No.82752

歌姫

柊 ハクさん

この小説は違うサイトに載せていたものです。

出演者は≪初音ミク≫とその≪マスター≫です。
まぁ、ぐだぐだのなっちゃったのですが、よかったら楽しんでいってくださいませwwww

2009-07-06 00:46:37 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:715   閲覧ユーザー数:670

晴れ渡る青い空。

今日は快晴だ。

 

 

「マスター。起きてください。もう8時ですよぉ~。」

 

 

私、初音ミクって言います。

最近(って言っても一ヶ月位前なんですけどね)、マスターの所へやってきたばかりです。

 

 

「う、ん?8時、8時、8時…。8時!?」

 

 

今『8時』を連呼しているこの人は私のマスターです。

 

マスターは朝に弱いんですよねぇ…。何とかなりませんか?

 

 

「そうですよ。は・ち・じ。マスター、今日は用事があったんじゃなかったんですか?」

 

 

私はマスターに聞いた。

マスターはそう聞いて思い出したのか布団を足で蹴飛ばし、ベットから降りた。

 

 

「ミク。何でもう少し早く起こしてくれなかったんだよ。」

 

「起こしましたよ!!何回も。でもその度にヨダレ垂らしながら『あと5分…』とか言ってたじゃないですか!!」

 

「そんなこと言ったっけ?」

 

 

マスターは急いで服を着替えながら、私が焼いておいたパンを口にくわえた。

 

 

「じゃ、じゃあ、俺行ってくる!!」

 

 

マスターは走って玄関に向かった。

あの速さは『風の如し』と言っても過言ではないくらいに速かった。

 

 

「きっ、気をつけて…」

 

 

バタンッと私が『気をつけて』を全部言い終わる前にマスターは外へ飛び出し、ドアを閉めた。

 

 

「くださいよって、もう。」

 

 

私は家の中で一人ぼっちになった。

………………

…………

……

 

別にこれと言って、やる事がない。

 

 

「何をしようかな…。」

 

 

私はとりあえず、マスターの脱ぎ散らかしたパジャマと私のパジャマを洗濯した。

その後、洗濯機が洗濯し終わるまで時間があったので私はマスターの部屋へ行った。

 

 

「汚いなぁ。」

 

 

布団はマスターに蹴飛ばされたまま部屋に残っていた。

 

 

「もう。」

 

 

私はマスターに蹴飛ばされた可哀相な布団をベットの上に敷き直した。

 

 

「まったく。マスターはいっつもいっつも散らかして…」

 

 

部屋を出ようとした時、ふとプラスチックの四角いボックスの中に埋もれていた電子ピアノが目にはいった。

 

 

「あっ、ピアノだ。」

 

 

私はボックスから電子ピアノを取り出した。

そう古くはない。電池は…

 

 

「あれ?」

 

 

電池式ではないらしい。マスターの事だ、多分ケーブルは全く違う場所に投げ捨てているに違いない…、と思ったけどケーブルが電子ピアノに接続されたままだった。

 

 

「マスターって、ピアノしてたのかな?」

 

 

私はケーブルをボックスのごちゃごちゃした所から助け出した。

そして、コンセントをプラグに差し込んだ。

私は一つ、キーを押してみた。

ちゃんと音が鳴った。

 

 

「あれ?使える。」

 

 

壊れてるんじゃないかなと私は内心思っていた。

だって、ボックスの中に無理矢理突っ込んだみたいに入っていたから。

私は一応全部のキーを押してみたが全部使えた。

 

 

「全部使える…。」

 

 

私は、ピアノを弾いてみようと思った。

 

だって、使わなきゃピアノが可哀相じゃん。

 

 

「……。」

 

 

私は最初は無心で弾いていたが、いつの間にか楽しくなって歌いながら弾いていた。

私は時間を忘れピアノを弾き歌い続けた。

………………

…………

……

 

「何してんだ?」

 

 

マスターが部屋に入って来た。

 

 

「え、あっ。そ、その…」

 

「まぁ、落ち着け。」

 

 

私は歌っていたのを聞かれたのが恥ずかしくて頭が混乱してしまった。

 

皆だって一度はあると思う。

帰り道の途中とかで音楽聞きながら帰っていて、つい歌ってしまい、それを偶然知らない人達に聞かれてしまった時の恥ずかしい気持ち。

私の気持ちはまさにそれだ。

 

 

「マスター…、その…私、マスターの部屋でピアノを見つけちゃって、弾いてたら気分がよくなって、つい…。」

 

 

マスターは、一つため息をついた。

 

 

「やっぱりお前はVOCALOID(ボーカロイド)なんだな…。」

 

 

マスターは私を悲しい目で見つめた。

 

正直、今の言葉は気にくわない。

 

 

「違います!!私は初音ミクと言う一人の人間なんです。私はVOCALOIDでは…」

 

「わぁってるよ。俺だって、お前の事は『一人の人間』として見ているよ。俺と一緒で飯食って、風呂入って、寝る…。お前は人間だ。」

 

 

一瞬マスターが輝いて見えた。

 

なんでだろ?

 

 

「ミク?何で泣いてんだよ?」

 

 

その謎は直ぐに解明した。私は涙を流していたのだ。

涙がマスターを輝かせたのだ。

何故だろう…。涙が止まらない。

それに胸が苦しい…

 

 

「マスター。私、マスターの事が好きだったみたいです…。だって、こんなにも胸が苦しいんだもん…。」

 

 

私は、胸の前で強く拳を握った。

 

苦しい…。

 

 

「いきなり何どうしたんだ?」

 

「私は貴方が好きです。私は人間ではありません…」

 

「おい。ミク、一体何を?」

 

「聞いてください!!」

 

 

私は大声で言った。

 

 

「私は人間ではありません。そんな事分かっていたんです。

でも、いつかマスターに大事にされなくなる日が来るんじゃないかと思い、私は『人間』だと言い張ったんです…。」

 

「ミク…。」

 

 

マスターは私の顔を悲しそうに見た。

 

 

「私はVOCALOIDです。所詮は『作り物』です。だけどVOCALOIDだって恋はするんです。

誰かを好きになる事だってあるんです。だから…」

 

 

私は俯いていた顔をあげ言った。

 

 

「貴方に大切にしてもらいたいと願うのです。」

 

「ミク…。」

 

 

マスターは私の目の前までくると

 

 

「ごめんミク。俺、馬鹿だな…。」

 

 

私を抱きしめた。

私は大声で泣いた…。

 

 

「俺、お前の気持ちに気付いてやれなくて本当にゴメンな。」

 

 

私はマスターの服を握り締めながらゆっくり首を横に振った。

 

 

「いいんです。私は、マスターさえ傍にいてくれれば…。」

 

 

マスターは私の頭に手を乗せゆっくり、優しく私を撫でてくれた。

 

 

「ありがとう。ミク。これからもずっと一緒にいような。ずっと…。」

 

「はい…。」

 

 

私は小声で囁くように答えた。

 

 

「マスター。」

 

「んっ?」

 

 

私は少し顔を隠しながら言った。

 

 

「私、泣き疲れてしまいました。それで、その…」

 

「腹、減ったのか?」

 

「はい…。」

 

 

マスターは微笑みながら私の手をひいて、居間まで私をつれて行った。

「いきなり何だろう?」と私はそう疑問に思いながらマスターについて行った。

居間に着くと、沢山の食べ物がテーブルの上に並べてあった。

 

 

「うわぁ…。どうしたんです?マスター。こんなに食べ物が…。」

 

「どうしてってお前、忘れたのか?」

 

「?」

 

 

私は首を傾げた。

 

本当に分からない。

 

 

「今日はお前の発売日だぞ?」

 

 

思い出した。

そうだ、私達が売り出された日だ。

 

 

「だから、誕生日祝いだ。」

 

「そうか。だからマスター。珍しく8時に起こして欲しいって…。」

 

「あぁ。って言うか珍しくなんて言うな!!そりゃあ、朝には弱いけどよ…。」

 

 

マスターは返事をしながらテーブルの横にあった紙袋の中をごそごそと探っている。

 

 

「何してるんですか?」

 

「誕生日プレゼントだよ。」

 

 

そういうと、紙袋からCDと楽譜を取り出した。

 

 

「もしかして、これ…。」

 

「お前の唄だよ。」

 

「わっ、私の!?」

 

 

私は驚いた。

だって、マスターの元へ来て一度も自分の唄を作ってもらった事がなかったから。

 

 

「そんなに驚かなくてもいいだろ?そりゃあ、お前に今まで唄なんてちゃんと歌わせた事無かったけどよ。」

 

 

私はマスターから楽譜を受け取って目を通した。

 

ものすごく私に当てはまる。

 

歌詞は恋の歌で、その女の子の気持ちを描いたものだった。

 

 

「どうだ?考えるの苦労したんだ。ちょっと俺の気持ちも歌詞に含まれているんだぞ。」

 

 

マスターは恥ずかしそうに頭を掻きながら俯いた。

 

 

「とってもいい歌です…。ありがとうございます、マスター。」

 

「早速、唄ってみないか?」

 

 

マスターはそう言うと、私の返事を聞く前に自分の部屋へ走って行ったと思ったら、さっきまで私が弾いていた電子ピアノを傍らに持って帰ってきた。

 

…早い。

弾く用意をしているマスターに私は近づき、疑問に思っていた事を聞いた。

 

 

「マスターって中学生の頃、音楽の評価なんでしたか?」

 

 

マスターは黙々と作業をしながらさらっと驚く事を言った。

 

 

「んっ?いっつも『1』だった。」

 

「1?それは5段階評価でですか?」

 

「あぁ。」

 

 

私は思った。

 

駄目かもしれない…

 

マスターは私を見て、何かを感じたのか

 

 

「先に言っとくがな。この曲聞いて驚くなよ。」

 

 

『はいはい』といった感じで私は頷いた。

マスターはキーに手をかけ言った。

 

 

「お前、信じてないだろ?だったら、俺がまず手本をみせてやる。」

 

 

私は温かな目でマスターを見つめた。

 

正直言う。馬鹿にしているって事だ。

 

 

「いくぞ。」

 

 

マスターはそう言うと、キーの上に置いた指を滑らせながら曲を弾きはじめた。

と、同時に唄いはじめた。

 

凄い…。

 

『私はこんな素晴らしいマスターを馬鹿にして、恥ずかしい…』

そう思わせる程、マスターは歌・ピアノ共にすごく上手で、まるで歌手が唄っているのを目の前で見ているみたいだった。

私は、マスターの作った私自身の唄に惹かれていった…。

………………

…………

……

 

唄が終わり、マスターは私を見た。

私は涙を流し、立ち尽くしていた。

 

 

「ひっ、く…。マスター、卑怯ですよ。唄、上手いじゃないですか…。」

 

 

私は涙を拭いながらマスターに言った。

 

 

「卑怯じゃないよ。俺は、『お前のために』一生懸命に作った。そして、一生懸命にお前の為に歌った。それだけだろ?」

 

 

マスターは私から顔を背けた

 

 

「マスター…。」

 

 

拭っても拭っても、溢れ出す涙を止める事が出来なかった。

 

何故か。

マスターが予想以上に唄が上手かったから?

歌詞がよかったから?

私の曲を作ってくれたから?

全部違う。

何故涙が止まらないのか。

それはマスターの唄う歌にマスターから私への愛情が注ぎ込まれていたからだ…。

その後地球が太陽の周りを一周し、再び同じ季節が巡り回って来た今日この頃。

私は一年前同様にマスターを起こしに、部屋へ向かった。

ノブを捻り、ドアを押す。ベットをみると太陽の暖かな日差しをカバーするかのように布団に潜り込み、寝ているマスターがそこにいた。

 

 

「マスター、起きてください。時間ですよ。」

 

「んっ?」

 

 

マスターはあれから何とか朝には起こせばちゃんと起きるようになった。

ゆっくりと布団を押しのけ、ベットからマスターが降りた。

まだ眠いのかマスターは瞼を擦りながら私に朝の挨拶をした。

 

 

「んっ…。おはよう、ミク。」

 

「おはようございます。マスター。」

 

 

今日は、マスターに色々な所へ連れていってもらえる日だ…。

私より遅く起きた罰として今日一日、私の我が儘に付き合ってもらおう。

 

 

 

―――――――――――――

 

止まることなく刻々と流れ行く時間

それに比例して減っていく人間の脆く、短い一生

 

貴方が何年、何十年

時間に比例して体が衰えていこうとも、私は貴方を愛し続けよう

 

何故か?

聞くまでも無かろう

 

答えは簡単だ

『貴方の事が大好き』だからだ…

 


 
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