No.817898

恋姫外史医伝・華陀と一刀 五斗米道の光と影 第7話

アキナスさん

たたり・・・

2015-12-09 01:35:57 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3373   閲覧ユーザー数:2762

一刀と趙雲はいつものように旅の途中で見つけた村で簡易診療所を開こうとしていた。

 

許可を得ようと村長の所へやってきた一刀たちは、村長から奇妙な話を聞かされたのだった。

 

「山神のたたり?」

 

「そうですじゃ。もう五人があの山へ狩りや山菜を取りに行って、しばらくして死んでしもうたんじゃ」

 

「ふむ・・・少々信じがたい話ですな」

 

「そうかもしれんが、ワシは嘘は言っておらん。みな同じように苦しみ悶えて、最期は狂い死にしてしもうた」

 

「・・・・・・確かめに行ってみるか」

 

原因を調べるべく、一刀は趙雲と共に例の山へと向かうのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

一日村長の家に止めてもらった一刀たちは、朝早くに山へ入り、村長に教えてもらった調査の拠点となる山小屋へとたどり着いていた。

 

「ここが村長の言ってた山小屋か」

 

「少し古びているようですが、使うのに支障は無さそうですな」

 

「それじゃあ、色々調べてみるとするか」

 

一刀は水や土、植物など原因の疑いのあるものを次から次へと調べ始めた。

 

「これも問題無し・・・か。なら、次はあっちを探してみるか」

 

立ち上がり、歩き出そうとする一刀。

 

それを趙雲は手で制した。

 

「どうした?」

 

「気をつけて。何かいます」

 

周囲を警戒している趙雲。

 

「・・・・・・」

 

一刀も無言で辺りを見渡す。

 

ガサガサと草むらが動いた瞬間、何かが飛び出してきた。

 

「!?」

 

飛び出してきたのは一匹の小型犬だった。

 

その形相は厳しく、牙を剥いて一刀たちに襲い掛かってくる。

 

「御免!」

 

趙雲は手加減しつつ、槍の柄で犬を打った。

 

小さく悲鳴をあげて倒れる子犬。

 

「やりすぎましたかな?」

 

完全に気を失っている子犬。

 

その息は荒く、体は痙攣を起こしていた。

 

そして・・・動かなくなった。

 

それを見た一刀は、すぐさま子犬に駆け寄った。

 

「・・・・・・死んでる」

 

「!ま、まさか・・・私が・・・?」

 

「いや、違う。こいつは・・・・・・」

 

「?」

 

「とにかく、この死体を山小屋に運ぼう。調べたい事があるんだ」

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

山小屋に戻った一刀は子犬を解剖し、調べ始めた。

 

趙雲は手伝う事も無いので、ただ腕組みをして一刀を待っていた。

 

「・・・・・・やっぱりな」

 

「何か分かったのですか?」

 

「結論だけ言おう。こいつは狂犬病だ」

 

「狂犬病?」

 

「ああ。感染症の一つだ」

 

「では、さきほどこの犬が死んだのはその病のせい?」

 

「ああ。だが、それだけじゃあない」

 

「?」

 

「こいつは噛まれたら伝染する病だ。そして、感染する動物には人間も含まれる」

 

「・・・と、いうことは」

 

「たたりの正体は、たぶんこいつだ」

 

二人は調査の結果を村長に知らせるため、すぐに山を下りたのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

 

山から下りてきた一刀たちを待っていたのは、悪い知らせであった。

 

「発病した者が出た!?」

 

「うむ・・・村の若者じゃ」

 

「一刀殿!病が何なのか分かったのなら治す方法も分かったはず!今すぐ治療を!」

 

「・・・・・・」

 

声を荒げる趙雲に対して、一刀は座して沈黙していた。

 

「何をしているのです!早く行って・・・」

 

「・・・・・・だ」

 

「は?」

 

「手遅れだと言ったんだ」

 

「な!?」

 

「狂犬病は発病したが最後、ほぼ確実に死に至る病だ。治療法は無い」

 

「・・・・・・」

 

予想外の一刀の言葉に、趙雲は呆然とするしか無かった。

 

「で、患者はどこだ?」

 

「何じゃと?」

 

「もしかしたら別の病気かもしれない。だったら助かるかもしれないからな。行くだけ行くさ」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

結果を言うと、患者である若者は狂犬病であった。

 

手の施しようが無い事を若者の家族に伝えると、家族は一刀をヤブ医者扱いし、問答無用で家から追い出した。

 

その後、一刀は潜伏期にあると疑われる患者を探し、

 

「必殺!シャーーーイニングニードルゥゥゥゥゥ!!」

 

針治療を行った後、村長に注意喚起をして村を出たのであった・・・・・・

 

 

 

 

 

「一刀殿」

 

「ん?」

 

「診療所を開かずとも良かったので?」

 

「開いたところで、患者を見捨てたよそ者の俺の所に人が来ると思うか?」

 

「しかし、針治療を行ったではありませんか」

 

「発病した患者を治したわけじゃないからな。ペテンと見られても不思議じゃあない」

 

「・・・・・・その、本当にあの若者は助からなかったのですかな?」

 

「助かるものなら助けたさ」

 

「・・・失礼」

 

「別に」

 

その時、ポツポツと雨が降り出した。

 

降りが強くなっていく中、一刀たちは近くの木陰で雨宿りをする事にした。

 

「・・・・・・雨か」

 

一刀は例の山のほうへと目を向けた。

 

「どうかされましたか?」

 

「・・・狂犬病は恐水病とも言われているんだ。発病したものは粘膜を支配する神経が水に対して過敏になって、そのうち水を見ただけで恐怖を感じるようになる。雨なんかに遭ったら発狂、場合によっては死ぬ事もあるんだ」

 

「では、あの山の中では・・・・・・」

 

「狂犬病を発症した動物達が死んでいってるだろうな・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

「病というのは理不尽なもんだな・・・」

 

 

 

 

「ええ・・・・・・」

 

 

 

 

雨はしばらく

 

 

 

止みそうには無かった・・・・・・

 

 

 

 

 

どうも、アキナスです。

 

珍しくシリアスな話で、少々息が詰まりそうでした。

 

しかし医をテーマにする以上、こうなるのも仕方の無いことかもしれません。

 

次はもう少し気楽な話が書きたいなあ・・・・・・

 

 

 

 

 


 
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