No.842713

魔法少女リリカルなのは~原作介入する気は無かったのに~ 第百五十二話 完成。最後のナンバーズ

神様の手違いで死んでしまい、リリカルなのはの世界に転生した主人公。原作介入をする気は無く、平穏な毎日を過ごしていたがある日、家の前で倒れているマテリアル&ユーリを発見する。彼女達を助けた主人公は家族として四人を迎え入れ一緒に過ごすようになった。それから一年以上が過ぎ小学五年生になった主人公。マテリアル&ユーリも学校に通い始め「これからも家族全員で平和に過ごせますように」と願っていた矢先に原作キャラ達と関わり始め、主人公も望まないのに原作に関わっていく…。

2016-04-16 20:59:59 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:8891   閲覧ユーザー数:8266

 いえーい、2年生になっちゃったよ。

 今日は始業式。

 俺こと長谷川勇紀は現在新しいクラスの適当な席に座り頬杖をついていた。

 

 「まあ、こうなる可能性は十分予想してたけどね」

 

 目の前でやれやれと言った感じで言葉を発する幼馴染み、杉村謙介の言葉に言い返す事はしなかった。

 またまた同じクラスという付き合いの記録を更新してしまったよ。

 もう俺、コイツと来年も同じクラスになる気がしてならない。

 

 「けど他の奴等とは別れちまったよな」

 

 そう言うのは高校からの付き合いで去年同じクラスだった宮本。

 俺、謙介、宮本の3人以外に交友の深い連中はいなかったりする。

 

 「他は他で結構固まってたよな確か」

 

 俺は掲示板前で見た時の事を思い出していた。

 3クラスある2年生で俺達はB組。

 A組にはアリサ、すずか、テレサ、アミタ、キリエといった俺呼称で『リリなの+とらハ』組。

 B組は今言ったように俺、謙介、宮本、の3人。

 C組は直博、遥、葵、優人、野井原、九崎、委員長、飛鈴ちゃん、泰三、モチョッピィといった俺呼称で『ツインエンジェル+鬼斬り役御一行様』組。

 ま、直博、九崎、委員長、泰三、モチョッピィは一般人だけど。

 

 「今年のクラスには華が無いのが残念だね」

 

 まあ去年は同学年の綺麗所がほとんど集まっていたからなぁ。

 

 「ふふん、そうでもないぞ謙介よ。俺はクラス割りをキチンと確認したからな。このクラスにも華はいるんだぜ」

 

 んあ?

 そうだったのか?

 

 「今はまだ来てないみたいだが、去年は別のクラスだった女子で今年は同じクラスだからな」

 

 宮本が教室中を見渡してから言う。

 まだクラスに来てるのは俺達含めて10人にも満たない。てかまだクラスメイトが揃っていないのに華が無いと決めつけるのは如何なものかと思う。

 

 「今年も楽しみだぜイヤオオおべえっ!!!?」

 

 宮本が叫ぶ前に鳩尾に強烈なパンチを叩き込む。

 

 「見事に決まったね」

 

 「去年同じクラスだった付き合いから、コイツを黙らせるのにはコレが一番だと理解したからな」

 

 「それは納得だよ。しかし叫び始めた瞬間に一撃食らわすとは……対応速度が上がってないかい?」

 

 「叫ばれたら迷惑だからな。叩き込む一撃は早い方が良い」

 

 悶絶する宮本を俺と謙介は見下ろしながら会話する。

 このケツアゴめ。いい加減叫ぶクセをどうにかしろってんだ。

 俺は今朝の新聞の間に挟まってたスーパーのチラシを鞄から取り出し、お買い得な食材を探す。

 

 「相変わらず主夫やってるね君は」

 

 「否定はしねぇ」

 

 料理は最早、俺の日常の1つに入るのだ。

 メガーヌさんが昨日作ったのは和食だったから俺は洋食か中華でいこうかな。

 俺はチラシを眺めながら今日の献立を決めていくのだった………。

 

 

 

 始業式が終わり、HRも終わった今、俺は他のクラスの皆の様子を見に行く事にした。

 まずはA組。

 既に教室には半数以上の生徒が姿を消している。HRが終わって即帰宅したんだろう。

 顔見知りのメンバーは……全員いるな。

 席同士が近いのかどうかは知らんが皆固まって雑談していた。

 

 「ういーッス。新しいクラスはどんな感じよ?」

 

 俺はA組の教室に入って皆の元に行き、早速聞いてみる。

 

 「とりあえずクラス委員長はアリサに決定ね」

 

 「え?もう決めたのか?」

 

 テレサの返答に驚きを隠せない。

 随分早いなオイ。今日はHRぐらいで、そういうのって明日以降に決めるもんじゃね?

 

 「アリサちゃんがHR中に騒がしかったクラスの皆を静めただけだったんだけどね」

 

 「そのリーダーシップに惹かれたのか満場一致で決まったわよん」

 

 すずかとキリエの言葉を聞いて成る程と俺は頷く。

 

 「相変わらず皆の前に立つのが向いてるなあ、アリサは」

 

 「いやいや、私は普通に『先生が連絡事項言おうとしてるんだから少し静かにしなさいよ』って注意しただけで特別な事なんてしてないんだけど」

 

 「その一言で皆を黙らせたアリサさんは凄いですよ。先生も感激してましたし」

 

 アリサは否定するがアミタは褒め称える。

 どうやらアリサのリーダーシップは如何無く発揮されてるご様子で。

 

 「勇紀君のクラスはどうだったの?」

 

 「ウチは至って普通で平和なクラスだ」

 

 宮本が叫ぶ前に俺が落とすぐらいしか目立った出来事は無かったな。

 

 「新しいクラスの女の子に色目使ったり品定めしたりしてないでしょうね?」

 

 「今の発言でお前の中での俺の評価を垣間見た様な気がする」

 

 ジト目で言うアリサから飛び出た言葉が俺の心に突き刺さったよ。

 それやってたの謙介と宮本だよ。

 

 「嘘はいけないよ嘘は」

 

 「何奴!!?」

 

 ……って聞くまでも無いよね。メッチャ聞き覚えある声色だし。

 A組の教室の出入口の前には謙介が腕を組んで立っていた。

 

 「クラスメイト達(←女子限定)を確認してる間、僕は見た。勇紀に熱い視線(ラブコール)を送る2人の女子の姿を!!」

 

 「「「「「熱い視線(ラブコール)!?」」」」」

 

 アリサ達はその単語に食い付くが

 

 「おい謙介。俺からすればアレは熱い視線(ラブコール)なんてもんじゃないぞ」

 

 クラスのHR時間帯に自己紹介と席替えをした訳だが、俺の座席は最前列。

 そして件の視線2つ分を俺の背中に突き刺す様に送ってたのには気付いていたが、アレは俺自身の実力を測っているかのような含みのある視線だった。

 決して異性としてドキドキ意識してくれてる様なものじゃなかったぞ。

 

 「(俺からすればケンカふっ掛かられてこないかが不安だ)」

 

 出来るだけ関わる、又は関わられる事がない様に細心の注意を払っておこう。

 

 「「「「「む~…」」」」」

 

 「…君等はアレかね?謙介の戯言を真に受けてるのかね?」

 

 唸ってジト目で見てくる5人。俺は溜め息を吐かざるを得ない。

 

 「背後から刺されない様に気を付けなよ勇紀」

 

 背後から簡単に刺される様な事は無いと思う。見聞色の覇気とか天目反射(サードアイ)があるからな。

 とりあえずA組についてはアリサがクラス委員長になったというぐらいで比較的平和な様だ。

 

 「んじゃ俺はC組にも顔出してくっから」

 

 次は優人達のいるクラス。

 戦力が過剰に集められていると言えるクラスだ。

 ぶっちゃけ体育祭とか有利過ぎるだろうと思う。

 

 「お邪魔しまーす」

 

 C組もA組同様に半数以上の生徒の姿はもう無くなっていたが、顔見知りの面々はまだ全員残っていた。

 

 「ふ、ふふふふふ……」

 

 その中でどんよりと暗いオーラを背に纏い、明らかに落ち込んでいる委員長がいた。

 ……ち、近寄り辛ぁ~~。

 俺は委員長を迂回する様に遠回りで優人の席にまで移動する。

 

 「なあ優人……委員長に何があったん?」

 

 「…それは……だな」

 

 何か凄く言い辛そうな優人。

 

 「ねえ……長谷川くぅん……」

 

 「ひっ!?」

 

 突然肩を掴まれ、血の底から響く様な声で背後から語りかけてきたのは委員長。

 馬鹿な!?俺が背後を取られただと!?

 ついい数十秒前には『背後から刺される様な……』と思ってたのに、こうも簡単に背後を取られた。

 それだけ今の委員長は異常な存在だという事か!!

 そんな俺の心中を知らない委員長は俺に喋りかける。

 

 「長谷川君は私の名前(・・・・)…ちゃ~んと知ってるわよねぇ?」

 

 「……………………は?」

 

 な・ま・え?

 名前?委員長の?

 

 「そう……私の名字氏名(フルネーム)、知ってるわよねぇ?」

 

 背後のオーラは最早暗黒闘気と言って差し支えないかもしれない。

 今の委員長なら超圧縮された暗黒闘気を放てるんじゃなかろうか?

 

 「えと……何でそんな事を聞くのでしょうか?」

 

 「だって…皆私の名前を答えられなかったんだもん」

 

 「はあ?マジで?」

 

 俺が優人や遥達、顔見知りの面々に顔を向けるが、皆静かに顔を逸らす。

 

 「悲しい……悲しいわぁ……ふ、ふふふふ……」

 

 …徐々にドルマゲス化して…いや、ラプソーンに精神を乗っ取られていくという表現の方が正しいか。

 いずれにせよ、名前を答えなきゃ俺のみが物理的に痛い思いをする事になりそうだ。

 

 「委員長の名字氏名(フルネーム)ねぇ。『嶋村(しまむら)(ゆう)』だろ?」

 

 「っ!!」

 

 クワッと眼鏡越しに目を大きく開かせる委員長。

 え?まさか間違ってた?

 一瞬やっちまったかと思ったがそれは杞憂に終わる。

 

 「貴方は神か!!」

 

 委員長は俺の片手を自身の両手でガシッと掴み、そんな事を言った。

 名前を正しく言えただけで神扱いって…。

 

 「皆ちゃんと聞いたわよね!私の名字氏名(フルネーム)を!!私にもちゃんと名前はあるんだからね!!」

 

 顔を逸らした面々に対し、大々的に宣言する委員長。

 皆は声を揃え、『ゴメンなさい』と言って委員長に対し、その場でDO☆GE☆ZAをかますのだった………。

 

 

 

 「いやー…委員長マジで怖かったわー」

 

 「そうね…」

 

 「飛鈴ちゃん達も名前ぐらいちゃんと覚えてあげないとイカンよ」

 

 「分かってるわよ」

 

 学校からの帰宅中。

 俺と飛鈴ちゃんは肩を並べて歩いている。

 思い返せば飛鈴ちゃんと2人っきりっていうのは今まで無かったなぁ。

 

 「てかさぁ、飛鈴ちゃんが風芽丘に残ったのは意外なんだけど」

 

 飛白さんLOVE(シスコン)の飛鈴ちゃんにとっちゃ、風芽丘を卒業した飛白さんに着いて自分もてっきり学校辞めるもんだと思ってたけど。

 

 「最低でも高校は卒業するわよ。一応世間体ってもんがある訳だし」

 

 確かに最低でも高校は出ておかないと今の時代、就職に苦労するかんねー。

 飛鈴ちゃんの場合、飛白さんみたいに鬼斬り役っぽい仕事するだろうから学歴がどうであれあんま就活は関係無さそうだけど。

 

 「けど飛白さん、今はさざなみ寮にいないじゃん(・・・・・・・・・・・・)

 

 「アンタが寮内に用意した転送ポートだったかしら?アレがあるからいつでも各務森神社に戻って姉様に逢えるから問題無いわよ」

 

 そう…さざなみ寮には中越の各務森神社まで跳躍出来る転送ポートを用意した。

 理由?『交通費除外』というスゲー私的な理由だけど。

 勿論向こうの転送ポートには一般人が迷い込んでしまわない様に人払いの結界を飛白さん自身が霊力で張り、俺が魔力を流さないと転移出来ない様にもしてる。

 事前に転移が必要なら飛白さんが電話で連絡してくれれば良いという訳である。

 

 「飛白姉様からは『コチラの事は気にせず勉学に励みなさい』とも言われてるしね。それに猫の事もあるし」

 

 猫…野井原かぁ。

 あ、野井原と言えば…

 

 「飛鈴ちゃん達って優人と敵対したんでしょ?」

 

 そう……俺達が2年になる前の春休み中、優人がどうやら現代に生きる一部の鬼斬り役の面々と敵対したって話だ。

 

 「……何で知ってんのよ?」

 

 「情報源(ソース)なんて意外なとこにあるもんだぜ」

 

 「……あの末席め」

 

 飛鈴ちゃんは情報源(ソース)に思い至った様だ。

 ま、正解だけどね。

 別に聞きたくて聞いた訳じゃない。くえすと電話での通話中、彼女の方から話題として漏れただけの事。

 C組での委員長との一件の後、それとなく優人と飛鈴ちゃんの様子を窺った時には確信したし。

 以前から野井原と飛鈴ちゃんは互いに距離を置いている節があったけど、優人とは野井原程置いてはいなかった。

 けど今日見た限りでは視線も会話も交わさず、僅かな敵意のみが向けられていた。

 

 「野井原の件に関して焦り過ぎなんじゃないの?」

 

 クリスマスの時みたいな本性(かお)がまた出た訳でもあるまいに。

 

 「アレの中に眠る闇は相当ヤバいのよ。そう判断したからこそ姉様もアイジさんもあの時に手を打とうとしたのに」

 

 「そのアイジさんとやらが誰かは知らんけど、優人に何も言わず、処理しようとしたからそういう結果になったんじゃねえの?」

 

 ま、優人に話した所で首を縦には振らなかっただろうけど。

 

 「むー…アンタはどっちの味方なのよ?駄猫の危険性を理解してるくせにみそっかすの肩ばっかもって」

 

 「およ?飛鈴ちゃん、もしかして俺が優人に肩入れしてるからヤキモチ妬いちゃってる?」

 

 ゲシッ!!

 

 「蹴るわよ!」

 

 「蹴ったよね!?もう蹴ったよね!?」

 

 「今のは蹴ってないわ!足を当てただけよ!」

 

 何て言い草だろうか。

 やはり飛鈴ちゃんにツンデレのデレは無いのかもしれない。

 

 「それより私の問いに答えなさいよ。アンタはどっち?」

 

 「強いて言うなら俺はどっちつかずの中立なんだけど」

 

 優人は親友。飛白さんと飛鈴ちゃんは昔馴染み。

 どっちにも手を貸す気はあるけど、基本的には傍観。

 

 「くえすにも九尾と酒呑の討伐を依頼されたけど、民間人に余程の被害が出ない限りは手を貸さないって言っちゃったし」

 

 くえすは怒ってたけどね。けど俺も管理局員としての仕事もある以上、常に手を貸せるとは限らないんだよ。

 俺が地球上にいて尚且つ連絡が取れる状況ならすぐに駆けつける事も出来るけど、もし地球上にいなけりゃハッキリ言って無理の可能性が高い。

 

 「てかさぁ…普通に考えて『他にも頼れる戦力あるからソッチ使えよ』と俺は言いたいのですよ」

 

 何なら俺、仲介役引き受けようか?

 バスカービル武偵事務所の面々とか神咲家とか。

 あ、神咲家の口添えはいらんか。さざなみ寮にいるし。

 妖関係じゃないけど警備会社アイギスっていう手もあるよ。『妙さん』としてくるか『修史さん』としてくるかは知らんけど………。

 

 

 

 「フハハハハハハ!!!!」

 

 「……………………」

 

 お隣さんのジェレミアは超ご機嫌だった。

 

 「よく来てくれたね勇紀君!フハハハハハハハハハ!!!!」

 

 「こんにちは勇紀君」

 

 「……ウーノさん、コレは一体?」

 

 俺はテンションがUPUPなジェレミアの隣にいるウーノさんに説明を求める。

 飛鈴ちゃんと途中で別れた直後、俺の携帯にメールが届いた。『我が家に来られたし』という短い一文で。

 

 「実は遂に完成したんですよ。私達ナンバーズの最後の3体が」

 

 「マジッスか!?」

 

 予想よりも早いなオイ!

 原作でも完成時期の明確な描写は無いが、『Stsが始まる前には稼働してたんじゃ』と推察しつつ、完成するまでまだ掛かるかもと思ってたのに。

 

 「そうなのだよ!!これで私の睡眠時間も増えるというものだ!!」

 

 …睡眠時間削ってまでナンバーズの方を優先してたのか。

 

 「それで今日呼んだのは君を紹介するためさ。3人はリビングで待たせているよ!!是非会ってやってくれ!!」

 

 「じゃあ、お邪魔します」

 

 ジェレミアとウーノさんにリビングへ案内される。

 部屋の中のソファーには2人の言う通り、3人の少女が座っていた…………のだが

 

 「じゃあ挨拶しなさい。『セッテ』『オットー』『ディード』」

 

 ジェレミアに促され、3人は立ち上がって俺に挨拶してくれる。

 

 「初めましてドクターの恩人さん。僕はオットーです」

 

 「ディードと申します。オットーとは双子の関係にあたります」

 

 男に見えなくもない中性的な容姿の子と、ロングヘアーでおしとやかな雰囲気を持つスタイル抜群の子。

 そして…

 

 「……………………」

 

 言葉を発さずにペコリと頭を下げるキリエの様な桃色長髪の小学生程の年齢の子(・・・・・・・・・)

 …………え?

 

 「セッテはあまり喋る子じゃなくてね。無口系というやつだよ」

 

 ジェレミアが補足してくれた。

 

 「(あるぇ~~~~~~~!!!?)」

 

 俺は表情にこそ出さないものの内心で驚愕していた。

 いやいやいやいやいや!!!

 

 「(このロリッ娘がセッテ!?嘘でしょ!?)」

 

 俺の知ってる原作知識の年齢層が違い過ぎるじゃねえか!!

 ルーテシアと同年代ぐらいじゃねえのか!?

 

 「(まさかコレも原作ブレイク的な影響の結果か!?)」

 

 この予想外な展開。大声で叫ばなかっただけでも自分を褒めてやりたい。

 

 「今日はナンバーズの完成祝いと他の娘達の進級祝いも兼ねてパーッと宴会でもしようと思うのだが、勇紀君も参加するかね?」

 

 「俺も?」

 

 「うむ!そうだ!この際グランツ君達や君の家族も交えてバーベキューでもしようじゃないか!!」

 

 「……お前、バーベキュー好きだねぇ」

 

 フローリアン家やゴットバルト家も交えての夕食は偶にやるけど、その時は大抵バーベキューである。

 

 「グランツ君には私から連絡を入れておこうじゃないか。めでたいめでたいフハハハハハハ!!!」

 

 笑いながらリビングを出て行くジェレミアを俺達は黙って見送る。

 

 「…あんなドクターですみません」

 

 そしてウーノさんが代わりに謝罪。

 

 「いえいえ」

 

 ナンバーズの長女にしてお母さん的存在のウーノさん。この人必死にフォローしてんだろうなぁ。

 

 「ウチの連中も皆バーベキュー好きですし、折角だから我が家の新しい同居人も紹介しときますよ」

 

 よく考えりゃまだ両隣に明夏羽と沙砂の事紹介してなかったから丁度良い機会だ。

 

 「ただその新入りの片割れはメッチャ食うヤツなんですけど」

 

 「そうですか。じゃあお肉や野菜を大量に買いにいかないといけませんね」

 

 ウーノさんと早速買いにいく物を相談し、決め始める。

 

 「ああ、そうだウーノ。コレを」

 

 突然リビングにジェレミアが戻ってきた。両手でダンボール箱を持ち運んで。

 

 「例の店にコレを持って行きたいので台車の用意をお願い出来ないかね?」

 

 「台車ですね。後で玄関に置いておきます」

 

 「頼むよ」

 

 リビング隅にダンボール箱を置く。

 

 「……………………」

 

 何が入ってるんだろうか?ちょい気になる。

 

 「気になるかね勇紀君」

 

 「まあね」

 

 「コレは私の手で作った男性専用の超強力な精力剤だよ」

 

 「……………………ん?」

 

 今また俺にとって予想外過ぎる返答がきたぞ。

 俺の目が点になってる間にジェレミアの白衣のポケットから透明な液体の入った小瓶が出される。

 

 「これがダンボール箱の中身さ。見た目は無色無臭の液体だが、コイツを数滴飲み物に混ぜて飲むとあら不思議。男性の抱える息子さんは24時間の間、性欲が湧かずとも萎え知らず(フルドライブ)絶倫状態(ブラスターモード)になるという精力剤なのさ」

 

 萎え知らず(フルドライブ)絶倫状態(ブラスターモード)が24時間維持されるだと!?

 そりゃスゲエ…スゲエけど……

 

 「何でそんなモン作ってんだよ」

 

 呆れざるを得ないじゃないか。

 

 「いやいや、私も引き篭もってばかりいないで何か家計の足しになる様な物でも作ろうとおもってね」

 

 その動機は良い事だと思うけど、だからって何で精力剤?

 

 「作るのが簡単だったから」

 

 …まあ戦闘機人を作る以上、遺伝子工学の知識は嫌でも必要になるだろうけど『遺伝子=精子』っていう結論は早計でしょ?

 髪の毛や血液からでも遺伝子の情報は入手出来んだからさぁ。

 

 「まあ、誰かに迷惑をかけてる訳でもないし良いじゃないか。既にこの精力剤『ヤリマクリ24(トゥエンティーフォー)』は特許を取ってアダルトショップで市販しているからね」

 

 「特許付きなの!?」

 

 しかも市販済み。……買うヤツいんのか?

 売れなきゃ赤字だろうに。

 

 「……勇紀君の思ってる事は大体想像つきますが、コレ作るのに材料費はほぼ0円に近いので売れなくともそこまで心配はしていません。ていうか実際売れてる様で利益が流れ込んで来てますから家計の足しにはなってますよ」

 

 「嘘っ!?」

 

 ウーノさんの補足を聞いて目を見開かずにはいられない。

 買うヤツいるんだ。

 てか材料費ほぼ0って一体何を使って調合してるんだ?

 

 「それとドクターは精力剤(ソレ)の調合や販売の許可を得るために薬剤師の資格も取得済みです」

 

 確かに資格なけりゃ違法になるけど精力剤(ソレ)の製造、販売のためだけに資格取るコイツは凄いのかアホなのか…。

 

 「…ちなみに女性が飲んだ場合の効果は?」

 

 我ながらアホな質問だとは思うが気になってしまったので聞いてみた。

 

 「さっき私は『男性用』と言ったから、答えなくても察せるとは思うのだが……しかし女性にも多少は効果が出る。男性が使用した時程じゃないけどね。女性が使えば少し強力な媚薬と言ったところかね」

 

 『男性用』だけど女性にも多少効果有り……か。

 俺から聞いておいて何だけど、誰かで試したのかな?

 

 「……実はウーノが以前、水と間違えて飲んでしまってね」

 

 「……………………////////」

 

 顔を赤くして俯くウーノさん。

 

 「数滴じゃなくて数口分……50ml程かな?飲んだ後は大変だったみたいだよ。何せ自室に籠もって効果が切れるまで只管はぶるあぁっ!?」

 

 ジェレミアが言い終える前にウーノさんのパンチが炸裂。

 …この人戦闘向きじゃなかった筈だよな?

 無駄な動作の無い綺麗なパンチだったぞ。

 

 「ドクター!!余計な事は言わなくていいです!!////////」

 

 ……ウーノさん、今のジェレミアにはその言葉届いてないと思いますよ。

 

 「勇紀君も変な詮索はしないで下さいね!!私はまだ誰にも抱かれてない清い身体ですから!!処女ですから!!////////」

 

 「アンタ相当テンパってるだろ!?」

 

 意図せずして『ウーノさんは処女』なんていう情報を得てしまった。

 

 「とと、とにかく今すぐに買い物に行きましょう!着替えてきますので少し待ってて下さい!!セッテ、オットー、ディード!貴女達も一緒に来なさい!!//////」

 

 「「はい」」

 

 「……………………」

 

 3人共頷き、ウーノさんも慌てる様に一体リビングを飛び出していった。

 ジェレミアの奴は反応無いけど意識はあるのかねぇ………。

 

 

 

 俺達はウーノさんが運転する車に乗って隣町のショッピングモールへやって来ていた。

 そこで思わぬヤツと会う事になった。

 

 「モブ、モブじゃねえか。何してんだよこんな所で」

 

 俺の事をモブと呼ぶのは1人しかいない。

 別の高校へ進学した銀髪オッドアイ、吉満英伸だ。

 西条はモブの前に『クソ』をつけるからな。

 

 「知り合いと買い物だ」

 

 「知り合い……(ブス)か?」

 

 「女だがブスとは言えねえから半分正解半分不正解だな」

 

 「そうか…まあ女物の服を売ってる服屋の前にいる時点で(ブス)が付き添いだって事を俺は見抜いたがな」

 

 吉満の言う様に現在俺達は食材を買う前に服屋に立ち寄っていた。

 理由は言わずもがな。セッテ、オットー、ディードの服を買うためだ。

 誕生したばかりの3人には服が無く、今着てるのは他の姉妹たちの服、つまり借り物だ。

 ウーノさんに引き連れられて店内で今試着したりして決めてる最中だと思われる。

 で、男の俺は店外で待機中。

 

 「つーか吉満こそ1人で買い物か?」

 

 「おうよ!これからとあるブツを買いに行くんだぜ」

 

 「とあるブツ?」

 

 コイツが興味を示す物があんのか?

 吉満は俺にだけ聞こえる様に顔を近付け、小声で言ってきた。

 

 「モブはここのショッピングモールにあるアダルトショップを知ってるか?」

 

 「ああ、場所だけなら」

 

 モール内の片隅にひっそりと営業してるよね。

 当たり前だが18歳未満と高校生は入店お断り。

 俺は18歳未満なので当然ながら入った事は無い。もし18歳以上になって高校を卒業したら一度は足を踏み入れてみたい場所である。

 

 「そこに今日再入荷されるブツがあってな。ソイツを買いに行くんだよ」

 

 「おい待て。お前自分の年齢ちゃんと覚えてる?」

 

 18歳未満だろうが。

 

 「問題ねえよ。あの店の店長はタカさんのハーレム要員の一員だからな。俺からすりゃムカつく事実だが」

 

 「タカさん?誰だそれ?」

 

 「何言ってんだよモブ。タカさんだよタカさん」

 

 「いや、本当に覚えが…」

 

 …待てよ。コイツが心底惚れてるのは1人しかいねえ。そしてあの人の名前は確か……

 

 「……阿部先生の事か?」

 

 「おうよ。俺はもう名字で呼ばず、名前で呼んでるんだぜ」

 

 どうやら吉満と阿部先生の仲は更に深くなっている様だ。

 

 「そんでタカさんからも連絡がいってる筈だから俺があの店に入って買い物しても問題はねえのよ」

 

 根回しはOKっつー事ですか。

 

 「…で、あの店で何買う気だよお前」

 

 「さっきも言ったが今日再入荷されるブツを買いに来たのよ。『ヤリマクリ24(トゥエンティーフォー)』っつー精力剤なんだけどよぉ」

 

 「……………………」

 

 ナンダロナー。スコシマエニキイタヨウナキガスルアイテムノナマエダナー。

 

 「コイツが凄えのなんのって。数滴飲み物に混ぜて飲んじまったら24時間アレが勃ちっ放しの出し放題になるっつー精力剤でな。効果が切れるまでの間、外出する際には認識阻害の魔法が必須になる程よ」

 

 …確かに勃つモン勃たせて街中歩いてたら公然猥褻罪確定もんだよな。

 

 「ま、数滴どころか丸々飲み干しちまったら24時間どころか最低1ヶ月は効果が持続するけどな」

 

 「……何でそんな事知ってんだよ」

 

 「試した事あるからに決まってんだろうが」

 

 まさかの体験談!?

 

 「本来なら精力剤なんかに頼らないでタカさんと肉欲と快楽に溺れてんだが、オリ主の俺もそこまで精力がねえんでな。アレを使わずにタカさんとヤリまくれる体力と精力をもつソウの奴が本当にムカつくぜ」

 

 また知らない人の名前っぽいの出てきたぞ。

 てかリリカルな原作にはもう関わる気無いくせに『オリ主』って自称は捨てる気無いんですね。

 それでこそ吉満というべきか。

 

 「…っとモブに愚痴ってもしゃーねえな。それに早く買いに行ってタカさんと家でイチャつきてえし、俺はここいらで失礼するぜ」

 

 「ああ、うん…ガンバ」

 

 「おう。また勉強やら料理教えてくれよモブ。じゃあな」

 

 当初の目的地に向かう吉満を見送って少ししてからウーノさん達が服屋から出てきた。

 

 「お待たせしました」

 

 ウーノさんのすぐ後ろにいる3人はそれぞれ紙袋を抱えていた。

 

 「すみません。ついでに下着とかも買い揃えておこうと思って選んでいたら時間が掛かってしまいました」

 

 「いえ……俺的には別に問題無いんで。もう他に買う物は無いんですか?日常品とか」

 

 「そうですねぇ…」

 

 「折角だし、今日揃えられる物は揃えておいた方が後々また来なくて済むッスよ」

 

 食材は最後に回しても良いだろう。

 

 「……では一通り見て回っても良いでしょうか?」

 

 俺は頷き、ウーノさんはセッテ、オットー、ディードの日常品を買うため、近くのATMで預金を追加で引き出して、それから皆でモール内を歩き回る。

 これは予想以上に荷物が多くなりそうなので、もしかしたら宝物庫を使用する事になるかもしれないな………。

 

 

 

 それから2週間程は平和に過ごしていたのだがある日、ミッドで起きた事件の事後処理のため俺は徹夜で現場指揮を行い、地上本部の執務室で報告書を書き終えて地球に戻ってきた。

 今日は週明けの月曜日。

 

 「うぅ……日曜日に事件が起きるとかツイてないわぁ」

 

 正直眠たくてたまらないがとりあえず家に帰ってシャワーを浴び、多少眠気を飛ばしてから朝食を食べて学校へ行く。

 授業中に寝てしまうかもしれんが、そん時はそん時だ。

 教室に着いて謙介、宮本とダベって予鈴が鳴って今日の学園生活の始まり。

 結局、授業中に眠るのは堪える事が出来、昼休み。

 もう昼食は抜いて仮眠するかと思ってた矢先だった。

 

 「勇紀はいるか?」

 

 教室の外から俺を呼ぶ声がした。

 声の主は優人。

 何か用だろうか?

 

 「どうした優人、教科書でも貸してほしいのか?」

 

 「……すまん。ちょっと俺に付き合ってくれないか?」

 

 そう言う優人の目は真剣なものだった。

 ふむ……何かあったのか。

 

 「OK」

 

 「ここじゃ何だから屋上で」

 

 俺は頷き、優人の後を着いて屋上に向かう。

 屋上の扉を開けた先には誰もいなかった。

 他人には聞かれたくないと思われる感じで優人は誘ってきたのでコイツは好都合。

 俺は単刀直入に優人に聞く。

 

 「で、俺に何の用なんだ?他人に聞かれたくないっていう事は鬼斬り役関連か?」

 

 「……………………」

 

 優人は俺に背を向けたまま何も語らない。

 

 「……違うのか?」

 

 「……………………」

 

 再び問うてみるがやはり返答が無い。

 

 「……何か言ってくれんと困るんだが」

 

 俺がそう言い、数十秒程の時を有してようやく優人はコッチを向く。

 

 「勇紀。気をしっかりもって聞いてくれ」

 

 「お、おう」

 

 その目はジッと俺を見つめ、決して逸らそうとしない。

 

 「実は……」

 

 そして優人は語り出す。

 それは俺が地球上にいなかった日曜日の出来事を。

 優人や九崎がいた遊園地に九尾と酒呑が姿を見せた事。

 委員長が九尾に操られていた事。

 その後、九尾と酒呑を追い掛け、優人と九崎の家がある高宮市で決戦。結果的に酒呑は消滅し、九尾にも勝つ事が出来た事。

 そして……

 

 「くえすが…………死んだ(・・・)?」

 

 鬼斬り役十二家の末席、神宮寺家の跡取りであるくえすが酒呑との戦いで命を落としたと言う現実を………。

 

 ~~あとがき~~

 

 セッテのみ、『なのはINNOCENT』の七緒スタイルでいきます。

 ナンバーズのロリボディがチンクだけというのがあまりにも可哀相なもので…。

 そして酒呑と九尾との対決も原作通りなのでカットします。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
5
6

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択