No.817571

侵次元カオス・オブ・クロスゾーン  プロローグ

さらさにもう一つ新作!

2015-12-07 16:03:28 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:1774   閲覧ユーザー数:1695

 聖フランチェスカ学園:剣道部

 

 終業式間近の十二月半ばのころ。剣道部専用の道場は、寒気で室内が冷え込んでおり、凍えるほど寒く、練習がキツク感じるほどであった。部員たちの多くは各自、事情や試験などで早めの帰宅し、道場にはただ青年一人、室内の中央で暖房器具のストーブを付けながら、練習用の木刀――ではなく巨槍のような刃が潰れた両刃の大刀で素振りをしていた。

 

「ハッ!トッォ!ハァッ!」

 

 寒気で室内の温度が五度程度というのに、額に汗を流し、寒さを忘れて一心不乱に巨大な木刀を振り続ける。なお、彼が振ってる大刀は去年の剣道部の部長が卒業する際、(冗談を兼ねて)練習用として剣道部に献上した品であり、正式名所《斬馬刀》。明治時代、軍が騎馬を馬ごと斬るのを前提として造られた巨大な刀である。

 長年、手入れをされてなかったためか、刀身は錆びており、刃が潰れ斬ることはできず、ただの鉄の塊の板となっている。ただし、その強度と主は十分凶器であり、人を殴れば軽くて脳震盪、悪ければ複雑骨折と非常に危険な品物。

 一様、前部長と学園側が正式に書類申請したため銃刀違反にはなっておらず、また、あまりにも重過ぎるため、部員たちは持つことはできず、ほぼ、剣道部の飾りとして床の間に置かれていた。

 そんな斬馬刀を安全のため部員が帰った放課後、鉄棒と思わせる柄を握り締め、練習用の木刀代わりに使用する青年がいた。

 その青年の名は『北郷一刀』。聖フランチェスカ学園の三年生であり、現剣道部部長である。

 

一刀「チェッストォォォォォ!!」

 

 上段の構えから振り下ろされる巨大な鉄の板。

 まさに寒気な空気を絶つとばかりな、一刀両断と思わせる豪快な剣技。

 しかし、振り下ろされた斬馬刀の剣先は床から五センチほど離れて寸止めされた。

 

一刀「ふぅぅ…」

 

 一刀は一息整えた。彼は大刀を操る際、周囲を壊さぬよう、全身神経を集中し、斬馬刀の剣先を意識して剣を振るっていた。ナイフや竹刀ならば兎も角、大の大人が両手でやっと持ち上げられる斬馬刀で細かな動きをさせるのは並大抵で出来る事ではない。ただでさえ巨大な刀を振り回すため相当な筋力が必要な上、体力の消耗が激しいのだ。

 そんな扱い辛い獲物を自由に振ることが出来るのは、放課後、誰もいなくなった道場で床や壁、天井に傷を付けないよう毎日毎月斬馬刀を振り続けてきた一刀の努力の賜物であろうか。

 その証拠に今日の放課後から斬馬刀を振り続けて数時間、息を一度も乱して折らず、体力も余分にあった。

 

 

 それも、斬馬刀を左片手で素振りして。

 

 

「最近、カズピーが人外に見えてきたわぁー」

 

一刀「ん?及川っか…」

 

 道場に入室したのは一刀の悪友である『及川祐』であった。

 及川は「差し入れや」と言い、ジュースが入ったコンビニ袋を差し出す。

 一刀は斬馬刀を肩に(唾の部分を当ててるため肩が食い込むことはない)乗せ、差し入れのジュースを片手に飲む。

 

及川「剣道の大会も終わっていうのに、そんなに鍛えてどうすんねんカズピー?どっかの用心棒になるん気か?」

 

一刀「さぁな。実家の道場には俺より文武両方すぐれた優秀な妹もいるし、当主を継げなかったら傭兵家業でもするつもりさ」

 

及川「傭兵とはえらい物騒やなことで。もしかしてカズピーって戦闘狂い?」

 

一刀「いや、これでも、ほかにも政治家の道も興味もあるぞ。こうみて俺、政治とかうるさいし、結構敏腕で、頭もいいし、もしかしたら総理大臣になったりして――」

 

及川「カズピーカズピー。自画自賛しんとこ悪いけど、なんや話が脱線してへんか?」

 

一刀「あっ、ごめん。もうすぐ卒業だからつい将来のこと考えちゃって…」

 

及川「そらえぇーけど、本当に大学に進学しーひんのか?人生長いんだしもっと華やかで安全な幸せを選んでもえぇとワイは思うけど?」

 

一刀「たしかに人一人の幸せを考えればそうかもしれない。だけど…、俺の人生はつねに戦いを選んでいるんだ。政治に戦場、目的のためにこの身と命を賭けて戦い、我が道と我が信じる共ともに進む。そういう生き方をもう一度してみたいんだ俺は…」

 

及川「うん?もう一度?」

 

一刀「あっ、いや、何でもない」

 

 そう言って慌てて背をむけた一刀。?マークを浮かべる及川にはみえてないが、その顔にはどこか懐かしさに慕った表情と一生の別れで悲しむ表情が混じった様に浮かんでいた。

 一刀はアノ幻想のような時間を及川に話してはいない。たとえ他人に話しても信じてもらえないだろう。最悪精神病院行きで、精神不安定として寝台されるオチだ。

 友である及川ならすこしは信じてくれるかもしれないが――

 

及川「ちなみにやんやけど、その文武両道にすぐれたかわいい妹さんワイに紹介してくれへん?」

 

一刀「やめとけ。あいつは宝塚俳優みたいな性格と天然が混じってるから付き合ったら絶対苦労する」

 

 残念なこと、この友は悪友。

 女に煩く、ナンパに成功しては即効で振られて学習せずまたナンパするアホ眼鏡。

 彼女たちの(関係)話をしたら間違いなく後が面倒くさくなる。絶対に。

 その後二人は放課後ギリギリまで座談をし、及川はデートがあるため先に帰った。一刀も胴着から聖フランチェスカ学園の制服にえて寮に帰ろう仕度をする。

 

一刀「明日は休みだし、こいつの手入れもしとくか」

 

 そう言って斬馬刀を持ち上げた一刀。

 一様、剣道部の備品だが一刀は剣道部の部長であり、剣道部の担任に許可と学園の敷地外の持ち運びをしなけれあ一旦借りることはでききた。そのため、一刀月に二回ほど、この鈍器のような鉄の塊を寮に持って帰っている。ちなみに手入れといっても刃を研ぐのではなく刀身を磨くことなので刃物としてすることはない。

 その後、一刀は道場に鍵を掛けてから職員室に担任に鍵と預け、斬馬刀の許可を得て寮へと帰宅した。

 

 

 

 聖フランチェスカ学園:帰路

 

 時刻は六時を回り外は暗く、照明灯の明かりが、レンガが敷き詰められ道を照らしていた。

 そんな道を一刀はスタスタと歩いていた。

 

一刀「………あれから一年弱…年が経つのは早いもんだなぁー…」

 

 ふと、歩みを止め、夜空を見上げなが呟く。

 彼の脳裏に一年前の物語が録画の再生のように振り返ってくる。

 普通の高校生だった自分が天の御使いとして三国志に似た武将が全員女になっている世界に居たという不可思議な体験を。

 魏の覇王となる小さな女子に拾われ、王と仲間たち共の覇道を歩んだ波乱万丈な記憶。

 それは普通の人生を歩んでいたはずの普通の青年にとって戦争おちう苦難と挫折の現実であった。

 しかし、同時に仲間と苦難を乗り越え信頼し、故意を寄せ合い、肌を合わせ、愛を育んだ幸せな一時でもあった。

 そして、御使いと覇王はお互い深き恋を堕ちながらも、覇道を進み続け、覇王の夢である三国制覇成し遂げ魏が三国を統一したのだ。

 

 だが、その代価はあまりにも残酷であった。

 

 魏が三国を統一したという三国志の歴史と違った結末となったため、世界の意思というべき対極が北郷一刀という存在を消そうとしたのだ。

 当然、一刀は最後まで抗い続けた。対極の力は増すたび一刀の身が消えかけるが愛しき覇王のため気力を振り絞り覇王と共に歩んだ。

 

 そして、覇王の夢が叶った時、一刀は己の役目が終わったと悟りながら、覇王の前から消えたのだ。

 

 そして、愛しき彼女たちを残し消えた一刀は聖フランチェスカ学園の寮の自分の部屋に戻った。

 

 これまでのことは夢だったのかと、一刀は一時期不安に思えてしまったが、一刀が三国志の世界に居た間、一ヶ月ちかく行方不明になっており、着ていた制服が向こうの世界で一張羅だっため戦場でも着こなしてボロボロであったため、それが変わらずボロボロであったことが、夢でないことを物語っていた。

 

一刀「もう一度…君達に会いたくてあの世界に行く手段を探して半年…君達と一緒に戦場を駆けれるように実家の道場で修業し免許皆伝になって五ヶ月…君達のため勉強して色んな資格を取って三ヶ月…計一年弱…強くなり賢くなっても君達の所へ行く手掛かりはゼロ……。ほんと、なにやってんだろう俺…」

 

 たとえこの身が強くなろうが、たとえこの頭が賢くなろうが、愛した女性たちに使わなければ意味がない。

 彼女たちを思えば思えるほど、一刀はある夢を見続ける。

 

――……一刀?一刀…………!

 

 

――………すっといるって…言ったじゃない……!

 

 

――…ばか…ぁ……!

 

 

 何度も夢で見る自分の名を呼ぶ愛しい覇王さま。

 その夢の中で、覇王は一人の威厳高い王ではなくただ愛しい人の別れに泣く、さびいい女の子の泣き顔が一刀の心と脳に刻まれる…。

 

一刀「…………」

 

 肩が重く感じる。

 肩に背負い、布に包まれた斬馬刀の重みではない。

 残してしまった愛しいき王と愛しき仲間たち。そんな彼女たちの思い出が後悔と罪悪感となって、彼の背中に重く圧し掛かているのだ。

 

一刀「……俺も会いたい…この腕で君をまた抱きしめたい…華琳」

 

 恋しい覇王の名を呟き、目から一滴の涙が頬を伝って落ちた……

 その時だ!?

 

 

ピキッ!ビキキッ!!

 

 

 一刀の目の前で空間がガラスのように音を立ててひび割れていく。

 

一刀「ッ!?」

 

 一刀はとっさに巻いていた布をとり斬馬刀を構える。

 このような不可解な現象がなんなのかと疑問を抱くも、祖父の教えにおいて「いかなる時でも冷静に、見極めるべし」をモットーに、今はこの空間が割れる現象に警戒することを優先する。

 そして、空間がパリン!と景気良く割れ、空間に隙間が出来上がった。

 同時に――

 

「見つけたわよ~!!ご主人様~!!!」

 

 隙間から、禿でモミアゲがオサゲで褐色のパンツ一丁のマッチョな変態が出てきた!?

 

一刀「這い寄る混沌系はお帰りをォォォォ!!」

 

 先手必勝。

 相手は何者かは置いといて斬った後で考えればいい決断した一刀は、一切の躊躇なく斬馬刀を変態に振り下ろした。

 

「なんのォォォォ!!!」

 

 しかし、褐色のマッチョな変態は凄みの顔でしながら、筋とばかり思える筋肉質な太い両腕で斬馬刀を真剣白刃取りで受け止めた!?

 一刀はそのまま押し斬ろうとするが斬馬刀はピクりとも微動しない。どうやら細く強靭な褐色の両腕は伊達ではないらしい。

 

「ムッフフフ♪ SSシリーズで毎回やられる貂蝉ちゃんじゃないわy――ぐっほ!?」

 

 変態が言いかけてとき横にくの字に曲がった。

 一刀は変態の言葉を聞かず、柄を握り締めたまま変態の横腹に鋭い蹴りを入れたのだ!!

 一刀の蹴りが溝に入ったのか変態はそののまま地面に膝をつき、横腹を手で押さえながら悶絶する。

 

「や、やるじゃないの…ご主人様…今のはきいたわ…」

 

一刀「誰がご主人様だ誰が?お前みたいな変態知らん」

 

 警戒を解かず斬馬刀を向け、変態を睨む一刀。

 実家にいた頃マッチョな変態の男たちは実家で数人知っているが、褐色のパンツ一丁のマッチョな変態に心当たりがない。

 あいつらのウッホの仲間なのかと(未だ空間が割れていることを忘れて)推測していると、褐色のマッチョな変態が数秒で何もなかったように回復し一刀の前に立ち上がった。

 

「知らなくて当然ね。なんたって私が仕えていたご主人様はあなたではない別のご主人様なの」

 

一刀「はっ?」

 

「貴方だけど貴方ではない。貴方として存在してるいるけど貴方としての意識を持たない貴方。それが私のご主人様」

 

一刀「…俺として存在してるけど俺という意識がない?」

 

一刀は変態の言葉に耳を貸して考える。

知識を増やすため経済から考古学、科学な勉強したため変態が言ってる言葉を理解するのにそう時間は掛からなかった。

 

一刀「……平行世界の俺のことか?」

 

「ピンポーン♪さすがご主人様、理解が早くて助かるわん♪」

 

一刀「しなを作るなしなを。気持ち悪い。んで並行世界の俺が仕えてきたお前がどうして俺の前に現れたんだ?」

 

「…実は私、あなたにお願いがあってきたの…」

 

 先ほどまでチャラついていた変態が一変し、シリアスな空気が張り詰めた。

 

「私の名前は貂蝉、都で踊り子をしてるけど美女よ。けど、それは仮の姿。本来は外史を管理し導く管理者と呼ばれる者よ」

 

一刀「…えっ、貂蝉ってあの三国志の絶世の美女!?どうみても変態の怪物しか見えないお前が!?」

 

貂蝉「誰が見るに耐えないおぞましい廃棄物の化け物ですってぇぇぇえええええ!!!!」

 

一刀「そこまで言ってない!?」

 

 筋肉を膨らせ憤怒する絶世の美女のパチモン。

 一刀は気魄に押し切れそうになり、危うく斬馬刀を地面に落とすところだった。

 

貂蝉「まっ、お約束はさておいて。いろいろと混乱してくるかもしれないから私のことは省くわね。外史というのは誰かの思いや想像によって生まれた一種のパラレルワールド。そのひとつが、あなたが行った世界なのよ」

 

一刀「…なるほど。つまり俺がいった世界は三国志の武将が女の子だったらと想像された世界ってことか?」

 

貂蝉「そうよ。そして物語の始まりと終わりがあるように外史にも始まりと終わりがある。それはさながら花のごとく花びら咲けば枯れ儚い夢幻の世界…それが外史なの」

一刀「それってまさか俺がいた世界はもう…」

 

貂蝉「……一度始まった外史は終われば散る。ご主人様の役目が終わった時点で曹操ちゃんの世界は終焉を迎えて…散ったわ」

 

一刀「そんな…」

 

 残酷な事実に絶望しかける一刀。体から力が抜け、斬馬刀を杖代わりに体を支えた。

 そんな一刀に貂蝉は、

 

貂蝉「でも安心してご主人様。もしかすればまた曹操ちゃんたちにあえるかもしれないわ」

 

一刀「どういう意味だ…?」

 

貂蝉「塵も詰まれば山となるというべきかしら。終わったはずの外史の欠片がいろんな外史の欠片と重なり合い、ひとつの世界…始まりがあって終わりがない混沌な物語が誕生したの」

 

一刀「混沌の物語…?」

 

貂蝉「そして、積もれた外史の欠片のひとつがあなたが愛した曹操ちゃんの世界の欠片もあるわ」

 

一刀「それって!?」

 

貂蝉「そう!その欠片で構成された世界に行けば曹操ちゃんにまた会えるってわけ♪」

 

 華琳たちにまた会える!

 先ほどまで虚無と絶望に心痛めていた一刀に希望という名の光が差し込んだ。

 

貂蝉「さてここからが本題。実はその世界、いろいんな外史が積もったせいで異世界の魔物とか異国とかいろいろとまじっちゃってとても危ないわ。しかもその世界自体、健在な世界まで取り込もうと正史外史問わず無限に広がり続けているの。そんな世界を私たちは侵食する世界『侵次元』と名づけた」

 

一刀「侵次元…?」

 

貂蝉「そして、私たち管理者はその侵攻を止めるべく外部から押さえ込んでいるけど別世界を取り込み膨大化する侵次元を完全にとめることができない…。せいぜい侵食の速度を抑えるのが精一杯。こうして話してる間に貴方の世界や別世界のご主人様、曹操ちゃんや異世界の住民を取り込もうと徐々にその世界の魔の手が伸びているのよん」

 

一刀「……話が大きすぎて理解しにくいけど、とにかく世界の危機だってことはわかった。それで俺に何かをさせる気なのか?」

 

貂蝉「理解が早くて助かるわ。外部から駄目なら内側から止めればいい♪貴方にはその世界の探索と世界膨張を促進させる原意となる因子をなんとかしてほしいのよん。なんで自分がって聞かないで頂戴。とにかくこれは貴方しかできないこと。この話に乗らなければ一生曹操ちゃんに会えなくなるわ。さぁどうするご主人様?」

 

一刀「足元見やがって…。言われなくても華琳たちの危機なら行くしかないだろう!」

 

貂蝉「それでこそ私が愛したご主人様よ♪」

 

 そう言って、貂蝉は一刀に道を開けた。

 一刀の目の前には貂蝉が何もない空間から飛び出した隙間がすこしであるが、隙間が小さくなっていた。

 

貂蝉「あの世界に行くための通路がこの隙間よ。世界が大きすぎで管理者の特権が効かないから手作業で直線の道を作ったわ。世界の修正ですぐに閉じちゃうから急いで入ってちょだい」

 

一刀「わかった…」

 

貂蝉「それと念のため忠告しておくけど、このままいけば貴方が体験した戦場より激しい戦いがまっているわ。そればかり一生もとの世界に帰れず家族の元へ戻れなくなるかもしれない。それでいい?」

 

一刀「いいんだ。愛した女がいない世界に未練なんてない。それに、この身はもはや愛しき覇王のモノ。主のため己の命を捧げることが我が天の御使いの宿命。天命を全うすることは九州男児の誇りであり、武家の血をひく北郷家に生まれた長男の生き様だ!それに、一度決めたこに口出しするほど俺の家族は無礼者じゃない!!俺は俺が決めた道をもう一度進む!俺が今やるべきことはそれだけだ!」

 

貂蝉「……その覚悟本物のようね。その覚悟を賞して私から餞別よん♪」

 

 どっからだしたのか貂蝉は赤いバンダナを一刀に渡した。

 

貂蝉「きっとあっちの世界で役立つはずだから常に身に着けといてね」

 

一刀「どう役に立つのかわからないけど、なにからなになまでありがとうな」

 

貂蝉「いいのよう。別人とはいえ、貴方は私のご主人様。これくらいして当然よ♪」

 

 一刀は赤いバンダナを額に巻き、斬馬刀の柄を握り締めながら、 眼前の隙間を見つめる。

 

一刀「まってろ華琳、みんな…今会いに行くからな!」

 

 愛した女を叫びながら、閉じようとする隙間に入り込み、隙間が閉じると同時に、北郷一刀の存在がこの世界から消えた。

 夜の道に残された貂蝉はもういない一刀をいまだ見送っていた。

 

貂蝉「行ってらっしゃいご主人様。貴方ならきっと、たとえ神だろうが対極であろうがあなたは誰にも負けないわ。なんたって、あなたはすべての者達と共に強くなる、天の御使いなんですから♪」

 

 

 

 

 

 ただの偶然か何かの意思による酔狂な悪戯か世界がまた創られる。

 

 

 

 始まった。

 

 始まったね。

 

 

 

 終焉を迎えた物語は欠片となって地に落ちるも欠片は集まりもはやステンドグラスの世界となった。

 

 

 

 終わった物語だって。

 

 きれいで汚い世界だね。

 

 

 

 目的も趣旨もなく、混ざり合った理と理は混沌となる。

 

 

 その世界に物語という筋書きはない。

 

 その物語に世界の理なんていらない。

 

 

 

 この器に千の血を注ぎて、溢れ出る泉とせよ。

 

 

 常識なんて不要だ。

 

 弱肉強食は基本だよ。

 

 

 

 我が血肉が熱く燃え滾り、平等という名の境地へと誘う。

 

 

 彼らに限界なんてない。

 

 でも限度はある。

 

 

 さぁ、永遠への旅への準備は整った。

 

 

 その冒険は久遠だ。

 

 その愚行は永久よ。

 

 

 異界の者達よ、壊れた箱庭で戯れろ。

 

 

 そうしたら…

 

 そうすれば…

 

 

 

 

 

 ――終わらない物語が始まる。

 

 

 

 

 


 
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