SIDE 撃
―前回までのあらすじ―
俺と愛紗、鈴々ちゃんの3人は兄弟の契りを交わし、3人で旅をしていた
ある時、俺達はある町にやってきた そこは太守の『公孫賛殿』が収める土地で
そこでは山賊による被害が拡大していた そこで俺達は公孫賛殿の客将である
『趙雲子龍』と出会う 俺と愛紗、趙雲の3人は趙雲の策によって
山賊のアジトに侵入、そこで捕らえられていた女の子と子供を救出し、
逃げ出したが、運悪く崖に追い詰められてしまう
だが、その時、俺のポケットから1発の銃弾が現れた
それは以前使った白い鎧を呼び出す銃弾だった
俺はそれを使う事で状況を逆転させ、無事に脱出に成功した
その後、趙雲こと星も加わり、俺達は更なる旅に出た
今の俺達は冀州に来ていた
撃「この町は随分と賑わっているな。」
愛紗「ここは袁紹が収める町だからな。」
撃「袁紹?...あぁ、公孫賛殿が言ってい実力者の一人か。」
星「と言っても、袁紹自身には大して才もなく、いわゆる名実だけの名家だと。
陰口をよくたたかれている。」
撃「...親の後を継いだだけってか?」
星「そんな所だ。」
何処の世界にも要るもんだな、親の七光りで威張ってる奴って
「もっとも、お前の力を持ってすれば、一国の滅ぼすのも容易い、か?」
......星の言ってるのは鎧の事だろう
撃「ま、不可能じゃないだろうけど、そんな理由であの鎧を使う気はないよ。」
星「そうか、しかし、それの名前は無いのか?いつまでもそれではいかんだろ。」
撃「......名前、かぁ。」
鎧の名前か...どうしよう
愛紗「それなら白狼、というのはどうだ?」
撃「...白狼?白い狼って事?」
愛紗「あぁ、あの特徴的な耳と白い色から思ったのだ。」
撃「白狼か、良いね、採用。」
なんて話し合い、笑いながら歩いていると前から骸骨の髪留めをした
女の子とその連れらしき人が馬に乗って歩いてきた
めずらしいな、あんな髪留めもあるんだ その時
鈴々「うわ~!あの人の頭、すごいくるくるなのだ!」
愛紗「うわぁぁ、こら鈴々!すみません!失礼した!この者は髪の事を
言っただけで!」
やれやれ、後で鈴々ちゃんにはそう言う所を口に出さないように注意しておくか
???「ふん、子供のたわ言、咎めるつもりはない。」
どうやら、いきなりやられるってのは回避できたみたいだな
鈴々「子供って...」
愛紗「いいから。」
???「髪と言えば、あなたもかなりのものを持っているようね。」
愛紗「いや、これは、他人に褒められるほどのものでは...」
...褒められてうれしそうにしている よかったな愛紗
???「下の方もさぞや美しいのでしょうね。」
...前言撤回、こいつそれを言うために褒めたな絶対
愛紗は顔を赤らめながらスカートを隠してるし
鈴々「そうなのだ!愛紗は下の方もしっとりつやつやなのだ!」
だからね!意味の分かってない事を言わないで鈴々ちゃん!
下ネタに反応しなくていいから!
愛紗「こ、こら!何を言って!」
???「ふ~ん、それはぜひとも拝んで見たいものね。」
愛紗「あ、いや、これは、その。」
???「けど、今は野暮用があって無理だ。我が名は曹操、縁があればまたいずれ。
それと...」
今度は俺かよ、今までスルーして黙ってたのに
「あなた、血の匂いがするわよ。」
っ!
撃「何の事でしょうか?私には見当も...」
曹操「とぼけても無駄よ、不思議なにおいに混じって香る血の匂い。
あなた、ただものじゃないわね。」
不思議なにおい?火薬の事か、まずいな
俺は自然と彼女を睨むような視線になっていた
「あらあら、怖い顔しないで、それじゃ。」
そう言うともう一人を連れて、去っていった
撃「...曹操、か。出来れば敵に回したくはないな。」
愛紗「あの、曹操とか言うもの、もしや撃の力を知っているのでは?」
撃「ありえない、俺が白狼を使ったのはまだ2回だけだ。
あれを知っているのはここにいる愛紗達3人を除けばこの前助けた子供たちと
鈴々ちゃんの山賊団の子達だけだ。噂が出回るにしても早すぎる。
それに子供たちが噂を広めても空想だとして大人は本気にはしないと思うが。」
星「あれが、最近都で頭角を現してきた曹操、というわけだ。」
撃「...そうか。」
曹操、三国志の最重要人物、まさかその曹操までも女の子だったとはな
ってことは孫策や劉備や呂布、董卓までもが女の子なのか?
...まぁいい、今は......
その後、4人で適当な仕事を探したんだけど
愛・鈴・星「「「おかえりなさいませ!ご主人様!(なのだ!)」」」
...どうしてこうなった
俺達が見つけた仕事は、何というか...メイド喫茶と見紛うほどの
代物だった
ホントにここは1500以上前の中国かよっ!?by撃
正直言ってさっきの曹操の髪留めといい、愛紗や趙雲のような一部の服と言い
所々現代に近い様式があったりと思っていたが
まさかメイド喫茶もどきがあるとは思わなかった
ちなみに、俺は裏方として、厨房で仕事をしていた
小さい頃は親の手伝いをよくしいたし、バイト経験もあり、
料理自体も好きだったし、得意だったので何とかできた
...にしても、星は馴染んでそうだけど、愛紗はこういうの苦手だろうし、
鈴々ちゃんもな~心配なんだよな~
そして案の定、予想は当たった、鈴々ちゃんは持っていく途中の料理をつまみ食いしたり
こけて料理のラーメンをお客さんにぶっかけたり、さらにこけて皿を割るなど
をしてしまった
愛紗「もういい!鈴々、お前は宿に戻って大人しくしていろ!わかったな!」
鈴々「うぅぅぅ!」
撃「まぁまぁ、鈴々ちゃんだって一生懸命やったんだ、あまり責めすぎるな。」
実際、鈴々ちゃんはまっすぐで真面目だけど、空回りした感じかな?
鈴々「白兄ちゃん!」
撃「すまないけど、後の事を頼めるか?俺は鈴々ちゃんの面倒見てるから。
前の町の仕事に時に貰った金もまだ少し残ってるから、それでさ。」
後半は鈴々ちゃんに聞こえないように愛紗に耳打ちした
愛紗「はぁ、わかった、頼むぞ撃、夕方くらいには宿に戻る。」
撃「あぁ、わかった。」
その後、鈴々ちゃんを連れて街中を散策していた
鈴々「それにしても、愛紗もひどいのだ!鈴々だってがんばればちゃんとできるのだ!」
撃「まぁまぁ、そう怒らないで、何か気晴らしに......どうしたの?」
話をしていると鈴々ちゃんが何かに気づいた
どうやら人だかりができているようだ
何だろ?立てかけてある札に何か書いてある
俺の場合なぜか文字を見るとそれが日本語のカタカナの発音に変換されるように
なっている さらに意味も添えられ、文章の内容も理解する事が出来るように
なった
「え~っと、何々?」
といっても、まだ慣れないから読むのに時間がかかる
鈴々「う~ん、難しい字が多くて読めないのだ。」
???「冀州一武闘大会、本日開催、飛び入り歓迎、優勝者には
賞金と豪華副賞あり、だってさ。」
見ると鈴々ちゃんの横に背の高い、栗色の髪をポニーテールにした女性がいた
鈴々「賞金?じゃあこれで優勝すれば賞金が貰えるのだな!」
まさか、出る気じゃないだろうな鈴々ちゃん
???「まぁ、そうだけど、お前まさか優勝する気じゃないだろうな?」
鈴々「もちろんなのだ!鈴々は本気なのだ!」
???「大した自信だけど、そいつは無理だな。」
鈴々「何でなのだ!?」
???「そんなの決まってるだろ、優勝するのはこのアタシだからさ。」
自信たっぷりだなぁこの人
撃「あの、失礼ですがお名前は?」
馬超「アタシの名は馬超、字は孟起って言うんだ、よろしく。」
撃「俺は撃と言います。初めまして、こっちは張飛ちゃんと言ってともに旅を
している仲なんです。」
馬超「へぇ、ってことはアンタら兄弟か何かかい?」
撃「いえ、少し前に知り合っただけです。他にも2人いるんですが今は別行動中でして。」
馬超「そうだったのか。まぁ、アタシはこれで、じゃあな。」
そう言うと馬超は去っていった
撃「......ところで鈴々ちゃん、武闘会には出るの?」
鈴々「当たり前なのだ!鈴々が優勝して愛紗達に自慢してやるのだ!」
はぁ、どうやらやる気十分らしい
こりゃ言っても止まらないね
仕方なく俺は観客として試合を見守る事にした
でもなんでだろ?客のいる場所と戦う台の間の隙間って言えばいいのかな?
そこに大きめのカードを持った女の子がいる 逆さだからよく見えなかった
けど『歓呼声』って書いてあったような すると
司会「さぁついに始まりました!冀州一武闘会!北は幽州から南は放蕩まで
全国各地から集まった腕に覚えのある猛者たちがその座をかけて競います!
それでは試合開始に先立って本大会の主催者を紹介しましょう!
冀州太守にして超名門袁家の当主である、袁紹様!」
と、ここで2人の女の子が持っていたカードを掲げた
成程、こういう事だったのか
苦笑しつつも何とか周りの人を真似た
袁紹「みなさん、私主催の武闘会へようこそ、今日は各地から集まった豪傑
達の戦いを楽しんでいってくださいね。」
そこで拍手が上がるけど、女の子たちがもっとやれ的なハンドサインをしてる
まぁ、これで調子に乗った袁紹がさらにスピーチをしようとするけど
司会の子がそれを遮って、試合が始まった
一回戦は確か鈴々ちゃんも出場する予定だったな......相手は、でかいな
会場の客もどよめいている
出てきたのはバイキングのような恰好をした巨漢
司会「優勝候補との声もある鉞使いの鉄牛選手に対するは今大会の中で最小...
もとい最年少の張飛選手、飛び入りでの参加の張飛選手には頑張って
ほしい所ですが...相手が悪いか。」
そして試合の開始を告げる銅鑼が鳴った
先に仕掛けたのは大男だった
鉄牛「うおぉぉぉりゃぁぁぁ!」
振り上げた鉞を振り下ろすがそれは簡単に防がれてしまった
「なっ!?このガキィィィ!」
さらに力を込めたようだが、無駄なあがきだな
鈴々「この程度では、鈴々に勝てないのだ~!」
鉞をはじき返し、腹部に向けて横から攻撃を入れ、そのまま鉄牛を
場外まで吹っ飛ばした
ま、所詮はパワーだけのファイター 鈴々ちゃんの敵じゃなかったな
会場はしんと静まり返っていたが、すぐに歓声が上がった
司会「や、やりました!張飛選手、鉄牛選手をあっという間に倒してしまいました!」
鈴々「へへ、白兄ちゃ~ん!見ててくれたのかなのだ~!」
俺を見つけてこっちにぶんぶんと手を振ってくる鈴々ちゃん
撃「お~すごかったぞ~そのままがんばれ~!」
和気藹々と手を振ってくる張飛ちゃんに俺も手を振り返しながら返事を返す
周りの人の視線が気になるが...まぁ、応援に来た兄弟とでも思ってくれればOKか
「.........ん?」
ふと客の合間から見えた所で一人の人物――フードを被っていたので性別は判別
できなかった――が人込みの中をゆっくりと歩いている
『......何だ、あれ?...まぁいい。ほっとくか。』
下手に問題を起こして鈴々ちゃんの邪魔をしたくないし、
ここでは銃を使うと目立ちすぎる まだそれは避けたい
そう言って台の上で今まさに始まろうとしていた第2試合に視線を戻した
しかし、俺は思いもよらなかった 素顔こそばれなかったとはいえ
このすぐあとに大衆の前で力を使う事になるなんて
SIDE 曹操
今、私は冀州の町の門の外で報告を待っていた
春蘭の率いた兵士たちが今、この町の近くに潜伏しているらしき賊の
排除に行っている
彼らが出立してから暫く経つけど、まだ帰ってこないのかしら
その時、外から兵士が入って来た
曹操「何事?」
兵士「報告します。今しがた夏候惇将軍が兵を率いて戻られました。」
曹操「そう、それで、首尾はどう?」
兵士「それが、どうやら我々が来る事を賊は知っていたようで
何人かは冀州の町に逃げ込んだようです。」
曹操「なんですって?その情報は何処から?」
兵士「夏候惇将軍と対峙した賊の一人が命を助けてくれれば教えると言っていたと。」
曹操「そう...春蘭に伝えてちょうだい、兵を25人ほど集めて
私と春蘭がそれを率いて街中の賊を探し出すわ。」
兵士「はっ!すぐに!」
そう言うと、兵士は出て行った
しばらくして曹操と夏候惇は馬にまたがり、その後ろには25人ほどの兵士が
付いて来ていた
夏候惇「華琳さま、少しよろしいでしょうか?」
曹操「何?」
夏候惇「街中の賊を探すには、兵が足りぬように思いますが。」
曹操「大丈夫よ、敵がどこにいるか大体見当はついているから。」
夏候惇「ほ、本当ですか!?」
曹操「えぇ、春蘭は袁紹が今日、武闘会を開いているのは知っているわね?」
夏候惇「え、えぇ、帰り際に町に立てかけてある札を見ました。
しかし、それと何の関係が?」
曹操「簡単よ。木の葉を隠すなら林の中、言い換えれば、
人を隠すなら人込みの中、つまりあえて大勢の群衆に
まぎれる事でその存在を隠すつもりよ。」
夏候惇「成程!さすがは華琳様!」
曹操「それより、急ぎましょう。」
夏候惇「はい!」
そして会場に向かう曹操達だった
SIDE 撃
試合はその後も白熱し、やがて鈴々ちゃんと馬超さんが決勝戦をする事になった
鈴々ちゃんの強さは愛紗との勝負を見ていたからわかるけど
馬超さんはあれだけ豪語するだけあってかなりの強さを持っていた
けど、星のような頭脳ファイターじゃない そうなると鈴々ちゃんと
いい勝負になりそうだ
と言うか、ここからだとあまり見えないけど、袁紹寝てないか?
ずっと横になったままだし まさか主催者が飽きた何てことに...
まぁ、最終決戦は楽しめそうだからまだいいか
...にしても、あのフード野郎は何だったんだ?
見かけてからは定期的に周りを見回してはいるけどあれ以来姿を見ていない
......思い過ごしであってほしいが...
客A「な、何だアンタら!?」
客B「おい、何だよ?」
何やら後ろの方が騒がしい
何とか振り返ってみるけど後ろには何やら馬に乗った人がって!?
アイツは...曹操!?何でこんなことろに!?
これには台の近くにいた女の子たちも反応した
文醜「曹操!今は大事な試合中なんだぞ!何の用だ!
昼間の賊の件ならお前に任せるって麗羽様も言ってただろ!」
曹操「そんな事はどうでもいいのよ、ここに賊の残党が逃げ込んでいるかも
しれないのよ。悪いけど邪魔させてもらうわよ。」
そう言うと、群衆をかき分けながらこっちに進んできた
その頃、袁紹は周りのざわつきに気づき、体を起こした
袁紹「ん~何ですの?一体何が...」
その時、横から現れた男が袁紹を羽交い絞めにしてそののど元に刃を突きつけた
「ひっ!?な、何ですの!?これは一体!?」
男「がたがた騒ぐな!」
文醜・顔良「「麗羽様!!」」
夏候惇「お前!さては山賊の生き残りだな!」
男「そうだよ!くそっ!ここまで逃げてきたってのに!」
夏候惇「もうあきらめろ!貴様に逃げ道はない!」
男「それはどうかな!?」
そう言うと男の後ろから武器を持った男たちが7人ほど出てきて
ステージから続く階段の上に陣取った
男(ボス)「よく聞け!こいつを殺されたくなかったら俺達の足になる
馬を用意しろ!そんで俺達を見逃せ!俺達が安全な所まで
逃げたらこいつを解放してやる。」
まずいな、何とかしないと...
ん、曹操?
曹操「......ふふ......ふふふふふ。」
な!?あいつ、笑ってやがる!?
「だから何?私にとっては袁紹は目の上のたんこぶだったのよ。
それを始末してくれるならありがたいわ。」
文醜「お前!なんだよ!その言い方!」
曹操「...簡単よ。乱世のこの世、誰もが1番になる事を競う世界、
競争相手が減ってくれるならありがたいのよ。」
まずい、このままだとまずい!何か、何か......あれだ!
俺は会場の隅に移動した そこにあったぼろ布で体を包み、顔を隠した
文醜「テメェ!」
曹操に文醜が殴り掛かるが夏候惇によって阻止されてしまった
袁紹「そ、そんな...」
男(ボス)「ちっ!結局は名だけの奴かよ!それならこんな奴盾にするんじゃなかったぜ!」
袁紹「き、貴様!名誉ある袁家の当主たる私を侮辱するなど、万死にあたる行為ですのよ!」
男(ボス)「けっ!何が名門だ!お前、裏で自分が何て言われてるか知ってるか?」
顔良「やめなさい!」
男(ボス)「お前は、権力しか持たない親の七光りだってな!」
袁紹「っ!?そ、そんなの嘘よ!私は!わたしはっ!」
男(ボス)「それが嘘なら何で曹操はお前を気に掛けないんだよ!
結局お前はここで終わるちっぽけな武将だったて事だよ!」
袁紹「そんな...そんなの......嘘よ...うぅっ、うぅぅぅ。」
袁紹の頬を涙が伝う それが地面に落ちた時
白き銃弾を込めたデリンジャーを構えながら台の中央に躍り出る布を纏った撃、そして
『ガアァァァン!』
飛び出したのは白き鎧『白狼』 白狼は駆け巡る、階段の賊の間をすり抜ける
そしてそのままボスらしき男の顔を殴り飛ばす
白狼は離れた袁紹を抱きかかえ、撃の所まで下がった
撃「袁紹さん、もう大丈夫ですよ。」
ゆっくりとお姫様だっこ状態の袁紹を下ろす白狼
そこに文醜と顔良が走って来た
文醜「麗羽様~!」
顔良「ご無事ですか!?」
袁紹さんは2人が保護した これで大丈夫だろう
でも、袁紹さんはまだ泣いていた
袁紹「なぜ、私を助けたの...結局のところ、私なんて...」
撃「それは違います。」
袁紹「え?」
撃「あなたは今までこの町を発展させてきたのではないのですか?
もし、あなたに本当に力が無ければ国を維持するどころか自分の家を
維持する事はできません。俺はあなたについて考えを改めなくていけませんね。
俺も最初は、失礼ですがそう思っていました。
でも、この発展した町を見て考え直しました。あなたは無能なんかではありません。」
袁紹はいまだ涙を流しながらもこちらを見上げていた
袁紹「あなたは...あなたは一体?」
撃「すみません、それは後で、今は...」
男(ボス)「何してる!?お前ら人質を取り返せ!早くしろ!」
男たち「「「「「お、おおぉぉぉぉっ!!」」」」」
白狼に驚いていた賊たちが我に返り、こちらに向かって来る
撃「行くぞ、白狼。」
俺は相棒の背中をたたく
『YES SIR』
「SET UP!」
『GET READY!』
俺の横に立っていた白狼が俺の体と重なる
装着前は展開されていなかった盾と両腰部バインダーが展開される
それには会場の人間、賊、曹操の兵士、夏候惇、曹操、そして袁紹さんたち3人も
驚いているようだ これで俺の噂は広まるだろう だが、背に腹は代えられない
人を救うと誓ったから、あのままだったら袁紹さんは絶望のまま死んでいっただろう
そんな人の最後を見るなんてゴメンだ
俺は両腰のバインダーを開く 両肘から射出されたグリップで
白いハンドガン『ヴァイパー』を作り出し、マガジンを装填する さらに
「オプション!SET KNIFE!」
『GET SET!』
バインダーからさらに小型ナイフが出てきた それを銃身の下に装着する
「さぁ、来いよ、俺が相手だ。」
俺は階段の上にいる賊たちを挑発する
賊1「な、なめやがって!」
男の一人が切り込んでくる
縦に振り下ろされる剣 俺は体を逸らして避ける
返すように右手のヴァイパーのナイフを奴の喉に突き刺し
『ズキュズキュゥゥゥン!』
2発 のどに叩き込み、蹴りで吹き飛ばす
横からの剣戟を後ろへのバックステップでかわした後、背中のスラスターで
急接近、腹部に突き刺した両手のヴァイパーから1発ずつ
『ズキュズキュゥゥゥン!』
『LEFT 08 LIGHT 06 ENEMY 06』
ゴーグルに左右の残弾数が表示された
ヴァイパーの装弾数は9
右が3発 左が1発使ったと言う事だ 敵はボスを入れて8
2人倒したから残り6、か
今度は左右から2人が切りかかって来た
斬撃をナイフで受ける それをはじき返したたらを踏んだ敵に向かって
左右に両手を広げ、相手を見る事なく2発、撃ち込んだ
...残り4人 残弾 6 4
銃の威力に恐れおののきまともに動けないボス以外の3人を
右のヴァイパーのヘッドショットで倒す
男(ボス)「う、うわあぁぁぁっ!」
仲間が倒れた事でビビりまくっているボス
だがもう奴を守る人間は存在しない
撃「...終わりだ。」
俺は残弾1発のヴァイパーを向けた
男(ボス)「な、何なんだよ!?お前は一体何なんだ!?」
撃「...死神だ。」
『ズキュゥゥゥン!』
男は後ろの建物に逃げようとするが間に合うはずがない
頭を貫かれた男は前のめりに倒れた
......これで終わった
「殲滅、完了。」
俺は開いたバインダーにナイフが付いたままの銃身を差し込んだ
するとグリップと銃身が離れ、銃身はバインダーの中に収納された
俺はグリップを両肘のアタッチメントに戻し地面に座り込んでいる
袁紹さんに近づいて、その前で片膝を地面に着け、視線を合わせた
「袁紹さん、大丈夫ですか?」
袁紹「えぇ...でも、あなたは一体?」
撃「私は、少しばかり異能の力が使えるただの武芸者です。
それより、袁紹さんにお願いがあります。」
袁紹「何ですの?」
撃「今のこの状態では武闘会を続ける事はできません。
申し訳ありませんが、観客の人たちに退場するように言ってくれませんか?」
袁紹「えぇ、わかりました。」
涙にぬれた顔を顔良が用意したタオルで拭き、立ち上がる袁紹さん
「みなさまにお伝えします!この度はこのような事になってしまい
主催者として、心からの謝罪を申し上げます、申し訳ありませんでした。
ですが、これが終わりではありません。いずれまたこのような覇を競う
大会を開催したいと思います。その際は再び皆さまがここに集まっていただける
事を望みます。それでは今日の大会は中止とします。皆さまに迷惑をかけたことを
謝罪します。」
すると民衆の中から拍手と歓声が上がり、中には『また面白いのを見せてくださいよ!』と
袁紹を励ますような声も上がった
その後、袁紹さんのメイドさん?達によって人々は順番に退場していった
それを確認すると袁紹さんはこちらに向き直った
「この度は危ない所を救っていただきありがとうございました。
この礼はなんなりと。」
撃「お礼など必要ありません。自分が勝手にやった事です。」
袁紹「本当に何もいらないのですか?お金は?名誉は?」
撃「いりません。私はただ誰かが泣くのを黙って見過ごせないだけです。
それに誰かを泣かせるような奴は一発殴っておかないと気が済まない
性分でしてね。」
袁紹「たったそれだけのために?」
撃「それだけではありません。私はあなたに泣いてほしくなかった。
それにあなたを見殺しにしたら私は自分を許せなくなります。
ましてやそのせいで誰かが悲しむのも、見たくありません。」
袁紹「...猪々子、斗詩...」
猪々子「そうですよ!アタイ達の主は麗羽様だけなんですから!」
斗詩「そうです!」
撃「袁紹さん、あなたには力がちゃんと備わっています。自信を持ってください。」
袁紹「ありがとう...本当にありがとう。」
俺を見つめる袁紹さんの顔は笑っていた これで良いんだ、これで
撃「気にしないでください、それに袁紹さんは泣き顔よりも笑顔の方が
ずっときれいですから。」
そう言うと顔を赤くした袁紹さんが持っていたタオルに顔をうずめてしまった
...言い過ぎたかな~励ましのつもりだったんだけど
......それはそうと...
会場を見回すと台の上には鈴々ちゃんと馬超さんが残っている
客席の方には......曹操達が残っている
撃「...あなたは、曹操殿、ですな?」
曹操「えぇ、そうよ。それが何か?」
撃「なぜ今だここに居られる?もう賊はいない、あなたがここにいる意味は
無いでしょう?」
曹操「そうね、でも私はあなたに用があるの。」
やっぱりか...大体想像がつくが
撃「何でしょう?」
曹操「あなたは、私の配下にならない?」
これには周りの兵士や将軍も驚いている 当然だ 訳の分からない力の持ち主を
配下に加えようなんて自分の主が言い出したら誰だって驚くだろう
撃「...お断りします。」
曹操「なぜ?私に付けば天下の将軍になれるかもしれないわよ?」
撃「私は、そんな事のために力をつもりはありません。」
曹操「そう、なら、私に付いて来てもらえるかしら?」
撃「なぜ?」
曹操「決まってるじゃない、あなたを説得するためよ。」
撃「だからお断りすると...」
馬超「曹操ォォォ!」
後ろで鈴々ちゃんと並んでいた馬超さんが突っ込んできた
撃「っ!?」
馬にまたがる曹操に馬超が飛び掛かった
曹操は持っていた大きな鎌でその攻撃を弾いた
馬超「曹操!今ここで、亡き父の敵!取らせてもらう!」
...そういう事か、だが、このまま無暗に突撃すれば彼女は殺される
馬超「うおぉぉぉっ!」
...悪いが、これ以上の流血は必要ない
俺はスラスターを使って2人の間に割って入り、驚く馬超の腹部に
拳を叩き込んだ
「かはっ!?」
槍を手放し、膝をついた馬超がこちらを睨んでくる
「なぜっ!?なぜ邪魔をするっ!?」
撃「悪いけど、ここでもう血を流す必要はない。だから止めた。」
馬超「何なんだ?おま、え、は......」
すると意識を手放したのか馬超は横に倒れた
それを抱きとめ、ゆっくりと地面に横たえた
兵士「いまだ!曹操様を襲った賊を殺せ!」
兵士数人が武器を持ってこちらに迫ってくる
撃「...STANDBY IMPACT CANNON」
『OK STANDBY SET UP!』
俺のコマンドに合わせ左肩のシールドが変化した
それは巨大な筒、キャノン砲のように変化する
俺はそれを近づいてきた兵士に向けるように左手を上げた
「警告する、彼女に手を出すな...跡形もなく吹き飛ばされたくなかったら、
大人しくしていろ。」
キャノンのビビった兵士たちは立ち止まり、主の方を仰ぎ見た
曹操「...下がりなさい。命令よ。」
命令に従ってゆっくりと下がるのを確認すると俺もキャノンを下ろした
撃「...IMPACT CANNON RETURN。」
『YES SIR』
俺も左肩のキャノンを盾に戻した
「曹操殿、先ほどの話し合いの件、受けましょう。」
曹操「何?気が変わったの?」
撃「そうではありませんが、参加するにあたって条件があります。」
曹操「何かしら?」
撃「彼女、馬超殿の安全を保障する事、それだけです。」
それには横にいた古参兵が起こった
古参兵「ふざけるな!貴様、曹操様からの誘いを断った挙句にそのような!」
撃「だったらかまいませんよ、俺は、さっきと同じ力を使って
強引に突破するだけです。」
俺は肘のグリップに手を伸ばしながらバインダーを開いた
それを見た奴らも剣を構える
曹操「おやめなさい。」
古参兵「しかし!あやつは!」
夏候惇「やめろ!貴様は華琳様に忠誠を誓った身であろう!
それが主を信じられなくてどうする!?」
古参兵「はっ!申し訳ありませんでした。」
それを聞いた兵士たちも武器を下ろした
俺もバインダーを閉じ、伸ばした手を戻した
曹操「良いわ、あなたの条件を飲みましょう...けど、少なくとも彼女の
身柄は拘束させてもらうわよ。」
撃「構わない、命の保証してくれるなら俺は口を出さない。」
曹操「わかったわ、それじゃこの町の門の外に野営地があるからそこまで付いて来て。」
撃「わかった、ただその前にやっておく事がある。」
そう言うと台の上で事の次第を見ていた鈴々に撃が近づいた
鈴々「白兄ちゃん!何してるのだ!ひょっとしてあの人と一緒
に行っちゃうのかなのだ!?」
撃「そうじゃない、俺は絶対に帰ってくる。約束する。だからここで起きたことと
俺があの曹操に付いていった事を愛紗達に伝えてほしい。」
鈴々「でも!でも!」
俺は後ろの曹操から見えない様にゴーグルとマスク部分を左右に開いて素顔を見せた
撃「大丈夫だよ。俺は絶対帰ってくるから。帰ってきたら、みんなでおいしい物、
いっぱい食べよ?な?」
鈴々「わかったのだ...だから!絶対帰ってきてほしいのだ!お兄ちゃん!」
撃「うん、必ず帰ってくるから。」
俺は今にも泣きそうな鈴々ちゃんにほほ笑み、その体を抱きしめて安心させる
「......それじゃ、行って来る。」
俺は開いたゴーグルを閉じて曹操の元に向かった
曹操「別れの挨拶は済んだの?」
撃「...アンタには関係ない。」
曹操「あらあら、さっきまで袁紹に接していた態度とは思えない変貌ぶりね。」
撃「.........」
曹操「まぁ、いいわ。行きましょう。」
そう言って俺は周りを兵士に顔まれながら『白狼』を纏ったまま付いていった
だが、俺はコイツとなれ合うつもりはない 人を平気で見殺しにする奴などと
そして俺は曹操達の野営地へと連れていかれた
第5話 END
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本編3話とはかなり内容が異なるかもしれませんが、楽しんでくれれば
幸いです。