第2話・ゲットバトル・レクチャーズ
旅立った翌日、野宿を満喫したクウヤはコトキの外れにある
平原・・・・もとい、103番道路に来ていた。
あちこちポケモンの姿が見え、少年は目を輝かせる。
それもそのはず、彼はルネシティ以外の世界を知らなかったのだ。
今回は義兄の頼みと協力あってコトキまで出かけられた。
「すごいなぁ・・・・あちこちポケモンだらけだ!
オレ・・・本当にポケモントレーナーとして旅立っちゃった!」
「ぷ・・・・くくくく・・・・」
「ん?何笑ってんだよ。ってか誰だお前」
「あはは・・・ごめんごめん・・・」
茂みの中から姿を現したのは、クウヤと年齢が近そうな少年だった。
灰色の帽子から金色の少しはねた髪と紅く鋭い目が見える。
パッと見た感じは「美少年」という言葉がしっくりくる外見だった。
「ボクの名前はリクガ。・・・・キミがクウヤくんだね?」
「ああ、そうだけど?何でオレのこと知ってるの?」
「父さんから聞いたんだ。キミが昨日助けたのはボクの父さんなんだよ」
「えぇ!?あの博士の子ども・・・?」
「うん、見てすぐ分かったよ。黒い髪に緑の目・・・・服は、聞いてたのと少し違う」
リクガの言うとおり、クウヤの衣装は旅立ち前と違っていた。
クウヤはこれまでのいきさつを全てリクガに話す。
「そうか、キミも大変だったんだね」
「もう過ぎた事だ、気にしちゃいねぇよ」
「ふふ、そうだね。あ、今日ボクがキミに会いに来たのは、理由があるんだ」
「理由?」
「キミ、ポケモンバトルとかゲットとか・・・知ってるかい?」
「ううん」
クウヤの即答にリクガは苦笑いする。
「だろうね・・・・。
だから、ボクが教えてあげようかなぁーなんて」
「・・・・・・・」
「あ・・・・あれ?」
急に黙ったクウヤに動揺するリクガ。
先程のは失言かと思ってしまった。
無論彼は先輩ぶってなどおらず、自慢や嫌味のつもりもない・・・・ 単なる本心からの親切なのだ。
謝ろうとしたリクガだが、その行動は見事に裏切られた。
「まじありがとう!
オレなんっにもわかんないから!頼むぜ!!」
「え・・・あ・・・うん・・・・」
(クウヤって・・・・こんなに単純・・・・っていうか純粋なんだ・・・・)
真っ直ぐすぎるクウヤに思わず顔を歪ませつつも冷静さを保ちモンスターボールを構え、開閉スイッチを押す。
「きゃも」
「まずはバトルだ」
「え・・・?そいつがお前のポケモン」
「ああ、キモリって言うんだ」
「へぇ・・・よろしくな!キモリ」
「きゃもきゃも」
「チャ」
旧知の仲であるアチャモとキモリは普通に挨拶する。
「ポケモンバトルは、お互いのポケモン同士を戦わせる事を言う。
いかにポケモンの良いところを出せるか、ちゃんとした指示を出せるかで勝敗は決まる」
「ふんふん」
リクガの解説を素直に聞くクウヤ。
「ルールは簡単。相手のポケモンの体力を削って戦闘不能にする。
何体Vs何体というルールもあって、相手のポケモンを全て戦闘不能にすれば勝ちだ。
もちろん、技も色々あるぞ。
例えば・・・・キモリ、はたくだ!」
「きゃも」
「ちゃ!」
「あ!?」
キモリの攻撃でアチャモは軽くふっとばされる。
「こうして技を試していくんだ!
そのアチャモも「ひっかく」が使える」
「ああ、いけ!ひっかく攻撃!」
「ちゃもぅ!」
「きゃっきゃも!」
キモリは腕をクロスさせてアチャモの攻撃を受けた。
「うんうん、その調子!あとは・・・」
ギャンギャン!・・・ジッジググ!!
・・・・・・キィィ!!!
「な、なにっ!?」
「何かに怯えて、ポケモンたちが逃げていく・・・・」
クウヤが声のした方を向く。
「・・・うわぁ! りりりリクガ!!
あ、あれぇ!!!」
「へ?」
クウヤにつられてリクガもその方向を向くと蛾のポケモンがこちらに向かって飛んできた。
「ケッケェェイ!!!」
「げ、ドクケイル!」
「ケェェイ!!」
「「うわあああああ!!!?」」
突然現れたドクケイルに驚き二人は腕にポケモンを抱え走って逃げる。
一方コトキの家では、ルネへの帰り支度がすすんでいた。
元々クウヤがそこにいなかったのような空気・・・・セイはポケナビをいじり素早くメールをうち送信した時母親に話しかけられた。
ロゼリアも思わず構える。
「セイ・・・誰にメール送ったの?」
「あなたには関係ないことです」
「隠し事する気?生意気ね」
「好きにそう思っていれば良いでしょう。
僕は機械ではなく人ですから、隠し事しても良いでしょう?
貴方達もしてるんですから」
「っこの「ロゼ!」・・・!!」
「ありがとう、ロゼリア」
母親はセイを張り倒そうとしたが
ロゼリアが毒針の構えを取ったため
すぐに手を下げその場を去る。最後に
「わかってる?
子どもはただ親の言うとおりに動けばそれで良いの。
そうすれば何も悩まずにいい道を選んで最高の人生を歩むことができるのよ」
とだけ言い残して。
「・・・あなたのような考えの人間がいる限りそういう同じ脳の人間が増えていく一方なんだ。
僕は貴方達とは、違う」
母が去っていった方向を睨むセイだった。
一方クウヤとリクガは未だ逃げていた。
「ぜぇ・・・・ぜぇ!
もういい加減止まれよこの虫ぃーー!!」
「・・・仕方ない! いけキモリ、でんこうせっか!」
「きゃっもぅ!」
「ケェイ!」
足を止め振り返り、リクガはキモリにでんこうせっかを指示しドクケイルに戦いを挑んだ。
素早いその一撃は、ドクケイルをふっとばす。
しかし、致命傷にはならずどす黒い塊をキモリにぶつけ反撃してきた。
リクガは瞬時にその技を「ヘドロ爆弾」と理解し悔しげに舌を打つ。
「やっぱり無謀でしかなかったか!」
「え!?」
「ポケモン自身やその技にはタイプがあって相性が決まっている。
キモリは「くさ」ドクケイルは「虫」「毒」・・・・こちらが圧倒的に不利だ!」
自分の策の甘さを悔やむリクガ。
「・・・・だから無理だって言うんじゃねぇだろうな!」
「えっ?」
「最初から無理だって思うなよ!
相性だけがバトルってわけじゃないだろ!
だからお前も戦ったんだろ!」
「そうだけど・・・」
「思いっきりでかいのぶつけて、相性なんかひっくりかえしちゃえよ!」
クウヤの発言に目を丸くしたと思ったらすぐに、にやりと笑いキモリと笑いあう。
「言ってくれるじゃないか! キモリ、いけるね?」
「きゃも!」
リクガは再び顔を上げ、キモリを見る。
キモリもリクガに応えて頷く。
「決めて見せようじゃないか!
「相性をひっくり返すでかい一撃」を!
キモリ、ブレイククロー!」
「キャモキャーモォー!!」
ブレイククローが命中し、ドクケイルは地に堕ちた。
キモリは着地後よろけるが、リクガによって支えられ彼は自分のパートナーに「ありがとう」と告げ頭を撫でる。
「やったな、勝ったぜ!」
「ああ! ・・・そうだ。それ!」
「?」
リクガは地に伏せてるドクケイルに向けてモンスターボールを軽く投げる。
ボールはポケモンを吸収すると地面に落ちて数回揺れた後・・・止まった。
リクガは勝ち誇った笑みを浮かべドクケイルが収まったボールを拾い上げる。
「よし! ドクケイル、ゲットだ」
「ゲット?」
「ポケモンは弱らせればこうしてゲットが出来る。
ただし野生のポケモンだけ。
人のはゲットできないし、してはいけない。」
「オレはそんなセッコイことはしねぇよ!かっこ悪いし」
「それは言えてる! ボクも同感だ」
リクガは微笑むとリュックからポーチを出しクウヤに渡した。
受け取ったポーチを開けて出てきたのは、赤い機械。
「これは?」
「ポケモン図鑑。
様々なポケモンのデータが載ってるハイテクアイテムさ」
「そんな凄いもん、オレが貰って良いのか!?」
「うん、元々キミの手に渡すものだしね」
「?」
リクガが気になる発言をしてきた。
どういう意味か問おうとする前にリクガの言葉がクウヤの問いをさえぎる。
「クウヤって・・・呼び捨てでよんでもいいかい?」
「あ、もちろんだよ!」
「このホウエン地方は広い。ボクもまだ知らない事が山ほどある。
まだまだ強いポケモンやトレーナーが沢山いる!
これから冒険に出るから、様々なことがあるだろう・・・。
でも、キミなら大丈夫!」
「リクガ・・・」
「ボクはまだ旅に出てないけれどね。
でもあと一仕事終えたら、ボクも1人のポケモントレーナーとして旅に出る。
お互い強くなったら本気でポケモンバトルをしよう!」
「ああ!」
リクガが差し出した手を受け取るクウヤ。
二人の少年は固い握手をかわす。
「・・・じゃあ、また会おう! クウヤ!」
「おぅ! またなリクガ!」
リクガは肩にキモリを、モンスターボールをベルトに装着し、
ミシロのほうに歩いていった。
その姿を見てクウヤはうずうずしていた。
これからのことやまだ見ぬトレーナーやポケモンに胸が高鳴っているのだ。
「はじめてのことだらけ・・・・でも怖さは感じない。
楽しみでいっぱいいっぱいだ・・・・!わくわくする!
これからもいくぞ!アチャモ・・・いや、アーチ!」
相棒をニックネームで呼びながら。
Tweet |
|
|
0
|
0
|
追加するフォルダを選択
さぁ続けて第2話をお送りします、二人目の主人公登場。