No.837175

模型戦士ガンプラビルダーズI・B 番外編2※百合っぽいので注意

コマネチさん

番外編2 「アイの過去回想その1」

※今回は百合的な描写が有る為注意!

2016-03-13 22:20:04 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:678   閲覧ユーザー数:664

「やったねアイ!二回戦も突破!」

 

多目的アリーナのガンプラバトル会場。試合結果のアナウンスが流れる中、Gポッドから出てきたナナは同様にGポッドから出てきたアイに駆け寄る。ケイ三兄弟を退けた後、二回戦も難なく勝利する事が出来た。

 

「うん!ナナちゃん!」

 

「で、手を上げて頂戴。ハイタッチしたいから」

 

「あ、うん」

 

片腕を上げてハイタッチの体勢を取るアイ、ナナはその上げた手に勢いよくハイタッチをする。パイロットスーツを着ていた為手袋越しだったが音は勢い良く響いた。

 

「まだ二回戦を勝ったっていうのに気が早いっスねーハジメさん」

 

ソウイチとツチヤもGポッドから出てくるとアイ達に近づいてくる。ツチヤはにこやかだがソウイチには呆られながら言った。

 

「いいじゃない。一回でも負けたら終了なんだからさ」

 

「そうだね。私も少なくともノドカと戦うまでは負けられないよ」

 

「ハッ、言ってくれるじゃねぇか。アイ」

 

 アイが言った直後、アイに話しかけてくる女の子がいた。目力のある桃色ツインテール。アイの幼馴染のノドカだ。

 

「ノドカ」

 

「フフン。アタシらも二回戦は突破したぜ。アタシもアンタに勝つまでは負けるつもりなんてねぇんだからな」

 

 片手を上げたままノドカは言う。しかも若干そわそわしてる。

 

「……なんで片手だけ上げてるの?」

 

「……アタシにもハイタッチしてよ!」

 

 ムッとしながら恥ずかしそうに返すノドカ。「え?あぁうん!」アイはたじろきながらも、むくれるノドカの手にハイタッチ、満足げな表情を見せ、手を下ろすノドカ。

 

「でもさ、トーナメント表は見たけどアイ達のチームとノドカのチームはブロックが違うよ。バトルするとなると決勝になっちゃうわよ」

 

 水を刺す様な発言だが、ナナは思った事を口にした。そう、今回の大会のトーナメント表は32チームが2ブロックに分かれている。アイとノドカのチームがかち合うには決勝まで勝ち進む必要があった。

 

「ナナだっけ?アンタのレベルじゃ不安になるのも仕方ないでしょうね。でもま、この程度の大会レベルじゃアタシもアイも遅れを取るとは思えないけどね。キヒヒ」

 

 皮肉付きのノドカの返しだ。自分が言いだしっぺと分かってはいたがムッとするナナ。

 

「失礼な事言わないでよノドカ、ナナちゃんはあなたが思ってるよりずっと強いよ」フォローを入れるアイ。

 

「ま、それを確かめるのは決勝でね」

 

 と、そこで三人の様子を見ていたツチヤが、かねてから疑問に思っていた事を聞く。

 

「それはそうと、ユミヒラさん、気になっていたんだけど」

 

「ん?眼鏡の……ツチヤさんだっけ?何さ」とノドカ

 

「眼鏡……まぁいいや。チームメイトの二人は近くにいるのかい?」

 

 ツチヤに発言にナナも疑問に思った。

 

「あーそっか。チームって事は三人いるのよね。どんな人なの?ア…ッッ!!!!!!?」

 

 その時だった。ナナの尻に妙な感触が走った。誰かが触ったのだ。溜まらず顔を真っ赤にし、両手でお尻を遮りながらナナは凄い勢いで振り返る。

 

「だ!誰よ!!今触ったの!!」

 

「おやすまない。君のスタイルがなかなか良かったのでね。……ざっと85㎝と言ったところか」

 

 後ろにいた人物がしれっとした口調で言った。少女だ。目の前には前髪ぱっつんで長髪。身長は170㎝近くあり、顔つきは精悍さと気怠そうな雰囲気を併せ持っている。妙な雰囲気を醸し出していた。

 

「あ、副部長。お久しぶりです……相変わらずですか」アイは呆れながら言った。

 

「やぁアイ、久しぶり、これでもセーブはしたつもりだよ。胸の方が形はよさげだったから揉みしだきたかったんだがね」

 

 その発言に「ひっ……」と絶句し、離れるナナ。それをよそに、副部長と呼ばれた少女は表情を変えずに淡々と喋る。表情に反して動いてる部分はわきわきと動く手の指と、徐々にナナとの距離を積めようとする足だった。しかし、突如副部長の両脇から手が伸び、そのまま副部長の体を持ち上げ羽交い絞めにする。手は男の物らしい、かなり肉がついていた。

 

「あのさぁ、ユメカ。久しぶりにアイちゃんに会うんだからそういうセクハラはやめようって言ったじゃない。怖がってんじゃないの……」

 

ギリギリと音を立てて副部長にかかる両腕に力がこもる。副部長の後ろにいる人物の声はかなり怒気がこもっていた。

 

「う……す、すまない。ノゾム。痛い、ちょ、痛いから手ぇ離して」

 

 脂汗を流しながら懇願する副部長

 

「部長もいたんですか。よかったぁ」安堵するアイ

 

「当然だろアイ。副部長止められるの部長だけなんだから」とノドカ

 

「ヤタテさん。この人達も引っ越す前の友達スか?」状況を飲み込みきれないソウイチがアイに尋ねた。

 

 

「と、まぁ恥ずかしい所は見せてしまったけど、僕がアイちゃんの昔所属していた模型部の部長、『ケンモチ・ノゾム』(剣持希望)といいます。高校三年生だよ」

 

 場所を移してラウンジにて、テーブルに向かい合う形で座って自己紹介を始める。さっき副部長を羽交い絞めにした恰幅のいい少年が自己紹介をする。太っていて短髪、目つきの鋭いマツオと対照的に穏やかそうな笑顔を湛えた少年だ。

 

「引っ越す前は模型部にいたんスか。ヤタテさん」

 

 ソウイチの問いに「うん」と返すアイ

 

「そして副部長の『タテノ・ユメカ』(盾野夢佳)同じく高校三年生だ」

 

 長髪の少女がナナに向けて頭を下げる。ナナは警戒したまま挨拶を返した。

 

「まぁ他にも私達の仲間は紹介したい所だがとりあえずは私達二人だけとしておこう。いずれ君達の事もよく知りたいからね」

 

「副部長、ナナちゃんの胸見ながら言うのやめてください」と渋い顔をしながらアイは言う。

 

「大丈夫だよアイちゃん。ユメカにはこっちから監視しとくから、さて、そろそろお昼休みだ。会ってそうそうだけど僕達は戻るよ。ユメカ行くよ」

 

「え?部長、お弁当一緒に食べないんですか?一応作ってきたんですけど」

 

「私達の方は元々外食の予定だったんでね、皆を待たせるわけにはいかないさ」

 

「じゃあアイ、アタシも戻るよ……」

 

 渋々とノドカは戻ろうとするが……、

 

「いや、ノドカ君は残れ。顔に残りたいって書いてあるぞ」

 

「え?でも……」

 

「折角久しぶりに会えたんだから、もっと話でもしなよ」

 

「皆には私達から言っておくから、ただし代償として胸を揉「やっぱいいです」「冗談だ。何もいらないから行っておいで」

 

「……有難うございます!」

 

 ノドカは深々と頭を下げると嬉しそうにアイ達に駈けていった。

 

 

「おーアイちゃーん!!こっちだこっちー!!」

 

 アイ達は別のラウンジに移動。こちらはテーブル等はない巨大な部屋だが、そこかしこにビニールシートを敷いて、買ってきた物や作ってきた弁当を食べながら談笑するビルダー達が見えた。入り口付近で見回すと恰幅のいい50代のヒゲ中年。ブスジマが手を振って場所を教えてくれた。靴を脱いだブスジマの周りにはタカコ達やブスジマのチームメイトがビニールシートを敷いて、座ってるのが見えた。

 

「工場長。お待たせしました」

 

「おーもう腹ペコだぜ。早く皆で食べようや!ガッハッハ!」

 

 どっかとその場に豪快に胡坐をかくブスジマ、そしてカナコが、ミドリが弁当を取り出す。元々弁当を作ってくる担当は話し合いで決まっていた。カナコとミドリ、そしてアイの三人だ。

 

「大目に作ってきたからこの人数でも充分間に合うはずだよ」

 

「悪いね。俺達の分まで用意してくれて」

 

 重ねた弁当箱を展開するアイを見ながらツチヤは少し申し訳なさそうに言った。

 

「別に苦にもならないですよ。なんかこの間、久しぶりに料理作ったらまた自分の中で火がついたみたいで」

 

 ウキウキしながらアイは弁当箱を開ける。一番上の弁当箱にはおにぎりが何個も詰まっており、下の箱には卵焼きやら小さいサイズのハンバーグ、焼きそば等が入っていた。

 

「遠足じゃあるまいし、こういう時にまで親や友達が作った弁当食べる事になるとは思わなかったっスよ」

 

「だったらソウイチだけ別の所で食べる?」と若干刺々しくソウイチの母、カナコは言う。ソウイチは慌てて「そういう意味で言ったんじゃないよ!」と返した。

 

「……昔もさ、部活とかで弁当作ってほしいって奴に作ってあげたりしたよね。アイ、懐かしいよ」

 

「そういえばアイちゃん。昔の部活の話っていうの、聞きたいなあたし」

 

「え?タカコちゃん?」

 

「お、いいね~酒の肴ならぬ弁当の肴ってか?」

 

「僕も気になるな……少しでいいから話してほしいな……」

 

 それからどんどん自分も聞きたいという意見が飛び出す。

 

「うん、せっかくだから話そうかな。……で、どの話しようか、ノドカ」

 

「あ?なんでアタシに聞くんだよ」ノドカはそう言いながらアイの作ったおにぎりを頬張る。

 

「いやーどうも昔話っていっても範囲広すぎて」

 

「別にこういう部活だったって伝わればいいだろ?」

 

「そうだね。じゃあとりあえず当たり障りのない所から……」

 

 

 アイがどういう学校生活をしていたか、それはアイの言葉を、それをノドカの回想を通して話を進めよう(ナナ達知らない人に最小限伝えるだけのアイの言葉では、どうしても省略する部分が出来てしまうからだ)

 

 アタシとアイが住んでいた街『玄礼木市(くろれきし)』の、『市立冬宮(とうぐう)高校』そこがアタシとアイの通っていた高校だ。時は六月の曇り空のある日、アタシは一人自分の所属する模型部へと廊下を歩いていた。廊下では下校やアタシと同じ様に部活に向かう様々な生徒と行き交う。でもそんなのはアタシにとってどうでもいい事、普段授業がつまらない分、部活にだけは一層やる気が出てくる。アタシは模型部が好きだ。アイのいる部活が、

 

「ちょっとユミヒラさん!見つけましたよ!!」

 

 と、階段の踊り場からいきなりアタシの目の前に数人の生徒が立ちはだかる。ピンで征服と繋げた左腕の腕章が目立つ、生徒会の連中だ。

 

「あなたの班、庭掃除担当なのにまたアナタの分担はアイ先輩に任せましたね?」

 

リーダー格の女子が前に出ながら言う。真ん中わけでたれ目だけどキッツイ奴、胸と態度がデカい女『マトイ・マコト(的射真実)』アタシに何かと突っかかって来る。

 

「いいじゃねえかよ。今日のはその前にアイの掃除当番をアタシが代わってやったんだから、今日のはアイも班の皆だって了承してるんだ」

 

「そういうわけには行きません!!定められたルールを勝手に変えるなど許されません!こんな雨の日にアイ先輩に掃除をさせるなど!」

 

 マコト、アタシらと同い年なのにアイに対しては『先輩』とつける。なんでも小学生時代、習い事の関係でそう呼び続けているとか、実はもう一つアタシをやっかむ理由はあるんだけどな。

 

「それ以外にも罪状はあります!その着崩した下品な制服の着方。そのピンクの髪」

 

「あ?いいじゃねぇかよ。別に校則違反にはなってねぇんだから!」

 

「そうは参りません!あなたの所為で学校の印象が悪くなるわけには行きません!アイ先輩も不良になってしまったら大変です!」

 

「はぁーあ、滅茶苦茶だなおい」

 

 アタシはため息を吐くと一呼吸おいて言い直す。

 

「結局アンタ、アイが大事ってわけかよ?アタシ以外にも取り締まる不良はたくさんいるだろうが」

 

「な!何を!」

 

「あ、いたいた。ノドカー、掃除終わったよー」

 

 と、そこへアタシの見知った奴がこっちへ来る。アタシの赤ちゃんの時からの親友、アイだ。

 

「あ!アイ先輩!こんにちは!!」

 

 明らかにマコトのテンションが上がる。

 

「あ、マコトちゃんこんにちは。ノドカ、先行っててって言ったのにどうしたの?」

 

「あ?マコトの奴らに捕まったんだよ」

 

「少々風紀の乱れについて注意しまして、それよりアイ先輩。以前のワタシの提案考えて頂けましたか?」

 

「『模型部やめて総合手芸部に来い』って事?悪いけど模型部を動くつもりはないよ」

 

 『総合手芸部』個人や趣味での刺繍や編み物、手を使っての製作物を揃えた部活だ。生徒会の息のかかった部活で、マコトは生徒会とそこの掛け持ちだ。当然その中には模型も含まれてるから模型部とは衝突が絶えねぇ。さっき言ったもう一つの理由ってのはこの事だ。

 

「な、何故ですか?ワタシ達の所は模型以外にも沢山のジャンルを取り揃えてます。部活上の繋がりがあれば人の繋がりも大きくなります。わざわざ模型部という一つのジャンルに固執する必要もないでしょうに」

 

「私は今の部活が好きだからだよ。確かに規模が大きくなれば環境もよくなるかもしれないけれど、私一人だけ移る気にはなれないよ」

 

 予想は出来てたけどやっぱりアイは誘いを断った。アイはいつでもアタシの期待を裏切ったりはしない。

 

「いずれは手芸部は料理関係も取り入れます。その暁にはアイ先輩には料理担当の部長をやって欲しいのです!」

 

「悪いけど今は料理でそこまで上手いつもりはないよ、というかせめて模型部員全員が手芸部に移るとかじゃダメなの?」

 

「それは出来ません。模型部のトップにはあの『魔女』が……」

 

「魔女?それは誰の事かな?」

 

 その言葉と共にマコトの後ろから手が伸びてきて、マコトの胸を鷲掴みにした。後ろに誰かいる。アタシとアイはその人物を知っていた。

 

「ひゃうッ?!!!」

 

 マコトの口から色々感情が混ざった声が漏れた。表情は恥ずかしいと今の状況が理解できないのが混ざった顔だ。

 

「ふ!副部長!」

 

「げ!生徒会潰した魔女!」

 

 アイとマコトが叫ぶと共に後ろの人物は手を離す。姿を現したのは副部長『タテノ・ユメカ』だった。

 

「何か険悪な雰囲気が見えたのでね、何か事件でもあったのかい?」

 

「今思いっきりマコトちゃんにセクハラかましたのが事件です副部長」

 

「いやいや、掴みがいのありそうな胸があったのでね。しかしマトイ・マコト君だったかな?君の胸は弾力より柔らかさの方が上だな、どちらかと言えば前に掴んだ若干肉のあるお腹の方が揉みがいがある」

 

「っ!!」

 

今度は恥ずかしさと嫌悪さが混ざった表情だ。次に副部長は別の生徒会女子に目を向ける。自信のなさそうなオドオドした子だった。

 

「おぉ君は、大きさこそ劣るが胸の揉み心地は君の方が上だった。見事な胸だよ。しかし残念だ。揉み心地はマコト君のお腹の方が上だ」

 

「えっ」

 

「そうだマコト君、もう一度揉ませてくれないか、君の若干肉の余ったお腹を……」

 

手をワキワキさせる副部長。表情に変化はないけど若干声が震えてる辺り本気だ。いつも思ってるけど変態だこの人。

 

「ふ!不愉快です!今日はここで退却します!ユミヒラさん!次は制服と髪を正してきなさい!」

 

「やなこった」とアタシは舌を出して見送った。見送る生徒会の後ろ姿「何誇らしげな顔してるの!」とマコトは、さっき副部長が胸の感触がいいと言った子をどついていた。悔しがってやんの。

 

「さて、邪魔者もいなくなったし行こうか。私たちの部活へ」

 

廊下のさっきの所から少し離れた技術室、そこがアタシ達の部室だ。特別教室を使ってるだけあって中は普通の教室より広い。

 

「やぁ皆、遅かったじゃない」

 

入ったら待っていたのは恰幅のいい男、『ケンモチ・ノゾム』と数名の部員達だった。

 

「生徒会の連中に絡まれたんですよ。アイまで手芸部に来いとか言いやがって、何考えてんだあいつ等」

 

「仕方ないだろう。前々からここの生徒会は嫌われてるからね。特に模型部は生徒会から目の敵だ……」

 

「ユメカ、その話を自分から言うんじゃないよ」

 

「ふ、そうだったなノゾム」

 

珍しくしんみりした顔の副部長。昔何かあったらしいけどこの当時のアタシ達には知る由もねぇことだ。

 

「それよりアイちゃんとノドカちゃん。もうすぐ『イングレッサ』で模型部選抜ガンプラバトル大会があるよ。二人とも学校代表として出てもらうからにはしっかりやってくれよ」

 

部員の一人がそう言った。『イングレッサ』っていうのはアタシ達のいきつけのおもちゃ屋、五階建てのビルそのものが店になっており、ガンプラ関係も非常に充実してる。そこでここら一帯の模型部の代表選手を集めてガンプラバトル大会を開こうって催しがある。それの代表でアタシとアイが選ばれたってわけだ。

 

「解ってますよ。その為に新機体作りましたから」

 

「残念ですがそれは無理です!」

 

持ってきた箱から新作を取り出そうとするアイだけど、ある人物によって遮られた。その声を聞いてアタシは『ゲッ』となった。マコトだ。今度は取り巻きは全員男子になっていた。副部長のセクハラ防止の為か、男子はマコトを守るみたいに取り囲んでいた。

 

「学校代表は私達手芸部も出ます。あなた達の出る幕はありませんよ」

 

「おやマコト君、お腹揉まれに「来てません。まぁ今日の所は練習試合の申し込みと言った所でしょうか。代表の一人はワタシですからね今日はアイ先輩とバトルがしたいんですよ」

 

「あ?なんでアイとなんだよ。普通アタシじゃねぇのか」

 

「模型部最強とうたわれたあなたも頭はカラッポですか。実力差が離れすぎた人と戦っても練習になるわけないじゃないですか」

 

 いちいちトゲのついた発言がムカツク。アタシがアイといつも一緒なのがそんなに嫌か。

 

「ま、そんなピンク髪じゃ頭の中もピンク一色でしょうけどねぇ。あなたみたいなのがアイ先輩と一緒にいる資格なんてないですよー」

 

「っ!!てめぇっ!!」

 

「うわぁっ!!ノドカ!やめて!!」

 

 掴みかかろうとするアタシをアイが腕を掴んで必死に止める。

 

「止めるな!アイ!」

 

「そうだ。落ち着けノドカ君」

 

「副部長!!止めるふりして胸揉むな!!」

 

 ついでに部長がアタシの胸を後ろから掴んで止める。ホンットこの人は!!

 

「何どさくさに紛れて胸揉んでるのかなユメカ」

 

「うぉぉぉ……ごめんノゾム……つい……」

 

 そんな副部長の顔面を部長がアイアンクローで止める。マコトや他の部員もそれを呆れながら見ていた。

 

「とにかく、試合だったら応じるよマコトちゃん。でもその前にノドカに謝ってほしいな」

 

「……嫌ですよ。どうしてもって言うなら試合に勝ったなら謝りましょう」

 

「受けて立つよ」

 

 

 そしてアタシ達はイングレッサに移動、ガンプラバトルのある階層へ向かう。模型コーナーの一部をくり抜いたガンプラバトルのスペースだけど、店自体が大きいからかなりのスペースがある。アタシ達は観戦モニターを見ながらアイのバトルの行く末を見守っていた。フィールドは宇宙空間だ。

 

「ガンダムAGE-1E!行きます!!」

 アイの新作ガンプラが見えた。ガンダムAGE-1を改造した機体で、本体には変わった所は見られない。でも手に持った武装が違っていた。『アストレイグリーンフレーム』という機体のツインソードライフルという、大型ビーム銃剣付きライフルになっていた。シールドもアストレイの物になっていた。

対するマコトの機体は『Gガンダム』に登場したノーベルガンダム(髪はバーサーカーモード、左右端の髪はちょっとカットしてある)見れば背中にはGNアーチャーという機体のバックパックがついていた。ミサイル内蔵の大型のブースターが左右二機、更に二丁拳銃(銃身の先にビームサーベル付)を持っており、よく言えば弱点を補っている。悪くいえば長所を殺した改造とアタシは感じた。(Gガン系は格闘特化な為)

 

「アイ先輩!勝負ですよ!」

 

「ノーベルガンダム!?あの改造は!」

 

 すげぇスピードでノーベルガンダムはAGE-1に迫ってくる。GNアーチャーのライフルに取り付けられたビームサーベルを発生させ、迫るマコトのノーベルガンダム。アイはツインソードライフルのビーム銃剣で迎え撃つ。ノーベルガンダムはビームサーベルを交差させ、アイは銃剣を構えてぶつかり合う。

 

「くっ!!スピード加えての勢いがこんなにあるなんて!!」

 

 弱音を吐くアイ、でもAGE-1はノーベルガンダムの勢いを受け止めた。

 

「へぇ!やはりアイ先輩の作ったガンプラ!出来がいいって事ですか!GNアーチャーの勢い付きのビームサーベルを受け止めるなんて!」

 

「当然!ノドカからのお墨付きだもの!」

 

 ふふん。アタシの名前を出す辺り理解出来てんじゃんアイ。なおもマコトはGNアーチャーのブースターで押し切ろうとするも、アイは左腕のシールドの先端部分で殴りつける。衝撃で離れるノーベルガンダム。距離は中距離。すかさずアイは追い打ちをかけようとライフルを撃ちまくった。ノーベルガンダムはその場から一旦離れようと距離を取りつつ、背部ブースターからミサイルを撃ちまくる。

 

「っ!」

 

 アイは後退しながらライフルでミサイルを迎撃、爆発により誘爆するミサイル。AGE-1には当たらなかったがノーベルガンダムが撤退する時間は稼げた。辺りを見回すアイ。近くに廃棄衛星とか浮かんでるんだから隠れりゃいいのに……、

 

「やっぱり一筋縄ではいかないんですねアイ先輩、素敵です。ならとっておきで決めます!!」

 

 そういうとまたミサイルが飛んできた。さっきより数は多い。「おんなじ事だよ!」とアイはミサイルにライフルを撃ち迎撃する。それに起こる爆風の中をノーベルガンダムは突っ切ってきた。

 

「来たっ!!」

 

 アイはライフルで打ち落とそうとするも、ノーベルガンダムは急激に角度を変える。

 

「っ!」

 

 そして円の動きを描きながら、そして高速で動きながらAGE-1目がけてビームライフルを撃ちまくった。前後左右からの攻撃にAGE-1は防戦一方になる。もっと動けばよかったのに。そしてアイのAGE-1はツインソードライフルを右腕ごと失い、その場にうなだれた。全身もうボロボロだ。これを見ていた時、正直言ってハラハラしっぱなしだった。

 

「トドメと参りますか!!」

 

 そう言うとマコトのノーベルガンダムはビームサーベルを銃身に発生させAGE-1目がけて突っ込んでくる。しかしその時だった。AGE-1の黄色い瞳が強く輝いた。まだ諦めてないぞとでも言うかのように。

 

「甘い!」

 

 アイはそういうとAGE-1のシールドをノーベルガンダム目がけて投擲。「ただのシールドを投げた所で!」そうマコトは言った。だが直後、シールドの先からビームサーベルが発生、

 

「何!」

 

 慌ててマコトはビームサーベルをよけようとノーベルガンダムの角度を変える。しかしそれが災いし、GNアーチャーの左側ブースターをビームサーベルが切り裂いた。単純にこれはマコトの判断ミスだ。バランスを崩したノーベルガンダムは加速を中断しその場に止まる。しかしそこへアイのAGE-1が迫る。シールドを投げたすぐ後、自分も高速でシールドを追いかけたのだ。

 

「隙あり!!」

 

「あぁっ!!」

 

 アイはそのままビームサーベルを振り下ろす。対応しようとしたマコトだがノーベルガンダムはそのまま切り裂かれ爆散、アイの勝ちだ。ったく!ハラハラさせて!

 

「御免なさい。ユミヒラさん、不愉快にさせる事を言ってしまって」

 

 約束通り、深々と頭を下げるマコト、アイが絡むと途端に素直になるなコイツは……とはいえアタシ自身こいつの誠意を無下にするわけにはいかない。アイも見ているし、

 

「ま、謝ってくれりゃ別にかまやしねぇよ。それにしてもアイ、防戦一方だったじゃねぇか。もっとあぁ言う所は動かなきゃ駄目だぜ」

 

「えーいいじゃん勝ったんだから。それにまだ慣れてないんだもの」

 

「言い訳しない」

 

「普段アイ先輩に頭が上がらないからってこういう時だけ強気ですか」

 

 ボソッと皮肉を言うマコト、アタシにとってはかなりムッと来た言葉だった。

 

「なんだとマコト!」

 

「ふん!今回は所詮練習に過ぎません!大会の時はこうはいきませんよ!!帰りますよ!……ユミヒラさん!やはりあなたはアイ先輩の足かせです!もっと彼女には相応しい人間がいると言う事を忘れないで下さいね!!」

 

「マコトちゃん!!」

 

 アイとアタシが反応するも、一目散にマコトはその場を後にした。……副部長がその横で手をわきわきしながら我慢していたのはノーコメントで。

 

「……アイ、さっきはアタシも言い過ぎたな、ちょっと思いついた追加武装があるから作ったら使ってくれよ」

 

「本当?有難うノドカ。大会までにもっと頑張らなくちゃ」

 

 笑顔で答えてくれたアイ、……子供の時からずっと思ってたけど、やっぱり好きだ。こいつの笑顔。その一方で『アイ先輩の足かせ』という言葉がアタシに突き刺さる……。

 

 

 その後は各自解散と言う事で皆イングレッサから家に帰ることになった。

 

「しょっちゅうイングレッサに寄ってるから時間節約できてラッキーだな」

 

「本当だね。あ、雨降ってるよ」

 

 店の自動ドアを開けたアイが空を見上げながら言った。かなりの勢いだ。

 

「マジかよ。アタシ傘持ってきてねぇぞ」

 

「私は折り畳みの持ってきてるけど、一人用だから狭いよ。濡れるのやだし」

 

「そうだ。アイ、いい事思いついたぜ」

 

 

「ノドカ……私……」

 

 お互い指を絡ませながらアイが憂いを秘めた目でアタシを見つめる。

 

「なんだよ、アイ……」

 

 アタシはお互いの体温を感じながらアイに聞き返した。雨の所為か指先が冷たい。

 

「周りの視線が痛いよ。ヤダよこの体勢」

 お互い向かい合う体勢にアイは文句をたれた。アタシだって嫌だよ。濡れるの嫌だからお互い向かい合う形で片手で傘を持って、もう片方の手で、手をつないでスペース確保しながら移動するという方法を取った。コンビニまで近いからという理由でアイにはごり押ししたが、やめときゃよかったとちょっと後悔。

 

「悪い、我慢して。コンビニでビニール傘買うまでの辛抱だから」

 

 嫌ではあるけど、アイとこんなに向かい合って密着するのいつ以来だろう。なんか懐かしい。なんだかもう少しこのままでいたかった。……今にして思えば、こんなおかしな方法取ったのも、もしかしたら『アイの一番はアタシ』と自分や周りに言い聞かせたかったからなのかもしれない……思い出したらまた恥ずかしくなってきたぁぁ!!!

 

――小さい頃も、こんな目にあった時も、アタシはアイとずっと一緒だって、疑いを持たなかった。――

 

「とまぁそんな部活やってたんだよ」

 

 アイがアタシの回想と同じ事を話す。とはいえマコトや傘の下りは大幅カットなのは言うまでもねぇ。

 

「生徒会と対立してたわけ?結構向こうでもスリリングな部活やってたわけね」

 

 ナナの奴が呑気そうな声を上げた。全員が話を聞きながら弁当を食べていたのでもうほとんど弁当は残ってない。

 

「で、結局大会はどうなったの……」

 

「それはねムツミちゃん「あの、ヤタテ・アイさんですよね」

 

 突然ガキ共が数人話しかけてきた。大会に参加した選手ってわけではなさそうだ。手にはガンプラを持っている。

 

「アイさんのガンプラを参考に改造に挑戦してみました。よかったら見て貰えますか」

 

「うん、いいよ。ゴメンムツミちゃん。ちょっと待ってて」

 

 話を中断させてアイはガンプラへのコメントを始める。アタシはスマホでの時間を確認した。もうそんなに昼休みの時間は残ってない。多分話す前に午後の試合は始まるだろう。かつての親友と再会は出来たけど、変わりつつあった親友の環境に、アタシの心はちょっとモヤモヤしていた……。

 

コマネチです。今回はアイの過去話となります。アイとノドカのいちゃラブが要望で多かった為、書いてみました。今後も隙あらば書きたいですね。ではまた。


 
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