オラクルベリーの街で大人しくなった魔物達と暮らしているモンスター爺さん。
彼がかつて魔物の邪気を抑える術を学んだという人物、彼は名の人の名をこう呼んだ。
《マーサ》と……
「マ、マーサ…。その人の名はマーサと言ったのか!?」
「あ、ああ、そうじゃがお主はマーサ様を知って居るのか?」
「…死んだ親父から聞いたんだ。俺の母親の名前はマーサだと、世界の何処かで生きている母、マーサを探し出してくれと」
「何じゃと!どう言う事なんじゃ、詳しく聞かせてくれい!」
慌てふためいて聞いて来る爺さんにタダオはこれまでの事を説明していく。
幼い頃から父と一緒に母の手掛かりを探して旅をしていた事、父の最期の願いが母を探し出して欲しいと言う事を。
「な、何と…マーサ様が行方知れずとは、そんな事があったのか」
説明が終わると爺さんは頭を抱え込みながら椅子に腰掛ける。
孫ほどの年の差があるとしても、マーサは敬愛すべき師であるのだからその落胆は如何程(いかほど)の物であろうか。
「親父は俺に余計な心配をかけさせまいとしたんだろうな、幼い頃は母さんは居ないと教えられて来た。だからこそ、今わの際に母さんの事を俺に託したんだ」
「タダオだけじゃない、血の繋がりは無いがパパスさんは俺をもう一人の息子と呼んでくれた。託されたのは俺も同じだ」
「キョウヤ…、サンキュな」
そんな二人を見た爺さんは俯いていた顔を上げ、タダオに語り掛ける。
「ならばワシも力を貸そう。マーサ様のお子と言うのならお主にもマーサ様と同じ力がある筈じゃ。魔物達を支配する魔王の波動を打ち消す力が」
「魔王の波動を打ち消す力…。俺にそんな力が」
「なればこそ、魔王の波動に染まっていなかったとは言え魔物達と心を通わす事が出来たのじゃ」
そう言いながら爺さんは壁にあるスイッチを動かすと隠し扉が開き、その中へと進んで行くのでタダオ達もその後へと続く。
「何処へ行くんだ?」
「この先には魔王の波動に染まり、凶暴化した魔物が居る。闘技場から逃げ出したんじゃろう傷だらけじゃったのでな、ワシが治療をしてやったんじゃが暴れるばかりでちっとも懐いてくれんのじゃよ。じゃが、お主ならば浄化出来る筈じゃ、マーサ様の血を受け継ぐと言うのが真ならばな」
「でも、どうやれば良いんだ?俺には分からんぞ」
「マーサ様が仰るには魔物と重なっている黒い濁りを切り裂く感じじゃと言う事じゃ。残念ながらワシにはその濁りが見えなかったからそれを成す事は出来なんだがな」
「なら、タダオがその濁りとやらを切る事が出来れば全ての魔物を魔王の波動とやらから開放出来るって事か」
「生憎じゃがそう上手くはいかんじゃろうな。マーサ様のお力でも全ての魔物を救う事は出来ぬと嘆いて居られたからの。この先に隔離しておる魔物ももしやしたら手遅れかも知れぬ」
そして通路の際奥にある扉を開くと其処には牢の中から鋭い視線を放つ小型のドラゴン族《ドラゴンキッズ》が此方を威嚇していた。
「どうじゃ?黒い濁りは見えるかの」
「…ああ、アイツの体に纏わり付く様な感じで見えるぞ」
「ならば、あ奴の体では無くその濁りを攻撃するんじゃ。濁りを消し去る事が出来れば浄化は成功する筈じゃ」
爺さんは銅の剣を渡し、タダオは頷きながらそれを受け取る。
「すまんな。ワシは戦いには疎いのでこんな物しか無いんじゃ」
「いや、かえって丁度良い」
あまり強い武器だと加減が難しいと言う事なのだろう、銅の剣を掴むと牢に近づいて行き、開かれるとドラゴンキッズは脇目も振らずに襲い掛かって行く。
『ガアァァーーーーッ!』
「おっと、そこだ!」
『グアァッ!』
初撃をかわすとタダオは剣を振り下ろし背中から切り付けるとその体には僅かな傷しか付いてはいなかったがタダオの顔には笑みが浮かんでいた。
どうやら、濁りを削り落とす事に成功したらしい。
「どうじゃ?」
「ああ、僅かだが黒い濁りが減っている。この調子ならあと数撃で浄化出来そうだ」
『シャアァーーーー!』
「良し、来い!その濁りを削り取ってやる」
タダオに飛び掛るドラゴンキッズ、その攻撃を危なげなくかわし、逆に切り付けて行くと徐々にその動きは鈍くなって行く。
傷自体は付いては行くが攻撃の割にはそれほど酷い傷では無い、恐らく体に纏わり付く濁りが逆に攻撃の威力を引き受ける鎧になっている様だ。
「ク、クオォ~~ン」
ドラゴンキッズの動きが止まったかと思うと、まるで助けを求めるかの様に弱々しく吼える。
「我慢しろよ、今助けてやるからな」
タダオはドラゴンキッズの頬を撫でてやりながら最後の一閃を繰り出すと、その体から黒い靄の様な物が吹き出たかと思うと赤い瞳は青く変わった。
「やった…のかタダオ?」
「お、おお、おおぉ~~。み、見事、見事じゃ。まさしくあの時と同じ、魔物の心をも癒す浄化の力。マーサ様と同じ力じゃ」
浄化されたドラゴンキッズはゆっくりとタダオに近づき、その足に頬を摺り寄せ、タダオもそんな彼を抱きかかえる。
感極まったのか、爺さんは大粒の涙を流しながらその光景に見入っていた。
タダオはタダオで浄化したドラゴンキッズを抱きながら自分の手を見つめていた。
「クオン、クオン」
「さっきまで強暴だった魔物をこんなにも大人しくさせるとはな。まったく、大した奴だよお前は」
「自分でも驚いているよ、俺にこんな力があるなんて」
「さてと、まずは名付けじゃ。そ奴に名前を付けてやるんじゃ」
「名付け?」
「ただ、浄化しただけでは何れ再び魔王の波動に取り込まれてしまうじゃろう。じゃが、新たな名を付けてやる事でお主とこ奴の間には絆が生まれ、そしてその絆は悪しき波動から守ってくれるじゃろう」
タダオはそう言われてドラゴンキッズを見つめると名付けを待っているのだろうか、期待を込めた瞳で見つめ返して来る。
「どんな名前にするんだ?子供のドラゴンだからコドランなんて良いんじゃないか?」
「…キョウヤ、子供の名付けはミユキに任せろよ。絶対にな」
「ならお前はどんな名前を付けるつもりなんだ?」
「そうだな。トールってのはどうだ?」
「クオーン、クオーン♪」
「ははは、気に入った様じゃな。これから先も浄化した魔物には名付けの儀式をする事を忘れるでないぞ」
こうして浄化能力を身に付けたタダオは魔物使いとしての新たなる一歩を踏み出したのである。
=冒険の書に記録します=
(`・ω・)何とか完成、難産でした。
まあ、と言う訳で青年編での最初の仲間モンスターはドラゴンキッズです。
名前はゲーム本編から引っ張って来たシーザーでしたがトールに変更しました。
理由は……、言わなくても解るよNE☆
次回は馬車入手イベントになりまね、今度はなるべく早くうp出来る様にがんばりまっしょい。
後、今回から次回予告は諸事情により封印します。
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スクエア・エニックスのRPGゲーム「ドラゴンクエストⅤ~天空の花嫁~」を独自設定の上、キャラクターを他の作品のキャラをコラボさせた話です。
それが駄目だという方にはお勧めできません。
コラボするキャラクター
リュカ=タダオ(GS美神・横島忠夫)
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