「あいたたたたたた……」
「あ……あれ……? 確か、あの黒い空間に吸い込まれたはずじゃ……」
「お、お姉ちゃん……ちょ、ちょっと……降りて……」
ジャンヌが下を見ると、彼女の下にゲールが、
ゲールの下にバイオレットが、といったお山状態になっていました。
三姉妹は、どうやらある建物の中に落ちてしまったようです。
「あ、す、すみません!」
「うーん……一体、何があったんですか」
お山状態から解放されたゲールは、まず、上にある窓を見ました。
すると、そこからは光が差し込めていました。
どうやら、時刻は朝になっているようです。
「ああ、どうしましょう……」
「姉さん、早くここから逃げましょう!」
「そうですね!」
三姉妹は慌てて走り出しました。
しかし、建物から出た後に広がっていた光景に、三姉妹は止まりました。
「こ、これは……!?」
「神界ではない……!?」
その光景は、三姉妹が見慣れた、神界のそれではありませんでした。
空も大地も、見慣れた神界と比べて美しくなく、しかも、剣を持った人が魔物と戦ってもいました。
「い、一体何が起こっているのでしょうか?」
ゲールは大急ぎで剣を持った人のところに向かいました。
ジャンヌとバイオレットは急いで彼女を追って走りました。
「はあ、はあ、まだ、減らないのか?」
どうやら、剣を持った人は男性のようです。
魔物と戦い続けた事により、身体も心も、ボロボロになっているようです。
そんな人を、ゲールは放っておけなかったのでしょう。
「すぐに癒します!」
「あ、ああ、頼む……」
「癒しの光よ、彼の者に活力を与えたまえ……ヒールライト!」
ゲールが呪文を唱えると、男性の傷が瞬く間に癒えました。
見習いとはいえ、ゲールは神であるため、その回復魔法の回復量は人間のそれを遥かに上回ります。
そのため、彼女にとっては「この程度の傷」は簡単に完治させる事ができるのです。
「傷が完治した……。お前は何者だ?」
「まずはお礼だけ言ってください」
「ありがとう、この恩は忘れない。では、俺は戦いを続ける」
「待ちなさい! またボロボロになってもいいのですか?」
「……」
ゲールの言葉により、男性は手を止めました。
「ゲール!」
「お姉ちゃん!」
そこに、ゲールの姉ジャンヌと妹バイオレットが現れました。
「一体どうしたのですか!」
「この人、ずっと魔物と戦い続けていたんで、かなり怪我をしていたようです。
怪我は私が治しましたが……このままでは危険だと判断いたしまして」
「ゲール! 魔物が大量にいる中で暢気に話すのはさらに危険です!
まずは、魔物のいないところに行きましょう!」
「そうですわね! ほら、行きますよ!」
「……あ、ああ」
三姉妹と男性は、急いで魔物のいないところに行きました。
「なるほど……あなたは両親を、魔物に殺されてしまったのですね」
「ああ……その復讐のために、俺は魔物と戦い続けているんだ」
「そういえば、あなたの名前を聞いてなかったわ。なんて言うの?」
「俺の名はエルダー・ハンヌだ」
男性はエルダー・ハンヌと名乗りました。
「あ、わ、わたくしはジーン・ウィンと申します」
「その妹のゲルダ・ウィンです」
「さらに妹のヴィア・ウィンだよ!」
三姉妹は咄嗟に偽名を名乗りました。
神様だとばれてしまえば、大変な事になるからです。
「ああ。よろしくな、ジーン、ゲルダ、ヴィア」
「「「はい!」」」
これが、人間の剣士と、見習い三女神の、初めての出会いとなりました。
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この物語は、人間キャラには必ず名字をつけ、神キャラには必ず名字をつけません。区別のためにそうするのです。