No.83062

真・恋姫†無双~江東の花嫁達~(番外壱)

minazukiさん

七夕のお話です。
今回は雪蓮ではなく蓮華と一刀のお話です。

2009-07-07 23:00:02 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:17877   閲覧ユーザー数:13259

(番外壱)

 

 一刀がようやく病から解放されてから訪れた夏の夜。

 

 久しぶりの宴会で羽目を外した雪蓮と祭から何杯も酒を飲まされた一刀は冥琳と華雄という新しい生贄に任せて外へ涼をとりにいった。

 

 屋敷の宴会場からは笑い声が絶えなかった。

 

「さすがに病み上がりに飲まされるときついな」

 

 だがそれは嫌な気持ちでもなかった。

 

 誰もが一刀を心配していたことを嫌というほど感じていたため、逆にバカ騒ぎが出来て嬉しいぐらいだった。

 

「雪蓮も祭さんもザルだなあ」

 

 普通ならば二日酔いで翌朝には悶絶するだろうに、あの二人に関してはそれが別世界のことのように思えた。

 

「星が綺麗だな」

 

 夜空を見上げると幾千の星が闇の中で輝いていた。

 

 電気といった近代的な照明がないこの時代だからこそ夜空の星が美しく輝いていた。

 

「一刀」

 

 そこへほんのり酔った蓮華がやってきた。

 

「どうかしたの、こんなところで?」

 

「いや、さすがにバカみたいに飲まされたから酔い醒ましにきただけだよ」

 

 蓮華は一刀の隣にやってきて同じように夜空を見上げた。

 

「綺麗ね」

 

「うん」

 

 宴会場からは華雄の悲鳴のようなものが聞こえてきた。

 

「本当によかった」

 

「何が?」

 

 夜空から蓮華のほうを見ると、そこには一刀を見る彼女の視線と重なった。

 

「一刀が元気になってくれたことよ」

 

「随分と心配かけさせたからな」

 

 病に打ち勝った後、初めて蓮華が口にした言葉が、

 

「この大馬鹿者!」

 

 だった。

 

 それからというもの、暇を見つけては様子を伺いにいった蓮華だが、いつも雪蓮がいたため部屋に入ることが出来なかった。

 

 結局、今日の宴会までろくに話も出来なかったため、蓮華は少し苛立っていた。

 

「一刀」

 

「うん?」

 

「そ、その……あれよ。星が綺麗ね」

 

「そうだな」

 二人は再び夜空を見上げる。

 

「か、一刀」

 

「うん?」

 

「あ、あなたのいた天もこの夜空と同じぐらい星が綺麗なの?」

 

 緊張している蓮華は会話をしなければと、頭をフル回転させた。

 

「綺麗……なんだろうけど、ここほどではないよ」

 

 元の世界は夜でも灯りが消えることがない。

 

 田舎ならまだしも都会では星の輝きよりも街の灯りのほうが勝っているため、夜空を見上げても満足に星を見ることはなかった。

 

「そうだ。俺のいた世界ではこんな話があるんだ」

 

 夜空を見てあることを思い出した一刀。

 

 それは織姫と彦星。

 

 七月の七夕の夜に出会う一組の恋人達の話を蓮華にした。

 

 一年に一度しか会えない二人はどれほど辛いことなのだろうかと聞きながら蓮華は思った。

 

 いつしか織姫と彦星を自分と一刀に重ねていく。

 

(もし私が一刀と一年に一度しか逢えなかったら……)

 

 そう考えると胸が苦しくなっていく。

 

「蓮華?」

 

 そんな彼女に気づいた一刀は話を止めた。

 

「一刀」

 

「なに?」

 

「もし一刀にとって大切な人と一年に一度しか逢えなかったらどう思うの?」

 

 部屋の中から聞こえてくる笑い声を気にすることなく蓮華はわずかに紅く染まった顔を一刀に向けた。

 

 今、この場には自分と一刀しかいない。

 

 蓮華は胸の鼓動が早くなっていく。

 

「私がその織姫ならばきっと耐えられない。好きな人と逢えないほど辛いものはないから」

 

 一刀に想いを寄せる蓮華にとってそれは、これから背負っていく呉王としての責務よりも遥かに辛いものだった。

 

「俺も彦星ならきっと耐えられないだろうな」

 

 一刀は蓮華をまっすぐ見据える。

 

 彼の瞳に蓮華が写っているように、蓮華の瞳にもまた一刀が写っている。

 

「だって好きな人と一年も逢えないなんて拷問だよ」

 

「そうね」

 

「やっぱり好きな人とは一緒にいたいよ」

 

 そう言って一刀は蓮華の腕を掴み、自分の胸の中に引き寄せた。

 

 小さな悲鳴と共に蓮華は一刀の胸にしがみつく。

「あなたにはお姉様がいるのよ……」

 

「うん。でも、蓮華のことも好きだよ」

 

 抵抗することなく抱かれる蓮華。

 

(今だけは私だけを見て欲しい)

 

 そう思っていると一刀は彼女を離した。

 

 もっと抱きしめて欲しいと思っていた蓮華は寂しさを感じた。

 

「蓮華、その織姫と彦星の話とは別に短冊に自分の願い事を書いてそれを笹……ここだと竹の葉に結べば叶うんだ」

 

「自分の願い?」

 

 蓮華の願い。

 

 それは一刀と添い遂げる。

 

 口に出すと恥ずかしいが、誰にも知られず紙に書いて願えば叶うのであればぜひそうしたいと思った。

 

「あとでみんなにも書いてもらおうかな」

 

「そうね」

 

 だがその前に蓮華はどうしてもしておきたいことがあった。

 

 ゆっくりと一刀の方へ身体を預けていき、そして両手を彼の頬に触れさせ唇を重ねた。

 

 普段の蓮華から考えられないほど大胆な行動に、一刀は驚きつつも彼女を受け入れた。

 

 お互いを抱き合う二人。

 

 名残惜しそうに唇を離していく蓮華は顔を紅く染めていた。

 

「一刀……、私はあなたが好き。お姉様に負けないほど好きよ」

 

「蓮華……」

 

 そう言って二人はもう一度、唇を重ねる。

 

「ねぇ一刀。その織姫と彦星の話や短冊に願いを書くというのは天の国ではなんて呼ばれているの?」

 

「七夕だよ。七つの夕って書いて」

 

「たなばた?」

 

 蓮華はその七夕を呉の行事に取り入れようと思った。

 

 そしてそれは現実のものになり毎年、七月になれば竹に多くの短冊が吊るされ、それを夏の風物詩にした。

 

「一刀の願いは何?」

 

「俺?俺はみんなと平和に楽しく暮らしたいかな。蓮華は?」

 

「私は……」

 

 蓮華は小さな声で一刀の耳元でこう囁いた。

 

 

 

 

 

『一刀といつまでも一緒にいたい』

 

 

 

 

 

 そうして二人は三度目の唇を重ねた。

(座談)

 

水無月:あま~~~~~~~~~~~~~~~い第二段!

 

蓮華 :……。(真っ赤)

 

一刀 :……。(真っ赤)

 

水無月:というわけで今夜は七夕です。皆さんはどんな七夕をお過ごしでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪蓮 :私の願いはっと♪


 
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