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英雄伝説~焔の軌跡~ リメイク 改訂版

soranoさん

第87話

2016-03-25 00:25:50 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:941   閲覧ユーザー数:890

 

~リベール・エレボニア国境付近~

 

「……皇子!一体どういうおつもりか!久々に顔をお見せになったかと思えばこ、このような猿芝居を……!」

「ハッハッハッ。やっぱりバレちゃった?」

クローゼ達との交渉を終えたオリヴァルト皇子にゼクス中将は怒りの表情で怒鳴り、怒鳴られたオリヴァルト皇子は呑気にも本来の口調と笑顔――オリビエの口調と笑顔で悪びれもなく笑いながら尋ねた。

「当たり前ですッ!よもや皇子がリベールでこのような事を企んでいたとは……。ミュラー!お前が付いていながら何事だ!」

ゼクス中将は怒り心頭の様子で怒鳴った後ミュラー少佐を睨んだ。

「お言葉ですが叔父上……この男が、俺の言うことなど素直に聞くとお思いですか?」

「ぐっ……」

しかしミュラー少佐の正論を聞くと唸り声を上げた。

「それに俺も少々、納得がいかないこともある。『ハーメルの惨劇』……今度の一件で初めて知りましたよ。」

「!!!」

「……やはりご存知でしたか。」

「ハハ、先生があの事件を知らないはずがないだろう?当時からすでに軍の重鎮だったのだからね。」

「………………………………」

ミュラー少佐にオリビエが苦笑しながら指摘している中、ゼクス中将は目を伏せて黙り込んでいた。

 

「いやいや、先生。あなたを責めるつもりはないよ。一部の主戦派が企てただけで、先生たちは一切関与していなかったという話だからねぇ。あまりに酷いスキャンダルゆえ、徹底的に行われた情報規制……。賛成はしかねるが、納得はできる。臭い物にはフタを、女神には祈りを。国民には国家の主義をと言うわけだ。だが……」

黙り込んでいるゼクス中将に笑顔で語って目を伏せた後すぐに目を開けてゼクス中将を見据えて冷たい微笑みを浮かべて自身の意志を伝えた。

「―――同じような欺瞞を繰り返すことは許さない。」

「……ッ…………」

オリビエの表情を見たゼクスは一瞬身体を震わせて驚いた。

「先生、あなたも本当は気付いているはずだ。唐突すぎる蒸気戦車の導入……。そして不自然極まるタイミングでの出動命令……。全ては”鉄血宰相”ギリアス・オズボーンの描いた絵であることを。」

「!!」

オリビエの口からある人物の名が出るとゼクス中将は目を見開いた。

「今回の事で確信したよ。彼は間違いなく”身喰らう蛇”と通じている。その事が、帝国にとってどのような影響をもたらすかは何とも言えないが。いずれにせよ、一国の宰相にふさわしい振る舞いではあるまい?」

「………………………………。皇子、まさか貴方は……」

そしてオリビエがやろうとしている事を察したゼクス中将は身体を震わせて信じられない表情でオリビエを見つめた。

 

「フフ、そのまさかだ。10年前に頭角を現して帝国政府の中心人物となった軍部出身の政治家……。帝国全土に鉄道網を敷き、幾つもの自治州を武力併合した冷血にして大胆不敵な改革者。帝国に巣食うあの怪物をボクは退治することに決めた。今度の一件はその宣戦布告というわけだ。」

「……何ということを。皇子、それがどれほど困難を伴うことであるのか理解しておいでなのか?」

「そりゃあ勿論。政府は勿論、軍の7割が彼の傘下にあると言っていい。先生みたいな中立者を除けば反対勢力は衰え始めた諸侯のみ。さらにタチが悪いことに父上の信頼も篤(あつ)いときている。まさに”怪物”というべき人物さ。」

ゼクス中将の指摘に対してオリビエは疲れた表情で答えた。

「ならばなぜ……!」

「フッ、決まっている。彼のやり方が美しくないからさ。」

「!?」

「リベールを旅していてボクはその確信を強くした。人は、国は、その気になればいくらでも誇り高くあれる。そしてボクの祖国と同胞にも同じように誇り高くあってほしい。できれば先生にもその理想に協力して欲しいんだ。」

「………………………………。……皇子。大きくなられましたな。」

オリビエの決意を知ったゼクス中将は黙り込んでいたがやがて静かな表情で口を開いた。

 

「フッ、男子三日会わざれば括目して見よ、とも言うからね。ましてや先生に教わった武術と兵法を教わっていた時から7年も過ぎた。少しは成長したということさ。」

「フフ……そうですな。……撤退に関しては了解しました。ただし、我が第3師団はあくまで先駆けでしかありませぬ。すでに帝都では、宰相閣下によって10個師団が集結しつつあります。今日を入れて3日……それ以上の猶予はありますまい。」

「ああ……心得た。」

「ミュラー。お前も皇子に付いて行け。危なくなったら首根っこを掴んででも連れて帰るのだぞ。」

「ええ、元よりそのつもりです。」

ミュラー少佐の答えを聞いたゼクス中将は振り返り、エレボニア兵達に指示した。

「全軍撤退!これより第3師団は、パルム市郊外まで移動する!」

「イエス・サー!」

ゼクス中将の指示に兵達はそれぞれ敬礼をして答えた後撤退を始めた。

 

「やれやれ……。これで少しばかり時間は稼げたか。それにしてもホント、ボクって信用ないんだねぇ。」

撤退していくエレボニア軍を見守っていたオリビエは溜息を吐いた。

「……当たり前だ、阿呆。正直、ここまで大げさにやらかすとは思わなかったぞ。」

「どうせやるなら派手な方がいいしね~。それに君だって律儀に準備を進めてくれただろう?言わば、甘い蜜を吸い合った相思相愛の共犯者というわけだ。」

「おぞましいことを言うなっ!」

「オリビエっ!」

オリビエとミュラー少佐が談笑しているとエステル達が駆け寄って来た。

 

「やあ、エステル君。ご苦労様だったねぇ。」

「ご苦労様じゃないわよ!一体、何がどうなっているわけ!?」

「どうしたもこうしたも、まあ、見た通りのまんまさ。帝国内で怪しげな陰謀が進行していたものだからね。ちょっと一芝居をうって出鼻を挫いてやったわけだ。」

「一芝居って……あんたね。」

オリビエの説明を聞いたエステルは先程までの出来事が全て”一芝居”であった事に呆れた表情をしていた。

「敵を欺くためにはまず味方からと言うからねぇ。君たちとの本気の交渉を経てあのタイミングでアルセイユが来る……。これが今回、ボクとカシウスさんが考え出したシナリオだったのさ。」

「や、やっぱり……」

「そうだと思いましたよ。」

真実を知ったエステルは疲れた表情で溜息を吐き、ヨシュアは苦笑していた。

「……ま、そういう事だ。」

「父さん~っ!?」

自分達に近づいてきたカシウスをエステルは恨めし気に見つめた。

 

「そう恐い顔をするな。導力通信で聞いていたがなかなかの交渉ぶりだったぞ。おかげでアルセイユの登場が効果的に演出できたからな。」

「導力通信で聞いてたって……」

「まさか……あのアーティファクトで?」

カシウスの話を聞いたエステルは呆け、心当たりがあるシェラザードはオリビエに視線を向けた。

「おっと、シェラ君。それは言わないでくれたまえ。彼らに聞かれると少しばかり面倒だからね。」

「……何を白々しい。今さら隠したって遅いですわ。」

そしてオリビエが答えた時、ユリアとラッセル博士と共にケビン達――――”四輪の塔”に力を貸してくれた”星杯騎士団”の面々もやって来た。

「ケビンさん……!それにイオンさん達も……!」

「それにおじいちゃんも……!」

「…………………」

(ヨシュア……後少しだから、もう少しだけ待っててね……)

ケビン達の登場にエステルとティータが明るい表情をしている中、ヨシュアは複雑そうな表情でステラを見つめ、見つめられたステラは辛そうな様子でヨシュアを見つめ返していた。

 

「殿下……。王都での襲撃は聞きました。本当に……ご無事でよかった。」

「ごめんなさい……。心配をかけてしまいましたね。」

「ルークとレンもご苦労だったな……お前達のお陰で最悪の事態にならずにすんだ。」

「ハハ、リシャール大佐達もいたんだから俺達がいなくても大丈夫だった気がするけどな。」

「うふふ、レンは撃退じゃなくて”撃破”でもよかったのよ?あの時レンが内密に雇っている”協力員”も潜ませていたから、レンがその人に命じたら最低でも一人は確実に殺せたわよ♪」

カシウスにねぎらいの言葉をかけられたルークは苦笑し、レンは小悪魔な笑みを浮かべてその場にいる全員の表情を引き攣らせる言葉を口にした。

 

「このガキは……」

「レ、レンちゃ~ん……」

「こんな滅茶苦茶腹黒い思い付きができるのに遊撃士をやっているのが不思議なくらいだな……」

「ハア……例えあの時”執行者”を殺せたとしても、それを知った”結社”からの”報復”で後でもっと悲惨な状況に陥る可能性がある事も考えて、執行者を殺していいと思っているのかしら?」

アガットはレンを睨み、ティータとフレンは疲れた表情をし、アーシアは溜息を吐いた後真剣な表情で指摘した。

「や~ね♪そのくらいの事はわかっているわよ♪ただの冗談よ、じょ・う・だ・ん♪」

「暗殺者の銀さんを雇っているあんたが言うと冗談にならないわよ。」

「ハハ……というか”銀”もあの場にいたんだ。”執行者”達に自分の存在を悟られないように気配を隠し通すとはさすがは伝説の凶手だね……」

「”銀(イン)”だと……?ハア……遊撃士協会本部に手を回して”西風の旅団”どころかまさか”銀”まで雇っていたとはな……やれやれ、お前の行動は俺でも予測不能だな……」

笑顔で答えたレンにエステルはジト目で指摘し、ヨシュアは苦笑し、新たな事実を知ったカシウスは目を丸くした後疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「フッ、カシウスの読みを翻す行動を取るとは将来が楽しみだな。」

「そう、ですか?むしろ、心配するべき、です。アニスとレン、似ている所が、ありますし。」

「ア、アハハ……た、確かによく考えてみたら普通の人達と比べると家族思いである事に関しては似ていますね……」

「それと家族を守る為なら手段を選ばない所とかもな……」

バダックの意見に指摘したアリエッタの答えを聞いたイオンは冷や汗をかいて苦笑し、イオンに続くようにルークは疲れた表情で呟いた。

「それと……異世界から来た二人も力を貸してくれて本当に感謝している。」

「気にしないで。私は友達を守る為に力を貸しただけだよ。」

「フン、お前達が作った僕への”貸し”は必ず倍にして返してもらうぞ。」

カシウスに感謝されたソフィは微笑み、リオンは鼻を鳴らし答えた。

 

「いや~、何はともあれ今は皆が無事で良かったわい。アルセイユの改造がもっと早く終われば王都の危機にも駆けつけられたんじゃが……。思っていた以上に時間がかかってしまってのう。」

「そ、そういや……。どうしてアルセイユが空を飛んでやがるんだよ!?」

呑気な様子で語るラッセル博士の話を聞いてある事に気づいたアガットは信じられない表情で訊ねた。

「ひょっとして……『零力場発生器』の大型版なの?」

「うむ、その通りじゃ。お前さんたちに渡したのは大型版を開発するために試作したプロトタイプでな。今までアルセイユに閉じこもってようやく完成にこぎつけたんじゃ。」

ティータの推測にラッセル博士は頷いて答えた。

「そうだったんですか……」

「要するに、何もかもが父さんの差し金だったわけね?」

「人聞きの悪いことを言うな。俺はただ、皆が動きやすいようにお膳立てをしただけにすぎんさ。お前たちも自分自身の意志で今まで行動してきたんだろう?」

「そ、それはそうだけど……。そういえば、ケビンさん達がどうしてここにいるわけ?」

「ああ、ぶっちゃけ大聖堂に騎士団本部からの連絡が届いてな。”輝く環”がどういう物で、どうすれば災厄を抑えられるか大体のところが分かってきたんや。それをカシウスさんに話してたらこんな所まで付き合わされてな。」

「ええっ!?」

「”輝く環”の正体……ですか?」

ケビンの説明を聞いたエステルは驚き、ヨシュアは真剣な表情で尋ねた。

 

「―――”輝く環”とはあの浮遊都市の事ではなく、都市全体に導力を行き届かせてコントロールする古代遺物らしいのです。」

「そして、その端末があの”ゴスペル”、だったわけという事です。」

「都市をコントロールする古代遺物……」

「で、でもどうしてそんな物が導力停止現象を?」

イオンとアリエッタの説明を聞いたクローゼは考え込み、ティータは不安そうな表情で訊ねた。

「これは推測やけど……”環”は外界に存在する異物を排除する働きを備えてるらしい。この場合、異物っちゅうんは現代に造られた新たな導力器―――すなわちオーブメントってことや。」

「影響範囲内にある異物をことごとく無力化する……。いわば防衛機構といったところか。」

「その可能性は高いじゃろう。そしてそれが本当なら一条の光明が見えてくる。あの巨大さゆえ、都市そのものをどうにかするのは困難じゃが……。都市のどこかにあるという”環”の本体さえ発見できれば対策の立てようもあるはずじゃ。」

ケビンの説明を補足するように答えたジンの推測にラッセル博士は頷いて話を続けた。

「なるほど……そういうことですか。」

「本体を叩いて全てを無力化するというわけか。」

「た、確かに光明かも……」

博士の説明を聞いたヨシュアとレイス、エステルはそれぞれ納得した表情をした。

 

「ふむ、いい感じで最終目的が定まってきたようじゃないか。それでは早速、”アルセイユ”であの浮遊都市を目指すわけだね?」

「それを決めるのは”アルセイユ”を所有するリベール王家になりますな。姫殿下……どうかご決断を。」

そしてオリビエに尋ねられたカシウスはクローゼに視線を向けた。

「……分かりました。これより”アルセイユ”はヴァレリア湖上に現れた古代の浮遊都市へと向かいます。ユリア大尉、発進の準備を。」

「了解しました!」

クローゼの指示に敬礼をして答えたユリア大尉は一足早くアルセイユに向かった。

「そして遊撃士の皆さん……。どうか窮地にあるリベールに皆さんの力をお貸しください。恐らく、この件に関しては最後の依頼になると思います。」

「ふふ……そうね。」

「ま、答えは決まっているようなもんだが……」

「ここはひとつ代表者に答えてもらうとしようか。」

「そうだな……今までの事を考えたら適任者は一人だけだしな。」

「うふふ、そうね♪」

「それが”筋”というものだ。」

「ええ、彼女がいたお陰で私達が集まったと言っても過言ではないしね。」

「ん……代表者?」

シェラザードを始めとした他の遊撃士達の会話の意味がわからなかったエステルは首を傾げた。

 

「あのな……エステル。お前の事に決まってるだろ?」

「ええっ!?」

そしてルークに指摘されたエステルは声を上げて驚いた。

「ふふ……何を面食らってるんだか。確かに、それぞれ個人的な因縁は持っているけれど……。でも、何だかんだ言ってあたしたちは皆、あんたの旅に付き合わされたようなものよ。」

「その意味では、エステル。お前さんは間違いなく俺たちのリーダーってわけさ。」

「あ、あうあう……」

「やれやれ……。まだ荷が重いんじゃないか?」

「クスクス、わかっていてもここは空気を読んで黙っておくべきよ、パパ♪」

理由を聞いて緊張した様子で口をパクパクさせているエステルを見て疲れた表情で溜息を吐いたカシウスにレンはからかいの表情で指摘した。

 

「……そんな事はないよ。どんな時もエステルは前向きに、決して希望を諦めずにいてくれた。その輝きはどんな時でも僕を―――僕たちを導いてくれた。だから……エステルじゃなきゃ駄目なんだ。」

「ちょ、ちょっとヨシュア!」

「えへへ……お姉ちゃん、真っ赤だよ?」

「~~っ~~~~。あーもう、分かったわよ!クローゼの依頼……つつしんで請けさせてもらうわ!必ずや、あの浮遊都市にある《輝く環》を見つけ出してこの事態を解決してみせるから!」

ヨシュアとティータの言葉を聞いて恥ずかしがったエステルは気を取り直した後答えた。

「ふふ……よろしくお願いしますね。」

「やれやれ……何とか話がまとまったか。これで俺もようやく司令部に戻ることができる。」

「父さん……やっぱり付いてきてくれないんだ?」

カシウスの答えを聞いたエステルは若干残念そうな表情で尋ねた。

「ああ……悪いな。一時的に撤退したとはいえ帝国軍の脅威は無視できん。ハーケン門だけではなく、海からの侵攻の可能性もあり得る。もちろん王都で起こった”結社”の襲撃も予想できるだろう。この状況で王国軍を留守にするわけにはいかんのだ。」

「うん……わかってる。あたしはあたしで頑張ってくる。ヨシュアとルーク兄とレンと……それからみんなと一緒にね。だから父さんも……倒れない程度に頑張ってね」

「ああ……任せておけ。ヨシュア……お前にはこれを渡しておこう。」

「え……」

エステルの激励の言葉に頷いたカシウスは一通の手紙をヨシュアに渡した。

 

「これは……?」

「ま、ちょっとした親心さ。男と男の話だからエステルには刺激が強すぎるかな。」

「な、なによそれ……」

「……分かった。後で読ませてもらうよ。」

「ああ、そうするといい。」

「まったくもう……。男っていうのはこれだから。」

「まあ、そう拗ねるな。全てのケリが付いたら俺も休暇を取るつもりだ。その時は久しぶりに家でのんびりと過ごすとしよう。その時は、エステル。レナと一緒にまたあのオムライスを作ってくれ。」

「あ……。……うん、任せといて!」

「うふふ、その時はレンも一緒に作ってあげるわ♪」

そしてアルセイユ離陸し、浮遊都市に向かって飛び去った。

 

「………………………………」

「いいのか……カシウス?そんなに心配ならば行っても良かったのだぞ?」

浮遊都市に向かって行くアルセイユを見送っているカシウスにモルガン将軍は指摘した。

「いや、いいんです。例のワイスマンという男……。思っていた以上に危険極まりない。私が同行していた場合、恐らく手段を選ばないでしょう。」

「確実に抹殺してくるか……。……やれやれ。お前も随分買われたものだな。」

「まったく、えらい迷惑ですよ。ですが、逆にそこに付け入る隙が出てくるでしょう。」

モルガン将軍の推測に疲れた表情で溜息を吐いて答えたカシウスは気を取り直した。

「虚実入り混じった読み合いか……”鉄血宰相”の方はどうだ?」

「あちらもあちらでやっかいな御仁ですが……。まあ、こちらがこれ以上隙を見せなければ大丈夫でしょう。」

「ふむ、そうか……。全ては”アルセイユ”の一行にかかっているというわけだな……」

「ええ……」

モルガン将軍の言葉に頷いたカシウスは空を見上げ

(……女神よ……。あの子たちの足元をどうか照らし出してくれ……。この大いなる空の下……自らの道を見つけられるように。)

心の中でエステル達の無事を祈った…………


 
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