No.825458

孫権伝―22

ユウヤさん

孫権伝も早いもので22話。昔も今も駄文留まる所を知らないですね。では本編どうぞ。あ、ぷちひめのツッコミは受け付けません。これは個人で楽しむ物です。hshsしたい変態はトイレに駆け込んでしてください。

2016-01-17 22:14:11 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3896   閲覧ユーザー数:3082

 

 

 孫権伝第22話

 

 『覇龍偃月刀』

 

 

 

 

 霞とのデートから一晩経ち、約束通りの立ち合いが成されようとしている。各兵士が個人個人で訓練するための鍛錬場一つを完全貸し切り状態にして、俺と霞は今これから起こる戦いに集中するために、それぞれの集中法で精神を整えていた。

 

 そんな集中作業の中でも周りに意識を割く余裕が有った俺は、周りをさり気無く見渡した。周囲にはかなりの人だかりが出来ていた。孫権軍の面々、馬騰軍の面々、董卓軍の面々、さらに城の中の文官の一部も興味本位か見学に来ていた。

 

 その中で呂布と華雄の声が聞こえて来た。

 

 華雄「呂布よ。この勝負間違いなく張遼の勝ちだろう?なぜ北郷はあんな無茶をしているのだ?」

 

 呂布「わからない。」

 

 華雄「まったく、孫権軍の連中も訳が分からん。武器を持っていく北郷に向かって、武器を置いて行けだの何だの言っていた。」

 

 呂布「華雄、世の中には無手でも強い人、居る。」

 

 華雄「分かっているがな?あの北郷だぞ?呂布はどう見る。」

 

 呂布「一合で、決まる。」

 

 華雄「だな。」

 

 好き勝手言ってくれるじゃないですか。確かに俺はこの世界の住人から見たら弱く見える。いや確かに弱いのだ。それを補うのが技なんだけれども・・・

 

 張遼「さて、と。準備はええか?北郷。」

 

 準備が出来たのか飛龍偃月刀を軽く振って、前に出て来ながら霞が声を掛けて来た。

 

 一刀「ああ、問題無い。」

 

 俺もそれに応える。ふと視界の端にある黒天槍の耐久度を見てみる。・・・・・・忘れてると思うから言っておくけど、あのアタッシュケースから出した武具一式の寿命(紛らわしいから耐久値としよう)は視界の端に表示されてるからね?とにかくその数値はもうすでに一年を切っていた。さすがに酷使し過ぎたか?手入れは怠って無いのだが、さすがに色々有ったからなぁ。

 

 張遼「ほんなら始めよか?興覇、頼むわ。」

 

 思春「ああ、分かった。それでは北郷対張遼の試合を開始する。両者構え。・・・・・・始め!」

 

 思春の号令と共に霞は一気に俺の目の前にまで迫っていた。とは言え、これは予想していた展開の一つなので難なくかわす事に成功した。とは言えさすがに早い。さすが神速を肩書きにしてる事だけはある。なら俺はその攻撃の隙を付くまで。

 

 一刀「ほっ、はっ、せっ!」

 

 ガィン!ガィン!ガィィン!

 

 霞の攻撃を盾で防ぎ、弾き、流す。その流れで突ける時は槍を突く。その度に霞は『ちっ!』と舌打ちをして、距離を取っていた。

 

 張遼「なかなかやるやん。見た感じ強そうには本当に見えへんのになかなかどうして、よく動く。」

 

 一刀「お褒めに預かり光栄だね。」

 

 褒め言葉に皮肉っぽく言葉を返すがさすがに焦っている。耐久値がやばい事になっている。此処まで真っ向から将軍格の攻撃を受けたことが無かったから分からなかったが、彼女達の攻撃は尋常じゃない。数合受けただけで耐久値がガリっと削られた。今ではもう黒天槍の耐久値が半年を切った。ちなみに盾とセットなので盾が壊れると槍も無事では済まないと思っている。というより盾で受けてこうして数値が減っている所を見るとそうなのだろう。

 

 一刀「とは言え、負けるわけにはいかない・・・か。オラオラ!そんなとろい攻撃じゃ、俺に傷一つ付けられないぞ、文遠。もっと気合入れてかかって来い!俺を・・・ぶちのめしたいんだろうが!!」

 

 俺は挑発する。約束した以上負けたのなら問答無用で話すしかない。たとえ彼女に記憶が戻って無いにしても、だ。

 

 張遼「・・・ああ、そうさせてもらうで。」

 

 予想に反して反応が薄い。怒っていると激情に囚われる印象が有るのが霞や春蘭だが・・・さすがに怒って無いのか?

 

 一刀「っ!?」

 

 ヒュン!!

 

 鼻先をかすめた。さすがに見切れないほどの速さになりつつある。ヤバイ。コロサレルカモ?

 

 一刀「ちぃ!?の!こなくそ!!」

 

 どんどん攻撃を往なす動きが乱雑になってきた。盾で防ぎきれずに鎧に刃先が掠る。って夜天の鎧の耐久度が一気に2年から1年に減ったんですけど!?ってそうか、此処まで深く抉られると修復が出来ないのか!ってそんな事を考えてるうちに一つ、また一つと傷が鎧に刻まれていって、遂に耐久度が3カ月まで減らされた!

 

 一刀「ち・・・ならやる事は一つか・・・」

 

 やっぱり武具を付けては不利か。得手である日本刀でも無く、準武装である無手でもない。得意としない騎兵用の装備じゃ此処までやれたのがまさに奇跡なんだろう。

 

 一刀「ふっ!」

 

 俺はこの状況を打開するために槍を投げ飛ばした。勿論それは避けられた。次は盾を円盤を投げる要領で投擲した。それも避けられ、勢いが有ったためか地面を抉りながら突き刺さる。僅かに視線が逸れた瞬間に俺はしゃがみこみながら鎧を脱ぎ棄てる。さすがに重いからだ。スルッと擬音が聞こえそうな感じに綺麗に鎧を脱ぎ棄てると俺は駆けだしていた。

 

 張遼「な!?」

 

 その光景に一瞬動揺をした霞に肉薄すると、正面から袴の帯を片手で握りしめた。そのまま引き寄せ、自身の腰に乗せるように引き上げる。それだけでも十分な効果が有る筈だ。何せ上に引き上げられて“喰い込むから”だ。

 

 張遼「ち!」

 

 一刀「ぜりゃぁ!!」

 

 そのまま勢いを付けて投げ飛ばす。さすがに背負い投げは出来ない。手加減とかためらいとかじゃない。掴みにくいのだ。彼女の服は。

 

 張遼「はっ!さすがにやるなぁ。」

 

 さすがにすぐに空中で体勢を立て直した霞に俺は舌打ちをする。此処まで差が有るのはさすがに気が滅入ると言う物だ。激情に駆られていたり、気負っていたりしてくれればそれだけで読みやすいと言うのにだ。

 

 一刀「少しは焦ってくれても良いんじゃないかな?それとも俺への怒りは無くなったとか?」

 

 張遼「さすがに無くなりはせんよ?せやけど・・・強うなったなぁとは思ってる。せやからちょっと嬉しいんよ。」

 

 一刀「・・・・・・そう、か。強くなってるかな?」

 

 張遼「ん。今なら“凪”といい勝負できるんとちゃう?“一刀”。」

 

 一刀「それは出会った時に確かめるさ。“霞”。」

 

 ああ、遂に思い出してくれたか。ならやる事はあと一つ。

 

 一刀「それでも俺が霞に酷い事をしたのは変わらない。でもタダ打ちのめされるのは釈然としない。俺だって望んんでああなった訳じゃないからね。だから・・・」

 

 霞「?」

 

 一刀「本当に俺を殴りたいならもっと本気で来いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

 霞「ちっ!」

 

 俺はそのまま叫ぶと彼女に向かって駆けだしていた。殴られる覚悟はある。だけどタダ殴られるつもりはない。それだけだ。俺は強くなったと証明もしたいが故に。

 

 霞「上等や、一刀。」

 

 そう呟くと、霞は飛龍偃月刀を地面に突き刺し、そのまま俺に向かって拳を振り抜いた。

 

 一刀「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 霞「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 交差した拳が互いの頬を撃ち抜いた。静寂が鍛錬場を支配した。僅かに流れる風が止まった瞬間、俺と霞は・・・次の拳をぶつけ合う。

 

 二人「「まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

 

 その後、俺と霞は互いが倒れるまで殴り合った。女の子を殴るなんて、等と言っていた自分が嘘になるくらい容赦なく。

 

 最終的に俺達は同時に倒れ込んだ。勝負は引き分け。なんとも言えない結果に会場はまたもや静寂に包まれたまま、俺の意識は闇に沈んで行った。

 

 

 

 

 Side change 蓮華

 

 

 一刀と張遼の模擬戦は引き分けという結果に納まった。正直一刀が投げ技を使わなかった理由は分からなかったけれど、秋蘭は納得した表情をしていたのできっと彼女達でしか分からないことが有るのだろう。そう言えば張遼が一刀の真名を呼んでいたわね。まあ、真名ではなくそれに近いって事を知ってるのは私と思春、雷火と秋蘭達えっと・・・魏?だったかしら、その関係者ぐらいなのだけれどね。

 

 蓮華「思春。一つ分からないことが有るんだけど良いかしら?」

 

 思春「なんでしょう?」

 

 蓮華「何故一刀は武器を捨てたのかしら?」

 

 思春「さあ、それは私にも分かりません。秋蘭は分かるか?」

 

 私の問いに首をかしげる思春は傍に居た秋蘭にどうしてか聞いてみていた。

 

 秋蘭「理由として大きいのは武器を本当の意味で失わないためだな。鎧まで取ると言う事は壊れると考えたからだろう。一刀は今自分の武器を自作中だ。今はまだ失う訳にはいかなかったんだろうな。ついでに無手になれる。最終的に強くなったと証明したかった意地もあったのだろう。武具の保護が6割、戦いやすさを求めたのが2割、意地が2割という所か。」

 

 さすが秋蘭だ。そこまで私は考えが及ばない。一刀はそのまま流琉に担がれて救護室に直行のようだ。というか流琉?その扱いは荷物扱いなのか?両手で持ち上げてえっさほいさと運ぶ様は何故だか仕留めた熊を運んでいるようにしか見えんぞ?

 

 秋蘭「・・・まるで仕留められた熊だな。」

 

 思春「だな。」

 

 二人も同意見のようだ。よかった。私だけじゃなくて。

 

 蓮華「さてと・・・私は“わざと”倒れた張遼の所に言ってくるわね。思春は部隊の纏めに入って。あそこで呆けている雛里も忘れずに持って行っ・・・じゃなくて連れて行って。秋蘭は・・・風と一緒に来る?」

 

 秋蘭「そうします。」

 

 風「・・・・・・」

 

 蓮華「風?」

 

 風「・・・・・・すぴ~。」

 

 まさかと思ったけどやっぱり寝てる。でも私は皆みたいに優しくないわ。

 

 蓮華「置いて行きましょう。いくわよ、秋蘭。」

 

 秋蘭「分かりました。」

 

 風「おぉう!?風は放置されて喜ぶ変態じゃないのですよ~~~。」

 

 一刀にされるとちょっと嬉しいくせに。知ってるんだから。

 

 そのまま私は秋蘭と風と一緒に張遼の方へ向かっていった。張遼の傍には呂布、華雄、賈詡がそれぞれ心配そうに張遼を見ていた。いや、介抱してあげなさいよ。

 

 蓮華「文遠はどう?」

 

 賈詡「傷は大したことないみたいだけど、目を覚まさないくて・・・」

 

 蓮華「そうなの?なら急いで医務室に・・・秋蘭?風?」

 

 ちょっと心配になって医務室に連れて行こうと思ったら秋蘭と風が唐突に張遼に近づいて行った。

 

 秋蘭「・・・さっさと起きないと・・・」

 

 風「お兄さんが帰った後の霞ちゃんの恥ずかしい話しちゃいますよ~。」

 

 張遼「ちょぉ!?それは勘弁!!・・・はぁ。やっぱ思い出しとったんか。ちょっとずるいんとちゃう?」

 

 秋蘭「そこは運が良かったのさ。」

 

 風「お久しぶりですね~。」

 

 張遼「おお、ホンマに久しぶりや。あ、恋に華雄に詠は突然の事で混乱しとると思うけど気にせんでおいてな。ウチも説明したい気持ちはあるんやけどなんと言ったらいいか・・・分からんのや。」

 

 張遼の言葉でかろうじて納得と言うか、ひとまずは置いておく事にしてくれたようだった。そのまま呂布たちは何故一撃で決められなかったのかと張遼に詰め寄っていた。

 

 張遼「あ~~~。そりゃあれや。ウチにも分からん。」

 

 秋蘭「ふむ、そこは私が説明できるぞ?」

 

 張遼「ほんまか!?」

 

 秋蘭で無くとも私も説明できる。・・・・・・出来るわよ?・・・・・・出来るってば!!

 

 蓮華「間合いをしっかり把握してたからでしょう?」

 

 ほら出来た。

 

 秋蘭「いや、それは理由としては弱い。」

 

 あれ違った!?

 

 秋蘭「間合いもあるが、一番の理由は癖だ。」

 

 張遼「・・・ウチ、癖見抜かれやすい??」

 

 それは確かに疑問だ。張遼ほどの実力者は癖すらうまく隠し、それすら利用し勝利を収めるものだ。

 

 秋蘭「はぁ。霞、お前は一刀を甘く見過ぎだ。あいつは私達の事をどれだけ見て来た?どれだけ私達を思ってくれていたか考えたことが有るか?あいつが華琳様の元に居ないこと自体おかしいと考えなかったか?」

 

 張遼「・・・・・・なあ、秋蘭。ウチ・・・一刀に酷い事したかなぁ?」

 

 秋蘭「しただろうな。だがそれはあいつ自身が自覚しててそうなったんだ。そうでなくてはあんな殴り合いはしない。認めているから殴られたんだ。そして証明したかったから殴ったんだ。分かったか?」

 

 張遼「ん・・・分かった。」

 

 秋蘭「それと・・・後で一刀に会って来い。二人きりでだぞ?見ろ、霞の飛龍偃月刀。」

 

 そう言って秋蘭は張遼の得物を指さした。別におかしい所は無いと思うのだけど・・・?

 

 霞「・・・うわ!刃がひび割れしとる!!」

 

 そこで全員気が付いた。目立たなくはあるが、僅かながら放射状に線が入ってる。ひび割れだ。

 

 秋蘭「一刀の盾を思いっきり斬りつけるからだ。一刀の武具はただでさえ私達が基本的に知ってる鉄よりも強度が有る上に、一刀の戦闘技術で衝撃を“返されて”居るのだから当然だ。そして・・・ちゃんと変わりは一刀が用意してくれている。期待しておけ。」

 

 そう言って秋蘭は自分も部隊の準備をして来ると立ち去って行った。私もさすがに武器を半壊させられてどう声を掛けたら分からなかったので後の事は風に任せて、私も隊の準備に取り掛かった。これから反董卓連合が汜水関に集結するのだから当然と言えば当然なのだが・・・そもそもこんな事をしていて良かったのだろうか?一刀の怪我も・・・ああ、一刀の怪我の治りの速さだけは武将級だったわね。忘れてた。

 

 

 

 

 Side change 一刀

 

 

 顔が痛い。めちゃくちゃ痛い。けれど目を開けなければ。そろそろ部隊の準備をしなければならない。よし、開けるぞ?開けるからな??そしてお決まりのセリフを言うからな?

 

 一刀「・・・・・・知らない天じょ・・・ああ、知ってる顔が見えるぞ。どうした霞?」

 

 だがしかし、そこに有ったのは洛陽の医務室の天井ではなく、心配そうにのぞきこんでる霞の顔だった。ちょっと痣になってるな。

 

 霞「一刀。ごめんなぁ。」

 

 ん?何を謝ってるのだろう。

 

 一刀「霞、何を謝ってるのかは分からないが、謝るのは俺の方だ。約束も守れず、勝手に居なくなったんだから。」

 

 霞「それは一刀も言っとったやろ?自分の意思やないって。それを責めるんは・・・最低なことや。」

 

 そんな事は無いと思うのだが・・・そう言えばどうしてここに居るんだろう?

 

 一刀「そう言えば・・・霞は部隊の準備は良いの?」

 

 霞「ああ、それは華雄がしてくれとる。それでなぁ。これなんやけど・・・」

 

 そう言って霞は飛龍偃月刀を見せて来た。ありゃ。こりゃあ駄目だ。外側のひび割れだけじゃなくて、芯その物も逝ってるな。

 

 一刀「芯もたぶん折れてるね。よし、いい機会だから霞に贈り物だ。よっと・・・いてて・・・」

 

 霞「あ、あんま無理せんでええよ!」

 

 一刀「いいのいいの。これは自業自得だし、望んで受けると決めたもので出来たのだから。よっと。」

 

 そう言って俺は傍に置いてあったアタッシュケースに手を突っ込むと偃月刀を出して見せる。驚き慄く霞。こんな彼女も珍しい。面白い。めっちゃ可愛いわぁ。

 

 一刀「あはは、驚かない驚かない。こっちに戻る際に戻してくれた人が餞別にってくれた物だよ。俺はどうしても氣って言うのを扱えないみたいだからね。その代わりにってさ。・・・で、これが霞用に作った得物。名付けて『覇龍偃月刀』だ。ゴツイだろう?」

 

 霞「ん・・・確かにゴッツイなぁ。ウチとしては装飾はこっちの方が・・・って軽!?」

 

 霞はその武器を手にして驚いたようだった。芯材にジュラルミンを使いつつ、ステンレス鋼を周りに使った刃を用いている。本当は炭素鋼を使いたかったが・・・無理だね。無理無理。あんなの個人で作るなんて頭おかしいんじゃない?いや、ジュラルミンとかステンレス鋼を作る俺も大概だけどさ・・・とにかく強度を持たせつつ軽さを求めたら二つをうまく組み合わせ(この場合組み立てての方がいいかも)武器を作る事になったのだ。ちなみに他の皆の武器もこの金属を用いてる。これ以上は機材が無いので製作不可。え?十分だって?褒めんなよ恥ずかしい。

 

 一刀「特殊な金属を使ってる。軽く、頑丈。そして刃の部分はほぼ日本刀と同じ造りだ。力ではなく技で敵を切り裂く。と言っても刀みたいな構造じゃないからな。もしかしたら前の方が敵は斬りやすいかもな。」

 

 霞「ウチの為に・・・作ってくれたんか?」

 

 一刀「そうじゃなきゃ偃月刀なんて作らないよ。」

 

 その言葉に霞は感極まったのか、涙を浮かべながら抱きついて来た。

 

 霞「ありがとうな・・・一刀。」

 

 一刀「良いってことさ。霞。」

 

 俺はそんな霞を抱きしめて優しく頭を撫でてやる。すぐに顔を上げた霞が顔を近づけて来たのだが、俺はそのまま少し離れてしまう。

 

 霞「か、一刀?」

 

 一刀「悪い霞。俺・・・」

 

 俺は寂しそうな霞から目線を外し、拒絶の反応を示してしまった。どうしても出来ないのだ。不能になったとかじゃないぞ?種馬不能化ざまぁとか思った奴は後で白銀氏に懇願してフルボッコにしてやんよ!

 

 霞「な、何でや一刀!一刀!!」

 

 俺は言葉を返すことが出来なかった。言葉に出来ないのだから仕方が無い。そんな状態の俺に助け舟なのか、風が部屋に入ってきた。

 

 風「霞ちゃん、霞ちゃん。仕方ないのですよ。これはお兄さんなりの制約みたいなものなのですから~。」

 

 霞「風?どう言うこっちゃ?」

 

 風「ん~。風はですね?お兄さんはもう、たった一人の大切な人を決めてるのだと思いますよ~。華琳様とか華琳様とか華琳様とか?」

 

 霞「なん・・・やと?あの一刀が?ま、まさか風も手を出され取らん・・・のか?」

 

 え?何?その俺も知らない驚愕の俺の本心は。って言うか風に手を出してないのがそんなに驚く事なんでしょうか??そこまでですか!?

 

 風「風だけではありません。秋蘭ちゃんもさることながら・・・最初に一緒に居た筈の蓮華様や思春ちゃんが手つかずの時点で驚天動地天変地異異常気象なのですよ~。」

 

 何その難攻不落極悪非道七転八倒虎牢関みたいなニュアンスの言葉。え?何なの?自然現象レベルで異常な事?

 

 霞「・・・ほ、ホンマに本物の一刀か?ウチ信じられんのやけど・・・熱とか・・・」

 

 一刀「霞?飛龍偃月刀の刃の部分を付け替える修繕と、その覇龍偃月刀を貰い受けるのどっちが良い?」

 

 霞「すんませんでした!その容赦のない笑みは本物の一刀や!!」

 

 それもどうかと思ったがひとまず置いておくことにした。最終的に風と三人で今後の事を話したが、さすがに反連合戦を超えないと何とも言えないので、基本霞には月を守ってもらう事にした。

 

 

 

 

 ぷちひめ†むそう

 

 

 『迷家→名家』

 

 

 ふぁんふぁんの紹介と呉国内の査察も大分終え、最後の査察先である寿春に来ていた一刀はちょっと城の中庭にある東屋で一息入れることにした。

 

 一刀「ふぅ。さすがに疲れたなぁ。査察終わったらすぐに魏にも逝かなきゃだし・・・」

 

 誤字では無い。本当に逝くかもしれないのだ。

 

 ??「ですわ。」

 

 一刀「お、お茶か、ありがとうな。」

 

 ??「のじゃ!(トントントントン)」

 

 一刀「お~~肩を叩いてくれるのか??本当に気が効くなぁ。ふぁんふぁん、ありが・・・とう?」

 

 ふぁんふぁん「もぅ?」

 

 膝の上で首をかしげるふぁんふぁん。ではお茶と肩叩きは?と思ってそっと後ろを振り向く一刀。そこに居たのは。

 

 ??「のじゃ?」

 

 さらにお茶の出された方を向くと?

 

 ??「ですわ?」

 

 可愛い金髪クルクルのぷちが居ました。

 

 一刀「・・・ん。可愛いからいっか。」

 

 何やら諦めた様子。つづく。

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
20
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択