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「さしあたっての問題って、俺たちの身寄りだよな」
髪を手で色々と弄りつつ、思案する。先ほど賊が行った先は、幸いにも陳留だ。
「私たちには今、何の力も後ろ盾もない。まぁ私はこの世界の歴史にはあまり介入はしないわ」
一刀はもの珍しいものを見たような目で華琳を見るも、同時に納得はできた。
「俺に天の知識で歴史を教えることを拒んだもんな。華琳ならそう言うと思ったよ」
「嘘おっしゃい。物珍しいものを見る目を私に向けたことはわかってるのよ?」
つーっと一刀は華琳から目をそらし黙る。さてどう言い訳しようか考えてると、空気を変える出来事が向こうからやってきた。それが厄介事であるのは、果たして幸運なのかは知らないが。
「なぁ華琳。あれって何だ?」
「さぁ? ただ私には董の旗が見えるわね」
「そっかー。ここ天水かな?」
現実逃避というのは、許される場合と許されない場合がある。今回は後者だ。華琳が、ぼけーっと呆けている一刀はの膝を軽く蹴り、意識を覚醒させる。
「髪下ろしてるから早々バレないとは思うけどね」
「曹操だけに?」
「……ねぇ、死にたいのかしら?」
一刀は現実逃避ぐらいさせてくれと呟くと、もう目と鼻の先まで迫ってるあの軍勢をどうするかの思案に入った。
さて、賊軍なら逃げるのがいいのだが、下手に官軍の前で道を開ける行為をすると、やましい事があると思われるのだ。なら避けなければいいと思うのだが、それならそれで道を塞いでると怒りを買う。どちらにしようと睨まれるのだ。さらに、軍には斥候と呼ばれる、目がとんでもなく良い兵士がいる。遠くに軍を見つけ逃げようとしても、すでに見つかっているのだ。
すなわち、二人が董の旗を視認する遥か前に見つかっていた。それを踏まえて嘘八百でも乗り切れねば不味い。
「そこのアンタ達! 名を名乗りなさい!」
緑髪の眼鏡っ娘、恐らくは賈駆が、軍の道を塞ぐ異物を詰問する。
「私は、自らの見聞を広めるために旅をしている北曹と申します」
―――ん、『私』は? 『私たち』じゃなくて!? それってつまり―――
「お、俺はその護衛をしている北郷と言います」
「あぁ見聞ね。ま、今の時代じゃそんな奴がいても仕方ないか。で、何故こんなところに立ってたの?」
正直疑ってますよという視線を二人に向けながらもお、詰問は続いていく。
「先ほど向こうに黄色い布を頭に巻いた賊が通り過ぎていきましたでの、少し様子を見ていました」
賈駆はチラリと自軍の斥候兵へ視線を向ける。間違いないと確認を取ると、二人に戻し。
「ここら辺はまだ危険になる。早々に立ち去ることね」
結局何も起こらなかった二人は、安堵の息をついた。
「場所が分かっただけでも儲けものね」
「ところで、さっき『私』はって……」
「それぐらい、咄嗟に判断できて当り前よ。何年私の軍で働いてきたのよ」
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久々に来てあしあと伝言板を見たら。
『一刀お前はモゲロって意味分からんから。十狼佐お前がモゲロやアホw』
と書かれてました。まぁ書いた私もアレなんですが、今更そんな事言われても。
伝言板には残してあるんで、向こうが削除とかしてなければ見れるんじゃないんですかね?
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