No.826789

命一家 6話

初音軍さん

今回はお友達視点。友達と淡い心の中で感じる女の子、儚ちゃん。今は友達のまま一緒に過ごしていたい。先のことはまだ考えない、そういう感じに彼女の乙女心が出ていればなぁって思います。年齢の割りにちょっと小難しいこと言ってるかもですが変に子供っぽくするより書きやすかったのでご勘弁。それに口に出してるより色々考えてるんですよ!子供も!( ・´ー・`)ドヤァ

2016-01-25 14:30:56 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:389   閲覧ユーザー数:389

命一家 6話

 

【儚視点】

 

 いつも私は一人で、楽しそうにして遊んでいるみんなを羨ましそうに見ていた。

心細くて、でもみんなのとこに混じれる勇気もなくて。すごく寂しかった。

 

「はかな・・・!儚! 朝よ、起きなさい!」

「ふぁ、ふぁい!」

 

 ママの声にびっくりして私は布団から飛び起きると寒くてちかくにあるマフラーを

ぐるぐるに巻いて口元まで隠す。そして服を着替えてリビングにいくと用意してあった

ごはんを食べて家を出た。

 

 近所の他のママさんたちと一緒になって保育園に向かって歩きだす。

その中にはお隣の優くんもいて。

 

「お、おはよ・・・優くん・・・」

「うん、おはよう。儚ちゃん」

 

 いつも優しく私に笑いかけてくる優くん。それでも私に深くは関わろうとはしない。

私が何を考えてるかわからなくて距離がわからないのかもしれない。

私もいつもごめんなさいと思いながら接していて、なかなか仲良くなれない。

 

 あんな夢も見て今もそんな風に思ってもやもやしていると元気いっぱいの声が

曲がり角から聞こえてきた。

 

「みんな、おはよー!」

 

 最初外国の子かなって思うくらいきらきらした金髪をしていたその子。

でもそうではなかった。初めてあった時に聞いたらそう答えてくれた。

嫌な顔一つしないで。

 

「お、おは・・・よう・・・。みきちゃん・・・」

「おはよう、はかなちゃん!」

 

 顔を合わせて挨拶すると嬉しそうに笑いながら私の手を握ってくる。

その手は暖かくて柔らかくて何だか心地よかった。

 

「あれぇ、はかなちゃん。そんなに厚着していて暑くないの?」

「みきちゃんこそ・・・まだその格好は早くない?」

 

 いまどきの男子でもあまりみない短パン姿。まだ半そでTシャツはなかったけれど

冬が終わり春になったとはいえまだ少し寒い風が吹くというのに・・・。

 

「ぜんぜーん、寒くないよ」

「そうだね」

 

 みきちゃんの笑顔は不思議。誰にも慣れない私でも自然とつられて笑ってしまう。

みきちゃんは肩よりはない髪を長いリボンで結っている。

 

 身長は私と同じくらい、私はみきちゃんと違って長い黒髪。服装も全体的に

茶色っぽくてすごく地味なんだけれど、みきちゃんはそんな私を見て良いと言ってくれる。

お世辞なのかなって最初思ったけど、一緒にいる内にそういうお世辞とか考えない性格

なんだとわかった。

 

「優くんもおはよう」

「おはよう、みきちゃん」

 

 それぞれ挨拶が終わってみきちゃんのお母さんが優くんと私に挨拶してくるから

私も挨拶を返した。大人の人に接するときってすごく緊張する。

いや、なんにでも緊張しちゃうけれど、私の場合…。

 

「お、おはようございます…」

 

 優くんも返事するも、普段のできたような態度をとれず少しもじもじしているのを

見て優くんのお母さんに一言注意されていた。

 

 それを見ると優くんはみきちゃんのお母さん、みことさんのことが好きなのだろうって

思った。それだけみきちゃんのお母さんは魅力的に見えたから。

 

 綺麗に輝く髪の毛、宝石のような青い目。話をしているとどこか気分がよくなる。

みことさんと会う人みんな同じようなことを言うから、いつの間にかみことさんに

知られないようにこっそりファンクラブみたいなのが作られていた。

 

 なんで私がそんなことを知っているかというと私のお母さんがその会員だったり

するから…。でも、みきちゃんのお母さんと同じくらいみきちゃんも輝いて見えた。

それは私しか思っていない…はず。

 

 たぶん、私のみきちゃんに対する想いは優くんがみことさんのことが好きなのと

同じくらい、それ以上のはずだから。

 

「あ、もうすぐ着くね。いこ、はかなちゃん!」

 

 考えている間にいつの間にか目的の場所に近づいてきたのか、みきちゃんが私の手を

取って走りだした。

 

「ちょっ、待って…!」

 

 私の声は届かない、やや強引に引っ張られるけど決して嫌じゃなかった。

頼りになってみんなを引っ張れる力があって、それなのにこんな私によくしてくれて…。

まるで御伽噺や漫画に出てくる王子様みたいな存在に感じられた。

 

 好きだって言いたい。でも女の子同士だし、それ以前に私にそんなこと言えるほどの

度胸なんてなくて。またもやもやしてしまうけれど、さっきまでとは違う別のもやもや。

少しは辛いけれど、でも決して嫌な辛さじゃなかった。

 

 私の胸のドキドキはしばらくおさまりそうもなかった。

 

 

**

 

「一緒に遊ぶひと、この指とーまれ!」

 

 お外で遊ぶ時間になってみきちゃんが高々と手を挙げて指を突き出していた。

元気で明るくてすぐみんなと仲良くなったみきちゃんはみんなの人気者。

わたしもいっしょに遊びたいけれど、その元気さについていけるかわからないし

それに・・・。

 

「はかなちゃんもいっしょにあそぼうよ」

「え…あの…」

 

 みきちゃんが少し離れた場所にいたわたしをみつけて誘うのを他の男子が見ると

あからさまに嫌そうな顔をしてきた。

 

「えー、こいつもするの?」

「こらっ、そんなこといわないの!」

 

「だってこいつよわっちいから、遊べるもん限られちゃうぜ」

「それ以上言うと怒るよ!」

 

 けなされているのはわたしなのに自分のことのように怒ってくれるみきちゃん。

その気持ちだけで嬉しいからわたしはみきちゃんに作り笑いしながら言った。

 

「今日は調子悪いからまた遊ぼう?」

「う、うん・・・わかった。ごめんね」

 

 みきちゃんは何も悪くないのにわたしに謝ってくれて、少し嘘をついたわたしは

胸の辺りがちくんと痛んだ。

 

 それからしばらくみきちゃんが遊んでるのと眺めていると休憩と言ってわたしの隣に

優くんが座って話しかけてきた。

 

「さっきの気にしてる?」

「見てたの?」

 

「少し離れていてもわかったよ。声大きいし」

「そう…」

 

 さっきまでケンカしていた男の子とみきちゃんは何事もなかったかのように普通に

接していた。まだ嫌な気分は少し残っているだろうけれどギスギスしたままなのは

嫌だった、ちらちら見せる表情を見ているとそう感じてしまうのだ。

 

「そんなに気になるなら謝ってくる?」

「そうしたいけど・・・」

 

 嘘ついたなんて知られてみきちゃんに嫌われるのが嫌だった。

そんな気持ちが行動力の鈍いわたしの動きをより鈍くさせるのだ。

 そんなわたしの気持ちを読んだかのように優くんはさわやかにわたしに言ってきた。

 

「はかなちゃんの好きなみきちゃんはそんなことで嫌いになるかな~」

「そんなこと・・・ないと思う」

 

「ないと思う、じゃなくて。ないんだよ。もう少し相手のことを信じたほうがいいよ」

「そっか・・・そうだよね」

 

 優くんの後押しでわたしは決めた。嘘をついたことを謝るし、ちゃんと遊ぶ!

・・・最初はみきちゃんと二人で・・・。

 

 決意しても途中から自信がなくなるわたしがちょっと情けないと思いながらも

みきちゃんをしっかり見て頭の中で話す練習をする。

それが恋する女の子のように優くんには見えたのか。

 

「すごく好きそうな顔してるね」

「うん、すごく好きだよ」

 

 そこだけははっきりしていて思わず今までにあまりないくらいの笑顔を優くんに

見せると頬を少しかきながら優くんは聞きにくそうにしながらも聞いてきた。

 

「女の子同士でもそういう気持ちってあるの?」

「き、聞かれちゃうと自信なくなるんだけど…」

 

「あ、ごめん」

「でもね。この気持ちは嘘じゃないよ。それに好きになるって理由とか無理につける

必要ないでしょ? 優くんの…みきちゃんのお母さんに対する気持ちと一緒だよ」

 

「…! うん、そうだよね」

 

 性別の違いはあれど、普通の道よりは険しいということは一緒だ。

優くんは頭がいいからわたしの言いたいことをすぐに理解してくれて頷いた。

 

「…つい大人たちの言うことが当たり前のように感じちゃうことがあってね」

「うん…」

 

「大人たちは自由の意味を履き違えてるってことを、自分だけは意識しておかないとね」

 

 恋にしても何にしても、中途半端な常識は差別とか偏見を生み出す。

そう小難しいことを優くんは語ってた。言いたいことは何となくわたしもわかってたから

優くんの言葉を聞きながら頷いていた。

 

 

**

 

 みんなのお母さんやお父さんたちが迎えに来る中、わたしとみきちゃんはいつも

最後のほうで優くんと3人で過ごしていた。そんな中、優くんはわたしのことを考えて

どこかに行って二人きりにしてくれた。

 

 みきちゃんが何して遊ぶ?ってさっきのことが何事もなかったかのように

聞いてくる。そんなみきちゃんに甘えたくなってしまうわたし、そんな気持ちを振り切り

みきちゃんの顔に近づいてどもりながらもさっきのことを謝った。

 

「さっきは断ってごめん…。ほんとはそんなに具合悪くなかったの…。男の子たちが

怖かったし、遊びについていけるか心配だったから…」

「そうだったんだ~。大丈夫だよ、はかなちゃんと遊べるならどんなのでもいいから。

そうだ、おままごとでもする?」

 

「うん、ありがとう。みきちゃん」

 

 みきちゃんの笑顔と時々ふわっとみきちゃんから甘い香りがしてわたしの胸が

ドキドキしていた。

 

 それから迎えにくるまでわたしはみきちゃんと室内で遊べることを色々試して

遊んでみた。みきちゃんは反応が色々可愛くて面白くて、終わるまでずっと

飽きないで遊べた。本当にみきちゃんのことが大好きなんだなって改めて思った。

 

 それからお母さんたちが迎えに来て途中まで一緒に歩いた後。

 

「じゃあまた遊ぼうね、はかなちゃん。ばいばいー」

「ば、ばいばい・・・」

 

 その様子を見ていたママはわたしに声をかけてきた。

 

「今日は楽しかった?」

「うん、楽しかった!」

 

 そんなわたしの様子を少し驚いた顔を見せた後、嬉しそうに「そう」と呟いてくれた。

 

「よかったね」

「うん!」

 

「みきちゃんってすごいね。儚がこんなに生き生きしてるの初めて見たわ」

「え、何でわかるの」

 

「だってずっとみきちゃんのこと見てるんだもの」

 

 どうやら別の意味でも好きという方はママの頭の中にはなかったらしく

ちょっとだけホッとした。もしこの気持ちがバレたら何を言われるか不安だったから。

 

 子供同士というのは同性であっても疑われることも少なくて何かと便利だなぁって

実感した日なのだった。

 

 そしてその日の夜、室内とはいえいつもより動いたり喋ったりした疲れからか

すぐに眠れることができた。

 

 内容は忘れちゃったけど、その時見た夢はすごく幸せだと思えるものだった。

 

続。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択