天空稲荷神社。

「はい、今年の初午向けの馬装一式、用意できましたよ」

「ありがとうございます奉さん、今年も呼んでくださってｗ」

社務所の前の広いスペースで、宮司の北城奉と一頭の馬…エクレールが話をしている。

さすがに、馬を社務所の建物の中には物理的に入れられないだろう…

ということでやむなく玄関先での受け渡しとなった。

「しかし、いつも本当にお忙しい中すみません」

「いえいえ、こんな大役を任せてもらえるなんて。馬冥利に尽きるってものですよｗあ、じゃあもう行きますね」

「大変ですね。今回はどんなお仕事で？」

「市営バスが動かなくなったんで引っ張ってくれって…」

「あらら。どうぞお気を付けて」

折しも時は2月。天空稲荷神社も初午祭に差し掛かろうとしていた頃である。

一方、別のイベントでこれから忙しくなる店もあった。

「リディさん、こんにちは」

「あら、菜乃花ちゃんやないの。いらっしゃい」

パティスリー・ラムールを訪ねてきた寺内菜乃花を、リディ・シャトーブリアンが出迎える。

「あの、オペラとタルト・タタンとシャルロット・オ・フレーズをお願いします。プレゼント箱込みで」

「プレゼントな、誰かにお祝いでもするん？」

「その、悠くんに///」

「あー、せやね。もうそんな時期かぁ」

「そういえば、こんな話聞いたことありますか？たしかバレンタインデーにチョコを売るのって日本のお菓子メーカーが考え付いたって」

「それがな、イギリスとかでも似たような習慣はあるらしいで。お互いにプレゼント交換とかな、ウチの故郷のフランスでも普通にやってんねやで」

「へぇー」

2月。いろいろな思いが、いろいろな場所で交錯する季節。

しかし、時節柄寒い日が続くので、お風邪など召しませぬよう。