ここはこの国の第1王女アンリエッタの私室。
そして、その中央のテーブルにルイズとアンリエッタが座ってお茶会をしていた。
ルイズとアンリエッタはいわいる幼馴染という関係だった。
幼い頃にアンリエッタの遊び相手を務めたことが切っ掛けだったが、アンリエッタはルイズの事をとても気に入った。
他にもアンリエッタの遊び相手役に選ばれた貴族の令嬢は沢山いたが現在も彼女との関係があるのはルイズだけだった。
アンリエッタはルイズの事を親友と思って大事にしているし、ルイズもアンリエッタの事を親友と思っている。
そして、今日はルイズがアンリエッタに呼び出されて遊びに来たという事だ。
麗しい高貴な令嬢同士のオホホなウフフなお茶会になるのは間違いないはずだった…。
「そうですか、学園ではそのような事が……そのような女性はどこにでもいるものなのですね」
「そうなんですよ、姫様。そのキュルケっていうのがまた男にだらしなくて。彼女とうわさになっている男子が多くて多くて……ゲルマニア貴族っていうのは本当に下品です」
「ルイズ、ゲルマニア貴族というだけでそんな風に言ってはいけませんよ。このお城でも、その……色々な男性とうわさになったりしている貴婦人や奥方というのはたくさんいるものです」
「ええ!?奥方って……旦那さまがいるって事ですよね。……不潔だわ。このトリステインにそのようなふしだらな方がいるなんて……で、その奥方って誰なんです?」
「大きな声では言えないのですが……」
高貴な2人のお嬢様は惚れた腫れたの他人の恋愛トークに夢中になっていた。
しかも、お互いあまり褒められたものではない不倫やだらしない恋愛のお話で盛り上がっているという……なんという教育に悪い内容だろうか。
「まさかあの方が……おしどり夫婦って有名な方だと思っていたのに。少しショックです」
「あそこは旦那さまのほうもお家のメイドにたくさん手を出しているって言う話なので……しかも、隠し子が10人以上いるとか」
「そんなに……これだから男っていうのは。私はそんな気の多い男なんて絶対いやです。やっぱり私だけを見てくれなくちゃダメ!姫さまもそう思いますよね?」
「うふふ……そうね、やっぱり愛していると言うのなら口だけではなく行動で示して欲しいものです」
おしゃべりで盛り上がるのは恋愛ばなしや何と言っても『他人の悪口』なのはどこの世界でもいっしょなのだろうか?
久しぶりに会えた親友同士のお茶会はあまり褒められた内容ではない話で盛り上がっていく。
そして、気がつけばだいぶ日も落ちてきて空が暗くなっていた。
「アンリエッタ様、そろそろ夕食のお時間です。ルイズ様の方をそろそろ……」
「もうそんな時間ですか?」
「はい、この後の予定もありますのでどうかこの辺で」
近くに控えていた侍女が2人の会話を遮る。どうやらここでタイムアップらしい。
おしゃべりをしていたら、かなりの時間が経っていた。
「もうこんな時間……時間が経つのがこんなに早いなんて」
「…そうですね。姫さま、私もそろそろお暇させてもらいます」
「えっ!?もう帰るのですか」
「その……姫さまにもこの後の予定があると思いますので。お邪魔しては申し訳が……」
「そう…ですわね。私とした事が……申し訳ありません」
「あっ!姫さまが謝られる事ではありませんから……その、私もまだ帰りたくない気持ちは一緒です」
親友とのおしゃべりは楽しかったし、まだ喋り足りないぐらいである。
だが、その親友というのはこの国の第1王女アンリエッタなのだ。
さすがに王族ともなればこの後の時間も予定は詰まっているだろうし、ルイズもこの国の貴族としてそれを邪魔するような事はできない。
「姫さま、今日はとても楽しかったです。早く帰らないと姉も心配すると思うので私はこれにて……」
「……姉?ちょっとまって、ルイズ……もしかしてエレオノール様の所に泊まっているという事ですか」
「そうですが……」
正確にはエレオノールが住み着いている才人の家に泊まる予定なのだが、説明がややこしくなるのでそこは割愛。
「……」
「アンリエッタ様、あの…私の姉が何か……」
「……ルイズ、今日はここに泊まっていってもらえないかしら?」
「え!?泊まるって…王宮にって事ですか」
「ええ、エレオノール様には私のほうから連絡をしておきますので…その、私のお客さまという事で泊まっていってはもらえないでしょうか?」
今夜は帰さないよとお誘いキター……ではなく、いや、そうなんだけど……アンリエッタの急な泊まっていってと言う提案。
正直言ってこれは予想していなかった。ルイズもだがこの提案にその場にいた侍女たちも驚く。
「ええ!そうだわ、それがいいわ。さっそくお部屋を用意させますから…」
「姫さま、それはいけません。そんな急に言われてはルイズ様にもご迷惑がかかりますのでどうかご自重ください」
「えっ……迷惑なのですか。その……ルイズ、迷惑でしたか?」
お姫さまの予期せぬ暴走を止めにかかる侍女だったが、流れ弾がルイズのほうに飛んできた。
私と一緒にいるのはイヤなの?とアンリエッタがこちらに懇願のまなざしを向けてくる。
(ううっ……そんな目で見つめないで。そりゃあまだ一緒に居たいけど……ヴァリエール家として王宮に迷惑をかけるわけには……)
アンリエッタの『泊まってくと言って、ねえお願いよ』と言う視線と侍女の『姫さまのわがままに付き合わないでください』と言う視線がルイズの身体に刺さる。
(ここは丁重にお断りをするのが正しいのよね……ただ……姫さまのわがまま…じゃなかったわ、お願いを無下にするのも)
選択権は完全にルイズにゆだねられたらしい。アンリエッタも侍女もルイズの言葉を待っている。
(……本当にこの方は昔と変わらないわね。ふふっ…だったら……)
「まだまだお話したい事がたくさんあるので今日は付き合っていただきます……よろしいですか姫さま?」
「!?……ええ、今日は夜通し語り合いましょう」
結局、アンリエッタ側に折れた。女の友情ばんざい。
「う~…ただいま~…、サイト~…ルイズ~…今、帰ったわよ~…」
場所は変わってここは才人の自宅。ベロンベロンに酔っ払っているエレオノールとそれを支えるロングヒルが帰ってきた。
「お帰り。……だいぶ酔っ払ってるね、どんだけ飲ませたんだよ。すげぇ酒くさいよ」
「私が飲ませたわけじゃないよ。エレオノールが自分からガンガン飲んじゃってね」
「うへ~…べ、別に酔っ払ってなんかないもん~…勘違いしないでよね~…」
「サイト、酔っ払いは自分のことを酔ってないって言うもんだからね。な、分かりやすいだろ」
「ああ、なるほどね。父さんとかも悪酔いしてた時とかこんな感じだったかも」
「酔っ払ってないもん~…うう~…しゃいとぉ~…こっちに来なしゃいよ~…」
「あらら…しゃいとぉ~ご指名だよ。はやく私と変わってちょうだい、この子何気に重いのよ」
「うへぇ…勘弁してくれよ姉さん」
これは完全に出来上がっている……誰が見ても文句の付けようの無い酔っ払いだった。
ご指名が入った『しゃいとぉ~』こと才人はロングヒルから酔っ払いを引き継ぐ。
― ずしっ!
ううっ……確かに重い。どうやら自力では立てないくらい出来上がっているようでエレオノールを支えた直後、彼女の体重がこちらに圧し掛かってくる。
(うげっ!?重い……そして、息が臭い……酒と食べ物の様な匂いが混ざり合って何ともいえない香りが……吐きそう)
普段はキリッとしているエレオノールのこの醜態……才人の年上のお姉さんへの憧れがますます崩れていく。
「じゃあ後は任せたよ、あたしは風呂に入ってもう寝るからね」
「えっ!?ちょっとコレはどうすんの」
「あたしはもう十分に相手したからこれ以上は付き合ってられないよ。後はサイトが受け持ちなさいよ。まかせたわよ」
「そんな~…姉さん、俺には荷が重いって~!!」
そう言ってロングヒルは風呂場に逃げていった。ああ…どうしようこの酔っ払いちゃんは。
「サイト~…こら!サイト~…ちゃんと私を介抱しなさいよ~…聞いてるの~…」
「も~…自分で介抱とか言ってるんだから、酔っ払ってるって自覚あるだろ」
「酔っ払っていて何が悪いのよ!私が悪いの?ねえ?私が悪いの?サイト~…もしかして怒ってるの?」
さっきは酔っ払ってないって言っておいて、今度は酔っ払って何が悪いときたか……マジでめんどくせ~な。
「怒ってないからね。じゃあもう寝ようか。晩御飯は食べてきたんでしょ」
「嘘……怒ってる。絶対に怒ってるもん。いつもよりも声が怖いもん」
「怒ってないよ。本当だって……酔っ払っているからそう聞こえるだけだよ。いいからもう寝ようね」
「うん…サイトは怒ってないもん。えへへぇ~…じゃあ今日はもう寝るね~…」
言っている事がさっきから支離滅裂だ。まあ、酔っ払いなんてこんなものか。
とっとと寝付かせてしまえばこの意思の疎通ができない生物から開放されるんだ、あと少しの辛抱だ。がんばれ才人!
「よ~しいい子だ。じゃあ、寝室まで行こうか。自分で歩ける?」
「……る」
「えっ、何だって?」
聞こえているのに聞こえていないフリをしているわけでは無い。本当に聞こえなかったから聞き返した。
「だから~私もサイトと一緒に寝るの!私もサイトにギュッとされながら寝るのよ!ちゃんと聞きなさいよ!」
「……えっ、何だって?」
今度は聞こえたが、あえて聞こえないフリをした。
「んも~…ルイズには出来て私には出来ないって!ずるいわよ!ずるいわよ!なんで妹だけギュッとしてもらえて私はしてもらえないのよ!何で?ねえ、何でよ?この間はギュッてしてくれたじゃないの!しかもオ○ニーだって一緒にしたじゃない!もう一回してくれてもいいでしょ!はっ……まさかサイトって年下が好きなの?そうなのね?そりゃあ男の人は年下が好きなのは知っているけどさ……だって仕方ないじゃないサイトよりも先に生まれちゃたんだもん。ううっ……うええ……でも……でもサイトの事が好きなんだもん。年下じゃないけどサイトが好きなんだもん……グスッ……そうだわ!お兄ちゃんって呼んであげるから!ねっ、どうかしら今日から私のことを妹だと思ってちょうだい。ねえ?これならサイトも…じゃなかったお兄ちゃんも良いでしょ?んふふ~…お兄ちゃんだいちゅき~…エレはねぇ~…お兄ちゃんと結婚するの~…ねえ良いでしょ?えへへ~…今日は一緒に寝ようね~…エレのこといっぱいギュッてしてくれなきゃイヤだよ。そして…こ・子供を……きゃっ!恥ずかしいよ~…お兄ちゃんのエッチィ///でもぉ…お兄ちゃんとだったら私///」
「……」
……これは明日になれば忘れてくれるんだよな?いや、忘れてあげよう。
「よ~し、じゃあ今日はお兄ちゃんと一緒に寝ようか」
「うん!えへへ~…お兄ちゃんと一緒だ!嬉しい」
年上の甘えん坊の妹とはまた稀少なキャラだな……まあとっとと寝かしつける事に全力を奉げようか。
あっ!そう言えばルイズが今日は泊まってくる事を言ってなかったな。
「あのさ…エレオノール。言い忘れてたんだけど……」
「違う~…エレって呼んでよ~…お兄ちゃんは私に対して愛情が足りないよ~…プンプンだよぉ~」
― ブツブツブツブツ!!
ひいぃ~、鳥肌が……エレって呼ぶことが愛情だったのか?
「ああ…ごめんね。あのさエレ、ルイズの事なんだけどさっきお城から……」
「ちょっとぉ!?エレと居るのに他の女の名前なんか出さないでよ!サイ…お兄ちゃんにはデリカシーが足りないよぉ~」
あっ!?今、サイトって言いそうになったな。
「ごめん!悪かったよ。その……言わないからね。お兄ちゃんはエレだけ見てるから」
「ん~…なら良し。サイトのお嫁さんは私だからね」
まあいいか……今、言っても理解できないだろうし。それにしてもキャラがブレてんな~…。
色々と諦めながら、エレオノールの寝室に入っていく才人とエレオノール。
寝かしつけるまでが長くなりそうだとため息を吐いた。
「ああ~…気持ちいい~やっぱり風呂は良いわね~…飲んだ後の風呂は最高だね~」
酔っ払いを才人に押し付けて逃げたロングヒルは1人、のんびりとお風呂を満喫していた。
「それにしても……ぷぅーー!あははははー!お兄ちゃんって…くっくっ…お兄ちゃんって言って許される歳じゃないだろ…ぷぷぷ……あはははは!腹が痛いよ~…ぷぷぷ…」
どうやら風呂場にまで2人の会話は届いていたようで……ご愁傷様エレオノール。
空が完全に暗くなり、街が眠りにつく時間となった。
そしてある王宮の一室、アンリエッタの寝室にルイズはいた。
この国のお姫さまでもあり幼馴染で親友でもあるアンリエッタから久しぶりに会いたいのでぜひ王宮まで来て欲しいという手紙をいただき、今日は王宮まで訪ねてきた。
半年振りの再会した2人、積もる話もありおしゃべりのネタは尽きない。
そして、予定していた時間が終わりお別れとなるはずだったのだが、アンリエッタからまさかの延長の申し込み。
お側にいた侍女たちの表情からこれはアンリエッタのわがままだとすぐに理解できたのだが、そこは友情を取って彼女の申し込みを受け入れた。
そして、王女さまの客人として王宮に泊まることとなったルイズ。
あの後に予定をこなしたアンリエッタを待つ事4時間。お城の中は就寝時間となっていたのでおしゃべりとかする余裕はないと思えた。
だが……。
「うふふ……まさか、このベットで誰かと一緒に寝る事になるなんて」
「……姫さま。これってバレたらかなりマズいのでは……」
「あら、その時は一緒に謝ってくださるのでしょ?ねぇ、ルイズ」
「はあ~…そういう所は昔っから変わりませんね、姫さまは」
現在、ルイズとアンリエッタはベッドに2人で寝ていた。バレないように頭からかけ布団をすっぽりと被って。
「いつもはこんな事はしないわ。今日はルイズと一緒だから……私にとってルイズは特別なの」
「姫さま……うれしいです」
お互いの息がかかるくらいの距離で見つめ合い、手を握り合う2人……ああっ…百合の花が見える。
「うふふ、じゃあ…続きをしましょうか……ねえ///、いいでしょ?」
「えっ…続きって、姫さま?えっ?まさか……ふぇ///」
「お茶会の続きです。まだまだ話したい事がいっぱいあったの……その…愚痴とかそういうので」
「…あっ、そっちですか。愚痴……ええ、いいんじゃないでしょうかね」
まさか『お、お姉さま…そんな所…イヤ///…』『うふふ…かわいいわよ、YUMI』な展開を期待していた?残念だったなルイズ。
「実は最近嫌な事があって。こんな事は王女として口にだして良いのか分かりませんが……その、あまり人に言うのは恥ずかしい事なので……」
「恥ずかしい?姫さまの、その嫌な事の愚痴がですか?」
「はい……今、思い出しても恥ずかしいというか……忘れたいような事というか……」
ここまで言っておいて口ごもるアンリエッタ。言いたいのか言いたくないのかハッキリしろと言う所なのだがそこは長年の付き合いがある幼馴染。どうすればいいのかは分かっている。
「姫さま、恥ずかしがらずに私に全部言ってください」
「え?」
「口に出して言ってしまえばスッキリする事もあります」
「ルイズ……でも……」
「姫さまの愚痴を他の誰かに洩らすような事は絶対にしません、だから安心してください」
要する何がしかの懺悔なり、八つ当たりなりがしたいのだろう。
ルイズがアンリエッタからこのように愚痴を聞かされるのは初めてでは無かった。
習い事をサボって叱られたとか、高い調度品を壊して怒られえたとか昔から愚痴を聞かさていた。
たいがいは自業自得な事ばかりだった気がする、今回の愚痴も大方そのあたりだろうとルイズは思っていた。
「ああ…ありがとうルイズ。やっぱり持つべきものは親友だわ」
「ええ、どうかこの私に姫さまの気持ちをぶつけて下さい。幸いここには私と姫さまの2人しかいません。どんな内容でも問題ありません」
「ふふふ、ありがとう。その前に1つルイズに確認しておきたい事があるのですが……」
「私にですか?ええ、私に答えられる事であれば何でも」
「その……最近、ヴァリエール家にお客さまがいらしているのはご存知ですか?」
「お客さまですか?」
「ええ、なんでも外国の……その未開な国からこちらにいらしたとかで」
お客?そんな事はルイズは知らない。ヴァリエール家の客と言えばおそらくは父の仕事関係あたりだろうか。
「すみません……私には分かりません。たぶんお父様のお仕事の関係の人だと思いますが私もお家のお仕事を全て把握しているわけでは無いので……」
「そうですか。ならちょうど良かった」
「……?」
「愚痴というのはそのヴァリエール家のお客さまの事です」
「えっと……その、私の家の客が姫さまに何か粗相を……」
「そうです!そうなんですよルイズ!あの方ときたら…」
「えっ!?ちょっと…姫さま?」
「ええ、ええ、本当に無作法な方で平民の分際で私に対して酷い口の言いようで」
「はあ…」
「しかもトリステインよりも遅れている国から来ているのにこの国の事を遅れているだの、何だのと……」
「はあ……それは困った方ですね」
「そうなのよ!しかも、散々こっちを煽っておきながらイザとなったら私の事を無視して……何なのかしら」
「ええっと……いまいち状況が分からないのですが」
アンリエッタは例の『あの方』を思い出して何かのスイッチが入ったのかヒートアップ…いや、怒りながら話していた。
(どうしよう……『あの方』という人物に何かされたのは何となくわかるんだけど、詳しい状況が全く理解できないわ)
「ああ!そういえば……思い出しましたわ」
「……えっと、何を思い出されたのですか」
「幼女趣味です」
「はあ?」
「あの方は自分より明らかに年下の……おそらく10歳ぐらいの少女たちを侍らせて喜んでましたわ。本当に汚らわしい……」
「じゅっ…10歳ですか?」
「ええ、殿方は若い女性が好きだというのは存じておりますが限度ってものがあります。あの方は女の敵です」
(え~と…お父様のお仕事の相手だから、たぶん40歳から50歳ぐらいよね……それって)
「姫さまそれは女の敵と言うよりもただの犯罪者なのでは……」
「やっぱり…ルイズもそう思いますよね」
「思いますと言うよりも、常識で考えれば普通に許されない事案なのでは……」
アンリエッタが『あの方』に何をされて怒っているのかは本当に良く分からないが50歳の男が10歳の幼女を侍らせるというのは流石に気持ち悪い。
ここはその幼女趣味の部分で話しに乗ったほうが言いのだろう。
「姫さま、その『あの方』を国外に追放してしまえば良いのでは……いくらお父様と関係がある人物とは言えこの国の風紀を乱すような方を置いとくのはちょっと……」
「……ええ、私もそう思ってます。ただ……」
「まだ何か?」
「例の『あの方』なんですがルイズのお姉さま…エレオノールさまとお仕事に関わっているようで」
「エレオノール姉さまが?その、幼女趣味の男と?」
「ええ、それだけではなくマザリーニとも仕事の件で会っていたようで……あまりさわぐとルイズのお父様の顔に泥を塗るんじゃないかと……」
「マザっ!?えっと…マザリーニ枢機卿ですか……一介の平民がこの国の宰相と会うって……」
これにはルイズも正直おどろいた。たしかに自分の父、ヴァリエール公爵と仕事をするほどの人物ならばこの国の実質ナンバー2である宰相と顔を合わせてもおかしくは無いのだが……。
ただ、アンリエッタの話を聞く限りだと件の人物は平民なのだ。さすがにおかしい。
それにあの男性が苦手なエレオノールが幼女趣味のおっさんと一緒に仕事をしているというのもルイズには信じられなかった。
「ええ、正直言ってあの方とはもう係わり合いになりたくは無いのですが……どうしても納得できない所があってこうやってルイズにお話を」
「…いえ、私のほうから話して欲しいと言ったので。姫さまが気にすることではありません」
「そう言ってくれると助かります。やっぱりルイズに話を聞いてもらえて良かったわ。少しだけ憑き物が落ちた気がします。……ルイズ、どうかしましたか?」
「……あの姫さま、私のほうからお父様に言っておきましょうか?」
「えっ?ルイズ…それって」
「いくらお仕事を一緒にされている方とはいえ流石に人を選んだほうが良いと思います。私から言えばお父様もお話を聞いてくれるかと……」
「あっ……いえ、流石にそこまでしなくても大丈夫ですよ。さすがに大事になってしまうとマズイので……」
「そうですか……ですが姫さまに対してだいぶ失礼な事をしているようですし…」
「うふふ…その気持ちだけで十分ですよ。ありがとうルイズ」
「そうですか……姫さまがそれで良いというのであれば…」
そんな感じでアンリエッタの『あの方』に対する愚痴はひとまず終わった。
その後もたわいの無い話をした。
ルイズの学院生活で楽しい事や苦しい事などの話をした。アンリエッタは面白そうに聞いてくれた。
また、アンリエッタの王宮での習い事の事やマザリーニ枢機卿や女王陛下にお小言を貰う日々など面白可笑しく語った。
ルイズもアンリエッタの話を時には笑いときには同情しながら楽しく聞いた。
そして、夜もふけて2人とも眠気がピークに達してきた。
「姫さま、そろそろ休みましょう……どうか良い夢を」
「……いっぱいおしゃべりしましたね。眠るのが勿体無い気がしますがそろそろ限界でしょうか…」
「……ああ、姫さま先ほどの話ですが……」
「えっ?先ほどの話とは……」
「エレオノール姉さまに『例の方』について気をつけるように私のほうから……明日にでも……ZZZ」
「そう…おやすみなさい。ルイズ……ちゅ」
まるで天使の様な寝顔。アンリエッタはルイズの頬にかるく口付けをして自分も眠りに入った。
次回 第41話 みつどもえなんていうレベルじゃないな、関係者が全員集合って……才人くん久々に大ピンチです(いや、マジで)
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家と言うのは憩いの場所、皆が安心して身体と心を休める場所。
トリタスニアの街には今日もHOME SWEET HOMEがどこかにある。
今回はいろんな意味でキャラ崩壊です。
というよりもあの方のキャラが完全に壊れ気味かも、理由はお話で…