No.840648

模型戦士ガンプラビルダーズI・B 第45話 

コマネチさん

第45話 『第三回戦!模型部と再戦

 昼休みも程なくして終わり、午後の部が今始まろうとしていた

2016-04-03 23:01:48 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:636   閲覧ユーザー数:619

 

「アイ、遅いな。何やってるんだろ」

 

 昼休みの終わる少し前、アイは子供のビルダー達に自作のガンプラのコメントやアドバイスを頼まれ、それが長引いてしまった為にナナ達に「先に行ってて」と促した。すぐにアイも来るだろうとナナ達は手早く女子更衣室で着替えて、入り口付近の廊下で他のメンバーと待機。アイを待つがなかなか来ない。

 

「まぁいざとなったら私服で出るっスかねヤタテさん」とソウイチが言う。別にパイロットスーツで出場しなくてはいけない。というわけではないのであまり深刻そうには思ってなかった。

 

 と、廊下の奥から足早に駆けてくる少女が見えた。アイだ。

 

「ナナちゃん!お待たせ!」

 

「アイ!早く早く!!」

 

「ごめんごめん。で、三回戦の相手はどんな相手になったの?」

 

 A4サイズに縮小されたトーナメント表を見ながらナナは言う。

 

「意外よ。実はね……」

 

「あーっはっはっは!!まさかこんな早くアンタ達に当たるなんて好都合だわ!!これもコナミの日頃の行いがいい所為ね!!」

 

「その声、コドモ部長!!」

 

 とっさのナナの発言、それに言われた対象は激昂する。

 

「何度言ったら分かるのよーっ!!コナミはコドモじゃなくてコナミよ!!」

 

 納得いかない応えにわめく少女。身長135㎝のツーサイドアップ、模型部部長兼マスコット『ウミノ・コナミ(海野小奈美)』だ。

 

「部長さん?じゃあ次の相手は模型部?」とアイは予想。

 

「そういうこった。次に当たるのは俺達ってわけだぜー」

 

「よろしくー」

 

 ひょこっと便乗する形で答えるのは額の広い少年「ヤマモト・コウヤ(山元孝也)」そして片目の隠れた少年「カワサキ・ナガレ(川崎流)」どちらも模型部所属だ。

 

「まさかあなた達とも当たる事になるとはね。結構昔の仲間とよく当たるなぁ」とアイ。

 

「ま、こっちとしてはラッキーだぜ。コンドウさんもいなくなっちまったけど、今じゃお前らのチームを倒すのが俺達の今の目標さ」

 

「随分と自信あるじゃない?アイやアタシ達と戦うってのに」

 

「無謀じゃない位には自信はあるさ」とナガレ

 

「ま、次の試合はコナミが勝って見せるわ!ここら一帯では最強のビルダーであるアンタに勝てば県内予選は勝ったも同然ね!コナミ達をその辺のヘボビルダーと一緒にしない事ね!!」

 

 コナミはいつもの様に自信満々でアイ達につっかかる。しかし言い方が悪かった。そこへコナミに突っかかる別のビルダーがいた。

 

「おやおやおや~?寝ぼけた事言ってくれてるじゃないですかぁ~☆」

 

 染めた金髪ショートの長身の身体、甘ロリファッションに身を包んだ目隠れ系少女、白く塗ったドムトルーパーに乗ったビルダー『ゴウセツ・ユキ(豪説由紀)』だった。

 

「ハジメさん達をやっつけるのはユキ達『ゴーレム兵団』ですよぉ」

 

「あれ?ユキ?あんたとも当たるっけ?」

 

「んも~ハジメさん☆トーナメント表をよく見て下さいよぉ。ユキ達とはその模型部さん達の次、Aブロック準決勝で当たるですよ~!」

 

 ユキの言った通りナナはトーナメント表をチェック。「あ、本当だ」と声に出す。見ると確かに模型部に勝った次はユキ達と当たる様だ。

 

「ちょっと!何勝手な事言ってんのよ!!アイ達を倒すのはコナミ達よ!」

 

 コナミは自分達が負ける様な発言をしたユキに食って掛かった。身長差は対照的だった。

 

「フフン。役者が違うんですよぉ☆見てましたよぉ、あなた達の試合。確かにチームメイトのそこの男の子二人はなかなかの実力のビルダーさんみたいですがぁ、あなたは地味に機雷ばら撒いたりと役割が地味じゃないですかぁ☆」

 

「な!何言ってるのよ!!そりゃコナミはもっと前面に出て活躍はしたいけど!!」

 

「聞けば元々後先考えない戦い方で墓穴掘る事も多いらしいじゃないですかぁ☆リーダーがそれじゃたかが知れてますよぉ☆」

 

「ちょっと君、言いたい事は分かるけど言い方がひどくないか?もうちょっとオブラートに……」

 

 ちょっと言い方がきつい。ナガレとコウヤがユキに言おうとするが……。

 

「何よ!!そんな痛い格好してるアンタに言われたかないわよ!!やってて恥ずかしくないの?!!」

 

「あぁ?!!」

 

 ギロッとユキの前髪の間から除く目がコナミを睨む。どこぞの井戸の中の幽霊よろしく、凄まじく凄味のある瞳だ。コナミはビクッと震えると慌ててコウヤの後ろに隠れた。

 

「……ねぇ、ナナちゃん。あの人、変わってるね」

 

「あーそういえばアイツと会うの初めてだっけアイ」

 

 その後ろでアイとナナは小声でユキへの感想を話す。ユキは本来、アイ達のいる地域のビルダーではない。以前ナナとタイマンで挑戦してきたが、それはアイには実力的に敵わないと判断したが故の行為だった。(第22話参照)その時も自分の悪口を言われた際に荒い口調になっていた。沸点の低い腹黒娘なのだ。

 

「うふふふ~☆度胸もない。これじゃユキ達がハジメさん達と戦うのは目に見えてますねぇ~」

 

 怖がるコナミを見ながらご満悦なユキ、その時、彼女の後ろで二人の人影が現れる。

 

「言いたい事は言い終わったか?この愚昧」

 

「見てたぞ。あちらさんに落ち度はなかったろうが」

 

 後ろからの声に突如ユキの顔は青ざめる。後ろにいたのは坊主頭のコンドウに負けない体型の大男、もう一人は頭にバンダナを巻いた高身長かつ長髪の青年。どちらもガラがいいとは正直言い切れない。そんな第一印象とは裏腹に、男二人揃ってユキの頭を掴んで強制的に謝らせた。

 

「ぅおおお!!痛い痛い!ご!ごめんなさい兄ちゃん!!」

 

 ユキが兄と呼んだ2人、どうやら彼女は二人には頭が上がらないらしい。

 

「ぁ、いえ、こちらこそ、元々はうちの部長の失言もありましたし」

 

 ナガレが相手に気圧されながら答える。

 

「あはは。どうやらどっちも苦労してる紅一点がいるようで」

 

 コウヤは空気を読まずに発言。ナガレは「バカ!空気読め!」と目くばせする。しかしコウヤの発言はユキの兄達にとって受けたらしく「違いない!ハハハ!」と大笑いしていた。

 

「……なんか前もこんな流れだった様な」

 

 アイはマツオと戦った時を、副部長を思い出しながら呟いた。どういうわけか大会では相手のビルダーには頭の上がらない仲間が必ずいるな。とアイは思う。

 

「何故だか知らないけど大会で会った相手皆なんか逆らえない人が必ずいるわよねー。なんつーかワンパターン」とナナが続く。

 

「と、どちらかに当たるとなると、自己紹介はしとかなきゃな。俺はユキの兄、ヒョウ(平)」アイとナナの会話にも気づかずに坊主頭の大男が名乗る。

 

「俺は長男のコウセツ(高説)」続けて長髪の男が名乗る。

 

「どっちが勝ちあがっても全力で相手をさせてもらうぜ!と言っても、今日は準々決勝、つまり第三回戦までで、準決勝は来週なんだけどな」とヒョウ

 

「まぁとにかく、お互いいい試合にしようや!ほら俺達も試合に行くぜ!ユキ!」

 

 コウセツはユキの首根っこを掴んだままズルズル引きずっていった。これまた「前とおんなじだなぁ」とナナはしみじみ思っていた。

 

「……とまぁ、ごちゃごちゃしちゃったけど!お前ら倒すのは俺達だって事だ!」

 

「いい試合にしよう!」

 

「あ!時間!早く着替えなきゃ!!」

 

 と、もうすぐ試合だ。アイは慌てて更衣室に入っていった。

 

「……」

 

 未だコウヤの後ろでただ一人ダンマリを決め込むコナミ。が、口を開く。小声でコウヤとナガレに話しかけた。

 

「ねぇ、コウヤ、ナガレ、次の試合もコナミが出ていいの?」

 

 打って変わって珍しく弱気だ。

 

「?何言ってるんですか部長」

 

「だって、相手はアイよ。正直コナミよりうまい人はたくさんいるじゃない。今更コナミが出たって……」

 

「何言ってんすか部長、部長らしくない。もっと自分に自信持ってくださいよ」

 

「それに、今回が部長の最後の見せ場じゃないですか。部長が出る事は皆承諾してるんだ」

 

 そう、今回の大会で三年生のコナミは引退する。コナミは部長という立場とはいえ、自分が試合に出ていいのかと考えていた。臆病な上、自分の実力の無さは自覚していたからだ。

 

「お情けで出ろって事?」

 

「そうじゃないですよ。ちゃんと理由はあります」

 

「何よ」

 

 と、その時、パイロットスーツを着たアイが更衣室から出てきた。

 

「お待たせ!行くよ皆!!」

 

 そう言ってアイはナナ達と試合会場へ向かう。コウヤ達も「おっと俺達も急ぐぜ!」と後に続いた。

 

「ちょっと!さっきの答えは?!」

 

 コナミは後を追いかけながら叫んだ。

 

 そうして今日最後の試合が始まった。フィールドは廃墟になった大都会『ニューヤーク市』。ボロボロになった建築物とガレキの山だ。

 

「前にアンタがヤマモトと戦った時と同じフィールドね」

 

「うん。ただ違いは天気かな?」

 

 第二話でコウヤとアイが戦った場所だ。前回同様アイは半壊したドーム野球場に隠された母艦、ホワイトベースから発進する。今回の僚機はツチヤとヒロだ。道路に降り立ったアイが上空を見上げながらさっきの台詞を呟いた。前回は曇りの天気だったが、今回の天候は晴れた夜になっていた。空に浮かぶ満月が綺麗だ。

 

「前にも戦った場所だけど、どこから攻めてくるかわからない。気を付けて皆」

 

「っ!さっそく来たみたいだぜ!!」

 

 ヒロの叫びと同時に全員のGポッドに警告音が走る。上空から針状のミサイルが幾重にも弾幕となって飛んできた。

 

「ミサイルっ!数が多い」

 

「でもあんなに密集して!!簡単に誘爆できるわね!!」

 

 ナナは両腕を向けると備え付けられたバルカンを発射、一発当たったミサイルは簡単に誘爆する。しかし次の瞬間。黄色の煙が『ぶわっ!!』と広がった。瞬く間に誘爆したミサイルは次々と煙幕をまき散らす。アイ達の周りは煙幕に覆われた。

 

「っ!何これ!!」

 

「煙幕か?!くそっ!すぐ上空に上がらなきゃ!!」

 

 直後、アイ達のいる地点の煙幕を突き破りながら大型ビームが撃ち込まれる。すんでの所でアイ達は回避、煙幕の突き破った部分から撃ったであろう敵を見る。見えたのは『機動戦士ガンダム』に登場したゴッグという機体だ。背中に『ガンダムOO』のラファエルガンダムという機体のビームキャノンを背負い。両足の外側にビルダーズパーツのホバーユニットが取り付けられていた。元々鈍重な機体をスムーズに動かす為の改造とアイ達は考えた。しかし考えていても動かなければどうにもならない。真上に煙幕から飛び出すアイ達、しかし……、

 

「もらったぁぁ!!!」

 

「っ!!」

 

 コウヤの声が響く、コウヤのアメイジングレジェンドガンダムがヒロのウイングガンダムノヴァにヒートナタで斬りかかってきたのだ。

 

「チッ!!」

 

 ビームサーベルでナタを受けるヒロ。鍔迫り合いになる二機。そこを目がけてナガレのゴッグはさっきのビームキャノンをノヴァとレジェンドに撃ってくる。当たる直前にコウヤは離れる。ヒロも急いで離れる。二機がいた所を大型のビームが通り過ぎた。

 

「ノヴァの機動力じゃなかったら危なかったな……!」

 

「安心するのはまだ早いぜ!!」

 

 またも斬りかかってくるコウヤのレジェンド、しかし何度も同じ手に引っ掛かるアイ達ではない。ツチヤのアッシマーはコウヤのレジェンドに飛び、アイとナナはナガレのゴッグへバスターライフルを最大出力で撃った。コウヤもナガレもすぐさま後退、二機とも軽快に動けるように改造してある。そしてまたもさっきと同様に針状ミサイルが飛んでくる。

 

「ラチがあかんぜ!!」

 

「なら僕に任せろ!!皆は僕の真下にいてくれ!!」

 

 ヒロはそう叫ぶとツインバスターライフルを分割し、ノヴァを上空に飛び上がらせる。左右にバスターライフルを一丁ずつ持つと最大出力で発射。そして撃ちながらぐるぐると回転。ビームはミサイルと建築物を巻き込み破壊、蒸発させる。発したビームの光は凄まじい。撃ち終わると周囲の建築物はほとんど消滅、上空にはバスターライフルをかわしたであろうコウヤのレジェンド、むき出しになった遠くの地面にはナガレのゴッグが見えた。

 

「見つけた!!」

 

 アイはそう言うと、ナガレのゴッグにAGE-3Eを突撃させる。「させるか!」とコウヤはアイを阻止すべくレジェンドを向かわせる。しかしツチヤのアッシマー・デコレーションがコウヤに斬りかかる。コウヤもヒートナタでアッシマーに対応するしかなかった。

 

「覚悟っ!!」

 

 身構えるゴッグにGNソードを振り下ろすアイ、しかし次の瞬間、紅い機体が二機の間に割って入った。GNソードをライフルの先に取り付けられたビームサーベルで受け止める。

 

「ジンクス?!」

 

 アイが叫ぶ、『ガンダムOO』に登場した敵の量産型ガンダム『ジンクス(GN-X)』だ。メテオホッパーに乗り、本体にもヴァリュアブルポッドの武装が追加されており、その姿は古代の馬を用いた戦車『チャリオット』に乗った騎士の様だった。

「部長!!ジンクスチャリオットで姿を出さないでって言ったじゃないですか!!こういう時は機雷を撒けって!!」

 

「無駄よ!!どうせやったってこいつらには通用しないわ!!ここで数で押し切った方が!!」

 

 ジンクスから黄色い叫びが聞こえた。これに乗っているのはコナミ部長だ。

 

「部長さんの機体ですか!ならここで倒す!!」

 

「簡単にいくと思わないでよ!!」

 

 そういうやコナミのジンクスはシールドをAGE-3Eに向ける。攻撃が来ると判断したアイはすぐさま後退、シールドの中心部からビームサーベルが発生し、さっきAGE-3Eがいたところを切り裂いた。

 

「くっ!!コウヤ!部長が見つかった!!援護に来てくれ!!」

 

「ちょっと待てよ!こっちも精一杯だ!!」

 

 ナガレはコウヤを呼び戻すべく通信を入れる。しかし今のコウヤはアッシマーとノヴァの二機と戦っていて援護にいけない。コウヤは右手にリボルバー、左手にナタを持ち二機と応戦していた。

 

「弱気な発言だけど!俺達と膠着する実力とは!!」

 

 ツチヤはコウヤの実力に感心する。押してはいるがそれは二対一だからだ。タイマンなら自分と互角の実力だ。直感ではあるが、ヒロもツチヤもコウヤに対してかなりの潜在能力を感じていた。

 

「肝試しん時は狭かったし、コイツの実力を発揮しきれなかったですからね!!広けりゃこっちのもんだ!!」

 

「強くなったな!ならこっちも短期で決める!!」

 

 そう言うとツチヤのアッシマーは分離、そしてヒロとの連携でレジェンドを倒そうとする。しかし変形の瞬間、コウヤは左手のナタをアッシマーの背中、ライトニングバックウェポンに投げつけた。アッシマーデコレーションは支援機との連携で真価を発揮する。しかしアッシマーは変形しなければ空を飛べない。空中戦の連携は変形しなければ出来ないのだ。ナタは変形中のバックウェポンの機首(シールドとの合体はまだしてない)に突き刺さる。

 

「何!」

 

「やらせるかッ!!」

 

 ヒロはコウヤを阻止しようとビームサーベルで斬りかかる。それと同時にリボルバーの追い打ちを阻止しようと、ウイングノヴァの首の襟部が開く。マシンキャノンだ。それをレジェンドのマニピュレーター目がけて撃ちこんだ。しかし察知していたレジェンドは腰のバーニアを前面に回しふかす。マシンキャノンが届く前にレジェンドは後退、そして下がりながら両手にリボルバーを構えライトニングバックウェポンに撃ちまくった。

 

「駄目押しだぜ!!」

 

 コウヤがそう言った直後、弾丸を受けまくったバックウェポンは爆発、その隙をついてレジェンドは仰向けのままバーニアを最大出力でふかす。逃がすかとヒロはツインバスターライフルで追い打ちをかけるがレジェンドは驚異的な推力でかわし、部長の元へ向かっていった。

「くそっ!油断したつもりはないのに!!」

 

「後を追おう!!」

 

「しかし……半年前と比べて本当に強くなったな。彼は……」

 

「にゃっ!!」

 

 コナミのジンクスがAGE-3Eの斬撃で地面に叩き付けられた。メテオホッパーも墜落してしまい、ナガレのゴッグももうボロボロだ。

 

「残念だけど!コウヤ君が来る前に終わらせてもらいます!!」

 

「……やっぱりコナミじゃ、駄目なんだ。コナミじゃ……」

 

 コナミはアイと自分の実力差を感じながら悔し涙を流す。自分は部長なのに……と、

 

「覚悟!!」

 

 そしてアイはAGE-3EのGNソードを振り降ろす。もう駄目かと思うコナミ、しかし……

 

「部長ぅぅっっ!!!」

 

 ナガレのゴッグがコナミのジンクスを突き飛ばした。状況が理解出来ないまま、悲鳴を上げながら転がるコナミのジンクス。

 

「うぅっ!な!ナガレ!!」

 

 コナミが気づいた時にはナガレのゴッグはもうGNソードで切り裂かれていた。

 

「なんで!コナミなんか!」

 

「本当はサポートに回ったままでいて欲しかったんですけど……こうなったら部長に全てを託したい」

 

「無理よ!!コナミに期待したってナガレの思うように出来ない!出来っこないよ!!」

 

「部長……俺達は信じてます。部長はやればできる子です」

 

 そう言った直後、ナガレのゴッグは爆発、すぐ後にコウヤのレジェンドが到着したが、ナガレのゴッグがやられた事は遠くからでも知っていた様だ。

 

「ナガレ!遅かったのかよ!!」

 

 すぐ後にツチヤとヒロも到着、アイ達はコウヤに向かい合う。そしてジンクスを庇う様に構えるコウヤのレジェンド、

 

「コウヤ……ナガレが……」

 

「部長、ここは俺が食い止めます。部長はさっき墜落したメテオホッパーを回収して万全で迎え撃って下さい」

 

「何言ってるのよ!無理よ!!コナミの実力じゃ!!2人で戦った方が!」

 

「俺が向こうを少しでも消耗させた方が確実なんです!」

 

 コウヤの意見、普通ならコナミはその発言に舞い上がりすぐ調子に乗るだろう。しかし今の彼女にとってその台詞は納得できなかった。

 

「なんでよ……なんでコナミにそんな期待するの?アンタだけじゃない!ナガレも!他の部員も!皆皆!!格好つけてるわけ?!」

 

「……部長は駄目な奴なんかじゃないですよ。俺達はそれを知ってるから、その理由があるから部長をチームに入れたんですよ」

 

 それを見ていたアイ達はある種、やり辛さを感じていた。しかし止まるわけにはいかず攻撃を仕掛ける。

 

「なんか、アタシ達が悪者みたいね」

 

「かといって手加減するわけにはいかないよ!!」

 

 そう言いながらアイ達は射撃で攻撃を仕掛ける。

 

「俺達皆!部長を信じてますから!!」

 

 そう言うとコウヤも三体を迎え撃つべく飛び上がった。たった一機で三機を相手にする。コウヤの実力はコナミも知っていたが結果は完全に見えていた。どんどんコウヤのレジェンドはボロボロになっていく。

 

「やめて……やめてよ……」

 

 コナミはもどかしさを感じながらも、ただ茫然とそれを見ていた。しかし心は……魂は……。

 

「ぅあっ!!」

 

 程なくしてコウヤのレジェンドは墜落。ブースターもボロボロでもう飛べそうにない。なにより胸部にはアッシマーのトマホークが突き刺さっていた。だがそれを見た瞬間。コナミの中で何かが『爆発的に燃え上がった』

 

「やめろぉぉぉっっっ!!!!!!!!」

 

 その叫びと共に、ジンクスのライフルの先端部からビームサーベルが発生、ただのビームサーベルではない。ジンクスがすっぽり入ってしまいそうな太さで、出力も並のビームの比ではない。光量もさっきのバスターライフルの比では無い『夜のフィールドが昼に変わる』といえば解りやすいだろうか。三機とも近くに寄っていたアイ達は散開、しかしコナミの豹変に皆驚いていた。

 

「な!何よ一体!!」

 

「部長さんの……ガンプラ魂?!!」

 

「落ち着くんだ!!長さはそれ程じゃない!距離をとりながらなら!!」

 

 そう言うツチヤを尻目にコナミはビームサーベルを振るう。次の瞬間、出力はそのままにビームサーベルの長さが一瞬で伸びる。フィールドの端から端まで届く長さだ。不意を突かれたツチヤのアッシマーは真っ二つにされ爆散。

 

「なっ!!うわぁぁっっ!!!!」

 撃墜されるツチヤを遠目に見ながらコウヤはガッツポーズを取っていた。

 

「よっしゃ!!さすがだぜ部長!!」

 

 コウヤ達が部長に期待していたのはこれだった。実はコナミ部長のガンプラ魂は凄まじい爆発力がある。これがコウヤ達にとっての切り札だった。しかしいつでも出せる物でもない。これは部長が本気でやる気にならなければ出来ない事だ。すぐに逃げ腰になったり、他人の成果を奪おうとする部長では出すに出せない。しかもその爆発力を自覚させてはすぐに調子に乗るのは見えていた。だからコウヤ達はこの事を部長に言わないでいた。

 

「俺はここまでですけど、後は……頼みます……」

 

 勝利の手ごたえを感じながらコウヤのレジェンドは爆発した。

 

「メテオホッパーッッ!!!!」

 

 コナミが叫ぶと離れ離れになった支援機が再びコナミのジンクスに戻ってきた。ジンクスはそれに乗るとアイとヒロに襲い掛かる。

「っ!攻撃力は凄くても守りは変わってない筈だ!!攻め方次第なら!!アイちゃん!連携を!!」

 

 ヒロはそう言うとAGE-3Eとの連携の高速戦闘でジンクスを翻弄しようとする、しかし、

 

「おっそいのよ!!バーカ!!」

 

 メテオホッパーと合体したジンクスの機動力はウイングのバード形態に匹敵する(元々メテオホッパーはウイングガンダムフェニーチェの支援機だからだ)。ウイングの後ろに回り込んだジンクスはウイングノヴァを背中から袈裟懸けに切り裂いた。

 

「うぉわっ!!」

 

 とっさに回避した為直撃は避けられた様だ。しかし背中をかすめただけとはいえ出力が違う。翼をごっそり失ったノヴァは墜落していった。

 

「ヒロさんっ!!」

 

「次はアンタよ!!アイィィ!!!」

 

「っ!!」

 

 コナミはそのままアイのAGE-3Eに襲い掛かる。だがアイとナナも思わぬ強敵に魂が震える。それに伴いGNソードⅡもライザーソードの形態となり、二機はぶつかり合った。いきり立ったビームのぶつかり合いはさっき以上の光量を生み出す。

 

「なんてパワーよ!!アタシら二人のガンプラ魂付きのライザーソードを正面から受け止めるなんて!!」

 

「こんな凄まじい力を持ってたんだね!部長!!」

 

「負けられないのよ!!コナミは!!部長さんなんだからぁぁっっ!!!!」

 

 受けながらアイは自分が勝てるかどうか考える。これだけのブーストだ。エネルギーの消費は激しいからもう少し時間が経てばジンクスはエネルギー切れになるだろう。しかし今は支援機のメテオホッパーと合体している。メテオホッパーの左右のバインダーにはエネルギーカートリッジがついておりエネルギー切れはまだ期待出来ないだろう。どうするかとアイは考える。

 その時だった。下からのビームの射撃がメテオホッパーのカートリッジをバインダーごと貫いた。下を見ると分割したツインバスターライフルを持ったウイングガンダムノヴァが見えた。撃ったのはノヴァだった。

 

「ヒロさん!!」

 

「とどめを刺さなかったのは失敗だったな!!」

 

 その一撃でコナミのメテオホッパーはバランスを崩す。だがバランスを崩しながらもアイに一撃加えようとコナミはビームサーベルをAGE-3E目がけて振るった。ライザーソードを構えるアイ、しかしその直前、ジンクスのライフルは砕け散った。過負荷だ。それと同時にビームサーベルも失う。

 

「ライフルが壊れた?!」

 

「負担が大きすぎたんだよ!!」

 

「そんな……さっきの横やりがなくったってコナミは負けてたって事じゃない……ぅ……ぅわあぁぁああああん!」

 

 コナミは自分の惨めさに泣いていた。そのままコナミのジンクスは爆散、第三回戦もアイ達の勝利となった。

 

 試合が終わっても、なかなかコナミはGポッドから出てこなかった。心配したコウヤ達模型部はコナミのGポッドの前に集まる。アイ達三人も一緒だ。

 

「あ、出てきた」

 

 暫くしてコナミが出てくる。ずっと泣いていたのだろう。涙の跡で目が真っ赤だった。

 

「……粋がった挙句があのザマよ。やっぱりコナミは出来の悪いバカってわけね……」

 

 ささくれた言い方で自虐するコナミ。自分を嫌悪していたのは目に見えていた。しかしコナミの様に彼女を見てる人達は部員もアイ達も含め、一人もいなかった。

 

「そんな事ないですよ部長。立派でした」

 

「そうだぜ。なにせ今日一番ヤタテ達を苦戦させたの部長なんだからな!」

 

「あなたの様な部長がいる事は俺達の誇りです」

 

「マスコットとしても優秀だ!」

 

「萌え~っ」

 

 気休めじゃないのはコナミも理解できた。しかし素直に喜べない。

 

「な!何よ!そんな事言われたってコナミは騙されないわよ!!」

 

「よっしゃ!じゃあ行動で示そうぜ!優勝まで取っておきたかったけど!部長を胴上げだぁ!!」

 

「はぁ?!あんた何言って!!ちょっとぉ!!」

 

 コウヤの掛け声と共にコナミを持ち上げ胴上げし始める模型部員達

 

「ちょっと!!どこ触ってんのよセクハラぁ!!」

 

「大丈夫っす部長、模型部にロリコンはいないッスから」

 

「何言ってんのよ!!コナミは大人の女……やめ……やめて……きゃははは!!やめてよー」

 

 胴上げされながら、コナミは次第にはしゃぎながら嬉し涙を流していた。それは形ある実績ではないが、彼女の心にとって大きな勲章となっていた。

 

「……コドモって言うの、返上かな」

 

 ナナが穏やかな笑顔で呟く。アイ達もコナミの笑顔を穏やかな顔で見ていた。

 

「あ!ヤタテさん!!大変っス!!」

 

 しかしそんな穏やかな時間は突如壊される事となる。ソウイチが血相を変えてアイ達に話しかけてきた。

 

「どうしたのソウイチ君?そんな慌てて」

 

「さっきのゴウセツ三兄妹、負けたっス!!!!」

 

遅くなりました。コマネチです。決算月が終わりようやく新作を書けました。次の話書いたらまたアイの過去話書こうっと、


 
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