No.81583

真・恋姫†無双呉√IF 冥琳へ捧げる。

sionさん

新屋敷様の作品新時代の跫音を読み、
そして作者コメントに「誰か幸せにしてください」
そうかかれていたので
本編の合間に考えてみた作品を。
では、若輩の文ですが

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2009-06-29 00:43:20 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:58419   閲覧ユーザー数:30987

「冥琳!めいりん!めい・・・ん!め・・・・り・・・」

 

(あぁ、最後の死に場所にこの者の胸の中を選んでくれたのか)

 

ただ聞こえる声を、自身を呼ぶ最愛の人の声を、もはや聞くことすらままならない。

 

つと視線を向ければ、周りのものは一様に目に涙を浮かべて

 

(ふふ、いつも高笑いしている祭殿まで泣いてくださるか)

 

自身が守ったものに、守りたかったものに囲まれて逝くことが出来る、それはこの戦乱の世の中で

 

どれだけ幸せなことだろうか。

 

「ぉ・・・・・・」

 

もはや声も出せず(今其方に行くぞ、雪蓮)

 

そう思い、目を閉じて、その意識を手放した。

 

トクントクンと、まだ心臓の音は鳴っている。

 

それでも手放してしまった、もはや一切の後悔は無いと、そう思い込んで。

 

 

 

「あら、随分早かったわね、冥琳?」

 

目を覚ませばそこにいたのは親友、本当の意味での心友、孫策こと雪蓮で

 

「あぁ、次代に全て託したよ、私の役目はこれで終わりだ」

 

「あはは、確かによくやってくれたわ・・・先に逝って悪かったわね」

 

「気にするな、おいてきたという意味では私も同罪だからな」

 

それは久しぶりの会話、役目を終えたものどうしの語り事。

 

「そうねぇ、けれど冥琳?私が言うのもあれだけど、ちょっと道を急ぎすぎたんじゃないかしら?」

 

「急ぎすぎたとは?」

 

そこに生じる違和感。

 

「冥琳、貴女が病魔に冒されていたことは知っているわ。けれどね?それだけでここに来るのは少

し早くないかしら?」

 

「どういうことだ?雪蓮」

 

だから感情は焦燥を得て。

 

「私としてはね?もう少し寄り道してここに来てほしいのよ、冥琳には特にね。」

 

「・・・・・・」

 

その焦燥は心の中でトクントクンと脈を打つ。

 

「私はやりたいことを一杯やったわ、心残りがあるとしたら三つ、一つ目は呉による統一を果たせ

なかったこと、二つ目は一刀との子供が出来なかったこと。」

 

そこで静かに嘆息して、心友は此方を視線で射抜いた・・・

 

            その眼は優しく笑みを湛えているのに

 

 

 

「最後の一つは冥琳、貴女にいい人が折角出来たのに、あなたの子供を見れなかったこと」

 

その言葉で、何かを失いそうになる。なにをだろうかと模索するも、答えは出ない

 

「もう忘れちゃったの?貴女が唯一認めた男のことを、私が愛した男のことを。それとも気持ちなんてそんなものだったのかしら?冥琳?」

 

彼女の言葉でその失くしたものが、何かと頭によぎる、それは思い出で。

 

「忘れてなど・・・忘れてなどいるものか!」 

 

語気を荒げて叫んでしまう

 

「ふふ、冥琳らしくないわね?けどそうでなくちゃね」

 

叫んだ気まずさと、相手の笑みで沈黙が、本当に一瞬だけ。

 

「待ってるわよ、一刀」

 

「そうかもしれんな、だが・・・私はもうここに来てしまったぞ?雪蓮」

 

「言ったでしょう?まだ早いって。もう少し寄り道してきなさいよ」

 

その言葉が意味することは

 

「まだ引き返せるとでも言うのか?この道を」

 

「まだ、じゃないわ。普通に引き返せるわよ・・・貴女にはまだ早いと言ったでしょう?」

 

聞いてなかったの?そんな顔で嘆息されてしまう。

 

「つまり・・・」

 

「っそ、折角親友が止めに来てあげたんだから感謝しなさいよ?」

 

何かを企んだ時の会心の笑み、もう見ることも無いと思った思い出だけの笑み。

 

「・・・いいのか?雪蓮、今ならお前と一緒に・・・」

 

今なら一緒にこの道を歩けるぞ?とそう続ける

 

「いらないわ、私はここであなたの幸せを肴に美味しくお酒でも飲みながら、のんびり待たせても

らうから。それともここに来てまで私に飲ませない気!?」

 

だから、とそう続ける言葉は、とても優しくて

 

「貴女はたくさん寄り道してきなさい、すぐにここに来ちゃだめよ?・・・そうね、貴女の孫が結婚するくらいのんびり寄り道して来なさい、冥琳の死因は老衰以外認めないわ」

 

「それは寄り道しすぎではないかな?雪蓮」

 

その優しさに、自然と顔が綻ぶ。

 

「いいの!私が見たいんだから、冥琳の女としての幸せを」

 

そこまで言えばもう別れも十分か、そう思い踵を返し背を見せて

 

「あぁ、じっくりと見ていくがいいさ。私はお前の分まで、それこそ本当に人の2倍幸せになって見せよう、うらやむなよ?」

 

そう言って振り返った道を歩く。

 

「期待しているわ、冥琳!私が羨む様な貴女の未来、ちゃんとここで見ててあげるからね~」

 

そんなのんきな声に背を押されて。

 

 

体が重い、そして手を誰かに握られている感覚。

 

そんな中で冥琳は目を覚まし。

 

「めい・・・りん?」

 

自分の手を握っているものから声を掛けられて、それを認識する。

 

その顔は今にも泣き出しそうな、けれども幸せそうな笑みを必死に浮かべて

 

「よかった・・・」

 

その一言に一体どれだけの気持ちが篭められていたのだろうか。

 

それを推し量れる人などこの世にはいないだろう。だからこそ

 

「心配をかけたようだな・・・一刀」

 

冥琳は少しだけ照れくさそうに、眼を弓のように優しく笑んだ。

 

そこからは呉の軍師将軍全てに恨みの言葉と、そして祝いの言葉を。そして今の王からは

 

「戻ってきてくれてありがとう」

 

そう涙混じりに告げられた

 

そして一人、よく見知っている老婆が静かに脇に立っている、それを認めて

 

「すまぬな、あんなことを言っておいて・・・また周家に仕えてもらえぬだろうか?」

 

ただ老婆は微笑んで一礼を返し、少し涙に濡れた眼を笑みの形にして

 

「もったいなきお言葉でございます、そう仰っていただけるのならいつまでもお仕えさせていただきます」

 

そんな風に嬉しそうな声音で。

 

そして将軍や軍師たちからの言葉だが、恨みの言葉は単純で冥琳が寝続けていた20日間。その間一

 

刀は片時も離れることなく彼女のそばで名を呼び、飯ものどを通らぬ彼女に口移しで咀嚼したもの

 

を食べさせて栄養をとらせていたこと。そして何よりも、そこまで愛されている彼女への軽い嫉妬

から。

 

「眠ってまで一刀を独占して・・・今度からは順番ですよ?」

 

そんな言葉を渡される。

 

そして一刀が咀嚼したものを口移しで与え、栄養を取らせていたお陰か、冥琳は多少体に倦怠感が

 

あるものの体そのものはもう平気そうで、その代わり少しやつれた一刀に涙ながらに謝った。

 

「勝手をしてすまなかった」そう囁くように。

 

後から聞けばまだ心音が残っていたことを理由に軍医に頼み込み延命処置を取り、一刀が華琳に泣

 

きついて、彼女のお勧めという医師、華陀の治療で一命を取り留めた。それでも意識を取り戻す可

 

能性は五分五分とのことを言われ、その言葉が一刀を冥琳に張り付かせていた。

 

「ただ必死に呼びかけただけだよ」そう苦笑する一刀に、冥琳は決意をして。

 

そこにはまだ呉の諸将全員が揃っているのを確認してから・・・

 

 

「ん・・・・」

 

一刀の唇を奪い、ただ一刀を求めた。

 

離れた二人の間にツツっと雫が糸を引いて、周りの唖然とした顔も何もかも無視して

 

「私の夫になってほしい・・・一刀」

 

赤い顔をしてそう呟いた。しばし呆然とした一刀は、照れくさそうに

 

「俺に娶られてくれるかな?冥琳」

 

返された答えに、冥琳は心の底から、誰も見たことがないほどの幸せな顔をして。

 

小さく、小さく呟いた。

 

「・・・幸せにしてくださいね?あなた」

 

そしてもう一度だけ、今度は唇を合わせるだけの口付けを皆の前で交わす。

 

口付けを交わす冥琳からは、一雫の涙が零れていた、ただ幸せそうに。

 

人は嬉しすぎても泣くのだと思いながら。その幸せをかみ締めながら。

 

漸く唇を離して、一刀が強い意思をこめて宣言するのだ

 

「絶対に幸せにしてみせるよ、冥琳」

 

そうただ一言だけ、とびきりの笑顔を見せて。

 

 

 

            その言葉から、3年が経つ。

 

 

 

「今日はとても冷えるからあまり外に出るのはよくないよ?冥琳、循」

 

そう声を掛けるのは少し成長して、大人びた一刀。

 

「ふふ・・・すみませんあなた。ただ少し。降らないだろうかと、思って」

 

そう空を見上げるのは冥琳とその腕に抱きかかえられている娘の循の姿。

 

「江南は気候が温暖だから厳しいかもね・・・けれどなんで?」

 

「・・・いえ、見ているならば・・・姿くらい現せばと思いまして」

 

その言葉に一刀は首をかしげてから、かつての王、雪蓮を思い出し

 

「・・・そっか。見ているならね・・っとやっぱり今日は冷え込む、循が風邪を引かないうちに暖かいところへ行こう、冥琳」

 

「えぇ、すぐに。先に行ってくださいあなた」

 

その言葉に満足して一刀は先に部屋へと入り

 

「雪蓮、もう少し、もう少しだけ寄り道をさせて。せめてこの子を立派に育て上げるまで」

 

もう戦場には立てない、大都督の座も退いた。そんな自分に残された大事な仕事。

 

「だから雪蓮、もう少し貴女のところにいくのが遅れるわ」

 

そう空を見上げて呟く

 

「ぁー・・・あー」

 

「そうね、冷えるからお父様のところに行きましょうね、循」

 

そうして部屋に入ろうとした冥琳の頬にヒヤッとした物が落ちて

 

そして見上げた空に笑みを浮かべる。

 

「・・・ありがとう、雪蓮」

 

(私は今あなたの分まで幸せよ?どうお酒は美味しい?)

 

彼女はそう呟いて部屋へと入る。

 

「――――――――――」

 

「!?」

 

その直前、何かが聞こえた気がして振り返るもそこには何も無くて

 

首をかしげてから冥琳は部屋の中へと入る

 

その日この江南の地には珍しく雪が降っていた。

 

「えぇ、とても美味しいわ、だからね冥琳。仕方が無いから見守っていてあげるわよ。冥琳、そしてあなたの娘も呉の地もあなたの幸せの何もかもを、ね」

 

どこまでも優しく降る雪は、大切な人を見守っていた。

 

 

-あとがき-

 

そういうわけで人様の作品のアフターストーリーを書いてみた次第です。

 

ちゃんと幸せになってくれてますよね?

 

ものすごく不安です(人様の作品故に)

 

私が進めている「外史の統一者」では作れない物語なので

 

書いている最中は楽しかったのですが・・・書き上げてこのあとがき書いている時点で

 

ガクガクと震えております。

 

さて、新屋敷様、見られましたでしょうか?私にはこれが限界です。

 

貴方様の世界観を壊していなければいいのですが・・・

 

 

 

さて、友人との問答もこの作品に関しては出来ません。単発短編は書くのも初めてですから。

 

それでは長くなりすぎない程度に。

 

冥琳と雪蓮がFDなどで幸せになれることを祈って。

 

 


 
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