を流しながら、嗤いながら不知火へ目を向けた!
ーー
戦艦棲姫「………ククククッ………捉エダゾォ? 駆逐艦…………ッ!!」
不知火「な、何故…………その程度…………」
戦艦棲姫「ハハハ…………挑発シテ……私ヲ接近サセ……魚雷ノ威力……倍加サセタカ? ……ウグッ! ナカナカ………面白イ………考エダッタゾ? ダガ……種ガ判レバ………対処モシヤスイ………」
不知火「─────!?」
戦艦棲姫「………魚雷ヲヒトツダケ……蹴リアゲテ……誘爆サセタ。 爆発ハ派手ダガ………威力ハ……カナリ抑エレタ………ククククッ………ハハハッ!!」
不知火「……………ふ、不覚………」
戦艦棲姫「…………オ前ノ手ハ………コレデ終ワリ………カ?」
不知火「………………」
戦艦棲姫「………フン………ナラバ……私ヲ楽シマセテクレタ……礼ダ。 受ケトルガイイ。 ────動ケェェェ!!」
??「────ゴォガァァァァッ!!」
「「「「「 ───────!! 」」」」」
夕立「あぁ──まだ轟沈してなかったっぽい! あはっ……嬉しいなぁ! もっと夕立と……遊んでくれるんだよねぇ!?」
ーー
戦艦棲姫が命令をすると───遠くで沈んでいた『16inch三連装砲』が、水面上に顔を出す。
轟沈したと思われていた16inch三連装砲は、夕立に轟沈されたと思われていたのだが、左側の首が破損を免れ未だに機能していた。 だが、戦艦棲姫の命令で隠し玉として、水面下に身体を沈め待機していたのだ。
そして、不知火に小声で呟く。
ーー
戦艦棲姫「………駆逐艦。 貴様ノ行動……実ニ……賞賛デキル行為。 駆逐艦ノ身デ……此処マデ……追イ詰メタノダカラナ? ダカラ………喜ベェ! ソンナオ前ニ………私カラ……活躍ヲ讃エ……全力デ……消滅サセテヤロウゥ!!」
不知火「………う、嬉しくも……何とも無いですね………」
ーー
戦艦棲姫は、傷だらけになった顔をニッと嗤い、不知火に顔を近付ける。 不知火は、必死に戦艦棲姫の手首を両手で掴み、首を絞められないように支える。 不知火の身体は宙吊りにされて、下手な動きができないのだ。
仲間の艦隊達も、不知火を救援したいと焦燥感に駆られるものの、具体的な案が浮かばない。 下手な砲撃などすれば、不知火の命が失われるのが目に見えている。
それに、砲撃、魚雷……どの武器も火薬を使用するので、周囲を巻き込む結果になる。 戦艦棲姫に上手く弾着しても、その余波が戦闘で著しく大破状態の不知火に被るのは必至。 助けるつもりが、止めを刺す事になりかねない!
ーー
貂蝉「まあっ! 私とのぉ目眩く(めくるめく)再戦は果たさなくてもいいのぉ? 私は何時でも戦闘態勢準備済みなのにぃ! 下着だってぇ、ちょっと派手な勝負下着なのよぉん!?」
戦艦棲姫「サ……再戦ハ臨ムトコロ………。 シカシ……ドウ見テモ……私ガ不利デハナイカァ? ソレデハ……意味ガ無イダロウ。 ナラバ………コイツヲ拿捕シテ艤装ヲ残ス。 何カスレバ……艤装ニ命令シテ……砲撃スルゾ………?」
吹雪「ひ、卑怯です! そんな事、許される訳ぇ───」
戦艦棲姫「コレハ……戦争。 騙シ騙サレ……互イガ有利ナ……立チ位置ヲ定メルノダ! 卑怯ナドト……宣ウ言葉ハ……弱者ノ戯言ニ過ギナイ! 」
吹雪「─────!?」
ーー
無論……戦艦棲姫に不知火を助ける考えなど無い。 保険として連れていくが、有利になれば……間違いなく不知火に手を掛ける気でいる。
しかも、16inch三連装砲を残して行くというのは、洛陽を人質にする意味もある。
ーー
貂蝉「せっ、せっかくぅ~お気に入りの下着に代えたのにぃ……酷い、酷いわぁぁぁん!!」
吹雪「そ、そんな事より──『そんなことぉおおおっ?』──た、確かに大事ですけど! 不知火さんを救うのが、何よりも優先事項だと思います!」
貂蝉「吹雪ちゃんまでぇ───貂蝉、泣いちゃうんだからぁぁぁ!!」
ーー
そん中、一人霧島の衣装を被った貂蝉が、吹雪を問い詰める。 皆が皆、この人ならばと期待するが、何やら簡単に退けられた。 貂蝉が懐から白いハンカチを取り出すと、口に一片を含み両手で下方に引っ張り悔しがる。
多くの艦娘から白い目で睨まれるが、貂蝉は全く動ぜず。
ハンカチを口から離すと、悔し涙を拭いてからクルクルと丸めて……戦艦棲姫へ投げつけた。
戦艦棲姫は、その行動を嗤いながら見ていたが、そのハンカチに意外な勢いがあるのが見て取れた。 そして、丸まっていたハンカチが開くと……『マイク』が一つ……転がり、戦艦棲姫の足下に落ちて水面下へ消えた。
ーー
戦艦棲姫「何ヲスルカト……思エバ──『ズゴッ!』───ガァアアアアアアッッッ!?!?」
不知火「う、うわぁぁぁ!! ───ゴホッ、ゴホッ!!」バシャン!
ーー
皆が一斉に視線を集めれば、不知火を掴んだまま………戦艦棲姫の顔が天に向いている。 いや、目の前の水面下から突き上がった『何か』により、顎を打ち上げれられ、そのような姿勢になったと気付く。
戦艦棲姫は、急に現れた『丸太』と共に………後ろへ倒れた。
不知火は、急に首から手を離され驚愕の顔で叫び、水面上に落とされて尻餅を着いたまま咳き込んだ。
ーー
イク「龍驤、貂蝉ちゃん──イクねぇ、上手く当てたのぉ! ほらほらぁ!」
貂蝉「まあ、ほんとぅ! イクちゃんて百発百中なのねぇん! 凄い、凄いわぁぁん!!」
龍驤「イク──早う! 不知火を連れて此方へっ!!」
イク「分かったなの! 不知火ちゃん、イクと一緒に此方へ行くのぉ!」
不知火「わ、わかり──『ほらぁ、イクの胸に手を回すのぉ』──えっ?」
イク「不知火ちゃん……身体が傷だらけで可哀相なの。 イクに掴まって移動すれば──直ぐ到着なのね!」
不知火「………………………はい」
ーー
こうして、不知火は無事に救出された。
因みにイクが行ったのは、水面上で浮いていた約1㍍程の『木の丸太』を川底まで持っていき待機。 『ある合図』と共に丸太を立てて、浮力で戦艦棲姫に衝突させた。
ーー
龍驤「ウチが万が一に備えて、イクに任せた行動……よう分かったなぁ?」
貂蝉「うふっ! 私もねぇ~イクちゃんなら隠密性も優れているから、お願いしようと思っていたのぉよ? そうしたらぁ……龍驤ちゃんと仲良く話しているからぁん! だ・か・らぁ……私もノってみたのぉ!」
龍驤「ああ………成る程。 貂蝉はんも………イクに頼もう思ってたんかい。 水面下ならぁ………隠すの都合ええもんな? だけど、納得いかへんのは……あのマイクを放ったのは何でやぁ? あれで、イクは攻撃を起こしたってぇ?」
貂蝉「それはねぇ……明石ちゃんに頼んでぇ……『水中スピーカー』を作って貰ったのよ! 感度も良いからぁ周りの声もバッチリ丸聞こえなのよぉん!」
ーー
貂蝉は、戦艦棲姫達が戦っている間に、マイクで策の内容をイクに話していた。 勿論、龍驤にも説明済み。 ただ、あまり広げると雰囲気でバレる可能性もあるため二隻だけ話す事になったのは仕方がない事。
事情を後で知った愛宕達は、後で何度も謝る事になるが……それは後の話。
満身創痍の不知火は、無事に皆の元に戻った。
ーー
不知火「す、すいません………皆に御迷惑を掛けて。 不知火の落ち度……ですね。 司令に会わす顔が………」
愛宕「もうっ………何を言っているのよ~。 提督が何を一番嫌がり、何を一番喜ぶか……理解できるでしょう? 今の不知火ちゃんの様子を見れば……大喜びするのは間違いないわよぉ~!」
不知火「………………でしたら………嬉しいです……」
ーー
こうして、戦艦棲姫は───轟沈?の憂き目にあった。
そして───
ーー
漣「おぉーい! 軽巡棲鬼、第七駆逐隊筆頭『漣』が討ち取ったりぃ!」
曙「アンタ一人で戦った訳じゃないんでしょ!? 手柄を独り占めするんじゃないわよっ!!」
朧「二人共、騒ぎ過ぎ! あんまり騒ぐと……この『子』が起きちゃう!」
漣「うぅぅ~~。 ま、誠に遺憾であります………」
曙「ア、アンタねぇ───ご、ごめん。 反省してます………」
??「………………………ZZZZZ」
潮「──第七駆逐隊、無事に任務完了! 怪我も少なく無事ですっ!!」
磯風「任務完了だ。 周りの被害報告を纏めたら……すぐに司令の傍に戻ろう。 皆も結果を心待ちしている」
ーー
軽巡棲鬼を轟沈させた第七駆逐隊も、洛水に合流。
互いに無事と勝利を喜び合う艦娘達。
あれだけの大敵を、支援艦隊の援助があったといえど、勝利を得られた事は大きい。 貂蝉も己の活躍する出番が無く、かなり寂しがるかと思えばそうでも無い。
本来の目的は艦娘達のレベル上げ。 管理者が戦って勝利するのは、世界の流れに関わる部分。 介入は少なくしなければならなかったからだ。
轟沈する者が居なく、全員無事。 結果的には良かったが……彼女達は重大な事を忘れていた。
───もう一隻の敵艦『重巡棲姫』の存在。
あれからしばらくして───艦娘達が気付いた時は、倒れていた戦艦棲姫、艤装の姿が……跡片も無く消えていた。 ただ、その場所には、洛水の流れにより………何時もの静かな様子を見せつけるだけだったのである。
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あとがき
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
今回は更新が遅くなり申し訳ありません。
病気………じゃなく、他のサイトで小説を読み更け遅くなりました。 書き方とか勉強になるんじゃないかなと、思いまして。
そうしましたら、面白い為読み更けてこうなりました。
『春だったのに……いつの間にか秋の風を感じるようになったよ』……そんな具合です。 今度は、遅れる時に掲示したいと思います。
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遅くなりました。 その分、掲載内容も二倍ありますので、楽しんでください。 都合により、五月連休中に更新します。