No.841021

英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク 改訂版

soranoさん

第100話

2016-04-06 00:23:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:718   閲覧ユーザー数:682

~アクシスピラー第四層・外~

 

「フフ……なるほど。これならば……上に進む資格があるかもしれないわね。」

戦闘不能になり、地面に跪いていたルシオラは立ち上がり、満足な様子で微笑みを浮かべてエステル達を見つめた。

「……姉さん。ひとつだけ訂正させて。あたしは姉さんを恨むことなんてできないわ。あたしの元を去ったことも、座長を殺めてしまったことも。ただ……どうしようもなく哀しいだけよ。」

「シェラ姉……」

「………シェラザード……」

シェラザードの答えを聞いたエステルは心配そうな表情で見つめ、恩人を殺し、シェラザードにとっての家族をバラバラにさせた張本人である自分を恨む事無く哀しむシェラザードをルシオラは呆けた表情で見つめていた。

「それに、やっぱり信じられない。姉さんがそんな理由で座長を殺めてしまっただなんて……。あたしたちのことを思って辛い選択をした座長のことを……」

「………………………………。……ふふ……さすがに誤魔化せなかったか。」

そしてシェラザードの本音を知ったルシオラは皮肉気に笑って答えた。

 

「え……」

「さっきの話にはね……続きがあるの。あの人を説得しようとしてそれでも決意が固いと知った時……私は、ずっと秘めてきた想いをあの人に打ち明けてしまっていた。」

「!!!姉さんが……座長のことを……。……そう……だったんだ……」

ルシオラが語った自分も知らないルシオラの恩人への秘めたる思いを知り、驚いたシェラザードは目を伏せて呟いた。

「ふふ、親子ほども離れていたから想像できなかったでしょうね。そして……それはあの人にとっても同じだった。娘のように大切に思っているけど想いに応えることなど考えられない。一時の感情に流されず、相応しい相手を見つけるといい……。……そう、諭すように拒まれたわ。」

「………………………………」

「拒まれたこともショックだったけど、私はそれ以上に怖くなってしまった。私を惑わせないように……相応しい相手を見つけられるように。あの人が、本当の意味で私から離れていってしまう可能性が。」

「あ……」

「……そう悟った瞬間、私の奥底で何かが弾けていた。……離れていかないように……永遠に私のものにするために……。その囁きに従って……あの人をこの手にかけていた。」

「……ルシオラ……姉さん……」

ルシオラが語った真実を知ったシェラザードは悲痛そうな表情でルシオラを見つめた。

 

「自分の中に潜んでいた闇に気付いたのはその時からよ。私は、その闇に導かれるように”身喰らう蛇”の誘いに応じて……いつの間にか……こんな所にまで流れてきてしまった。フフ、そろそろ潮時かもしれないわね。」

「え……」

ルシオラの口から出た答えにシェラザードが驚いたその時、ルシオラはシェラザード達を見つめたまま後ろへと下がり

「お、おい!それ以上後ろに下がったら……!」

「まさか……自ら命を絶つつもりか!?」

ルシオラが”アクシピスラー”から飛び降りて自らの命を絶とうとした事を悟ったルークとバダックが血相を変えて声を上げたその時

「姉さん、だめええっ!」

ルシオラが落ちる瞬間、シェラザードは鞭を振るって、ルシオラの片手に鞭を巻き付けた!

 

「くっ……」

間一髪ルシオラの落下を防いだシェラザードだったが、女性であるシェラザードでは落下していくルシオラの重みに耐えられず、シェラザードも塔から落ちそうになった!

「ふふ……なかなか鞭さばきも上達したじゃない。最初の頃はあんなに不器用だったのにね。」

「シェラ姉!」

シェラザードの鞭さばきにルシオラが感心しているとエステル達がシェラザードに駆け寄った。

「エステル、ヨシュア……。少しの間でいいから……このままこの娘と話をさせて。」

「で、でも……!」

「ルシオラ……貴女は……」

「は、話なんかしてる場合じゃないでしょう!?引っ張り上げるから掴まってて!」

ルシオラの頼みにエステルは戸惑い、ルシオラの決意を悟ったヨシュアは複雑そうな表情をし、シェラザードは血相を変えてルシオラを見つめた。

 

「ねえ、シェラザード……。あの人を手にかけた事は今でも後悔していないけれど……唯一、気がかりだったのが貴女の元を去ったことだった。貴女がどうしているか、それだけが私の心残りだった。でも、私がいなくても貴女はしっかりと成長してくれた。自分の道を自分で見つけていた。」

「姉さん……お願いだから……」

「それが確かめられただけでもリベールに来た甲斐があったわ。本当は貴女に私のことを裁いてほしかったのだけど……。さすがにそれは……虫が良すぎる話だったわね……」

「……お願いだからちゃんと掴まっていてよおっ!」

まるで死を望んでいるかのように鞭に捕まることなく、自嘲気に笑うルシオラにシェラザードは悲痛そうな表情で悲鳴を上げた。

「フフ……お酒もいいけど……程々にしておきなさいね。さようなら……私のシェラザード。」

「ルシオラ姉さあああんっ!」

そしてルシオラは鉄扇を取り出して、シェラザードの鞭を切って、落下して行った!

 

リーン………

 

ルシオラが落下して行くと、鈴の音が寂しげに響いた。

「……………………………………」

「シェ、シェラ姉……」

「シェラさん……」

「…………大丈夫………………。……あの姉さんが落ちたくらいで死ぬはずない。いつの日かきっと……きっと……また会えるわ。」

心配そうな表情で自分を見つめているエステル達にシェラザードは静かな表情で答えた。

「う、うん……きっとそうよ!だって、あんな凄い式神とか転位術とか使える人なんだもん!絶対に…………絶対に大丈夫だってば!」

「ふふ……そうね……。………………………………」

「シェラザード、無理はするな。一旦、アルセイユに戻った方が………」

「ああ……後の事は俺達に任せていいんだぜ?」

寂しげに笑うシェラザードにバダックとルークは慰めの言葉をかけた。

「ううん……その必要はないわ。……ここでへこたれてたら姉さんに笑われてしまうから……。だから、今は先に進みましょう。」

「シェラ姉……。うん……分かった。」

「それじゃあ……端末を解除しましょう。」

その後エステル達はゲートのロックを解除した後、一端態勢を整える為にアルセイユに戻り、エステル、ヨシュア、ティータ、レン、ルーク、イオンのメンバーで先に進み、また同じようにゲートが先を阻んでいたので、外にあると思われる端末を操作する為に外を出て進んで行くと聞き覚えのある少女の声が聞こえてきた。

 

~アクシスピラー第五層・外~

 

「クスクス……やっぱりここまで来たわね。」

聞こえてきた少女の声を聞いたエステル達が声が聞こえてきた方向に視線を向けると執行者―――”殲滅天使”ユウナがエステル達を待ち構えていた。

「あ……」

「……ユウナ!」

「やっぱり君か……」

「うふふ、性懲りもなくまた現れたわね。」

ユウナを確認したティータは不安そうな表情をし、エステルとヨシュアは気を引き締め、レンは小悪魔な笑みを浮かべた後仲間達と共にユウナに近づいてユウナと対峙した。

 

「あの3人を倒すのはけっこう大変だと思ったけど……でもユウナは信じていたわ。エステルとヨシュアがユウナの所に来てくれるってね。―――勿論レンもね。」

「クスクス、あれだけ痛い目にあわされたのにレンが来ることも信じていたなんて、ちょっと驚いたわ。」

ユウナの答えを聞いたレンは意味ありげな笑みを浮かべてユウナを見つめ

「ユウナ………」

「それでも……君は戦うつもりなんだね?」

エステルは真剣な表情でユウナを見つめ、ヨシュアは複雑そうな表情でユウナを見つめていた。

「うふふ、どうしようかしら。せっかく約束していたのにお城で会った時には殺しそこねちゃったし……エステルとレンの態度しだいでは見逃してあげてもいいわよ?」

「あたしとレンの……態度?」

「お城ではレンに負けた癖に、見逃すとは随分と大きく出たわねぇ……」

ユウナの話を聞いたエステルは首を傾げ、レンは呆れた表情で溜息を吐いた。

 

「うふふ……簡単なことよ。エステルはこの間、ユウナに言った事を取り消して、レンはユウナに謝るだけでいいわ。」

「へ!?」

「…………一体何を謝って欲しいのかしら?」

ユウナの要求にエステルが驚いている中、レンは真剣な表情でユウナを見つめて問いかけた。

「エステルは前に、ユウナが”結社”にいるのが間違ってるって言ってたわよね。エステルはあの言葉を取り消して、レンはユウナより先に”幸せ”になった事を謝るだけでユウナはこの場を退いてあげるわ。どう、悪い取引じゃないでしょう?」

「「……………………」」

「ユウナちゃん……」

「何でそこまでして、二人から取り消しや謝罪の言葉を聞きたいんだ……?」

「恐らく自分が正しいと言いたいのでしょうね、彼女は……」

ユウナの取引にエステルとレンが黙り込んでいる中ティータは複雑そうな表情をし、ルークの疑問にイオンは重々しい様子を纏って答えた。

 

「ユウナ……そんな取引は間違っている。たとえ望んだ言葉を引き出せても本心が違っていたら何の意味も……」

「ヨシュア……いいの。ここは……あたしに任せてくれないかな?」

ヨシュアがユウナに指摘しようとしたその時エステルが制した。

「エステル……わかった……頼む。」

「……ありがと。それとレン、あんたも余計な口出しせずに黙っていてよ。あんたが口を出したら、ややこしい事になるし。」

「うふふ、エステルに任せた所で結果は一緒だと思うけど、ユウナを”結社”から抜けさせる事についてレンは余計な口出しをしないって約束したものね。―――ま、可能性は限りなくゼロに近いでしょうけど頑張ってね、お・ね・え・ちゃん♪」

「ぐっ……応援するならせめて、茶化さずに真面目な態度で応援しなさいよね……」

からかいの表情で自分を見つめるレンに唸り声を上げてジト目で指摘したエステルは気を取り直して前に出てユウナと対峙した。

 

「うふふ、やっとその気になってくれたみたいね?さあ、まずはエステルが言ってちょうだい。ユウナが”結社”にいることは間違ってなんかいないって。」

「ユウナ………甘ったれるのもいい加減にしなさいよね。」

「………え。」

エステルの口から出た予想外の答えに驚いたユウナは呆けた表情をした。

「世界はユウナを中心に回っているわけじゃないわ。ユウナのために都合よく変わってくれるものでもない。たとえユウナが、物凄く大きな力を持っていったとしても……あの大きなパパとママ(パテル=マテル)が助けてくれたとしても……それでも……人の心までは自由にはできない。」

「……………………」

(う”っ……地味に効くぜ、エステルの今の言葉……昔の俺はユウナ以上に我儘な奴だったからな……)

(ま、まあまあ……今の貴方は昔とは比べものにならないくらい見違えていますから、気にする必要はありませんよ。)

エステルの主張を聞いたユウナが真剣な表情でエステルを見つめている中、エステルの主張で過去の自分を思い出して疲れた表情になって小声で呟いたルークをイオンは苦笑しながら慰めの言葉をかけた。

 

「ユウナに結社にいて欲しくないのはたしかにあたしのエゴかもしれない。だから無理強いするつもりはないけど……でも、できればユウナ自身に気づいて欲しいと思う。いつでもヨシュアみたいに後戻りができるんだって……」

「……エステル………」

「……………そう………………せっかくチャンスをあげたのに棒に振っちゃうんだ……救いようのない大バカねぇ。」

そしてエステル達を殲滅する事を決めたユウナは大鎌を空に掲げてパテル=マテルを呼び、その行動を見たエステル達は後退しながら武器を構えた。

「……みんな、ゴメン。ひょっとしたら避けられた戦いだったかもしれないけど……」

「……謝る必要はないよ。君は……僕が言いたい事をあの子に全て伝えてくれた。」

「わ、わたしもお姉ちゃんの言う通りだと思う。ユウナちゃんがこのままなんて……そんなのイヤだから……」

「うふふ、エステルは”人として”間違った事はしていないから、ヨシュアの言う通り謝る必要なんてないわよ♪」

「気合いを入れた方がよさそうですね。」

「ああ……間違いなく”アレ”も出てくるしな。」

「みんな……」

謝罪するエステルをヨシュアとティータ、レンがエステルの行動を正しいと認めている中、ユウナとパテル=マテルを同時に相手にしなければならない事を悟っていたイオンとルークは表情を引き締め、避ける事ができた戦いを敢えて避けなかった自分を一切責めない仲間達の答えにエステルが嬉しそうな表情をしたその時パテル=マテルが上空から現れ、ユウナの傍に着地した!

 

「……気に入らないわ……本当の本当に気に入らない……”パテル=マテル”!リミッターを解除しなさい!出力全開でエステル達を殲滅するわよ!」

「―――――――!!」

そしてエステル達はユウナとパテル=マテルとの戦闘を開始した!

 

 

 

 

 


 
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