拠点 流琉 『兄様』
「すみません、ダンテさん。お買い物におつき合いさせてしまって」
「あ?別に構わねぇよ。どうせ暇してたんだし、流琉の飯は美味いからな。手伝わねえと罰が当たりそうだ」
「もう・・・。そんなこと言って、怖いものなんて無いダンテさんに誰が罰なんて当てられるんですか?」
月達が洛陽入りしてからしばらく経った。
ある日、非番であった流琉は食料調達のために買い物へと向かっていた。
そこへ、欠伸をしながらダンテが通りがかったため流琉が手伝って欲しいというと、ダンテは快諾。
そして冒頭の会話に至る。
「しっかし、作る人数が一気に増えたとはいえ、こんなに多いとは思わなかったが」
「いつもは商人さんに運んでもらうんですが、今日は月さん達も異動後のやることが落ち着いたとのことで歓迎会をやる下準備なんで、私が自分で選ぼうと思って・・・」
「それは、非番なのにご苦労なこって」
ダンテは肩をすくめて言った。
とはいえ、荷車いっぱいの食料を積んで軽々と引いている二人を、市井の者達もとんでもないものを見る目で見送っていたが。
まあ、以前は街中の店でそれなりに(料理人&給仕として)名が売れていたので、見たことのある者は
「城でも料理ですか?頑張ってくださいね!」
と応援なんかもしており、ダンテは気楽そうに聞き流していたが流琉は少々気恥ずかしげにしていた。
「うぅ、ダンテさんはなんともないんですか?」
「んぁ?別に。堂々としてたらいいだけだろ」
「わ、私には無理ですよぅ・・・」
「おいおい。禁軍の将やってんだから、こんなのこれからもっとあるだろ」
いつまでも護衛としていても動きづらい+諸侯への確かな圧力として楼杏が二人を伝を使って将へと引き上げたのは最近の話だった。
もちろん、何進にはそれなりのものを送ることで援護してもらったが。
さりげなく、あくまでも楼杏の下についていることを吹聴したことで諸侯もこの後非常に苦心することになるのだが、それは別の話。
「しっかし、俺はいらねえって言ったんだがな・・・」
「仕方ないですよ。ダンテさんは良くも悪くもあの時に有名になっちゃいましたもん。私だけが将になったりしたら余計に怪しまれますって、楼杏さんも言ってましたし」
「そりゃ納得は出来るがな。俺は人の上に立つような人間じゃねえってのに・・・。あと、仕事も多いしよ」
「それは諦めて下さい。月さんも楼杏さんも、あの詠さんもびっくりしてましたよ?とっても優秀だって」
「そりゃどうも」
現代人であるダンテからしたら、桁が大きいだけの計算やら範囲が広いだけの土地開発なんかはかじっただけの知識でも何とかやりくりできるものであった。
字に関してはなかなか苦労してはいたが、そこは手が空いたときに流琉共々、楼杏や月、そうでなくても隊で字が読み書きできるものに教わってそれなりに出来るようになっていた。
寧ろ、ダンテがたまに話す現代ではありふれていた知識が、こちらでは真新しいものであり、実現可能かどうか日々試していたりするくらいであった。
「暴漢だ!暴漢が出たぞ!」
と、急な男性の叫び声とともにどこからか女性の悲鳴と子供の泣き声が聞こえてきた。
「・・・ったく、平和ってのは続かねえもんだな」
「ダンテさん!」
「分かってるよ、おい」
と、ダンテは近くにいた兵士を呼んだ。
「はっ!」
「悪いが、これ城まで持っていってくれ。ダンテって言えば通してもらえるからよ」
「り、了解であります」
そういうや、ダンテは先に行った流琉を追って行ってしまった。
「こ、こんなに重いのどうしろと・・・」
残された兵士は呟いていたとかなんとか。
結果として、騒動自体は大したことはなかった。
黄巾の残党が街の食堂で強盗をしようとして揉み合いになっただけという、まあよくある話だった。
問題があったとすれば、その暴漢達が子供を人質にとったことに流琉が怒り、武器であるヨーヨーでその暴漢を叩きのめしたときに店の一部を損壊させてしまったことくらいだった。
「いやー、俺もあんまり周りを気にするほどじゃねえけど、豪快にやったなあ・・・」
「うぅ、ごめんなさい・・・」
「まあ向こうもいいって言ったんだしあんまり引きずるなよ?」
そして現在。
流琉の必死の謝罪も終わり、店のそばで叩きのめした暴漢共を縛り上げて監視しながら、項垂れる流琉をダンテが不慣れながらに慰めていた。
「で、でも・・・」
「俺なんて前の仕事で自分の店やら教会やらぶっ壊してるんだし、それに比べたらまだまだだろ」
「そ、それは自慢にはならないかと・・・」
なんて話をして流琉がやや立ち直りかけてきていた、その時。
「危ない!将軍、後ろ!」
「えっ?」
見ると、復旧作業中の店の柱が倒れこんできていた。
「ちっ!伏せろ!」
「きゃあ!」
反応が遅れた流琉に怒鳴ったダンテはそのまま駆け出し、彼女に覆いかぶさった。
そして、その背に柱がそのまま圧し掛かった。
「・・・っ」
心臓刺されても大丈夫なダンテとはいえ、重い柱の直撃を受ければさすがに無傷とはいかなかった。
しかも、琉琉にいかないために腕を突っ張り続けなければならなかったため、衝撃を逃がすこともできなかったが故に腕も軽い怪我をしていた。
とはいえ、城内の者はダンテがただの人間ではないと知ってはいたが、楼杏と詠の統制により市井までは広まってはいなかったので、その場でダンテは失神したフリをし、流琉はすぐさま城のお抱えの医者に伝令を飛ばした。
そのまま急患として城まで運ばれて、今に至る。
「ごめんなさい・・・」
フリをしたまま寝入ってしまったダンテがふと目覚めると、そこはここ最近見慣れてきた城内の自室の天井だった。
隣を見ると、手を握ったまま謝り続ける流琉がいた。
「・・・よぉ」
「目覚めたんですか!?」
「ああ、フリのつもりがそのまま寝ちまったらしいな」
体を起こしてもとりあえず異常はなかった。
軽く腕を動かそうとして、流琉が手を離していないことに気づいた。
「あー、流琉?手を離してくれるとありがたいんだが・・・」
「・・・ごめんなさい」
「ん?何がだ?」
「私が周りに注意してなかったから、ダンテさんに怪我させてしまって・・・」
「あー、こんなの怪我のうちに入らねぇから平気だ。しかも、一応監督してたわけだし、あの時は店ぶっ壊して色々テンパってたろ?」
「てん・・・?」
「悩んでただろ?まして、柱が倒れたのはお前の責任でもなんでもねぇよ」
そういってダンテは流琉の頭を撫でた。
「あっ・・・」
「まあ、まだ若いんだ。いざって時に失敗しねぇように色んなことを経験しとくのはいい事だと俺は思うぜ。その為に年長者ってのがいるんだからよ。・・・ま、ちっと頼りねぇ輩もいたりはするがな」
そういってダンテは笑った。
「・・・ふふっ。ダンテさんは十分頼りになると思いますよ」
「そうか?」
「はい・・・、ありがとうございます」
流琉は撫でられるがままに答えた。
この出来事の詳細は伝わっていないが、兵や将の間で最近噂によく上るようになったことがある。
それは、流琉が今まで以上にダンテに懐く様子が見られるようになったこと。
そして、
「兄様!今日もよろしくお願いします!」
「あー、あとで行くから先に行っててくれ」
「はい!」
いつの間にやら、流琉がダンテのことを『兄様』と呼ぶようになったことである。
後に、楼杏に問われたダンテは
「いや、俺が『さん』なんてよそよそしいから止めてくれって言ったら、急に呼び始めてよ。別に嫌って訳じゃないから気にしてなかった」
と答えたそうだ。
あとがき
どうも、作者です。
ええ、もう謝るのにも慣れてきました^^;
というかですね、この年末の忙しくてお金の無い時に4年以上の付き合いだったノートPCがお亡くなりになられまして・・・。
今までのデータも全て移せたから良かったものの、さらに貧乏になってしまいました;;
さて、こちらは今年最後の更新になります。
続きは来年ですね、亀もびっくりの更新速度ですが気長にお待ちいただけると幸いです。
それでは、次回をお楽しみに!
4/25 追記
タイトル間違ってた!
指摘してくれたryoshigさん、ありがとうございます!訂正しておきます!
Tweet |
|
|
6
|
0
|
追加するフォルダを選択
DMC4×恋姫の続きでございます。
今回は幕間ということで流琉ちゃんが中心です。